東京ゲンジ物語 著:天樹征丸
東京ゲンジ物語
天樹征丸:著
講談社 ISBN:4-06-213446-2
2006年5月発行 定価1,500円(税込)
「金田一少年の事件簿」の原作者で知られる天樹征丸のサイコミステリで、表紙が「多重人格探偵サイコ」の田島昭宇という…どちらかというとコミックマニアがよだれが出そうなコラボだね(笑)
本名はヒカルだけど、光源氏にならい、ゲンジと呼ばれる少女…彼女の周りには奇妙な“死”が近寄ってくる。小学生の頃に友達が変質者に殺されたのをはじめ、その後両親が強盗に殺され…それ以降も身近な人々が何人も死んでいる。これは何かの呪いなのか?そしてその“死”に直面した時に思い出す、かすかな古い記憶…。偶然出会ったロックバンドの美青年ボーカル、冬夜が真相のカギを握るのだが…身近な人の不審死に巻き込まれ続けるゲンジ…。
ネットで公開された作品を改稿して、単行本化したそうで…連作短編っぽいノリ。毎回のように人が死んで、その事件の真相が語られるんだけど…最終的に、幼少時代にゲンジが遭遇した未解決事件がからんでくるって展開に。
金田一みたいに、事件のトリックを見破ったり、犯人を捜したりという、推理的醍醐味は薄く、やや拍子抜けなんだけど…一本、一本の話のバリエーションはけっこう変化に富んでいて読める。最終的に、何故、ゲンジの周りで、こんなにもいっぱい事件が起きたのかが明かされるんだけど、ここで、もうちょっとひねりが欲しかった。真相に絡んでくるある人物などを、最初の方から作品に登場させたりしていたら、もっと推理小説的に、フェアに犯人探しや謎解きができたのでは?
個人的採点:65点