ママに捧げる殺人 著:和田はつ子 | 105円読書

ママに捧げる殺人 著:和田はつ子

ママに捧げる殺人 ママに捧げる殺人

和田はつ子:著
角川書店 ISBN:4-04-340711-4
2004年5月発行 定価540円(税込)









前から気になっていた和田はつ子に初挑戦してみる。他社で過去に発刊された作品を角川ホラー文庫で再収録したもので、巻末の解説なんかを読むと、ドラマ化(2時間ドラマか?)もされてるそうな…。

男を誘って猟奇殺人に走る女子大生の愛奈…一見、家族の面倒をよく見る真面目な学生に見られていたが、母親からの厳しい躾が原因のようだ。一方、この猟奇殺人が気になってしょうがない精神科医・加山知子、知り合いの捜査一課刑事から事件の相談なども受けたことから、さらに事件へ関わっていく…。

過剰なダイエットに走る女性の心情や、人間がもつ特異な性癖といったものを描きつつ、抑圧的な家庭環境から、狂気に走る犯人の、不気味な精神状態などはものすごく強烈に伝わってきます。最近の世の中を騒がす陰惨な事件の数々のことを考えると…絵空事のフィクションだとは決して言えないものが、こういった作品から感じられる。

ただ、個人的には…犯人の心理状態も描きつつ、捜査する側と同じように、読者も犯人の正体を推理するような楽しみが欲しかったかな?愛奈が極限まで達しちゃって…ようやく解放されるのかな?って思えるクライマックスの凶行…そこでいくつかの真実も明かされたりするのだが、どんでん返しの一発としてはちょっと弱い気がする。

あと読者に犯人がわかっちゃってるのであれば…事件に巻き込まれていく精神科医の追う側なんかも、もうちょっと丁寧に描いて欲しかったかなという不満が残る。この辺のシンクロ率が高ければ、もっと手に汗握る作品になっただろうに…。





個人的採点:65点