ホラー映画ベスト10殺人事件 著:友成純一

友成純一:著
光文社 ISBN:978-4-334-74294-2
2007年8月発行 定価500円(税込)

ホラー映画評論家の庄内良輔…昼間は試写会を梯子し、夜は飲み屋の梯子。ある日、飲み屋で飲んでいる時に、ポルノ映画の助監督にからまれさんざんな目に遭うが、後日、その相手が惨殺された。それを気に、庄内の周りで次々と人が殺され始めたのだが、なんとみんな庄内が挙げたホラー映画ベスト10の殺人シーンそっくりの殺され方をしていた。動機はあるがアリバイがない庄内…犯人はいったい?
やってることはグログロ、鬼畜のスプラッターなんですけど…友成作品にしては軽めの文章。ホラー映画のパロディ満載なので、映画好きなら適度に楽しめる。殺人事件というタイトルがついてるし、犯人探しみたいな部分もあるから、一応推理小説ってジャンル分けも成り立つかな?
冒頭では映画業界の内幕ネタを詳細に披露、20年近く前の描写なんで、今とはだいぶ状況も変わっているだろうが、映画秘宝に寄稿している著者本人の映画評でも読んでいるような、リアルなところが面白かった。
もっと赤裸々に、作品全体にこうした描写を取り入れてほしかったが、後半は真犯人視点とか、大殺戮にページを割かれているので、思ったほど業界的なディープさが出ていなかった。
ぜひ、今風にリライトしたり、続編を出版してほしいと思った。関係者のその後も興味ある。
個人的採点:70点
殺されざる者 BLOODY ACTION 著:鳴海丈

鳴海丈:著
徳間書店 ISBN:4-19-892201-2
2005年2月発行 定価680円(税込)

1か月ちょっと、諸般の事情で読書から遠ざかってました…ということで、ブログも全然、更新してなかったんだけど、久しぶりに読書と更新を再開。エロコメが400件近くあって削除するの大変だった…いまだに、エロコメとか迷惑TBやるバカっているんだね。
バイオレンスで鬼畜満載なアクション巨編…実は過去に読んだ作家の“鳴海章”かと思って買っちゃったんだけど、別人の“鳴海丈”だった。だから初めて読む。この作家さんは、普段は時代小説を書いてる(あまり興味無いなぁ)そうなんだけど、初めての現代ものがこの作品なんだそうだ…1998年にハードカバー、その後、新書化→文庫化。
密林で目を覚ました男は、記憶を失っており、自分が何者で、どこで何をしているのか理解していなかった…しかしナイフや拳銃を所持しており、なぜかその手の知識や能力は覚えていた。自分はもしかして兵士なのか?そんな男の前に、突然…大人たちが幼い少年少女を嬲り殺している壮絶な現場に遭遇…助けに入るのだが、助けられたのはマリーという金髪の美少女だけだった。そこは秘密組織サンクチュアリが、VIP会員のために殺人ゲームを提供するダンテ島だということが判明…男はマリーを連れて脱出を試みるのだが、彼らにとんでもない追手が迫る!
まさにノンストップ…何やら怪しげな島、密林地帯からお話は唐突に始まり、主人公は日本人らしいんだけど、記憶を失ってて…そのくせもの凄い戦闘能力を有している。のっけから、名もなき少年少女たちが、変態の大人たちに犯され、嬲られ、惨殺されまくるなんてシーンに出くわした記憶喪失男が、とっさに助けようとするんだけれども…って感じでお話は始まる。
このへんてこな島を意外と簡単に脱出に成功するんだけれども…舞台を日本、東京に移し…殺人集団に追われながら、少女を守り、自分の記憶を取り戻していくという寸法。殺人集団の鬼畜っぷりは、日本に舞台を移してからも、その勢いは止まらず…死体の山がどんどん築かれていく。この変態殺人集団たちの心理とか、それと同時にこれでもかと、実在の殺人鬼に関するウンチクが語られるあたりも、この作品の読みどころ。
記憶喪失男の正体とかも、凄すぎて笑っちゃう部分もある…実在のあんな人物とか出てきちゃうし(時代もの書いてるだけあり、こういう嘘くさいものにリアリティをもたせる味付けは上手ですね、この作家さん)。
変態・鬼畜描写の脱線もあるけれども、決してテンポを損なわず…クライマックスまで怒涛の殺戮アクションてんこもり。「スピード」「ダイハード」「ターミネーター2」にクリソツな部分があり、事件を調べる日本人刑事と記憶喪失男の関係なんかは、ちょっとジョン・ウーチック、香港映画チック。著者のあとがきで、殺し屋と美少女という設定も「レオン」からいただいたのでは?という指摘を受けたが、それは関係ないと否定していた。
活字からしばらく遠ざかっていたけど、こういう面白い作品を読むと、やっぱり小説っていいなぁって思いました。作家を勘違いして買っちゃった作品だったけど、意外なひろいもの。これはけっこう面白かった。この人、この路線で他にも書いてるのかな?
個人的採点:75点
火事と密室と、雨男のものがたり 著:浦賀和宏

