東京テルマエ学園
  • 17Dec
    • 小説「東京テルマエ学園」第二章 6話「高山祭り」

      第二章6話「高山祭り」高山滞在三日目、いよいよ高山祭当日である。 この日は旅館のお手伝いは無し、高山祭を見学すると同時に、歴史や風土を学んでレポートにまとめる材料としなければならない。 林出修がここでも水を得た魚のように話をしているが、さすがに祭りそのものが凄いこともあり、抑え気味ではある。 市中には、祭りを彩る十二の鮮やかな屋台。 神輿を中心に、獅子舞や闘鶏楽、裃姿の警固など、街を廻る総勢数百名の大行列。 昨日までと全く異なる高山の街の様相に、アキの心は浮き立っていた。 「やっぱりお祭りは楽しいね!」 昨日の疲れもどこへ行ったのやら、笑顔で祭りを見学するアキ。 初日は制服、二日目は手伝いのため旅館の制服を借りたりしたが、三日目のこの日は高山際の見学ということで一日私服である。 アキはカットソーの上に暖かいマウンテンパーカ、ボトムスは動きやすくアンクル丈のデニムのパンツ。七瀬はシンプルなオフホワイトのシャツとロングカーディガンに、ベージュのパンツをあわせていた。「七瀬、白いシャツだと汚しちゃうよ」「私はアキみたいに食べ方が下手じゃありません」二人はみたらし団子を食べながら街の様子を眺めていた。高山のみたらし団子はしょうゆ味で、甘くない。「てゆうか、本当に凄い人だね。これじゃあ身動きとるのも一苦労だわ」 団子の最後の一つを口に頬張りながら、七瀬は言った。その七瀬の視線の先、大勢の観客に見守られる中で実施されるは、メインイベントでもある「からくり奉納」。ワールドワイドな観光地らしく、日本語だけではなく英語、スペイン語など様々な言語で案内放送が流されている。 からくり人形の動きは見事なもので、柔らかな手や頭の動きはそれこそまるで生命が宿っているかのよう。 アキも七瀬も、もはや課外実習のことなど忘れて楽しんでいた。 その様相が変わったのはしばらくしてのこと。「――――ねえ、穂波、見ていない?」 途中で出会った優奈にそう尋ねられた。 「穂波さん? 特に見ていないけれど」 「これだけ人が多いと、一度はぐれると見つけるのは難しいわよね」 「はぐれたんじゃない。穂波のやつ、わたしの目を盗んでどこか行ったんだ」 「えー、考え過ぎじゃない?」 「だったらなんで、携帯にも出ないのよ」 苛々したように言う優奈に、アキと七瀬は顔を見合わせる。それでも、さほど深刻に考えることはなかった。 「騒がしいし、気が付いていないんじゃない? マナーモードにしているかもしれないし」 「それなら良いんだけど……」 綺麗な茶髪を掻き毟る優奈。 そんな優奈と同様の不安をアキ達も覚えるようになるのに、さして時間はかからなかった。 集合時間になっても穂波だけが姿を見せなかったのだ。第二章第6話 終

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  • 11Dec
    • 小説「東京テルマエ学園」第二章 5話「流行る温泉とは?」

      第二章 5話「流行る温泉とは?」あけて高山での二日目、午前中に奥飛騨のクマ牧場を見学した後は高山市に戻り、生徒達は市内の旅館のお手伝いへと派遣された。  そこで待ち受けていたのは、まさに地獄のような忙しさであった。 アキも実家は旅館であり、忙しい時期も知っていたが、まるで次元が違っていた。高山際を目前に控えて客も多く、しかも外国人がかなりの割合でいる。 旅館の人達も、テルマエ学園からは「甘やかすと意味ないし生徒達の将来の為にならないから、厳しく使い厳しく評価してほしい」と言われていたようで、容赦なくなんでも手伝いに駆り出された。 それでも、昨夜早めに休息を取った女性陣はどうにか立ち回っていく。