105円読書 -20ページ目

マージナル 著:神崎紫電

マージナル 

神崎紫電:著
小学館 ISBN:978-4-09-451003-4
2007年5月発行 定価600円(税込)









新年1発目はライノベ…けっこう表紙買いしてしまったようなライノベが貯まっているので、今年は率先してライノベもたくさん攻めていこうかなって思ってます。無名の新人作家さんとかでも、エンタメのツボをけっこう抑えていて、侮れない作品がいっぱいあるし。これもそんな一つだった…殺人やら拷問やらアンダーグランドな趣味嗜好を持つ高校生がネットでバラバラ連続殺人の犯人である殺人鬼とバッタリと出会ったことから命を狙われる羽目になり、犯人探しするというサイコサスペンス。

殺人や拷問などの愛好家が集うアンダーグラウンドサイトの管理人で、高校生の摩弥京也は、ネット上で巷を騒がす連続殺人鬼と出会ってしまった。その犯人から、犯行現場の写真を見せられたのだが、なんとその相手が自分のクラスメイト・南雲小百合であることが判明。その結果、今度は京也が命を狙われることに。犯人の手掛かりを捜すために小百合の葬儀に出席した京也は、そこで小百合そっくりの妹・南雲御笠と出会う。彼女を利用して犯人と対決しようと接触を試みるのだが…。

イラストと余分な萌え要素、くだらないギャグなどいかにもライノベな部分さえ省けば、充分、角川のホラー文庫でも通じるのではないかと思ってしまうほどの、変態的なサイコサスペンス。変態を隠し、普段はやたらとクールを気取る主人公が、女の子に近づくために無理してギャグとか言っちゃったりするのが…なんかわざとらしい。ぶっちゃけ…「デスノート」とかコミックの影響もあるのかな?って思う部分もあるけど、非現実的な展開はないのでOK。

エスカレートする猟奇事件、どんでん返しな真相としっかりとミステリーしている物語に加え、主人公もギリギリ変態入ってるので、間違ってコイツがヒロインとか殺しちゃうんじゃないの?みたいな危うさがさらに緊張感を高めてくれる。

主人公が犯人探しをする手段として、ネットを活用。アンダーグラウンドサイトの仲間に情報提供を願って、そこから簡単に事件に肉迫してしまうというのが、ちょっと物足。もう少し、自力でなんとかしてほしいと思ってしまうのだが、作品のオチなどもこの辺に関わってくうるので、仕方がないのか…。


ライノベの山の中に埋もれさせておくのはちと勿体ないかな?新人の作家さんだそうだが…ぜひ、このテーマでどんどん作品を発表して欲しいもんだ。ただ、ライノベだからって、安易にシリーズ化しないでね!






個人的採点:65点






疾駆する蒼 ブルー 著:佐神良

疾駆する蒼 ブルー

佐神良:著
講談社 ISBN:978-4-06-182524-6
2007年4月発行 定価998円(税込)









今年最後の読了作品、今年最後のブログ更新…といっても、文章をすべて書き上げる頃には年が明けちゃっているはず。

で、2007年の最後の読書はわりと新し目の作品で、講談社ノベルスから出ている「疾駆する蒼 ブルー」という作品。作者の佐神良は、前にデビュー作で、なんちゃって女子高生が活躍する近未来バトル、「S.I.B セーラーガール・イン・ブラッド」を読んだことがある。

長年勤めていた会社を諸般の事情で退職し、現在は失業手当をもらいながら求職活動中の咲山透…妻に先立たれて、一人息子の亘と戸田の実家で両親と暮らしているのだが、亘の不登校も悩みの一つだ。そんなある日、亘が家出をしてしまったのだが…捜索中の透の前に亘の友人だと名乗る中学生の少女、井澄が現れ…亘の家出に、近所で買われているブルーという名の犬が関わっているとのではないかと教えられる。ひょんなことから井澄と亘の行方を捜すことになった透だが、実はブルーが、ロシアのテロ対策プロジェクトに関係しているということが判明、今度は謎のロシア人美女エレナが透の前に現れる…。

