ハルビン・カフェ 著:打海文三

打海文三:著
角川書店 ISBN:4-04-873348-6
2002年4月発行 定価1,890円(税込)

新聞の訃報欄で知った時はビックリしたが、昨年、急逝した打海文三の代表作「ハルビン・カフェ」を読む。自分は打海文三を読むようになったのは最近のことだが、どの作品を読んでもハズレが少ない作家だっただけに本当に残念ですよね。
福井県の西端にある海市…そこは中・韓・露のマフィアがひしめき合う無法地帯で、警官の死亡率が非常に高かった。そこで下級警官の一部が、マフィアへ報復するための地下組織“P”を設立し、行動を開始するが…もちろん警察内部でも対立は激化した。時が過ぎ、Pの活動も沈静化したある日、東京の新宿で起きた射殺事件を発端に新たな惨劇が動き出す…。
近未来の日本?架空の地方都市を舞台に、激化するマフィアと警察の抗争。そこへ警察組織の縄張り争い、権力闘争…さらには因縁・復讐なんかも絡んできて、もうごっちゃごちゃ。
最初はかなりとっつきにくく、物語の設定も、登場人物や人間関係も、そして文章もとにかく難解て疲れるのだけど、なんとか5、60ページ我慢して読むと、ある程度の筋が理解でき、その先は作品の中に入り込んでしまいます。
最後の、最後まで気の抜けない重たい文章。しかし、いくつもの視点が重なり合い、少しずつピースの嵌っていく爽快感は、非常に小説らしくて嫌いじゃないですね。一見、無骨な感じもするんだけど、文章をしっかりと読み解くと、奥行のある世界観が捉えられるし、実はこうでしたという物語の“核心”部分などに、説得力を持たせる雰囲気作りにも一役買っている。
この作品は発刊当時のこのミスでも上位にランクインされ、ミステリーファンからの評価は高い。100円本でけっこう前に入手してあったんだけど、積読本の中に紛れてて読んでいなかったので挑戦してみた。既に文庫本も出ているが、自分のはハードカバー版です。
文庫版 ハルビン・カフェ
角川書店 2005年7月発行 定価860円(税込)
個人的採点:80点