浦賀和宏:著
講談社 ISBN:4-06-182437-6
2005年7月発行 定価998円(税込)

久し振りの浦賀作品…八木剛士&松浦純菜シリーズの2作目。1作目を1年半くらい前に読んだので、少し内容忘れてる(笑)で、シリーズは既に8作目くらいまで進んでますけど、いまストックしているのは次の巻まで。今後のシリーズのフリを少しずつばらまきながら、今回は自殺事件と放火事件の真相に迫るんだけど…。
暴漢に襲われても、殺人鬼に襲われても無傷、奇跡の男、八木剛士…そしてある事件に巻き込まれて大けがをした松浦純菜。2か月前に起きた事件をきかっけに2人は出会い、純菜はそれまで世間を恨んで生きてきた剛士の唯一の理解者という関係に…。剛士の高校で起きた女子高生の首吊り自殺。それと同時期に巷を騒がせていた連続放火事件…事件の真相を調べ始めた剛士と純菜はある一人の男に注目するのだが…。
うーん、なんじゃらほい?シャマランの映画みたいなとんでも系な設定のミステリー…それ自体は別にかまわんのだが、他の作品に比べて猟奇的な描写が少なめ。その代わり、やたらといじめだ、ひきこもりだの話を延々とするのが、なんだか飽きてくる。
八木剛士自体が、いまどきの犯罪者予備軍って感じで…ネクラでヤバメのキャラなのに、その八木が辟易しちゃうくらいのひっきーオタクが出てくる。八木の屈折した心情、いじめに耐える姿なんかを読まされた後に、また似た話が出てくる。で、さんざん…自分を見ているようで嫌になってくるとか、八木が心情を吐露するんだけど、この二人のキャラの行動を読んでる自分も、思わず共通点を見つけちゃって、いやな気分になってくるという…いつも以上にダウナーな内容だった。
で、肝心な推理ミステリー的な部分が、けっこうやっつけーな感じ。行き当たりばったりだし、「コナンで見た」って根拠とかおちょくってるだろ?原作者の自分の世代がもろ反映されてるっぽいサブカルネタも、逆にダサク感じてしまう。八木くんが、自分とひっきーキャラの違いを、コミックボンボンとコロコロコミックの違いみたいとか表現するとこはちょっと笑ったけど。
前作を読んだ時にも思ったけど、安藤直樹シリーズに比べると、ややパンチが弱い気がする。この次の「上手なミステリの書き方教えます CURE」も見つけて100円GETしてあるんだけど、ちょっと間をあけよ…あけすぎるとせっかく思い出した基本設定を忘れそうなので、そんなにはブランクあけないつもりだけど(笑)
個人的採点:60点
アルキメデスは手を汚さない 著:小峰元

小峰元:著
講談社 ISBN:4-06-275503-3
2006年9月発行 定価620円(税込)

女子高生、柴本美雪が亡くなったのだが…実は中絶手術の失敗が原因だったらしい。アルキメデスという言葉を残し、最後まで相手の男の名前を言わなかった美雪。美雪の父親は、相手の男が美雪の学校のクラスメイトらしいという情報をつかみ、教師の協力のもと疑わしい生徒たちに探りを入れ始めるのだが…今度はクラスメイトの一人が学校内で毒殺未遂で倒れ、さらに別件で起きた行方不明事件にもそのクラスメイトの影がちらつき…ついに殺人事件が起きてしまう!
ミステリーとしては、次から次へと多種多様な事件が起き、死因究明やら時刻表を使ったアリバイ崩しまで出てくるので、こういうところはサービス満点なのだが、事件の背景に古臭さを感じてしまう。
今の時代に読むと…ウチの娘を孕ましたのはどこのどいつじゃ!と憤る、オヤジさんたちの考えもだいぶ時代錯誤だったが、学生たちの主張もちょっとちんぷんかんぷんな気がしないでもない。
青春ミステリーのはしりだといわれている作品で、確かに事件の真相や動機の部分ではそういったものが大きく関わってくるんだけれども、高校生の視点が思ったよりも少ないので、ちょっとばかり期待外れ感あり。
刑事たちが四苦八苦しながら捜査をするくだりだったり、真実の露呈の先延ばしよりも、冒頭や結末部分のような高校生たちの視点がもっと前面に出てれば面白かったのではないだろうか?あの学生たちの計画なんかを最初から見せちゃえば、もっとそこへ感情移入して読めたかもしれないね。後半で急にあんなこと暴露されてもなぁ~。
個人的採点:65点
八月の舟 著:樋口有介

