105円読書 -22ページ目

クレイジーヘヴン 著:垣根涼介

クレイジーヘヴン

垣根涼介:著
実業之日本社 ISBN:978-4-408-50478-0
2007年1月発行 定価880円(税込)









2004年にハードカバーで発刊されたものを新書化したもの…特に書き直しや追加はない模様。クールなサラリーマンと、ヤクザに囲われている女がひょんなことで出会い…思わぬ事件が巻き起こる、クライムサスペンス。

旅行会社に勤める27歳の坂脇恭一…一見、ごくありふれたサラリーマンだが、車上荒らしの犯人を自力で見つけ、冷静に復讐まで成し遂げるような、狂気を内に秘める。一方、中年ヤクザに弱みを握られ、美人局の片棒をかつがされている田所圭子…こんな2人が偶然出会うのだが…。

恭一という人物が、どんなに危ないヤツなのかを語る…車上荒らしの犯人を執拗に追いかけていく導入部は、けっこう作品に引き込まれる。ものすごく冷静なヤツで、ものすごい冒険をしても、すんなりと日常にも戻ってこれちゃうんだけど…一人の女と関わったことで、完璧な恭一にもほころびが出始めるわけだ…。

ある出来事をきっかけに、真っ逆さまに地獄行きなのか、それとも…ハッピーエンドな天国へ行くのか?主人公二人の行く末が気になるんだけれども…前半に比べて、後半のインパクトとトーンがややダウン。しつこく繰り返される、SEXシーンが、なんかスポーツ新聞に載ってるエロ小説のできそこないみたいで、ちょい飽きる。

全部で章立てが4部構成になってるんだけど…短編として最初の一話だけを読んだら、けっこうポイント高いのになぁってちょっと思った。1話目(PHASE1 狂気の夏)のラストまでが、一番ドキドキしたし、ロマンチックだったし…。

後半のトーンダウンは感じるが…全体的には嫌いじゃない作品。Vシネか何かにしたら面白そう…あの美人局をさせてる中年ヤクザとか、遠藤憲一あたりが演じたら似合いそう(笑)






個人的採点:70点






クレイジーカンガルーの夏 著:誼阿古

クレイジーカンガルーの夏

誼阿古:著
ソフトバンククリエイティブ
ISBN:4-7973-3783-4
2006年11月発行 定価620円(税込)








GA文庫という、去年あたりにできた、ソフトバンク系列の出版社による、新しいライトノベルレーベルから出た、サブカルネタ満載のライノベなんだけど…むしろ児童文学のような文体が意外だった1冊。

1979年、周りを田んぼに囲まれた田舎、兵庫県のT市に住む中学生、須田広樹に待ちに待った、夏休みが訪れる。秀一や敬道といった地元の仲間、そして東京から引っ越してきた従兄弟の冽史たちと…楽しく過ごしていたのだが、ある日、複雑な冽史の家庭の事情が浮き彫りになり、4人はある計画を実行する…。

和製スタンド・バイ・ミーといった趣向の、田舎に住む少年たちのひと夏の冒険譚と思い出話。頻繁にサブカルネタ…特にガンダムのエピソードや、ガンダムのアムロ・レイの行動や心情を引き合いに出しながら、少年たちが一皮むけていく様子を綴っていく。

本家と分家…時代背景や地域色が色濃く反映されている家庭問題なども、少年たちの成長、冒険に程よくスパイスを効かせ、上手にスリルも演出したりしているのだが…ライノベレーベルで出すにしちゃ、サブカルネタをもう少し勉強してほしいなぁって思ってしまう部分もいくつか感じたね。頻繁に固有名詞を出せばいいってもんじゃない…かえって逆効果。(あとトミノ監督は、冨野じゃなくて、富野だと思うけど…全部字間違ってるし、ガンダムに頼っている以上、ここだけはしっかりせーよ!?)

また、大人になったある登場人物の視点で、本編の前後にプロローグ、エピローグ的な章が挿入されているんだけど…その前に、本編、1979年を舞台にした物語のラストに、余計な文章を詰め込めすぎで、一気に今までの物語を興ざめさせられてしまう。

あそこは、主人公たちの冒険がひとまずの収束を迎えたところで、バッサリと切ってしまい…その後は、読者の想像にゆだねるという選択も欲しかったね。綺麗に落とし前をつけたかったのだろうが、ダラダラしすぎ。これをやるんだったら、現在のエピソードを両方カットした方がいい。

新人さんということなので、まだまだこれからなところはあるが…文章などは下手なベストセラー作家よりも上手に描けているので、頑張ってほしいね。これからに期待。






個人的採点:65点






湯煙りの密室 著:中町信

湯煙りの密室

中町信:著
講談社 ISBN:4-06-263013-3
1995年7月発行 定価530円(税込)









