105円読書 -10ページ目

殺人ライセンス 著:今野敏

殺人ライセンス 殺人ライセンス

今野敏:著
有楽出版社 ISBN:978-4-408-60482-4
2008年2月発行 定価900円(税込)










奇妙なネットゲームが実際に起きた殺人事件と関連していたという…ネット社会を題材にしたサスペンス。2002年の単行本作品を新書化したもので、ネットに関する描写なんかに一部手直しが加えられているらしい。

パソコンオタクのキュウこと永友久が、偶然みつけた奇妙なオンラインゲーム“殺人ライセンス”…殺しを請け負った標的への、接近方法や凶器を選択していき完全犯罪を達成するという内容らしいのだが、すぐにゲームオーバーになってしまう難易度の高さ。数日後、ゲームにそっくりな殺人事件が実際に起きたことを知ったキュウだが…再度、ゲームにアクセスすると既にページは消されていた!

カバー折り返し部分の著者の言葉で作者も述べていたが、パソコン、ネットの環境の変化が激しいので、たった6年で内容的には既に古くなってしまっていると…。2002年はこんなだったということで懐かしんで読んで下さいとのこと。

確かに数年前のネット事情だなって部分もあるんだけれども、パソコンオタクの高校生をはじめ、その同級生の女子高生、家族に黙って探偵稼業を始めてしまったリストラサラリーマン、ショカツのベテラン刑事と本庁の若手刑事コンビなどが、殺人事件をきっかけに…横のつながりができていくところが惹きこまれる。

事件解決、犯人逮捕を目指すという王道的な話で、ネット社会の曖昧さが邪魔をしてなかなか真相にたどり着けないという展開のミステリー。肝心な事件の方は…ネットの本質をよく捉え、皮肉ったかのように、蓋を開ければこんなもん?なんだけれども…崩壊した家族の再生の物語であり、高校生の恋の行方を描いた青春モノであり、おじさんたちが若者文化に必至に食らいつこうとしている姿なんかが面白く描けている。






個人的採点:70点






パラダイス・クローズド THANATOS 著:汀こるもの

パラダイス・クローズド THANATOS パラダイス・クローズド THANATOS

汀こるもの:著
講談社 ISBN:978-4-06-182579-6
2008年1月発行 定価903円(税込)









今月はちょっと読書量がガタ落ち…月末までにあと2、3冊は読みたいけど、読めるかどうか。で、久しぶりに読んだのがこれ、わりと最近の講談社のメフィスト賞受賞作家のデビュー作。“本格ミステリを打倒そうとする生意気な新人が現れた”という有栖川有栖の推薦文に惹かれたが…。

周囲の者が数多く事件、事故をに遭遇し死んでしまう、死神と呼ばれる美少年立花美樹と、その双子の弟で高校生ながらいくつもの事件を解決してきた名探偵の真樹。二人はミステリ作家が所有する孤島の屋敷に招待され、お目付け役の捜査一課刑事・高槻と共に滞在することになったのだが…案の定、館の主人が殺されてしまった。容疑者は…一緒に招待されたひと癖あるミステリ作家たちだが…。

絶海の孤島、密室殺人、くせのある登場人物と名探偵…本格っぽくみせかけて、確かに最後の方でちゃぶ台をひっくり返してみせるこの作品。主人公の双子キャラはそれなりに立っているが…思ったよりも惹きつけられるものはあまりなかった。もう少し雰囲気を変えてライノベにした方が受けるんじゃないか?

魚介類だかなんだかわからんけど、生物に関する蘊蓄もちょっとウザイね…魚くんとかなら喜びそうだが、普通のミステリ好きはあまり興味なさそうな感じ。最近のこの手の新人ミステリー作家のパターンで、既存のミステリをちょっと小馬鹿にした目線で見つめているところもいやらしく感じてしまう。古典をバカにすれば新しいミステリだと勘違いしてるんちゃうか?