サイキック犬という、今回もSFっぽい設定も取り入れながらも、一般人が、家出した息子を探していたら、テロ事件に巻き込まれてしまったというアップテンポなアクション作品に仕上がっている。突拍子もない設定だけど、主人公が無職の親父で、家出中の息子を捜すという現実的な物語が、津田沼のリアルな描写と共に描かれているので、意外と入りやすい。

後半は、バラバラだった物語が一気に交わり、怒涛のアクションへとなだれこむ。津田沼駅前、ららぽーとを舞台にテロリストと銃撃戦を繰り広げるなど、ハリウッドアクションみたいな壮大な展開もありながら、いきなり安っぽい2時間サスペンスみたいに、枝葉のような事件の犯人探しまで出てきてたり、スパイ小説みたいになったりと…どんでん返しが何度かあり、エンターテイメントとしてけっこう太っ腹。

嘘くさい設定も、世界観やキャラクターの描写、物語のリズムで上手にカバーしよく描けていた。一年の締めくくりとしては、なかなかいい作品を読めたかなって感じ。デビュー作を含め、まだ、あまり作品数は発表していないようですが、これからに期待できる作家さんでは?






個人的採点:70点






銃とチョコレート 著:乙一

銃とチョコレート

乙一:著
講談社 ISBN:4-06-270580-X
2006年5月発行 定価2,100円(税込)









前回に続き、今回もミステリーランドの配本作品。2006年末発表、2007年版のこのミスでも上位にランクインされていた作品ということで、このシリーズが単なる子供向けの読み物以上というものを、再度実感させてくれる。でも、これブックオフで105円で見つけたのは確かなんだけど、100円コーナーとは別の児童書コーナーに埋もれてました。そっかミステリーランドの作品を探すのは、やっぱ児童書コーナーなのかぁってひとつ覚えた。

少年リンツが住む国では、ゴディバと名乗る怪盗が金貨や宝石を盗む事件が多発していた。それに対抗する探偵のロイズが子供たちのヒーローだった。ある日、父親の形見の聖書から、意味深な地図を発見したリンツ…それが怪盗ゴディバの事件を解決に導くための鍵になるのではないかと思い、ロイズに情報提供の手紙を書くことに…。

昔懐かしい感じの少年の冒険譚…謎解き要素なんかも描かれており、ワクワクドキドキ。

ただ、これまたお子様向けと思わせておいて、現実とは何が善で何が悪なのかというのが、そう簡単にはわからないというのを、しっかりと伝える内容になっているあたりが凄いね。急にダークさ全開な展開に物語がひっくりかえるからびっくり。

子供が読んだら人間不信になりそうな部分もあるが(笑)、子供は何を信じるのが一番か?最後にはそれが描かれている。






個人的採点:65点






ほうかご探偵隊 著:倉知淳

ほうかご探偵隊

倉知淳:著
講談社 ISBN:4-06-270574-5
2004年11月発行 定価2,100円(税込)









かつて子どもだったあなたと少年少女のため…という講談社のミステリーランド。有名ミステリー作家が児童小説の体裁をとりつつ、けっこう本格的な作品を書いている人気のシリーズなんだけど、定価2100円という高さがネックになって、なかなか手が出せない(笑)綾辻行人の「びっくり館の殺人」を珍しく定価で買って読んで以降、ようやくブックオフの100円コーナーで見つけました。1冊見つけると、続けて見つかるもので、一緒に乙一と田中芳樹のミステリーランド配本もGETできたので、近いうちに読みたいと思いますが、まずはコレ…倉知淳の「ほうかご探偵」から挑戦。

小五の僕こと藤原高時が学校へ行くと、珍事件が発生していた。教室に置きっぱなしだったたて笛の真ん中のパーツだけが盗まれ、残りのパーツが机の上に並べられていたのだ!実はそれ以外にも、絵が得意な棟方くんが授業で描いた絵や学級委員の神宮寺が手作りした招き猫型募金箱、さらに飼育係の成見沢めぐみが面倒を見ていたニワトリが相次いで消失していることが判明。高時は友達の龍之介と共に事件の調査に乗り出す!

