血烙 刑事・鳴沢了 著:堂場瞬一

堂場瞬一:著
中央公論新社 ISBN:978-4-12-204812-6
2007年2月発行 定価900円(税込)

前にも読んでいる刑事・鳴沢了シリーズの7作目、今回は残りの8、9作目も同時期にGET
NY市警で研修中の鳴沢了、アメリカ暮らしの恋人、内藤優美とその息子、勇樹たちとも過ごせ、充実した日々を過ごしていたのだが…そんな鳴沢のもとへ事件の一報が。勇樹が乗ったバスがジャックに遭遇し、人質になっているという。長い膠着状態の末、意外な形で事件が収束に向かうのだが…解放された人質の中に、勇樹の姿はなかった!
バスジャックだけでもすごい事件なのに、それは事件の幕開けでしかなく、義理の息子になるかもしれない、勇樹が行方不明になり、その裏には勇樹の伯父で、鳴沢の親友、NY市警の七海の因縁の相手である、チャイニーズマフィアがからんだ、もっと大きな事件が待っていた…。
何で、勇樹がさらわれなきゃいけないんだ?というのが最大の謎なんだけど、実は最初でちゃんと伏線があるので…作中の登場人物はかなり悩みまくっていたけど、読んでいる読者は真相に至るのはけっこう容易。ただし、あんな秘密まで出てくるとは…。
事件解決後の鳴沢、本当にかっこつけーの、不器用だなぁ。次の話で、優美との関係がどうなっているのか、なんか心配になってきたぞ…。
最後まで読むと、物語の背景には、いつものように重苦しいテーマなんかが描かれているのだが、洋モノの翻訳小説を読んでいるみたいで、いつものシリーズとチト趣向が違っており、これはこれで、なかなかエキサイティングなエンターテイメントとして楽しめた。
作品のクライマックス…フロリダ、キーウエストが舞台になるのだが、そうだよ、コレ…殺しの許可証と取り上げられちゃったジェームス・ボンドが麻薬王に、友人の復讐を果たしに行くという「消されたライセンス」と、なんか鳴沢がダブって見えたね。シリーズものとしては、微妙にニュアンスが違って異質なんだけど、エンターテイメント小説としては、テンポがよく、今までの作品の中で一番面白く読めたかも。個性的な相棒がいっぱい出てくるのも楽しかった。
個人的採点:80点