諏訪湖マジック 著:二階堂黎人 | 105円読書

諏訪湖マジック 著:二階堂黎人

諏訪湖マジック 諏訪湖マジック

二階堂黎人:著
徳間書店 ISBN:4-19-891782-5
2002年10月発行 定価760円(税込)









前回の更新からしばらく間があいてしまったが、「軽井沢マジック」に続き、二階堂黎人の水乃サトルシリーズを読む。初出の新書とこの文庫ともども、現在は絶版なんだそうだが…「軽井沢マジック」が講談社で最近文庫化されたことを考えると、これもそのうち出版社を変えて再刊するのかな?Amazonのマケプレだと1円から買えるけど、送料がかかるので、やっぱりブックオフねらいがよろしいかと…。


JR大宮駅付近で、高崎線にめがけて投げ落とされた、身元不明の死体。埼玉県警からの要請で、応援に駆け付けた警視庁の馬田警部は、同じ現場、同じ列車で二か月前に起きた投身自殺に着目するが…。一方、アンタレス旅行社の水乃サトルは、出張先で、支店勤務になったかつての同僚、安場今日子から行方不明になった父親の捜索について相談を持ちかけられる…。

最初の100ページくらい、サトルが出てくるまで、馬田警部と後輩の若手刑事が、埼玉県警との確執に悩まされながら…一見、事故か自殺に見える不可解な事件を、殺人事件だと断定していくまでの流れは、なかなか硬派な展開で、「軽井沢マジック」よりも本格的だぞと思ったんだけど…サトルの登場で、やっぱりノーテンキな、コージー系の作風に変わっていった。馬田警部も、サトル登場前と後ではまるっきり別人のようなキャラだったし(笑)

それでも、やたら死人が出たわりに、謎解き要素がちょっと軽めだった「軽井沢マジック」に比べると、アリバイトリックはなかなか読みごたえあり。刑事たちの縄張り争いから起因する警察の捜査ミスなんて展開はちょっともったいなかったが、まぁ、リアルなんで良しとするか。

一度殺した死体を、もう一度電車に投げ込むなんて導入部のインパクトと雰囲気が良すぎたので 個人的には、ユーモアなサトル抜きで…馬田刑事が埼玉県警と喧嘩しながら、地道に事件を追いかけていくなんて展開でも、面白い作品になりそうだと思うんだけどなぁ。

武田信玄の水中墓説とかが流行ったころの作品みたいで、歴史をからめたトラベルミステリーっぽい展開もそれなりに面白かったけど…そっちのテーマももっととんでもな展開が待ってたら面白かったよね。意味深に語られたプロローグ…その解答がちょっと逃げかな?二階堂黎人だったら、もっと奇抜なアイデアを出してくれても良かったのに。






個人的採点:65点