講談社のメフィスト賞、だんだんと質が落ちてきているような…この作者の2作目も100円でGETしてるが、続けて読む気にはならなかった。






個人的採点:60点






諏訪湖マジック 著:二階堂黎人

諏訪湖マジック 諏訪湖マジック

二階堂黎人:著
徳間書店 ISBN:4-19-891782-5
2002年10月発行 定価760円(税込)









前回の更新からしばらく間があいてしまったが、「軽井沢マジック」に続き、二階堂黎人の水乃サトルシリーズを読む。初出の新書とこの文庫ともども、現在は絶版なんだそうだが…「軽井沢マジック」が講談社で最近文庫化されたことを考えると、これもそのうち出版社を変えて再刊するのかな?Amazonのマケプレだと1円から買えるけど、送料がかかるので、やっぱりブックオフねらいがよろしいかと…。


JR大宮駅付近で、高崎線にめがけて投げ落とされた、身元不明の死体。埼玉県警からの要請で、応援に駆け付けた警視庁の馬田警部は、同じ現場、同じ列車で二か月前に起きた投身自殺に着目するが…。一方、アンタレス旅行社の水乃サトルは、出張先で、支店勤務になったかつての同僚、安場今日子から行方不明になった父親の捜索について相談を持ちかけられる…。

最初の100ページくらい、サトルが出てくるまで、馬田警部と後輩の若手刑事が、埼玉県警との確執に悩まされながら…一見、事故か自殺に見える不可解な事件を、殺人事件だと断定していくまでの流れは、なかなか硬派な展開で、「軽井沢マジック」よりも本格的だぞと思ったんだけど…サトルの登場で、やっぱりノーテンキな、コージー系の作風に変わっていった。馬田警部も、サトル登場前と後ではまるっきり別人のようなキャラだったし(笑)

それでも、やたら死人が出たわりに、謎解き要素がちょっと軽めだった「軽井沢マジック」に比べると、アリバイトリックはなかなか読みごたえあり。刑事たちの縄張り争いから起因する警察の捜査ミスなんて展開はちょっともったいなかったが、まぁ、リアルなんで良しとするか。

一度殺した死体を、もう一度電車に投げ込むなんて導入部のインパクトと雰囲気が良すぎたので 個人的には、ユーモアなサトル抜きで…馬田刑事が埼玉県警と喧嘩しながら、地道に事件を追いかけていくなんて展開でも、面白い作品になりそうだと思うんだけどなぁ。

武田信玄の水中墓説とかが流行ったころの作品みたいで、歴史をからめたトラベルミステリーっぽい展開もそれなりに面白かったけど…そっちのテーマももっととんでもな展開が待ってたら面白かったよね。意味深に語られたプロローグ…その解答がちょっと逃げかな?二階堂黎人だったら、もっと奇抜なアイデアを出してくれても良かったのに。






個人的採点:65点






軽井沢マジック 著:二階堂黎人

軽井沢マジック 軽井沢マジック

二階堂黎人:著
徳間書店 ISBN:4-19-890790-0
1997年11月発行 定価600円(税込)









昔は、二階堂蘭子シリーズしか読んでいなかった、二階堂黎人…このあいだ、「稀覯人の不思議」を読んで、水乃サトルシリーズもまぁまぁ面白かったので、シリーズの1作目を見つけてきた。なんか、最近、講談社文庫の新刊で再発されたらしい…初出は1995年のトクマノベルス。

旅行会社に勤務する水乃紗杜瑠は、美男子だが、その奇行ぶりは有名で同僚の女性陣から変人扱いされていた。そんな紗杜瑠に憧れる部下で新人の美並由加理は、同伴した出張の帰り道に、紗杜瑠の気まぐれで軽井沢で下車、知り合いのペンションに泊まることなったのだが…滞在中の軽井沢で次々と奇妙な殺人事件が発生し、事件の渦中に…。

列車内で見つかる死体をはじめ、次から次へとサトルが行く先々で死人はいっぱい…三億円事件まがいで時効寸前の、過去の強盗事件まで関わってきたりと…なかなかの大風呂敷。サトルの奇人変人ぶりは、他のシリーズを読んでいたので、予想はできたものの、コミカルで面白い。

著者もテンポなどを重視しているとあとがきで語っていたので、死人が多いわりに、気軽に読めちゃうミステリーなんだけど…導入部など事件がミステリアスだったわりに、謎解きの醍醐味がちょっと薄目かなと、やはり感じてしまう。

