女囮捜査官 五感推理シリーズ⑤味覚 著:山田正紀 | 105円読書

女囮捜査官 五感推理シリーズ⑤味覚 著:山田正紀

女囮捜査官 
五感推理シリーズ⑤味覚

山田正紀:著
幻冬舎 ISBN:4-87728-749-3
1999年6月発行 定価630円(税込)








この所読み続けてきた、女囮捜査官のシリーズ全5部作、いよいよ完結編です。1~4巻までの巻末(もちろん5巻もそうだけど)で、人気の本格推理作家たちが解説を書いていたんだけれども、なんか皆さん似たような感想を多く書いていた。推理小説としての面白さは、真ん中の作品で…1と5は設定紹介や物語の完結にページを割いてるので、推理小説としての完成度は落ちるよというものだったのだが…。

新宿西口のダンボールハウスから惨殺された女の死体が発見される。身元不明で捜査は難航していたものの、この時点では女囮捜査官・北見志穂が属する特別被害者部は事件にタッチしていなかったのだが、特被部宛にかかってきたタレコミ電話で事態は一変。新宿駅西口に現れるある女を見張っていれば、犯人にたどり着けるとの情報で、志穂をはじめとする特被部が張り込みを担当することに…。しかしこれが特被部を窮地に陥れる事件の幕開けでもあった!?

志穂ちゃんと袴田のおっさん以外の特被部メンバーが久々活躍すると見せかけた冒頭のプロローグ、今回の作品は導入部分からあっと驚く展開の連続で、猟奇的なバラバラ殺人、なかなか新鮮な定義の密室殺人など…次から次へと不可能犯罪が起き、その謎解き要素もしっかりあるものの…シリーズの根本を覆すというか、作者にすっかり騙されてきたというか、物語的に凄いことになっているんだよねぇ。こんな壮大なテーマが隠されていたのか!そしてアイツはこんな計画を立てていたのか!と、とにかく何度も唖然とさせられた。

噂どおり凄い完結編だは、これ…人気があるからといって、安易に続編とか作れませんよ(笑)なんかさ、「ミッション・イン・ポッシブル」の1作目を見た時のようなショックだよね、この小説。そういえば、シリーズものでありながら、毎回のように本格推理小説の枠組みの中で、あの手、この手と色々な試みを見せているというのも、なんか同じアクション映画シリーズでありながら、作風を変えてくるトム・クルーズの「ミッション・イポッシブル」シリーズに通じるものがあるかなと。

で、久々に…女囮捜査官らしさの官能描写も踏んだんに盛り込まれており、それらが単なるお色気サービスでは終わってないから、凄いよね。さながらこの部分は同じトム・クルーズの「アイズワイドシャット」でも見ているような感じだったかな?

色々なものを詰め込み過ぎて、推理小説としての楽しみが薄れている、シリーズを通した伏線が未解決のままであるという指摘もあるようなのだが、自分はこの完結編、本当にいい意味での“裏切られた!”度が凄く強く、犯人の目星はある程度、予想がついたものの…何でこんなことしちゃったの?っていう真相が早く知りたくて、知りたくて、後半はページをめくるのがとまらなかったっすよ。マジで面白かった!






個人的採点:75点