海泡 著:樋口有介
海泡
樋口有介:著
中央公論新社 ISBN:4-12-204328-X
2004年2月発行 定価940円(税込)
100円コーナーで見つけるたびに買ってる樋口有介がたまってきたので…。大学生の主人公が帰省先で事件に巻き込まれる話。夏休みが舞台なので、ちょっとだけ時季がづれてしまったが、まだまだ暑い日が続いてるので、気分的にはOKでしょ。
東京の大学に通う藤井洋介は、夏休みを利用して2年ぶりに小笠原諸島の父島に帰省…。島に残る級友たちと久し振りの再会を果たすのだが、その直後、同級生の一人、一宮和希が転落死した。彼女も東京の大学に通っていたのだが、ストーカーに悩み、実家に戻っていたのだ。さらに、ストーカーと目される謎の男も和希を追いかけて島にやってきて、滞在していたのだ…。
ちょっと皮肉やでキザな感じのナンパな主人公が、自分の同級生の死の謎を追うという、樋口作品のパターンのひとつ。やる気がなさそうなんだけど、ダラダラと日常を過ごしているうちに、事件の真相にたどりついてしまうと…。
これもパターンの一つで、両親が離婚してるんだけど、この作品の父親も、息子に負けず劣らずの女好き。60のオヤジが息子の前で女子高生と平気でセックスしてるような、チョイ悪どころじゃない…どうしようもない親父(悪)今まで読んだ樋口作品の中で群を抜いている、しょうもない親父だった。
いつもは、ワトソン役になるようなヒロイン的な女の子は一人くらいしか出てこないんだけど…だから今回の主人公モテモテです。この息子もうらやましいくらいに、いろいろな女とヤリまくっていた…。でも、実は…けっこうナイーブな奴で、ある一人の女の子の呪縛から逃れられないでいたりするんだよね。それが原因で、ナンパな性格ぶってる。
小笠原という微妙に閉鎖的な町が舞台なので、いつもの雰囲気よりも、さらにダラダラとした感じがしていたね。展開の中に、同じ樋口作品で非ミステリーの「八月の舟」みたいな部分もあったかな?怪しい人物がいっぱいいたので、珍しく、犯人は盲点だったかな?
実際に自分が小笠原にいるような雰囲気、そして主人公と様々なタイプのおねーちゃんとのやり取り…今回も面白く読めた。
個人的採点:70点