収穫祭 著:西澤保彦 | 105円読書

収穫祭 著:西澤保彦

収穫祭

西澤保彦:著
幻冬舎 ISBN:978-4-344-01348-3
2007年7月発行 定価2,100円(税込)









帯の“こんなに殺していいものか!?”に惹かれて手に取った、西澤保彦の「収穫祭」…ハードカバー600ページ以上(原稿用紙1944枚だそうで)の分厚さに、ちょっと読むのに手間取ったが、内容はダレることなく、物語の山場に差し掛かると、ページをめくるのが止まらない。

1982年8月17日…台風が直撃した暴風の中、首尾木村(しおきむら)北西部で、ほとんどの村民が惨殺されるという大量殺人が発生。生き残ったのは、三人の中学三年になる少年少女と、その三人が通う中学校の教師ひとりだけだった。犯人と目される外国人は、逃走中に事故死したとみられ事件は解決したと思われていたのだが、9年後、事件の生存者へフリーライターが取材を開始すると、ふたたび同じような殺人が起きてしまった!

僻地の田舎町で起きた猟奇的な連続殺人…小川勝己の「撓田村事件」を彷彿とさせるような思春期少年のボンクラ妄想から始まり、近年起きている実際の猟奇殺人を想像してしまうような、スプラッターな展開の第一章。これだけで普通のミステリー1冊分のボリュームを感じるが、これはただの幕開けにすぎなかった…。

謎が解明されると、さらなる謎がわき起こり、登場人物たちがあっ気なく殺されていく。事件の根底には、人間の淫靡な性癖とか、屈折した感情が深く関わっており…なかなか刺激的。特殊な閉鎖的環境、家族の血縁、男女間のトラウマなどなど…人間のどす黒さを描き切っているのが秀逸で、さしずめ、西澤版“ひぐらしのなく頃”といったところではないだろうか?

どんでんがえし的な展開も含め、不気味さや怖さがしっかりと持続。事件の真犯人や動機など、頭の片隅ではこんなんではないか?と理解はしているものの、はたしてそれが当たっているかどうかが不安になってくるし…事件の真相以外にも、登場人物たちの感情を読み解きたくなる。膨大な物語の中に、さりげなく散りばめられた数々の伏線がピタっとハマる瞬間で、推理小説としてのカタルシスがしっかりと味わえるのも見事。






個人的採点:80点