樋口有介:著
角川春樹事務所 ISBN:4-89456-567-6
1999年9月発行 定価672円(税込)

八月の舟 (文春文庫 ひ 7-6)
父親と姉はずっと前に家を飛び出し、母と二人で暮らしている高校生の研一は退屈な夏休みを過ごしていた。仲良しの同級生、田中くんとドライブに出かけることになり、そしてそれがきっかけで田中くんの年の離れた姉の娘で、同い年のアキ子という、ちょっと風変わりな女の子と知り合うのだが…。
皮肉やの主人公が、サバサバした女の子と知り合い、いつの間にか、恋人なんのか、親友なのか、という微妙な間柄になって、ひっぱりまわされるという、樋口有介のいつものお得意の青春路線だね。で、ミステリー要素がなくても充分、面白い。
事故ったり、友人が死んだり、恋したり、母親の秘密を知っちゃったり(思い出す?)と、次から次へといろいろなことが起きるんだけど、まさか極め付けにあんな展開が待っているとは…。
ある人物の死が最後に待ち受けてるんだけれども、人の死というのを、厳粛に受け止めず…日常の延長みたいな、ドライな心で描いていた。ただ、主人公が毅然とした態度をとりつつも、ふとした瞬間に見せる人間の弱さに、自分の体験と重ね合わせて共感を覚えてしまった。
個人的採点:70点
pulp Ⅲ 著:森橋ビンゴ

森橋ビンゴ:著
エンターブレイン ISBN:4-7577-2869-7
2006年8月発行 定価672円(税込)

謎の麻薬組織との争いに巻き込まれてしまった須賀沢嬢…敵の黒幕の正体もはっきりとわかったが、その相手から宣戦布告を受け、最終決戦の火蓋が切って落とされたものの、しかし相手は、戦いをどうやらゲーム感覚で楽しんでいるようで、しばしばの猶予を与えられ、体制を立て直す嬢ほか、仲間たち。それぞれ別行動で相手をかく乱することになったのだが…嬢は新しく仲間に加わったヤクザの須藤と行動を共にする。さらに、謎の中国人、李が嬢たちの前に現れ、事態は急展開をみせる!
2巻目あたりでは、すごく巨大な組織を相手に戦っているんだなって印象が強かったんだけど…いよいよ始まった最終決戦が、前哨戦よりもショボい感じ。黒幕が自分の心情とかを吐露するくだりも、かなり凡用だし…そんな動機ですか?
犠牲者とかも出るんだけど、よーく考えると、なんか無駄死にっぽくもあるし…敵地へ乗り込んでいくなら2巻で着てた時みたいに防弾着くらいは着用しとけよ!とかいうツッコミも入れたくなる。けっこう自由時間もあったんだから、そんくらい用意できただろうよ。
ご想像にお任せしますとか、続編がありそうだな?みたいな結末ではなく、最後は一応、そつなく綺麗にまとめてますけどね…戦いの終わらせ方なんかがやっぱり、3巻も読ませて、結局コレ?みたいな感じで、物足りないんじゃない?作者自身が巻末のあとがきで、陳腐な結末ですと、開き直っちゃってるから、ツッコム気力をちょっと失せちまったけど…。
なんか、1巻の最初の方で感じたインパクトがだんだんと薄れててたけど、最後まで読んでも、やっぱりそこを超える展開がなかったんだよね、コレ。
ようやく、主人公の嬢ちゃんと…クールな美少年、彰くんが、チョメチョメしちゃいましたって部分だけは…妙に感動したけど。やっぱり、変な性癖プレイより、ストレートの方がいいでしょ?その描写、割と丁寧に描いてましたね(笑)でも、ライノベだからこそ、こういうとこはちゃんとゴム着けようよと思うのでした。
個人的採点:65点
pulp Ⅱ 著:森橋ビンゴ

