冬のスフィンクス 著:飛鳥部勝則

飛鳥部勝則:著
光文社 ISBN:4-334-73818-4
2005年1月発行 定価700円(税込)

物語自体は独立している、全く別な事件なんだけど前回読んだ「砂漠の薔薇」の姉妹編的な関係になっているという作品。主人公が寝る前に絵を見ると、夢の中でその絵の中に入ってしまう…そしてその中で殺人事件に巻き込まれるという、かなり奇抜な作品。
楯経介は、寝る前に絵を見ると、夢の中でその世界に入り込んでしまうという不思議な能力を持っていた…。彫刻家・洲ノ木正吾のコラージュ・ロマン「冬のスフィンクス」の中で彷徨う楯は、奇妙な連続殺人に巻き込まれていき、次第に、現実と夢の区別がつかなくなる…。さらに現実世界で、この悩みを相談した、友人の亜久直人が…あたかも自分の夢の中に消えてしまったかのごとく失踪してしまった!?
殺人事件が夢か?現実か?といいながらも、ほぼ夢オチを肯定したような形で作品が進むから、かなり奇抜。先に「砂漠の薔薇」を読んでいると印象が変わるという解説の意味は、そういうとこかな?とにかく、これもまた語り手がイっちゃってる物語なんだろう。
そんなイっちゃてる物語でも、「砂漠の薔薇」同様に…最後の最後で出てきた事件にキッチリと落し前はつける。ひっちゃかめっちゃかな推理合戦を繰り広げたわりに、「砂漠の薔薇」同様に、これまた本格推理小説として、あらかじめ逃げ道を用意してあったかのごとく、あっ気ない真相が語られるのが、ちょっとズルいかなと…。
イっちゃてる物語なんだから、そんなとこで整合性を持たせずに…真相もイってしまえばいいのに。推理小説じゃねーよ、コレっていうアンフェアさくらいのオチの方が、この作品には似合いそうだ。ああ、それをやらかされると、前にノレなかった「ラミア虐殺」みたいな作品になっちゃうのか(笑)
宗教的な会話など…インテリっぽさをコミカルな文体で読ませた「砂漠の薔薇」に比べると、こちらの方が若干、硬めな印象も強く、とっつきにくさは感じたかな。
個人的採点:65点