特に、穂波の指示が的確で非常にありがたかった。 対して夜遅くまで遊んでいた男性陣は殆どの生徒が討ち死に状態であった。男だけに力仕事を頼まれることも多く、寝不足と疲労と慣れないタスクで体力を削り取られていったのだ。まともに成果を出せているのは渡一人くらいではないかと思えるほどだ。 「――うああぁ、もう駄目、もう動けない!」 部屋に戻るなり畳に倒れてアキは悲鳴を上げた。 「ほんと、いいようにこき使われたわね……でもホント、塩原さんのお蔭で随分と助かったわ。  塩原さん、知っているの温泉だけじゃないのね」 「本当だよ、やっぱ温泉だけじゃなく、その地域のことも知らないと駄目ってことだよねー」 「言っていることは立派だけど、その格好で言われてもね」  寝転がったまま言うアキをみて、七瀬は苦笑する。 「ねえ、塩原さん……?」 「……え、あ、ごめん、私も少し疲れたみたい。お風呂、行ってくる」 「私も」 穂波を追うようにして、優奈も部屋を出て行く。 「アキ、私達も行く? お風呂に入れば疲れも取れるよ」 男子生徒達はお手伝いが遅れていてまだ戻ってきていない。明るいうちに大露天風呂に入るチャンスと、七瀬は立ち上がる。 「うん、行く~~」 ゾンビのようによろよろと歩き出すアキであった。 「……本当に最近は多いね」 「どうしたのかしらねぇ」 途中、旅館の従業員が話しているのが目に入ったが、従業員たちはアキの姿を見みるとすぐに仕事へと戻っていった。 少しくらいお喋りや息抜きしていても構わないのに、そう思いながらアキは大露天風呂へと向かった。 「……はぁぁ、夜と違って、大迫力だね!」 前日は夜に浸かったが、今はまだ陽が沈む前であり、大露天風呂の本当の凄さにアキは圧倒されていた。 四方八方を山に囲まれ、雄大な北アルプスにまるで見守られているかのように感じる。穂波に言われた通り、各所には巨石が配されてアクセントを付け、奥には大きな岩から源泉が滝となって落ちている滝湯、そして滝湯の横には洞窟風呂がある。 露天風呂の中でも複数の湯が楽しめるようになっているのだ。 「いやぁ、これはちょっと、真似できるものじゃないねぇ」 湯に浸かっていると体から疲れと同時に力も抜け、ふにゃふにゃになっていくようだとアキは思った。 「確かに、これだけ広くて景色も良ければ何回だって訪れたいと思うけれど、広さと大自然は私達じゃどうにもならないもんね」 二の腕を揉みながら七瀬が言った。 「そうね、温泉は真似できないけれど、宿については学ぶべきところがあるんじゃない?」 岩に腰かけた穂波はふくらはぎをマッサージしながら言う。 「確かに、せっかくだから気づいた点を皆で挙げてみようか」 アキの提案に皆が頷く。 「建物は古いけれど、この場所には合っているよね。真新しいペンションみたいな建物だと合わないよね」 「でも、中の施設はちゃんとしている。Wi-Fiのつながり具合は最高だしね」 「食べきれなかった炊き込みご飯、何も言っていないのにおにぎりにしてくれた!」 「いづも従業員さんが笑顔だ。これ、何気ねぇげど重要だで思います」 「でもさー、アメニティが物足りないなぁ。機能性は落としているよね?」 「虫が多かとは大自然の中にあっで仕方なかこっで、そいを補う従業員んサービス精神が感じらるっよね」 「実際の所、収支ってどうなっているのかしらね。さすがに聞いても教えてくれなさそうだけど」 「まだ授業でも経営学、やってないから、何を尋ねればいいかも分かんないんだけど?」 「従業員の数が少なく思えるんだけど、やっぱり固定費が重いんだろうね」 自分だけでは気が付かなかったこと、違う視点からの意見、そういったものを得ることが出来るのは、皆がいるお蔭だと改めてアキは感じた。 こうして得たものを自分の糧として取り込み、還元していかなけれならない。自分は学ぶためにこの場にいるのだと、強くアキは意識したのであった。第二章第5話 終