創元推理文庫で復刊された「模倣の殺意」を読んで以来、興味を持ち、コツコツ集めている、ベテラン推理作家・中町信の推理小説。現在は絶版だが、Amazonのマケプレなどでは1円から出品されているし、自分みたいにブックオフの100円コーナーを根気よく探せば入手できるでしょうね(笑)

志望大学への補欠合格が決まったという、ニセ電話のせいで…大学受験を失敗してしまった受験生の八千草英彦と津山吾一。その後、英彦は旅先の指宿温泉の露天風呂で、何者かに殺されてしまったが…現場は密室状況であり、地元の警察は事故死と判断する。姉の洋子は独自で事件を調査し始め、弟の大学受験が事件に関係していると思った矢先に…今度は友人の津山も殺されてしまった!

前半の伏線が丁寧すぎて、今回は犯人が容易にわかってしまったぞおいって感じですね…真相が分かるまでの道のりは、いっぱい事件が起きて、飽きなかったけど…今までに読んだ他の中町作品に比べると、びっくり度は低め。

密室状態の露天風呂から消えた、謎の女の正体…ちと笑っちゃった。まぁ、実際にある病気なんで、あまり馬鹿にしちゃっても問題がでてきそうだが…。

また、大学の入試へ向かう受験生が、大雪で列車のダイヤが乱れてしまい、通りすがりの車に便乗するという…物語のきっかけの部分に、なんか妙な古臭さを感じてしまい、今回はイマイチ、ノレなかったよ。






個人的採点:65点






神様のパズル 著:機本 伸司

神様のパズル

機本伸司:著
角川春樹事務所 ISBN:4-7584-3233-3
2006年5月発行 定価714円(税込)









実は再読…ハードカバーで読んだことあるんだけど(まだ持ってます)、文庫版を見つけて、若干文章も手直しもされているらしいので、思わず購入してしまいました。映画化も決定しているそうで、びっくりです。

留年寸前の綿貫基一は、ゼミの担当教授から、不登校の女子学生・穂瑞沙羅華を引っ張りだしてこいという無理難題を申しつけられたのだが、この沙羅華嬢は飛び級で大学に入学した天才少女だった!最初の対面ではほとんど相手にされなかった綿貫だが、ある老聴講生から聴いた「宇宙は作ることができるのか?」という質問をぶつけたところ…この話題に食いついてきたのだ!そして綿貫は沙羅華とチームを組み、ゼミの研究テーマとして、この問題を立証しなければならなくなってしまった。

ハードカバー版を手にした時も、まずライノベ風のイラストで騙されてしまったわけですが(笑)、今回も魅力的な表紙イラストです。でもライノベ気分で手を出しちゃうと、ヤバイかもね(笑)

殺人事件の起きない、森博嗣のミステリみたいだと最初に読んだときも思ったのですが、巻末解説で大森望氏も推理小説のようと語っていたので、やっぱりなぁって思った。ああ、自分だけじゃなかったんだ、そういう印象を受けたのは…。

“宇宙の作り方”についての、いろいろな講釈に関しては…????。前回挑戦時よりも若干、知識が身に付いた部分もあるので、多少は分かったような気持になれたトコもあるんだけど、まぁ、語り手である綿さんも、穂瑞嬢の言葉にはちんぷんかんぷんという設定なので、SF的なものが苦手でも…けっこう共感して読み進めることができてしまうのはありがたい。

読み終わった後は、物理学というものが、いかにあやふやで、適当なものであり、なんだかよくわからない代物というのと同時に…人間の一生・人生とか、他人の悩みもおなじようなものだなぁって思ってしまう、そんな感じの人間ドラマでしたよね、コレ。

これを原作に、どんな映画ができるのか、ちょっと興味ありますよね~。小説のイラストを使った、アニメ作品の方がいいんじゃねぇ?ってちょっと思うけど。最初に読んだのはかなり前なので、文章はどこ手直ししたのか、よくわからんかった。






個人的採点:70点






The MANZAI 2 著:あさのあつこ

The MANZAI 2

あさのあつこ:著
ジャイブ ISBN:4-86176-281-2
2006年3月発行 定価567円(税込)









前回に引き続き、あさのあつこの「The MANZAI」シリーズを読む、第二巻目。まだまだ続いてるシリーズらしいが、105円でGETできているのはここまで…。

歩と貴史…そしてクラスの仲間たちが文化祭で発表した「漫才ロミオとジュリエット」から半年後…それぞれ進級し、クラスは別々になったが、友達付き合いは続いていた。ある日、貴史は夏祭りでもう一度漫才をやらないかと持ちかけるのだが…歩はあまり乗る気じゃない。そんな時、貴史の幼馴染で歩が憧れる萩本恵奈に奇妙な事件が降りかかる…。

