クレイジーカンガルーの夏 著:誼阿古 | 105円読書

クレイジーカンガルーの夏 著:誼阿古

クレイジーカンガルーの夏

誼阿古:著
ソフトバンククリエイティブ
ISBN:4-7973-3783-4
2006年11月発行 定価620円(税込)








GA文庫という、去年あたりにできた、ソフトバンク系列の出版社による、新しいライトノベルレーベルから出た、サブカルネタ満載のライノベなんだけど…むしろ児童文学のような文体が意外だった1冊。

1979年、周りを田んぼに囲まれた田舎、兵庫県のT市に住む中学生、須田広樹に待ちに待った、夏休みが訪れる。秀一や敬道といった地元の仲間、そして東京から引っ越してきた従兄弟の冽史たちと…楽しく過ごしていたのだが、ある日、複雑な冽史の家庭の事情が浮き彫りになり、4人はある計画を実行する…。

和製スタンド・バイ・ミーといった趣向の、田舎に住む少年たちのひと夏の冒険譚と思い出話。頻繁にサブカルネタ…特にガンダムのエピソードや、ガンダムのアムロ・レイの行動や心情を引き合いに出しながら、少年たちが一皮むけていく様子を綴っていく。

本家と分家…時代背景や地域色が色濃く反映されている家庭問題なども、少年たちの成長、冒険に程よくスパイスを効かせ、上手にスリルも演出したりしているのだが…ライノベレーベルで出すにしちゃ、サブカルネタをもう少し勉強してほしいなぁって思ってしまう部分もいくつか感じたね。頻繁に固有名詞を出せばいいってもんじゃない…かえって逆効果。(あとトミノ監督は、冨野じゃなくて、富野だと思うけど…全部字間違ってるし、ガンダムに頼っている以上、ここだけはしっかりせーよ!?)

また、大人になったある登場人物の視点で、本編の前後にプロローグ、エピローグ的な章が挿入されているんだけど…その前に、本編、1979年を舞台にした物語のラストに、余計な文章を詰め込めすぎで、一気に今までの物語を興ざめさせられてしまう。

あそこは、主人公たちの冒険がひとまずの収束を迎えたところで、バッサリと切ってしまい…その後は、読者の想像にゆだねるという選択も欲しかったね。綺麗に落とし前をつけたかったのだろうが、ダラダラしすぎ。これをやるんだったら、現在のエピソードを両方カットした方がいい。

新人さんということなので、まだまだこれからなところはあるが…文章などは下手なベストセラー作家よりも上手に描けているので、頑張ってほしいね。これからに期待。






個人的採点:65点