漫画家・唐沢なをきのイラストからもっとギャグ調のものを想像していたが、しっかりとミステリーしてます。突拍子もない不思議な謎で読者を惹きつけ、一瞬、ドキっとするような展開もありましたが、ちゃ~んと小学生が主人公でも破たんしないような内容に着地させ、龍之介くんが真相を語りだす後半の、大どんでんがえしのつるべ落としなどはお見事。はやみねかおるとかよりも、もっと現実的な少年探偵団な物語で良かったですよ。

唯一、このシリーズで読んでいた綾辻行人の「びっくり館の殺人」もそうだったけど、ちゃっかり著者の別シリーズとリンクしていたりして、ミステリ好きへのファンサービスも忘れていませんでしたね。






個人的採点:65点






女囮捜査官 五感推理シリーズ⑤味覚 著:山田正紀

女囮捜査官 
五感推理シリーズ⑤味覚

山田正紀:著
幻冬舎 ISBN:4-87728-749-3
1999年6月発行 定価630円(税込)








この所読み続けてきた、女囮捜査官のシリーズ全5部作、いよいよ完結編です。1~4巻までの巻末(もちろん5巻もそうだけど)で、人気の本格推理作家たちが解説を書いていたんだけれども、なんか皆さん似たような感想を多く書いていた。推理小説としての面白さは、真ん中の作品で…1と5は設定紹介や物語の完結にページを割いてるので、推理小説としての完成度は落ちるよというものだったのだが…。

新宿西口のダンボールハウスから惨殺された女の死体が発見される。身元不明で捜査は難航していたものの、この時点では女囮捜査官・北見志穂が属する特別被害者部は事件にタッチしていなかったのだが、特被部宛にかかってきたタレコミ電話で事態は一変。新宿駅西口に現れるある女を見張っていれば、犯人にたどり着けるとの情報で、志穂をはじめとする特被部が張り込みを担当することに…。しかしこれが特被部を窮地に陥れる事件の幕開けでもあった!?

志穂ちゃんと袴田のおっさん以外の特被部メンバーが久々活躍すると見せかけた冒頭のプロローグ、今回の作品は導入部分からあっと驚く展開の連続で、猟奇的なバラバラ殺人、なかなか新鮮な定義の密室殺人など…次から次へと不可能犯罪が起き、その謎解き要素もしっかりあるものの…シリーズの根本を覆すというか、作者にすっかり騙されてきたというか、物語的に凄いことになっているんだよねぇ。こんな壮大なテーマが隠されていたのか!そしてアイツはこんな計画を立てていたのか!と、とにかく何度も唖然とさせられた。

噂どおり凄い完結編だは、これ…人気があるからといって、安易に続編とか作れませんよ(笑)なんかさ、「ミッション・イン・ポッシブル」の1作目を見た時のようなショックだよね、この小説。そういえば、シリーズものでありながら、毎回のように本格推理小説の枠組みの中で、あの手、この手と色々な試みを見せているというのも、なんか同じアクション映画シリーズでありながら、作風を変えてくるトム・クルーズの「ミッション・イポッシブル」シリーズに通じるものがあるかなと。

で、久々に…女囮捜査官らしさの官能描写も踏んだんに盛り込まれており、それらが単なるお色気サービスでは終わってないから、凄いよね。さながらこの部分は同じトム・クルーズの「アイズワイドシャット」でも見ているような感じだったかな?