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  • 05Dec
    • 小説「東京テルマエ学園」第二章 4話「コーヒー牛乳事件」

      第二章 第4話 「コーヒー牛乳事件」夕食は予想に違わぬ、いや予想以上に素晴らしいものだった。 飛騨牛はもちろん、山・川・海の幸がふんだんに盛り込まれた料理はボリューム満点で、食べ盛りの男子、女子をも十分に満足させるものであり、味については言うまでもない。「うひょー、七瀬ちゃん、浴衣姿がまた色っぽうてたまらへんね!」 宴もたけなわとなってくると、いつの間にか八郎が七瀬の隣の席にやってきて絡んでいた。「もうちょっとこう、胸元が緩んでいるともっとええんやけどなー!」「ゆかり女史、セクハラで訴えてもいいですよね?」七瀬が仏頂面で、ゆかり女史の方に振り向いて言うと、「勿論よ、星野さん。大塩くん、事務所に行く?」「いやいやいや、まだほんのひと触りもしてへんがな!」「触ったら本当に警察沙汰だからね」 八郎は懲りず七瀬に言いよっては撃退されている。 一方でアキは涼香に抱き着かれて困惑していた。「えへへ、アキちゃん柔らかくて気持ちいいなー」「ちょっと涼香ちゃん、まさかお酒飲んでなんていないでしょうね?」 ゆかり女史や二十歳を超えている優奈など、ごく少数だがアルコールを口にしている人もおり、まさか涼香もと思ったのだ。「匂いでやられちゃったんじゃない? そういう子もいるよ」「ええぇ、弱すぎでしょ。涼香ちゃんっ」「アキちゃーん、凄い凄-い」 無邪気な口調でアキの胸に顔を埋めて頬を摺り寄せる涼香。八郎をあしらいながら横目で涼香を見て、「そのおっぱいは、私のものなのに……!」などと歯噛みする七瀬。 そんな感じで宴会は阿鼻叫喚の様相を呈してきていた。「そ、そうだ涼香ちゃん、カラオケあるよ、歌ってみない?」 宴会場の前方にはカラオケセットが置かれていて、舞台にあがった男子生徒が熱唱しているのを他の生徒がやんやと囃し立てている。 アキとしては、なんとか涼香を引き剥がしたいと思って何の気なしに口にしたのだが。「――――やだ!」 思いがけない強い口調で涼香は拒絶した。 アキの胸から離れる涼香。「あ、ごめん涼香ちゃん、カラオケ嫌いだった?」「あ…………あだすこそ、ごめん、アキちゃん」 ぺこぺこと頭を下げて謝る涼香に、先ほどまでののぼせたような様子は見られなかった。カラオケが嫌いな子も、人前で歌うことが苦手な子も多い。まして涼香は明らかに人見知りしそうなタイプであり、失敗したと反省するアキ。「ねえねえ、展望台に卓球台があるよ。卓球大会しようよ!」 立ち上がり、腕をあげる萌。 何人かの生徒が歓声を上げて萌に続く。 まるで修学旅行みたいだと、いやそれ以上の賑やかさだとアキは思った。 盛り上がっている卓球大会を余所目に、アキと七瀬は大露天風呂にやってきた。今なら八郎を含む多くの男子生徒が卓球大会で盛り上がっているからだ。それでも何人かの男子生徒が入ってきており、湯浴み着を身に付けているとはいえ、どこか落ち着かない。 それでも。「ほんっ……とーに、凄いね」「うん」 アキも七瀬も、言葉も出なかった。 夜のため、大自然を目にすることはできなかったが、それでもその湯船の広さに目を奪われてしまう。 一緒にやってきた穂波と優奈も、小さな吐息を漏らすのみ。 もしかしたら助平心でやってきたかもしれない何人かの男子生徒達も、女子のことなど目に入らないように「すごいすごい」とはしゃいでいる。 七瀬は、そちらを見ないように必死に目を背けていた。 