ノホホンとした推理好きのおぼっちゃんが、事件に首をつっこんじゃう。推理力や洞察力は抜群なんだけど…やっぱり途中の展開が、浅見光彦的(笑)に感じちゃう。「稀覯人の不思議」はそんな風に感じなかったけど。

シリーズ1作目なのに、過去にいろいろと事件に首をつっこんでいるらしい迷探偵のサトル…意味深な思わせぶりのセリフがいっぱい出てきた。このシリーズは学生編と、現代の社会人編の二通りのシリーズがあるから、どこかで前日談的な話として描かれているのだろうか、ちょっと気になった。






個人的採点:65点






黄色い花の紅 著:アサウラ

黄色い花の紅 黄色い花の紅

アサウラ:著
集英社 ISBN:4-08-630316-7
2006年9月発行 定価680円(税込)










発刊当時、集英社のライノベ、スーパーダッシュ文庫の小説賞で新人賞を受賞した新人作家のデビュー作。イラストはいかにもライノベだが、中身はなかなか本格的なアクションもので、文章も読みごたえがあった。

銃の規制が変わり、自衛手段としての銃の所持が認められるようになった日本。ボディーガードをメインに依頼があればなんでもこなす工藤商会の白石奈美恵は、府津羅組の依頼で、抗争に巻き込まれた組長の娘・紅花の救出に向かうのだが…そこで、仮面をつけた不気味な大男と遭遇する!

前半は奈美恵視点、後半は紅花視点の一人称で構成…最初は銃器に精通した奈美恵の視点で、派手なアクション満載、ガンガンと勢いで話が突き進む感じ。勢いにのまれ知らないうちに設定や世界観を理解していくようだった。

銃関連の専門用語が大量だが、下手な作家が書くと…専門書まる写しの知ったか文章だったり、逆にオタク趣味が爆発しすぎて、ただ専門知識をひけらかしたいだけの嫌みな文章になりがちだが…そういう読みにくさは全く感じなかった。ただ、サブキャラとかが、謎っぽいままというか、唐突に出てきたり、消えたりするところがあり、そういうところで、ちょっと魅力半減、今後の課題か?

後半は…紅花が実際に銃を取り、成長していく物語へ。前半と同じくらい銃に関するうんちく知識は膨大に出てくるのだが、紅花が銃を学ぶというスタンスをとっているので、わりと読者にも説明的な感じ。物語の展開上…視点変更するあたりで、ちょっとドッキリしたかな。

イラストがいかにもライノベっぽいけど、もうちょっと硬派なイラストだったら…充分に、アクション小説として売れると思うのに残念だな。比べていいかどうかわからんけど、トータル的にみると深見真の「ヤングガンカルナバル」にはちょっと負けるかなって?






個人的採点:65点






東京地下室 著:神埼京介

東京地下室 東京地下室

神埼京介:著
幻冬舎 ISBN:4-344-40824-1
2006年8月発行 定価560円(税込)










官能小説で人気の神埼京介のミステリー?この著者は前に「みられたい」っていうホラーっぽい作品や、「渋谷STAY」なんていうサスペンスを読んだことがある。

女と別れ話をした直後の泉川リュウジの前に、弁護士を名乗る男、磯崎が現れ…別れた彼女と復縁したら100万円を払うという、怪しげな賭けを持ちかける。不審に思いながらも、金につられたリュウジは、賭けを承諾。実際は愛情も感じない元カノと難なくヨリを戻してしまった。賭けに勝ったリュウジだが、今度は磯崎の計らいで、怪しげな能力開発研究所の女研究員・吉川マキコと引き合わされ、研究所に通うようになる。

リュウジの周りに群がってきたヤツらの目的は何なのか?彼らに半ば洗脳され…人殺し衝動に駆られていく主人公。それと並行して起きている、いくつかの猟奇殺人…このあたりから、この能力開発研究所の目的は、ある程度推測できる感じ。

好きでもない彼女とヨリを戻すという恋愛ゲーム的な話と、怪しげな研究所の話…それから猟奇殺人と、途中まではグイグイとひきこまれていったのだが、結末が、そこかよみたいな、拍子抜けする呆気なさ。一応、能力開発研究所の目的だとか、殺人事件の犯人、目的なんかも明かされるんだけれども…そういうものが明かされても未消化な印象を受けたな。

ガールフレンドをただの性欲の捌け口ぐらいにしか考えていない、この主人公の行動を見てると、いつかはこうなるんじゃないかとは危惧していたが…物語の終着地点もそこだったとは…。ある意味、予想外ではあったが、色々なものがニアミスして、昂ってきた気持ちが、最後で急に萎えてしまった感じだ。






個人的採点:65点






変な映画を観た!! 著:大槻ケンヂ

変な映画を観た!! 変な映画を観た!!

