誘拐から誘拐まで 著:大石直紀 | 105円読書

誘拐から誘拐まで 著:大石直紀

誘拐から誘拐まで 誘拐から誘拐まで

大石直紀:著
光文社 ISBN:4-334-07356-5
1999年9月発行 定価860円(税込)









過去にも何冊か読んでいる、大石直紀の誘拐を題材にした推理小説…。「キッドナップ」というタイトルに改題され、2003年に文庫化されているんだけど、今回、読んだのは最初の新書版。

国際的なヘッジファンドの元幹部、仁科貴史の息子が何者かに誘拐され、身代金の要求が届いた。その受け渡し方法として、仁科本人が現金を持ち、ベルギーのブリュッセルへ飛べというのが犯人の指示だった。捜査官も同行し、ベルギー警察と協力のもと捜査を展開するが、今度はモロッコのマラケシュへ飛べとの指示が!

この著者らしく、作品舞台の一部が海外だったり、謎の外国人組織が出てきたりと…わりと国際的でスケールのでかい話が絡んでくる。ヘッジファンドなど金融小説みたいなテーマも盛り込まれている。

冒頭の誘拐、身代金の受け渡しなどはかなりスリリングに描かれている。誘拐の真相が実はこうでした…というどんでん返し的な真相を、中盤でバラしちゃっても…さらに新しい展開を盛り込んできたりするストーリー構成のうまさは相変わらず。クライマックスでもう一度起きる、日本警察と犯人の攻防の様子などもかなり惹きこまれる。前に読んだ同じ著者の「テロリストが夢見た桜」にも通じる。

ただ、中盤ではいろいろな登場人物が入り乱れるので、やや散漫気味に感じる箇所もあり。それを乗り越えれば、しつこく感じたいくつかのキャラクターの生い立ちなんかも、しっかりとしたフリになっており、物語の中で、おとしまえをつけてくる。一部、やりすぎにも思える隠し玉はあったが(笑)






個人的採点:65点