八月の舟 著:樋口有介 | 105円読書

八月の舟 著:樋口有介

八月の舟 八月の舟

樋口有介:著
角川春樹事務所 ISBN:4-89456-567-6
1999年9月発行 定価672円(税込)









最近、ハマってる樋口有介の青春小説で、人は何人か死ぬけど今作はミステリーじゃありません。90年初出のオリジナルを加筆・訂正を行った99年のハルキ文庫版。絶版なんで、Amazonのマケプレでは、定価の倍以上になっていますが…実は今年の5月に文藝春秋で復刊(改訂版かどうかは未確認)、どうせ本当の価値を知らない無知なせどりが値段をつりあげているだけでしょう…。

八月の舟 (文春文庫 ひ 7-6)  ←文藝春秋版だったら、マケプレで20円だった(笑)

父親と姉はずっと前に家を飛び出し、母と二人で暮らしている高校生の研一は退屈な夏休みを過ごしていた。仲良しの同級生、田中くんとドライブに出かけることになり、そしてそれがきっかけで田中くんの年の離れた姉の娘で、同い年のアキ子という、ちょっと風変わりな女の子と知り合うのだが…。

皮肉やの主人公が、サバサバした女の子と知り合い、いつの間にか、恋人なんのか、親友なのか、という微妙な間柄になって、ひっぱりまわされるという、樋口有介のいつものお得意の青春路線だね。で、ミステリー要素がなくても充分、面白い。

事故ったり、友人が死んだり、恋したり、母親の秘密を知っちゃったり(思い出す?)と、次から次へといろいろなことが起きるんだけど、まさか極め付けにあんな展開が待っているとは…。

ある人物の死が最後に待ち受けてるんだけれども、人の死というのを、厳粛に受け止めず…日常の延長みたいな、ドライな心で描いていた。ただ、主人公が毅然とした態度をとりつつも、ふとした瞬間に見せる人間の弱さに、自分の体験と重ね合わせて共感を覚えてしまった。






個人的採点:70点