ボクがこの歌を最初に聴いたのは、元祖“脱力系”のアストラッド・ジルベルトの歌唱でした。

♪アガジュベベ、アガジュベベ、カマラ

不思議な語感とダルそうな歌唱にしびれました。それから彼女のアルバム『Look To The Rainbow』を買ってさんざん愛聴しました。

「おいしい水」とくれば、もちろん最初は、アストラッド・ジルベルトです。これはモノクロ動画で、メンバーはそうそうたる顔ぶれ。アレンジは、ウエスト・コースト派のジャズ
アレンジャーでクールでスウィンギーなマーティ・ペイチです。この曲とは関係ありませんが、この人のアレンジで聴くメル・トーメは最高!!です。蛇足ながら、TOTOのデヴィッド・ペイチは息子さんです。

Astrud Gilberto (vocal), Antonio Carlos Jobim (guitar, vocal), Joao Donato (piano), Joe Mondragon (bass), Marty Paich (arranger, conductor).




次は作曲したアントニオ・カルロス・ジョビンが、1986年にモントルー・ジャズ・フェスティヴァルに出演した際のライヴ映像です。

チェロにジャキス・モレレンバウムが加わり、5人の女性コーラスが盛り立てています。見たところ左から2人目が、後のジャキスさんの奥さんになったパウラではないかと思います。




この「おいしい水」の作詞は、ヴィニシウス・ジ・モラエス。ボサノヴァを生み出した3人組(アントニオとジョアン)の一人で、駐仏ブラジル大使を勤めた詩人(詩人が大使になるなんて、日本では考えられませんよね)。

彼はその縁で、ブラジル=フランス合作映画『黒いオルフェ』を制作に尽力します。結果それがブラジルのサンバを文化として世界に広めたのですから、政治家が出世の踏み台に大使になるどこかの国の大使とは比べ物にならないほどの大きな功績をあげています。(ただし、映画がリオの貧民街ファベーラを舞台にしたことから、当のブラジルでは公開されなかったそうです。そのことは映画の劇中で「黒いオルフェ」を歌ったエリゼッチ・カルドーゾが1977年の初来日時に告白しています)。


次はブラジル生まれ育ちの小野リサの「おいしい水」。ボクはこの人のクールな歌が大好きで、アルバム『ボッサ・カリオカ』『The music of Antonio Carlos Jobim/Lisa Ono』(2007年)は今も愛聴しています。

ところが単曲でYouTubeには上がっていないので探したところ、今年のジャワ・ジャズ・フェスティヴァル2015のなかで(予想通り!)歌っていました。全1時間17分のコンサートの中の開始から55分58秒~1時間1分00秒まで(約4分間)です。

スライダーでその時間まで飛ばしてご覧ください。なお彼女は62年生まれとのことで、まさにニューヨークでボサノヴァが評価され始めた時ですから、ボサノヴァの申し子的存在ですよね。




さてひと時の箸休め。色物ネタですが、なかなかのモノマネ女史の形態模写(特に足の組み方に注目されたい)がステキです。

ミラクルひかるが、マジな歌唱で小野リサ「おいしい水」を演じるテレビ番組映像です。ちなみにこの人の渡辺真知子マネもスゴイです。




ブラジルのニュー・スター(といっても、今や40歳代ですが)、パウラ・リマの力溢れる歌唱も素晴らしい。




この曲を世界に広めたのは英語の歌詞(ノーマン・ギンベル)がついて、シナトラほかジャズ系シンガーに歌われたことも大きい要因でしょう。


まずはエラ・フィッツジェラルドです。




最後は、フランク・シナトラとA.C.ジョビンです。シナトラは若きジョビンを自分のテレビ番組に出演させたりして、高く評価していたようです。




「おいしい水」をアストラッドの歌声で聴いてから、何年の月日が流れたのでしょう。


そういえば六甲のおいしい水もアサヒ飲料に替わり、六甲以外に富士山の水も登場しています(って、この曲とは無関係ですが。笑)


今や多くの家庭での飲料水は、ミネラル・ウォーターが主流となりました。一説では、ミネラルの過剰摂取に弊害もあるとか。

たまたまウチでは、この夏冷蔵庫用氷を作るのに湯冷まし(清浄器を通した水道水を沸かして冷ました水)を用いて、残った分を飲用にしたところ、クセのないなかなか「おいしい水」でしたよ。


この曲をリクエストいただいたDupinさま、ありがとうございました。