砂漠の薔薇 著:飛鳥部勝則

飛鳥部勝則:著
光文社 ISBN:4-334-73550-9
2003年9月発行 定価660円(税込)

会田誠のイラストを使った表紙がインパクト大…飛鳥部勝則の「砂漠の薔薇」を読む。この作品とは対をなす姉妹的な作品「冬のスフィンクス」を先にGETしており、物語は独立してるので、どちらを先に読んでも支障はないという解説も載っていたのだが、せっかくなんで一気に読んでみたくて、二冊揃うまで読むのをやめていた。で、最近になって、コレを入手できたんだけど…一応文庫化の順番通りで読んでみようと…。
美術館に併設する喫茶店でバイトをする女子高生の奥本美奈は、画家の明石尚子と親しくなり、絵のモデルをすることになるのだが…、彼女の住まいは、首なし死体が発見された不気味な洋館の隣だった。しかもその事件の被害者は美奈と同じ学校の生徒、竹中真利子である。もう一人、失踪中の同級生が事件に絡んでいるらしいのだが…行方は分かっていない。さらに件の館に不気味な男が引っ越してきたり、自称刑事の男が美奈につきまとったりと…どんどん事件に深入りしてってしまうのだが…。
実際に起きる事件や物事はグロテスクであったり、陰険な感じも多いのだが、女子高生と画家のおばちゃんとの…インテリっぽい会話の応酬が、なかなか痛快。ただ、コミカルな部分に騙されないように!
主人公の女子高生も含み事件関係者が、みんな屈折してイっちゃってるか、ネジが緩んでるっぽいところなども…物語に引き込まれる要因か?若者の衝動的な暴力や狂気などが作品によく反映されており、最後は微妙に切ない気分させられた。
ただ、導入部からずっといい感じで引っ張られたのだが、せっかくの真相解明、どんでんがえしなど…本格推理小説として評価すると、つめが甘いような気がしないでもない。もう少しドラマチックに読ませてくれたら、ラストなんかももっと引立ったと思う。
飛鳥部作品は久しぶりで…自分は「レオナルドの沈黙」「ラミア虐殺」に続き、3冊目。「ラミア虐殺」には、ちとノレなかったんだけど…今までの中で一番、読みやすく面白かったです。次に読む予定の「冬のスフィンクス」にも期待!
個人的採点:70点