森橋ビンゴ:著
エンターブレイン ISBN:4-7577-2664-3
2006年4月発行 定価630円(税込)

謎の麻薬組織との争いに巻き込まれてしまった須賀沢嬢…たくさんの人が死に、父親や友人が失踪し、家を失ってから1か月…麻薬組織と戦うメンバーの一人、魁の家に身を寄せていた。日常生活を続けながらも、仲間と一緒に敵対組織の関係者に接触し情報を収集するなど事件の真相を調べていたのだが…。
主人公の女の子と、恋い焦がれる相手の少年が…自分の身体を傷つけ(リスカ?)、その傷や血をなめ合うという、異常性癖なプレイを講じるのだが、いつもその先まで進もうとすると邪魔が…って、そこだけ思いっきりラブコメっぽいぞ(笑)早くその先までヤっちゃった方が、生を実感できるんじゃね?
前に先に入手していた、3巻の表紙裏あらすじを読んじゃったので…2巻の最後にあるどんでん返しがネタバレしてしまった。読んでいない人は、自分と同じ過ちをしないように気をつけましょう(笑)まぁ、それがなくても、予想できた展開だけどな。
いよいよ戦う相手の正体がわかり…仲間が増え、最終決戦の火ぶたが切られようとするというところで、3巻へ。安定した文章、無難なライノベエンターテイメント…やっぱり、読む前に期待したほど、インパクトの強い作品ではない感じ。イラストがきれいだっただけに、期待しすぎてしまった。
個人的採点:65点
pulp Ⅰ 著:森橋ビンゴ

森橋ビンゴ:著
エンターブレイン ISBN:4-7577-2552-3
2006年1月発行 定価630円(税込)

母親の事故死がきっかけで、父親が豹変し…暴力を振るうようになった。そんな女子高生の須賀沢嬢は、リストカットすることで生を実感している。ある夜、リストカットのための新しいカッターナイフをコンビに買いに出かけたところ、突然、通り魔に襲われてしまった。さんざん自傷行為を繰り返していた嬢も、通り魔に襲われることに恐怖し、死まで覚悟したのだが…気がつくと、学生服を着た同年代の少年に助けられていた!少年との出会いが…嬢の日常に変化をもたらしていく。
前半は父親の家庭内暴力におびえ、リスカを繰り返すヒロインのシビアな日常を延々と描いているので、ライノベらしかぬダークさ。学校での疎外感など、読んでいてけっこう痛々しい。
文章もうまいし、へたすりゃ文芸小説っぽいノリにも感じられるのだが、でも、次第に…主人公の日常に変化が訪れ、後半はようやくそれらしい展開がみえてきました。
主人公たちが暮らしている都市に、巨大な陰謀が渦巻いており、実は自分たちのごく身近なところで犯罪が起きていた。そして、その陰謀を暴き、叩き潰そうとするグループと関わってしまったことで、主人公もその争いの渦中に放り込まれてしまうと…。
この巻での犯人にあたる人物とか、わかり安すぎちゃって、ちょっともったいない。もっと意外性のある展開があれば面白かったんだろうけど…物語が動き始めてからは、予想通りで、前半ほどのインパクトを感じない。主人公の目的が見えてきてしまったので2巻目、3巻目ではさらなる謎や事件がないと、面白みに欠けそうだなとちょっとだけ不安になる…次での巻き返しに期待!
個人的採点:65点
疑装 刑事・鳴沢了 著:堂場瞬一

堂場瞬一:著
中央公論新社 ISBN:978-4-12-204970-3
2008年2月発行 定価900円(税込)