大槻ケンヂ:著
筑摩書房 ISBN:978-4-480-42324-5
2007年6月発行 定価714円(税込)










久しぶりに、小説以外の本を…大槻ケンヂの映画評論本。キネマ旬報で雑誌連載され、その後単行本化されたものの文庫化。ホラーやポルノ、カルトなB級映画なんかを中心に軽妙な語り口で映画を紹介。

大槻ケンヂが目撃した変テコ映画を一挙公開。カルト、怪獣、エロ、不条理、狂気…。知られざる必笑ムービーから爆眠必至の文化的作品の意外な見どころまで。オーケン・セレクション・シネマを、ご案内。オーケンの創作の源泉は、この映画体験から生まれた?!三留まゆみのイラスト多数。解説:江戸木純(カバー裏 内容紹介から抜粋)

オーケンの映画少年時代の思い出話から最近(といっても、最初に刊行されたのは数年前だからその時の映画)の話まで…見たことある映画に関しては、同じようなイメージや感想を持っていたりして、けっこう共感。知らない映画については、いったいどんな映画なんだろうか?と興味がわきまくり…自分もツタヤで借りてこようかなという気分にさせる。

先日、他界した峰岸徹についての記述もいっぱい出てくる…それだけ邦画に欠かせない俳優さんだったということが再確認できる。オーケンの文章を読んでいて、そういえば、出てたなぁ、こんな作品にもと、自分も懐かしく思ってました。どちらかというと、役がらのトホホぶりへのツッコミだが、ATG作品「サード」の演技はオーケンもお気に入りなのだとか。

オーケン原作の「グミ・チョコレート・パイン」の映画化がポシャったという愚痴めいた話が載っていたが…その最初の企画とは別なんですかね?今現在は劇場公開も済み、DVDでも出ていますよね映画「グミ・チョコレート・パイン」…自分も見たけど、あの映画はおもろかったよ。






個人的採点:70点






ロシアン・ルーレット 著:山田正紀

ロシアン・ルーレット ロシアン・ルーレット

山田正紀:著
集英社 ISBN:4-08-774731-X
2005年3月発行 定価1,890円(税込)









あとがきにて、長編であって、短編でもある、連作であって、連作ではない作品…と著者が語っていたが、かなり不思議な構成の作品。一応、ホラーテイストが濃厚なんだけど、ジャンルも多岐に渡っている…。

自宅で上司から、殺人事件の連絡を受け…事件現場のカラオケボックスへ向かった刑事の群生蔚。そこで、被害者の女・相楽霧子にソックリの幽霊と遭遇し…群生はその幽霊に誘われるようにして、近くに停車したバスに乗り込んでしまう。実はそのバスは、後に崖から転落する運命にあったのだが…。

幽霊からのコンタクト?転落するバスから生還するには…「いい人間」を見つけなければならないというのだが、人間なんて、誰もがどっかに邪悪な心を携えてるものです。見た目、平凡な、また悪さをするように見えない容姿端麗な人物だって、他人には何を考えているか理解なんてできないような秘密をいっぱい抱えてる。

バスに乗り合わせた様々な人たちの人生を追体験し、秘密を垣間見ながら…自分も含め、世界にはまともな人間なんていやしないではないか、というのを悟っていく主人公。この窮地を脱出する術はどこにあるのか?