イジメ問題やら、ホームレス襲撃事件など物語の見せ場はあるものの、1巻よりもさらに…どこが、“MANZAI”やねん!みたいな展開の方が多くて、期待ハズレ。作中の登場人物が、笑いで人を幸せにしたいと語っていたが、思いっきり笑える話が読みたかった。“MANZAI”なんてタイトルをつけたんだったら、もうちょっとハジケタ内容になってもいいかもね…。

なんか、お笑のコンビというよりは、BLっぽさがさらに濃厚になってきた感じ。そういう趣味の人たちのウケを狙いすぎてませんか、あさのセンセ!






個人的採点:55点






The MANZAI 1 著:あさのあつこ

The MANZAI 1

あさのあつこ:著
ジャイブ ISBN:4-86176-253-7
2005年12月発行 定価567円(税込)









「バッテリー」シリーズのあさのあつこの、作品で…同じように中学生の少年コンビが登場する青春もの。プライベートの方でゴタゴタ続きだったので、なんか軽い読み物をと思って、これを手にしてみた…。

家庭の事情で、転校してきたばかりの瀬田歩は、自分とは対照的なクラスメイト、サッカー部のエース秋本貴史にある日、呼び出され…思いもかけない申し出をされる。それは、漫才のコンビを組んで欲しいということだった…。嫌がる歩に、貴史はしつこく付きまとう…。

「バッテリー」に比べると、だいぶ砕けた印象。中学生たちの会話に出てくるギャグとか、肝心な漫才の内容が、案外、スベリ気味でつまらないのが…リアル(笑)いくら、人を笑わせようと思っても、所詮は中学生レベルなので、天才的な笑いじゃないのね。そこが「バッテリー」の2人とちょい違うところか?

せっかくなんで、もう少しベタな関西的な雰囲気が欲しいところだなぁって思った。青春ものとして、そつなく読めるが、自分は「バッテリー」の方が好き。

巻末には原作者と重松清の対談が載っており、なかなか豪華なオマケだった。2巻も入手したので、続けて読む。






個人的採点:60点






人生激場 著:三浦しをん

人生激場

三浦しをん:著
新潮社 ISBN:4-10-116753-2
2006年8月発行 定価500円(税込)









久々の更新…忙しくて読書する暇がなく、小説だと大変なので、活字のリハビリがてら軽いエッセイを読んでみる。週刊新潮で連載された、三浦しをんのエッセイを単行本化したものの、さらに文庫版。文庫版のあとがきの他、本文にも単行本以上に加筆が加えられている模様。

いつもはあらすじなんかは、自分で噛み砕いて文章にするんだけど、エッセイなんでどう紹介していいかわからん。カバー裏から、内容紹介をそのまま転載しておきます。

カバー裏から内容を抜粋:「気鋭作家の身辺雑記、だけに終わらぬ面白さ!プレーンな日常を「非日常」に変えてしまう冴えた嗅覚。世間お騒がせの事件もサッカー選手の容貌も、なぜかシュールに読み取ってしまう、しをん的視線。「幸せになりたいとも、幸せだとも思わないまま、しかし幸せとはなんだろうと考えることだけはやめられない」。美しい男を論じ、日本の未来を憂えて乙女心の複雑さ全開のエッセイ。」

前に読んだ「しをんのしおり」に比べると、掲載媒体が、週刊新潮だけあって…オタクネタはやや少なめでしたね。そんかし、クソ、小便、下痢がどうたら~とやたらと下系のネタが多い(笑)

初出の時期がちょうどワールドカップブームだったらしく、にわかサッカーファンと化した著者が、マニアックな選手たちに心をときめかしている文章が多く…サッカーあんまし好きじゃないので、あまり面白く感じなかった。

相変わらず年齢よりも、ジジ・ババくさい。「しをんのしおり」に比べると、嘘くさい作りものっぽさがより過剰に感じてしまいイマイチだったなぁ。






個人的採点:60点






サブウェイ 著:山田正紀

サブウェイ

山田正紀:著
角川春樹事務所 ISBN:4-89456-948-5
2002年2月発行 定価567円(税込)









山田正紀センセの、ハルキ・ホラー文庫で書き下ろした作品。同じ文庫レーベルで書き下ろした「ナース」が、ノンストップのスプラッターバトルホラー作品だったが、これは都会にはびこる都市伝説をテーマに、生と死のあいまいな境界線を、切なく、哀しく描いた作品になっている。

地下鉄「永田町駅」では死んだ人に会うことができるらしい…ホームの隅であり得ないものをみてしまった運転手、行方不明になってた子供の消息を確かめるようとする夫婦、事故でクラスメイトを失った少女など…死者との再会を望む者たちが都市伝説めいた方法で死者とコンタクトをとろうとしていたのだが…。

けっこう重くて、暗い内容。ある登場人物に感情移入しすぎてしまい、読んでる最中に…自分の将来が不安になってきた。いつ、自分がこんな孤独になるとも限らない。自分は一を愛せるのか?愛されてるのか?愛されるのか?