刑事・鳴沢了シリーズの9作目…100円コーナーで見つけたので気にせず買ったが、コレ、今年の2月にでたばっかじゃん!?ラッキー…でも、今日の新聞広告に、初の上下組、しかも完結編と謳った最新刊の宣伝が載ってた。そっちも読みたいけど、いやいやここまで100円で集めたんだから…待ちましょうよ(笑)ってことで、「疑装」のお話に戻しましょう。
西八王子署管内で行き倒れの少年が保護され、病院へ収容された。刑事課の鳴沢と相棒の藤田は…さっそくその少年と対面をするのだが、なぜだか言葉をしゃべろうとはしない。外国人で言葉が通じないのではないか?との疑問が浮かび、日系ブラジル人の可能性であることまで突き止めたのだが…肝心の少年が病院から行方不明になってしまった。仲間の意見に反し、事件性を考慮する鳴沢は…少年の行方を求めて、群馬にあるブラジルコミュニティを目指す!
前作で警視庁の刑事だった藤田が、鳴沢と同じショカツの刑事になり、今回も相棒役で再登場。珍しく、鳴沢本人は移動してないんだね(笑)左遷しまくられてるから、他に行きようがなくなっちゃったのかな?(笑)
この迷コンビに、さらに生活安全課の美人婦警を加えて…わりとチームプレーで事件を捜査。でも、警視庁管内でなくて、群馬県警の田舎警察に殴り込み(笑)ひっかきまわす。ついでに、待ってました…昔の相棒、女探偵の冴ねーさんも、本編に絡みまくりで再登場。そんかし、優美と勇樹との関係は今回もあまり変化なし、出番も少なめ。
前半はダラダラとした感じだったけど、第二部のラストで急転直下…事件が動き出す。事件の真相だったり犯人はやっぱりって思うところがあったが(読者に対してのフェアな伏線があるんだけど…そこで鳴沢も気づけよボケ!って思ってしまう)、展開の方が意外と予想外だった。こうきちゃったか…ってね。
一方で、前半から…登場し、鳴沢と連絡を試みようとするなぞの弁護士の存在が、気になって、気になって、しょうがないんだけど…やたら引っ張ります。ここでようやく用件が判明するかな?って思っても…まだ、焦らす。結局…最新刊で、完結編だという次回作へのフリだったみたいなんだよね、その内容は。だから、こんなとこでおしまいかよ、気になるじゃねーか!って感じで、ラストで超イライラさせられた。
少しは成長したようにみえた鳴沢だけど、やっぱり人づきあいはへたくそで、ことさら女の扱いが本当に不器用。後で後悔するくらいなら、もうちょっと上手に立振舞っておけよ!と、お説教の一つでもしてやりたいくらいです。そうすれば、事件がこんな大きくならなかったかもしれないのに(爆)
個人的採点:75点
被匿 刑事・鳴沢了 著:堂場瞬一

堂場瞬一:著
中央公論新社 ISBN:978-4-12-204872-0
2007年6月発行 定価900円(税込)

刑事・鳴沢了シリーズの8作目…前作ではアメリカを舞台にアクションメインで疾走した鳴沢も、日本に舞い戻ってきて、地味な事件を地道に捜査します。
NY市警での研修中に大事件に巻き込まれた鳴沢は、帰国し西八王子署に赴任が決まった。着任直前に…地元代議士の不審死が起きていたのだが、ろくな捜査もされないまま事故死として処理されていた。鳴沢は何かを感じ取り独自に調査を始める。そんな時、東京地検の検事が鳴沢に接触してきて、死んだ議員に収賄容疑があったことを知らされる。さらに事件当夜、代議士と一緒に女が目撃されていたことを突き止めるのだが…。
前作の最後で微妙な関係になってしまった恋人との仲は…こう着状態のまま?一応は、気にしながらも…今回はあまり物語にはからんでこず、ひとまずお預けであった。
その代わり…シリーズ初期から、チラチラを顔をのぞかす新聞記者兼作家の長瀬が、物語に深く関わりを持つ。著者と同じような経歴の持ち主である、この長瀬…やっぱ、思い入れがあるのだろうか?
作家という職業がいかに大変かを物語る愚痴っぽい描写が、今回は頻繁に登場していた(笑)鳴沢の相棒となる本庁の刑事が、作家志望なんだけど…遠まわしに、そんな簡単に作家なんかになれるかよ!というメッセージがこもっているようでもある。
で、その長瀬の過去や家族関係がさ…シリーズ初期、新潟時代の鳴沢とシンクロするんだよね。当の本人も何かを感じちゃって、今まで以上に感情的になり、真正面から長瀬とぶつかり合ってみたり。
地域密着の政治家の暗部を暴こうとするが、田舎特有の閉鎖的な住民たちの妨害により捜査に弊害が生じ、四苦八苦する鳴沢。政治家への不信が募る一方のこのご時世ではあるが、東京でさえ都下では実際にこういうことがあるのだろうから、地方に行けば、狂信的に政治家センセイを守ろうとするのも当たり前なんだろうな?と思ってしまう。
前作に比べるとやはり地味だが、鳴沢シリーズらしい硬派な物語展開で、いつもの安心感は感じられるね。
個人的採点:70点