ロシアン・ルーレット 著:山田正紀 | 105円読書

ロシアン・ルーレット 著:山田正紀

ロシアン・ルーレット ロシアン・ルーレット

山田正紀:著
集英社 ISBN:4-08-774731-X
2005年3月発行 定価1,890円(税込)









あとがきにて、長編であって、短編でもある、連作であって、連作ではない作品…と著者が語っていたが、かなり不思議な構成の作品。一応、ホラーテイストが濃厚なんだけど、ジャンルも多岐に渡っている…。

自宅で上司から、殺人事件の連絡を受け…事件現場のカラオケボックスへ向かった刑事の群生蔚。そこで、被害者の女・相楽霧子にソックリの幽霊と遭遇し…群生はその幽霊に誘われるようにして、近くに停車したバスに乗り込んでしまう。実はそのバスは、後に崖から転落する運命にあったのだが…。

幽霊からのコンタクト?転落するバスから生還するには…「いい人間」を見つけなければならないというのだが、人間なんて、誰もがどっかに邪悪な心を携えてるものです。見た目、平凡な、また悪さをするように見えない容姿端麗な人物だって、他人には何を考えているか理解なんてできないような秘密をいっぱい抱えてる。

バスに乗り合わせた様々な人たちの人生を追体験し、秘密を垣間見ながら…自分も含め、世界にはまともな人間なんていやしないではないか、というのを悟っていく主人公。この窮地を脱出する術はどこにあるのか?

見てくれだけでは判断できない、人間の闇の部分…でも、そんなもん見抜けない方がかえって幸せなんじゃないか?と思いながら、読んでました。ひとつひとつがハズレる度に、死も確実に迫ってくるという恐怖…ロシアン・ルーレットというタイトルは絶妙だなぁと。

幻想的な展開も多く、苦手な人もいるかもしれないが…信じていたものが、ガラリと豹変してしまういかにも山田正紀らしいトリッキーなミステリーとしては、充分、楽しめる作品だった。






個人的採点:70点