そうして大露天風呂を十分に堪能してから出たところで、卓球大会を終えたらしき面々と出くわした。 その中で八郎が、風呂上がりの七瀬を見て愕然とした表情を見せた。「え、あ、まさか七瀬ちゃん、今まで大露天風呂にっ」「ええ、とっても良いお湯だったわよ」「う、うそやろーーーーっ!? 終わったわ、わしの人生!!」 その場に膝をつき、蹲る八郎。 見下ろす七瀬は、侮蔑の表情を浮かべている。「あ、あぁ……七瀬ちゃんに蔑みの視線を向けられる、なんかたまらんなぁ……目覚めそうや」「あほらし。アキ、行こう」「う、うん」「ま、待ってぇな七瀬ちゃん。そや、風呂からあがったんならせっかくやから一緒に一杯やってかんか? わいの奢りやで」 八郎が素早く販売所から購入してきて見せたのは、コーヒー牛乳。 風呂上がりのコーヒー牛乳といえば定番だ。喉の乾いていたアキは、ごくりと唾をのみ込む。「結構、欲しかったら自分で買いますから。いくわよアキ」 クールに八郎を無視する七瀬。「くぅ、その冷たいところもまたええんよなぁ。でもコレ、どないしよか……あ、穂波ちゃん、ちょうどええ」「ん、何?」 アキ達に続いて出てきた穂波に目を向ける八郎。 笑顔で、手にしたコーヒー牛乳を穂波に差し出す。「これ、良かったらわいの奢りや。風呂上がりのコーヒー牛乳、最高やで!」 目の前に八郎からコーヒー牛乳の瓶を差し出されて穂波は。「――嫌っ!」 いきなり、八郎の腕を叩いた。「うわっ!?」 八郎の手を離れて宙を飛ぶコーヒー牛乳。「わお、危ないっ」 身軽に手を伸ばしてキャッチしたのは萌。幸いにして事なきをえたが、場は少しばかり変な空気に包まれる。 八郎はただコーヒー牛乳を奢ろうとしただけである。そういうことを気持ち悪いと思う女の子もいるかもしれないが、クラスメイトで知った仲、穂波の態度はあまりに過剰すぎるように思われた。「ちょっと、穂波」「あ……そ、その」 優奈に肩を掴まれ、我に返る穂波。 周囲にいた生徒達の視線を受け、声をなくす。気まずくなりかけるところを変えたのは、やはり八郎の大きな声だった。「いやー、すまんすまん穂波ちゃん、わいみたいなイケメンにいきなりコーヒー牛乳突き出されたら、そらびっくりしてまうよなぁ! いやぁ、わいもほんま罪な男や!」「アホ、アンタのどこがイケメンなのよ、むしろエロメンの間違いじゃないの」「うわっ、きっついなぁ優奈ちゃん、そんなに穂波ちゃんに嫉妬しなくても、ちゃんと優奈ちゃんの分も買うたるさかい」「そう? じゃあ遠慮なく、そうね 『大吟醸 朱金泥能代醸蒸多知』 がいいかなぁ」「オーケイ、オーケイ……って、オーケイなわけあるかいっ、一本どんだけすんのと思ってんねん!」 八郎と優奈のやり取りで、周囲も笑い出し、雰囲気が和らいでいく。 そこに、ゆかり女史がやってきた。「あなた達、いつまでも騒いでないでそろそろ休んだら?」「何ゆうてはるんですか、夜はまだまだこれからやないですか」「元気なのはいいけれど、忘れていないかしら? ここには遊びで来ているわけじゃあないのよ。今日のこともレポートにまとめてもらうし、明日からは本格的な課外実習が始まるのよ」 ゆかり女史のその一言で、場が一気に冷めてしまった。 アキも七瀬もすっかり忘れていたが、今回の旅行も授業の一環なのだ。「そ、そろそろ休もうか、七瀬?」「そうだね」 素直に部屋に戻ろうとするアキ。 翌日のこともあるが、今日も早朝からの活動で疲れ果てているのは確かだったから。「く……そ、そんな」 八郎もがっくりと肩を落としている。 さすがの八郎もマイナス評価を喰らいたくはないようで大人しくなった。 と、思ったのは一瞬だった。「……どうせ明日から遊べなくなるなら、今夜遊ぶしかないやろ! なあ、そうやろみんな!?」 八郎の叫びに、男たちが鬨の声を上げる。 そんな男子生徒達を見て、七瀬は呆れたように呟いた。「男って、本当に阿保ね」 アキにも、その言葉を否定する要素は何もなかった。第二章第4話 終東京テルマエ学園サイトhttps://tokyo-terumae.com/→こちらから漫画編を読むことができます。

