うそつき ~嘘をつくたびに眺めたくなる月~ 著:日日日

~嘘をつくたびに眺めたくなる月~
日日日:著
新風舎 ISBN:4-7974-9822-6
2005年8月発行 定価691円(税込)

16歳の高校生、竹宮輝夜は複数の男たちと交際しながらも、「好きってなに?愛ってどういう意味?」という疑問にぶち当たっていた。些細な事で、相手のことをくだらない存在に思えてきてしまい…別れを切り出すのだけど、相手が輝夜の気持ちを理解しようとしないことがとにかくもどかしい。そういう時、無愛想ながらも相手をしてくれるのが、年上の幼馴染で、拒食症の沖名太陽だった…。
一段と「ちーちゃん…」よりも文章は上手くなり、「ちーちゃん…」で気になった背伸びした大人の描写も今回は、登場人物の父や母を極力出してこないので、主人公が女の子になったとはいえ、作者と同世代の視点に徹しているので、かなり読みやすくなったじゃん!と思ったんだけど…最後の最後で、手を抜いちゃったかな?
幼馴染の異性が実は一番大切な存在というの気づくまでの話であり、軽妙な文章でドンドン読ませながらも、ある瞬間にとたんにダークでシリアスな話に転じるなど…本質は実は「ちーちゃん…」と同じなんだけど、そのシリアスな話がけっこう陳腐なんだわさ。四股交際中の最後の彼氏が出てきたあたりから、雲行きが怪しくなる…やっぱりこの辺は高校生(執筆当時)レベルなんじゃない?
話の持っていき方やオチなど構成が良かっただけに、もう少し最後のあたりがリアルに描写できればなぁ、文句なしだった。「ちーちゃん…」ではホラーだったからこそある程度陳腐だったから許せる部分があったのだが、この話の内容だったらもっとリアルに攻めてもいいはずだ。
女の子の想っている異性に対する感情がメイン…これは恋愛経験が少ない時に、こういうことを言われたクチだな、この作者も(笑)自分が未熟な時(学生時代)に付き合っていた彼女に対してした失敗を、そのままグチられてるみたいでさ…苦い思い出がいっぱい頭をよぎりました。
あと、愛と恋とか語るなら…今どきケータイ小説だってもっと際どい展開してるんだからさ、そろそろもっと冒険してもいいんじゃない?主人公の輝夜に、夢中になっているオタクで、小説家志望のボーイフレンドっていうのがさ、案外、この作者自身だったりしてね(笑)なんて深読みもすると楽しいか?
個人的採点:65点