色々なものを詰め込み過ぎて、推理小説としての楽しみが薄れている、シリーズを通した伏線が未解決のままであるという指摘もあるようなのだが、自分はこの完結編、本当にいい意味での“裏切られた!”度が凄く強く、犯人の目星はある程度、予想がついたものの…何でこんなことしちゃったの?っていう真相が早く知りたくて、知りたくて、後半はページをめくるのがとまらなかったっすよ。マジで面白かった!






個人的採点:75点






女囮捜査官 五感推理シリーズ④嗅覚 著:山田正紀

女囮捜査官 
五感推理シリーズ④嗅覚

山田正紀:著
幻冬舎 ISBN:4-87728-699-3
1999年2月発行 定価630円(税込)








ようやく4巻まできました女囮捜査官シリーズ…毎回、あの手、この手で通常の刑事ではない、みなし公務員、囮捜査官の志穂ちゃんを事件に関わらせようと四苦八苦しているのが感じられるんだけど、そこが意外とシリーズの魅力かもしれないなぁって思ってしまったり。シリーズが増すごとに、官能小説ぽいエロ描写がどんどん激減しており、男としては、ちょっとだけ不満だったり(笑)

芝公園付近で頻発する連続放火事件のよう撃捜査に駆り出された、女囮捜査官の北見志穂。彼女をはじめとする捜査員たちが張り込みをする目の前で、新たな事件が!現場一帯を停電が襲った直後…公園のベンチに裸の女の死体が現れた。さらに、その死体の横に、同じような格好をさせられたユカちゃん人形が…。

二つの事件が絡み合いながら、物語のラストで殺人事件の意外な真相が浮かび上がってくるというパターン。放火に全裸死体という、導入部分はかなりインパクトが強かったが…2作目、3作目に比べるとミステリーとしてはやや地味な印象を受けてしまった。

読者が真相にたどりつくための巧みな伏線の張り方、志穂の相棒、袴田刑事の過去を掘り下げるドラマ部分など、読みどころもけっこうあるんだけどなぁ、ちょっと残念。毎回、巻末の解説を人気の推理作家が担当しているのだが、みんなが、みんな誉めるのは、やっぱり2巻目なんだよね。

毎回、事件がワンパターンにならず、さらに最終作の5巻目を読み終わった時に、シリーズ通しての仕掛けなども浮かび上がるような構成になっているという話を耳にするので、そういうことも踏まえて読むと、決してつまらない作品ではないです。最終巻でどんな風にビックリさせてくれるのか、期待してます。






個人的採点:65点






女囮捜査官 五感推理シリーズ③聴覚 著:山田正紀

女囮捜査官 
五感推理シリーズ③聴覚

山田正紀:著
幻冬舎 ISBN:4-87728-662-4
1998年10月発行 定価680円(税込)








連ちゃんで読んでる女囮捜査官シリーズ全五部作の真ん中まできました…。今回は息詰まる誘拐事件の話がメインと思いきや…実は女囮捜査官の志穂ちゃんに二重人格疑惑が浮上し…という、なんか今まで以上に幻想的な作風。ちなみに、ファンサービスな官能描写は控え目…でも、しっかりとバスルームであんなことするシーンが!?

凶悪な犯人を射殺した女囮捜査官の北見志穂は事件の後遺症で、神経症を患っていたのだが…その直後に新生児の誘拐事件が発生。なんと犯人は身代金の受け渡し役に志穂を指名してきたのだ!

いきなり誘拐事件から幕を開けるが、途中で時間軸は逆行し…現在と過去の話がいったりきたりという構成に。作品の性質上…突然、多重人格の話とかでてきて、なんか違和感ありありなんだけど、その辺は仕方がないか。

前回の事件が尾を引き、やけに孤立化している志穂ちゃん…まるで「新宿鮫」の鮫島みたいな感じがしますねぇ。まさに女ハードボイルド。いままでも女囮捜査官という、あやふやな立場を現場の捜査員たちからもやっかまれていましたが…今回は容疑者扱いまでされてます(笑)

