彼女はたぶん魔法を使う 著:樋口有介
彼女はたぶん魔法を使う
樋口有介:著
東京創元社 ISBN:4-488-45901-3
2006年7月発行 定価820円(税込)
90年代に講談社で発刊されていた作品を、創元推理文庫にて再収録したもの。樋口有介の名前は知っており、ずっと気になっていたのだが、実は今回が初挑戦。
元刑事のフリーライター柚木草平は、元上司のキャリア警視・吉島冴子がまわしてくる事件の調査も手がける私立探偵でもあった。今回は女子大生のひき逃げ事件に関する調査で、唯一の遺族である姉が殺人事件ではないかという疑いを持っているという。早速、依頼人に会い、事件に興味を持った草平は事件調査に乗り出すのだが…その矢先に新たな事件が!?
シリーズものということで、主人公を含み、今後レギュラーになるであろうキャラクターがなかなか魅力的に描かれている。別居中の妻と子供に手を焼きながら、警視長キャリア警視の愛人(相手も人妻)とうまく付き合い、聴き込み調査の過程では、若いねーちゃんと話がなぜか弾んじゃう。物語はもちろんのこと、草平の皮肉たっぷりな語り口調などが、いかにも中年ハードボイルドな感じで、好みの文章です。
本文を読む前に、お約束ながら…巻末の解説なんぞを読んでしまうと、“ええっ、ここで終わりなの!?”って思うよ~って書かれてたからさ、まさか事件が解決しないとか?って心配しいしい読んでたら…そういうことですか。これは確かに、あのラスト…次が気になるところで、寸止め、お預けくらった感覚ですね。
肝心な事件の方は…地道に聴き込み調査を続けながら、怪しいところをつっつきつつ、犯人探しをするってオーソドックスな展開。劇的なトリックとかあるタイプの作品ではないけど…人の繋がりを追いかけていくところにやはり魅力を感じますね。
でもやっぱ、女に強いんだか、弱いんだか…利用しているようで、実は振り回されてる?な草平というキャラクターですよね、この作品の魅力。18年も前の作品なので、微妙な古臭さはあるものの…男から見て、女性に対する摩訶不思議な部分や恐ろしい部分がよく描けており、思わず「同感」って言葉が漏れちゃうよ…。
同じシリーズの「初恋よ、さよならのキスをしよう」も入手してあるので、続けて読んでみるつもり。
個人的採点:70点