一部、ホラーらしいグロテスクな描写もあるし、あの独特な地下鉄の駅の不気味な雰囲気をよく表現しているのだが、やっぱり…自分の老後とか考えちゃうよなぁ。

精神的に弱ってる時は、あまり読まない方がいいですね。






個人的採点:65点






東京ゲンジ物語 著:天樹征丸

東京ゲンジ物語 

天樹征丸:著
講談社 ISBN:4-06-213446-2
2006年5月発行 定価1,500円(税込)









「金田一少年の事件簿」の原作者で知られる天樹征丸のサイコミステリで、表紙が「多重人格探偵サイコ」の田島昭宇という…どちらかというとコミックマニアがよだれが出そうなコラボだね(笑)

本名はヒカルだけど、光源氏にならい、ゲンジと呼ばれる少女…彼女の周りには奇妙な“死”が近寄ってくる。小学生の頃に友達が変質者に殺されたのをはじめ、その後両親が強盗に殺され…それ以降も身近な人々が何人も死んでいる。これは何かの呪いなのか?そしてその“死”に直面した時に思い出す、かすかな古い記憶…。偶然出会ったロックバンドの美青年ボーカル、冬夜が真相のカギを握るのだが…身近な人の不審死に巻き込まれ続けるゲンジ…。

ネットで公開された作品を改稿して、単行本化したそうで…連作短編っぽいノリ。毎回のように人が死んで、その事件の真相が語られるんだけど…最終的に、幼少時代にゲンジが遭遇した未解決事件がからんでくるって展開に。

金田一みたいに、事件のトリックを見破ったり、犯人を捜したりという、推理的醍醐味は薄く、やや拍子抜けなんだけど…一本、一本の話のバリエーションはけっこう変化に富んでいて読める。最終的に、何故、ゲンジの周りで、こんなにもいっぱい事件が起きたのかが明かされるんだけど、ここで、もうちょっとひねりが欲しかった。真相に絡んでくるある人物などを、最初の方から作品に登場させたりしていたら、もっと推理小説的に、フェアに犯人探しや謎解きができたのでは?






個人的採点:65点






吸血の季節 著:砂浦俊一

吸血の季節

砂浦 俊一:著
集英社 ISBN:978-4-08-630361-3
2007年5月発行 定価600円(税込)









ライノベです、集英社のスーパーダッシュ文庫…初めて読む作家だけど、タイトルと表紙が気に入った。ヴァンパイアものかと思ったんだけど、ちと違う…でも、化け物っぽい物体は出てきました。

殴られ屋のバイトをする高校生・鳴沢燈は、学校内で、先輩女生徒二人が、吸血行為をしているのを目撃してしまった。燈本人は、ただのレズビアンだと思っていたのだが…自分たちの正体が知られたと思った朱実紗衣は執拗に燈に付きまとう。そして数年前に事故死した紗衣の妹のことをどうやら燈が知っている様子だ。また、妹の事故死の件で、元カレを名乗る男が二人の前に現れ、別件で探偵のバイトをする燈はドラッグ絡みの事件調査にまで巻き込まれる!

吸血鬼が出てくるホラーかと思いきや、血を欲するヴァンパイアフィリアという病気の女子高生の同性愛な関係…それを偶然目撃してしまった同じ学校の生徒が、実は親代わりの保護者が探偵で…ヤバイ事件を手伝わされているって展開。これらが、絡み合って終局へ向かっていくとう感じ。

さんざん否定したくせに、やっぱりそこまでやってたのか女子高生レズカップル!?って展開にはちょいドキリ(笑)最近のライノベはなんでもありで凄いなぁ。

ヴァンパイアはでてこなかったけど…無敵の燈くんをピンチに陥れる強敵として、化け物のように巨大な左手を持つ凶暴な敵が出てきて、バトルをくりひろげられる。その正体は、なんとなく説明がでてきたけど、詳しい設定はあまりつっこんじゃいけないみたいね(笑)

殴られ屋って設定も、実際にこういう仕事をしている人がいて、映画なんかでも語られているので、そこはちょっとパクリっぽいかなって…。ホラー、SF、ファンタジーってほどでもないし…アクションものとして、適度に楽しめるエンターテイメント。






個人的採点:65点