被匿 刑事・鳴沢了 著:堂場瞬一 | 105円読書

被匿 刑事・鳴沢了 著:堂場瞬一

被匿 刑事・鳴沢了 被匿 刑事・鳴沢了

堂場瞬一:著
中央公論新社 ISBN:978-4-12-204872-0
2007年6月発行 定価900円(税込)









刑事・鳴沢了シリーズの8作目…前作ではアメリカを舞台にアクションメインで疾走した鳴沢も、日本に舞い戻ってきて、地味な事件を地道に捜査します。

NY市警での研修中に大事件に巻き込まれた鳴沢は、帰国し西八王子署に赴任が決まった。着任直前に…地元代議士の不審死が起きていたのだが、ろくな捜査もされないまま事故死として処理されていた。鳴沢は何かを感じ取り独自に調査を始める。そんな時、東京地検の検事が鳴沢に接触してきて、死んだ議員に収賄容疑があったことを知らされる。さらに事件当夜、代議士と一緒に女が目撃されていたことを突き止めるのだが…。

前作の最後で微妙な関係になってしまった恋人との仲は…こう着状態のまま?一応は、気にしながらも…今回はあまり物語にはからんでこず、ひとまずお預けであった。

その代わり…シリーズ初期から、チラチラを顔をのぞかす新聞記者兼作家の長瀬が、物語に深く関わりを持つ。著者と同じような経歴の持ち主である、この長瀬…やっぱ、思い入れがあるのだろうか?

作家という職業がいかに大変かを物語る愚痴っぽい描写が、今回は頻繁に登場していた(笑)鳴沢の相棒となる本庁の刑事が、作家志望なんだけど…遠まわしに、そんな簡単に作家なんかになれるかよ!というメッセージがこもっているようでもある。

で、その長瀬の過去や家族関係がさ…シリーズ初期、新潟時代の鳴沢とシンクロするんだよね。当の本人も何かを感じちゃって、今まで以上に感情的になり、真正面から長瀬とぶつかり合ってみたり。

地域密着の政治家の暗部を暴こうとするが、田舎特有の閉鎖的な住民たちの妨害により捜査に弊害が生じ、四苦八苦する鳴沢。政治家への不信が募る一方のこのご時世ではあるが、東京でさえ都下では実際にこういうことがあるのだろうから、地方に行けば、狂信的に政治家センセイを守ろうとするのも当たり前なんだろうな?と思ってしまう。

前作に比べるとやはり地味だが、鳴沢シリーズらしい硬派な物語展開で、いつもの安心感は感じられるね。






個人的採点:70点