僕らはどこにも開かない 著:御影瑛路
僕らはどこにも開かない
御影瑛路:著
メディアワークス ISBN:4-8402-3040-4
2005年5月発行 定価578円(税込)
地味な表紙だが、一応、電撃文庫のライノベ…数年前、本屋に平積みされてる頃からちょっと気になっていたんだよね、本のどこにもあらすじも書いてないし、昔、京極夏彦の本を始めて見つけたときのような如何わしさに似たものをちょっと感じたり(笑)この作者の他の作品をずいぶん前に手に入れていたのだが、このデビュー作を読んでからそちらを読みたいと思ってずっと探していたら、最近になってようやく100円コーナーで見つけられた。
「あなたはあたしが護ってあげる」…自称魔法使い、可愛いけどどこか言動がおかしい同級生の香月美紀に、付きまとわれ、振り回される柊耕太。彼女と行動しているうちに、次第に接し方に慣れてくるのだが…。また、耕太は友人の谷原雅人とある日の下校途中に、“人間をスキャニングできる”という上級生の松見璃々子と遭遇…その直後から雅人の様子がおかしくなり、学校を欠席するようになってしまった…。
電波系っぽい語り口調で、全体的に病んだ印象が強いのだが…やってることはラブコメ+ミステリーな感じ。傍若無人でかなり不思議ちゃん入ってる美紀や、いっちゃってるスキャナー人間の先輩とか、やっぱり「涼宮ハルヒ」あたりを意識しているのかな?なんても思ってしまったりするが…。
で、こういう媒体で作品を発表しているくせに、ちょっとライノベ色を排除しようとしている、作者のあがきがちょっと鼻につく部分あり。人間の闇の部分はそれなりに面白く描けているとこもあるのだが、ストーリー展開の周りくどさや単調さが逆に目立つ。
作中で起きる殺人事件など、せっかくなんで、もうちょっと本格ミステリー色を強めた方が、個人的には好みだったし、エンターテイメントとしてのバランスも良かったと思うのだが?(主人公が披露するフェイクの推理が真相だったらある意味で、笑撃の問題作になりえたと思うぞ!)
ライノベ好きの若い世代なんかには、けっこう評価されてるみたいだが…思ったほど惹きこまれるものはなかったかな?決して文章が下手とかは思わないんだけど、物語の求心力の弱さなんかは、これがデビュー作ということなので、新人ゆえの拙さなのかと思ってみる。次作以降に期待。
個人的採点:60点