霧の迷宮から君を救い出すために 著: 黒田研二
霧の迷宮から君を救い出すために
黒田研二:著
実業之日本社 ISBN:4-408-50441-6
2004年10月発行 定価880円(税込)
大どんでんがえしな構成が得意のクロケン先生の推理小説。動くものが見えないという胡散臭い設定の主人公が登場するのだが…。
セキュリティグッズの会社“セーフティライフ”で営業をしている杉村亮治は、仕事のパートナーである米里由希から、僻地に建てられた災害用シェルターに呼び出されたのだが、そこで何者かに襲われ、崖から転落。奇跡的に助かるも、脳に障害を受けており、動くものが認識できなくなってしまった。さらにシェルター内から由希の死体が見つかり、現場は密室状態だったという…。
密室トリック自体は、某推理小説(いつもその分厚に驚かされる作家)のパクリのようなものなのだが、何故そうなったかは初っ端からネタをバラしているわけで(笑)、まんまじゃんというツッコミを入れたくなる。
事件のいくつかの真相など伏線が分かりやす過ぎて、どんでん返しのインパクトが薄いです。クロケン先生なんで、何か仕掛けがあるんだろうと、まどろっこしい文章を、疑いの眼差しで読み進めているので余計にそう感じてしまいます。
ただ、それは作者が真の狙いをズラすためのミスディレクションのひとつなんだろうねぇ、と…好意的に解釈してみる。動くものが見えないという、現実では体験しずらいシュチエーションを文章で理解させつつ、最後の最後で、そこかよ!的なオチ。タイトルの意味を考えたり、読後に冒頭のプロローグを読み返して見るとヤラれた感はありました。
登場人物たちの屈折した愛情のように、物語もだいぶ屈折してるなぁと…。
個人的採点:65点