見てくれだけでは判断できない、人間の闇の部分…でも、そんなもん見抜けない方がかえって幸せなんじゃないか?と思いながら、読んでました。ひとつひとつがハズレる度に、死も確実に迫ってくるという恐怖…ロシアン・ルーレットというタイトルは絶妙だなぁと。

幻想的な展開も多く、苦手な人もいるかもしれないが…信じていたものが、ガラリと豹変してしまういかにも山田正紀らしいトリッキーなミステリーとしては、充分、楽しめる作品だった。






個人的採点:70点







夏の夜会 著:西澤保彦

夏の夜会 夏の夜会

西澤保彦:著
光文社 ISBN:4-334-73887-7
2005年6月発行 定価560円(税込)









西澤保彦の本格推理小説「夏の夜会」…同級生の結婚式に出席、久しぶりに同級生たちと再会し、30年前の小学校時代に起きた殺人事件の記憶がよみがえっていくというような感じのお話…雑誌連載後に2001年に新書で発刊されたものの文庫化。

祖母の葬儀で帰省した、見元は…そのまま小学校時代の同級生の結婚式へ。その式の最中に、テーブルが一緒になった男女5人の旧友同士、思い出話に花を咲かせるが…いつしか話題は、30年前に起きた担任教師が殺された事件の話へ…。各々、曖昧な記憶をたどりながら…やがて思いもよらぬ真相が!

延々と推理合戦が続き、話も二転三転する。確かに本格推理ものなんだけど…ミステリーとしては、ちょっと地味めか?最初から、あやふやな記憶がテーマというのが、ほのめかされていたので、なんとなしに展開は想像できたかな?

まぁ、殺人事件なんてファクターがなくても、30年ぶりに再会した同級生同士が繰り広げる、小学校時代の思い出、記憶なんて、きっとこんなんだろうなぁっていう…誰もが1回くらいは味わうだろう、ノスタルジックな雰囲気はわりとうまく描けている。

友人や憧れの異性…その人たちにも自分の知らないところで、それ相応の人生を送ってきているんだという、当たり前なんだけれど、実際にこういう感情ってあるなぁって部分がリアルに表現されていた。他人の人生が一番ミステリーということなのかな?そういう部分を楽しみたい作品だった。






個人的採点:65点






僕らはどこにも開かない 著:御影瑛路

僕らはどこにも開かない 僕らはどこにも開かない

御影瑛路:著
メディアワークス ISBN:4-8402-3040-4
2005年5月発行 定価578円(税込)









地味な表紙だが、一応、電撃文庫のライノベ…数年前、本屋に平積みされてる頃からちょっと気になっていたんだよね、本のどこにもあらすじも書いてないし、昔、京極夏彦の本を始めて見つけたときのような如何わしさに似たものをちょっと感じたり(笑)この作者の他の作品をずいぶん前に手に入れていたのだが、このデビュー作を読んでからそちらを読みたいと思ってずっと探していたら、最近になってようやく100円コーナーで見つけられた。

「あなたはあたしが護ってあげる」…自称魔法使い、可愛いけどどこか言動がおかしい同級生の香月美紀に、付きまとわれ、振り回される柊耕太。彼女と行動しているうちに、次第に接し方に慣れてくるのだが…。また、耕太は友人の谷原雅人とある日の下校途中に、“人間をスキャニングできる”という上級生の松見璃々子と遭遇…その直後から雅人の様子がおかしくなり、学校を欠席するようになってしまった…。

電波系っぽい語り口調で、全体的に病んだ印象が強いのだが…やってることはラブコメ+ミステリーな感じ。傍若無人でかなり不思議ちゃん入ってる美紀や、いっちゃってるスキャナー人間の先輩とか、やっぱり「涼宮ハルヒ」あたりを意識しているのかな?なんても思ってしまったりするが…。

で、こういう媒体で作品を発表しているくせに、ちょっとライノベ色を排除しようとしている、作者のあがきがちょっと鼻につく部分あり。人間の闇の部分はそれなりに面白く描けているとこもあるのだが、ストーリー展開の周りくどさや単調さが逆に目立つ。

作中で起きる殺人事件など、せっかくなんで、もうちょっと本格ミステリー色を強めた方が、個人的には好みだったし、エンターテイメントとしてのバランスも良かったと思うのだが?(主人公が披露するフェイクの推理が真相だったらある意味で、笑撃の問題作になりえたと思うぞ!)

ライノベ好きの若い世代なんかには、けっこう評価されてるみたいだが…思ったほど惹きこまれるものはなかったかな?決して文章が下手とかは思わないんだけど、物語の求心力の弱さなんかは、これがデビュー作ということなので、新人ゆえの拙さなのかと思ってみる。次作以降に期待。






個人的採点:60点