でも、同僚の袴田のオッサンが、だんだんとキャラ立ちしてきましたねぇ。今回は体調不良の志穂ちゃんの代わりに、いろいろと活躍してました。2人の関係も1巻目の頃と微妙に変化しつつあるし、この辺の関係の変化も今後の楽しみだね。

二重人格などというあやふやなもんを持ち込んではいるけど…読者にちゃんと真相を導かせる道しるべをフェアに与えているのは毎度のこと見事です。作中で志穂ちゃんの容疑が怪しくなるたびに、実はそれが真犯人にたどりつくヒントになっているので、最後まで読み終わった時の“やっぱりね”度がうれしく、爽快。推理小説としての醍醐味が十分味わえる作品になっているのが良い。






個人的採点:70点






女囮捜査官 五感推理シリーズ②視覚 著:山田正紀

女囮捜査官 
五感推理シリーズ②視覚
 

著:山田正紀
幻冬舎 ISBN:4-87728-610-1
1998年6月発行 定価630円(税込)








この間から読み始めた、山田正紀の女囮捜査官シリーズ全5部作の2作目を読み終わる。首都高速でのバラバラ殺人という、1巻目以上にトリッキーなテーマが初っ端から提示され、とにかく面白い推理小説に仕上がっている。

首都高速5号線で、トラック事故による大惨事が発生…その現場で、白髪の男が倒れており、傍らには女の右足だけが一緒に転がっていた…。現場に到着した救急隊員がとりあえず男と、その足を救急車に乗せ病院へ搬送することになったのだが…突如、患者を乗せた救急車が不審な行動をとり、その後、警官に発見された時には中身は空っぽになっていた。いったい救急隊員と患者…そして発見された右足はどこへ?その翌日、首都高速の各所で、バラバラに切断された人間の死体が発見される!

首都高速で、死傷者を出す程のトレーラー事故を発端に、さらにバラバラ連続殺人。人死に過ぎだって(笑)こんな事件に…女囮捜査官の志穂がどうやって絡んでくるのかなって思ったら、被害者が知り合いだったという流れだ。

で、その流れで…今回の志穂ちゃんの任務は、銀座のクラブへホステスになりすまして潜入!って…言葉だけで書くと、二時間ドラマみたいな安っぽい展開だけど、そこはしっかりと山田正紀センセイの文章力や巧みな設定でしっかりとカバー。1作目を読んでるから、すんなりとそういうとこも受け入れられます。

前回が痴漢で、今回はSMがテーマ…ああ、だからサブタイトルが“視覚”なのかと納得。卑猥さもちょっぴり増し、それ以上に事件自体が奇抜になり、サービス満点の読み応え。

事件解決の突破口の一つとなる、どうやって死体を捨てたのか?あたりは巻頭に載ってる首都高の地図と見比べ、自分の土地勘と示し合わせて、ようやく理解できるような感じでちと大変だったけど、よく練られていて面白いと思う。志穂の何気ない前半の行動とかが、ちゃっかり事件の真相解明への伏線になってるあたりも、あとから考えると手ぬかりなしで上手いなぁって思った。

さぁ、今度は3巻目に突入だ!このまま一気にシリーズを読破します。






個人的採点:70点






女囮捜査官 五感推理シリーズ①触覚 著:山田正紀

女囮捜査官 
五感推理シリーズ①触覚

山田正紀:著
幻冬舎 ISBN:4-87728-570-9
1998年2月発行 定価600円(税込)








いまさらながらに、山田正紀の女囮捜査官シリーズに手を出す。ミステリーのガイド本なんかで評判がよく、前から興味があったんだけど、なかなか揃わなくてね…全5部作の一気読みがベターだという話なのでコツコツと集めてましたが、ようやく1巻から全巻揃いました、やったぁ~。

若い娘が、絞殺されスカート剝ぎとられるという事件が、品川駅構内の女子トイレで発生。容疑者確保のため、科学捜査研究所、特別被害者部の女性捜査官…通称・女囮捜査官の北見志穂が捜査に乗り出すが…さらに第二、第三の事件が!現場刑事や担当検事との軋轢に悩みながらも、志穂は独自に犯人に迫る。

