放課後ローズ 警視庁第七捜査資料課 著:船越百恵 | 105円読書

放課後ローズ 警視庁第七捜査資料課 著:船越百恵

放課後ローズ
警視庁第七捜査資料課

船越百恵:著
光文社 ISBN:978-4-334-07647-4
2007年1月発行 定価960円(税込)








何度か読んでいる船越百恵のコメディタッチの推理小説…一見、本格風な感じの出だしだが、実は、本格推理小説を改悪した2時間ドラマを、もう一度小説に直したみたいなイメージの作品で…どちらかというとライノベ的なノリも相変わらず。

丸井太、鷺ノ宮瑠璃、鬼頭英吉の警視庁第七捜査資料課のメンバーが歌舞伎町を探検をしている時、駐車してあった瑠璃の愛車であるミニパトに人が降ってきた!愛車の敵討ちと息巻く瑠璃は…他の2人を巻きこみ事件を調べ始める。一見、ただの自殺にみえたのだが、資料課の面々が調査を始めた途端、被害者の娘も同じような死に方をしているのが判明。さらには三年前に起きた解決済みの惨殺事件にまで関わることに…。その過程で目にした“放課後ローズ”という言葉の正体は?

「時効警察」を真似たらしい“資料警察”というTVドラマのファンの婦警が、事件調査の権限がある刑事でもないのに事件に首をつっこみひっかきまわすが…実はこの婦警、父親が検察庁刑事局長で、祖父が元警視総監。おいおい、お前は浅見光彦か、ケータイ刑事か?みたいな設定。語り手は、ミステリー作家志望の同僚の警官なんだけど、やたらと「拝啓 母上…」と心の中で呟くのがクセで、いったいいつの時代のホームドラマやねん!

漫才のような軽いノリのキャラクターというのは前回読んだ「名探偵症候群」なんかと同じ、この著者の持ち味なんでしょうがない(ちょっとやりすぎなんですけど)、事件が全然進まず退屈だった前作に比べれば、次から次へと悪趣味な事件が出てくるので…多少の面白みも出てきたが、全編穴だらけで、推理小説と呼べない代物に。

コメディ路線でもいいのだが、推理小説だとか警察小説とうたっている以上、ある程度のリアリティは守ってほしいなぁっていうのが正直な気持ち。たとえばね、新宿、豊島、中野、練馬に囲まれたという、どうやら架空の地区が、主人公たちの縄張りなんだけど…そっから、警視庁に戻った親父の執務室に盗聴器を仕掛けたって描写があんのんね。こんな作品だから、盗聴器が出てくるという設定は許せても…どんだけ出力でのデカイ盗聴器使ってんねん!って疑問が浮かぶ。その前にさ、検察庁刑事局長が戻る場所って警視庁じゃなくて、検察庁(霞が関の合同庁舎)じゃね?自分が無知なのかもしれないけど…ここもひっかかる。

証拠集めも違法捜査で、これだと事件を解決しても公判、維持できないぞ!という場面ばかりだし、挙句の果てには犯人が墓穴をほって、ベラベラと喋り出すという…本当に2時間ドラマだったら許せる内容の展開ばかり。たとえ、ほかの推理小説もこういう穴があったり、ギリギリな状態の綱渡りってことはたくさん例があるんだけど…ちゃんとした推理作家なら別の部分を細かいリアリティで補い、読者の目を欺くもんなんだけど、この作家にそこまでの技量がないから、ダメな部分がやたらとクローズアップしてしまう。

これだけ、ダメ~って感想がスラスラと書ける小説も久々だな(笑)別にミステリーに拘らず、コメディを書きたかったらライノベでラブコメとかそういうの描けばいいのに。光文社で、こんな雰囲気のある表紙で、警察ミステリーなんてキャッチコピーがあれば、期待しちゃうじゃんよ~。






個人的採点:50点