最初は徳間書店の新書本で発売されたらしいんだけど…カバーイラストやタイトルが官能小説っぽくて、ミステリーとしてはあまり芳しい売れ行きではなかったらしいのだが、一分のマニアからは絶賛されていたと…巻末に載っている法月綸太郎の解説文でも紹介されている。で、文庫化の際には一部タイトルが変更になったとか(笑)

確かに…女の囮捜査官が、自分の肉体を駆使し、犯人をおびき寄せるという設定に加え…官能小説っぽい描写も本編内にあったりするんだけれども、最後の最後まで犯人像が二転、三転し、真犯人が分かりにくいという、推理小説の醍醐味が十分に味わえる仕上がりに満足。

ただ…女子トイレで行われる犯行というあたりで、なんとなく自分なりにイメージしていた犯人像が、最後でピタっとハマるのは嬉しいし、そのあたりもミステリーとして著者なりのフェアな伏線なんだろうなぁとも納得させられる。

本職の刑事ではなく…特殊な能力で刑事に近い捜査を行うという…今野敏のSTシリーズなんかにも似た警察ミステリーっぽいかなってちょっと思ったり。あと、女性捜査官が主人公ということで、「羊たちの沈黙」っぽさも感じたり。

解説を読むと…このシリーズは毎回のように作風を変え、5部作を全部読み終わった時に、ひとつの物語としても完結するという壮大な作品だということなので、せっかくなんで一気読みしようと思っている。知らなかったけど、2時間ドラマで映像化もされてるんだってね?再放送しないかなぁ~。






個人的採点:70点






魔物 下 著:大沢在昌【新刊購入】

魔物 下

大沢在昌
角川書店 ISBN:978-4-04-873768-5
2007年11月発行 定価1,680円(税込)









上巻に続き、新刊購入の「魔物」の下巻を読了。やはり、上巻を読んでいた時に想像していた通り、主人公の大塚が過去と対峙するような展開になってきたよ…。

一連の事件をロシアからやってきた魔物“カシアン”の仕業だと確信した麻薬取締官の大塚は、今現在、“カシアン”取り憑いていると目される暴力団幹部の高森を追い…事件を通じて知り合い、捜査に協力してくれるロシア人ホステスのジャンナと共に…東京へ向かう!

カシアンが取り憑いた犯人たちの、壮絶な犯行とそれに立ち向かう、マトリの大塚をはじめ、刑事、ヤクザたちとのかけ引きの様子に、読んでいる最中はドキドキさせられ面白いし、どういう落し前をつけるのかという期待が膨らむのだけど…ラストが想像していたよりも、ちとインパクトが弱かったかなぁ~って感じ。

もっとオカルトっぽくしちゃってもいいと思うんだけど…せっかく神父さんも登場するんだから、「エクソシスト」ばりに悪魔払いの描写とか、もっと本格的に入れても良かったと思うよ。魔物とかの設定を入れたわりに…普通の犯罪小説っぽさから抜けきっていないのが、ちょっと物足りないっすねぇ。ズバ抜けた新鮮味はなかったけど、エンターテイメントとしてはもちろん及第点をクリアしている。

決してつまらないわけではないのだが、この内容で、上下巻(下巻は上巻よりも30ページくらい少ないし)…3200円もの大枚を払わせる、角川書店にちょっと文句を言いたくなる。ページ数を増し、1冊にまとめればもうちょっと書籍代を安くすることができるんじゃないの?同時発売なのに分冊にする必要性を感じませんね。100円本に慣れている身分の人間としては、あまり偉そうなことは言えないんだけど…やっぱ本って高いなぁって思ってしまった。決して在昌センセの作品に文句を言ってるわけじゃないっすよ…角川の本の売り方が悪いってことだよ。






個人的採点:70点