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  • 30Nov
    • 小説「東京テルマエ学園」第二章 3話「樽樽温泉旅館」

      第二章 第3話「樽樽温泉旅館」「ここが、私達がお世話になる『樽樽温泉旅館』さんよ。皆、私達は客という立場であるけれど、学ばせてもらう身でもあるの。失礼のないようにね」 ゆかり女史に言われて神妙に頷くものの、浮かれた気分は隠せない生徒達。 高山市での観光を終えて一行が辿り着いたのは、奥飛騨温泉郷の最奥に位置する新穂高温泉であった。ここは東海一の大露天風呂を有する温泉旅館で、TVの温泉番組でも何度も取り上げられたこともある有名な秘湯の宿。事前に情報を得ていた生徒達は、誰もがこの宿に泊まれること、そして温泉に入れることを楽しみにしていたのだ。「うわ、良い雰囲気の旅館だね」 声をあげたのは萌だったが、アキも全く同感であった。 旅館自体は木造で古びた感じではあるものの、むしろそれがこの地に馴染んでおり、素朴な雰囲気は都会のあくせくした時間を忘れさせてくれるようだった。「凄い、この鹿、生きているの?」「馬鹿、剥製に決まっているでしょう」 廊下に飾られている鹿の剥製を見て目を丸くしているのは汐音、対して冷静に指摘する優奈。「ここの大露天風呂は混浴が自由よ」「うおー、マジか! キタコレ!」 ゆかり女史の一言に、一気にテンションが上がる男子生徒達。 そんな男子生徒に冷ややかな視線を送り、アキ達はそれぞれに部屋に向かった。「さて、汗もかいたし、七瀬、さっそく入りに行こうよ!」「私、混浴はちょっと……」「女性専用の露天風呂もあるみたいだし、七瀬もそこならいいでしょ」「そうね、それなら安心ね」 あてがわれた部屋に入った後、夕食まで時間が少しあったので、アキと七瀬を筆頭に露天風呂に向かう女子生徒達。「素敵! いいじゃない」 露天風呂に足を踏み入れ、声を上げる七瀬。 かなり広い露天風呂で、アキや他の女子生徒も顔を輝かせている。 周囲を高い塀に囲まれているので、せっかく自然に包まれた露天風呂であるのに解放感はやや物足りないが、周囲の視線を感じなくて済むのは安心感があった。 早朝からバスでの長旅、高山市の観光と疲れを癒すには絶好の温泉である。「塩原どん、今日は静かやなあ」 心地よく温泉に浸かっている中、何気ない口調で言ったのは圭であった。圭の薩摩弁にも大分と慣れてきたアキだったが、圭は相変わらず「標準語を喋っている」と言い張っている。「そういえば、穂波さんって全国各地の温泉に行っているんでしょ? ねえ、この温泉の何かウンチクとかないの?」 テルマエ学園の屋上露天風呂でも、これでもかと温泉知識を生き生きと披露してくれた穂波である。ここ、樽樽温泉に関しても何かしら話しがあると思っていた。何か物足りないと感じていたのだが、そのせいだったのだ。「…………」 しかし穂波は何も応えず、ぼーっとしていた。「穂波さん?」「おい、穂波」「……え、何?」 アキの声にも反応を見せず、隣にいた優奈が穂波の肩を突いて、ようやく穂波が言葉を発した。「どうかしたの、ぼうっとしていたみたいだけど」「あ、うん、ちょっと疲れていたみたい。ごめん、何?」 頭を軽く左右に振り、目をしばたたく穂波。「この温泉のことで何か知っていることがあれば聞きたいなって思ったんだけど、疲れているんだったら、やめておこうか?」「ううん、大丈夫よ。そうね、ここはなんといっても日本随一を誇る、250畳もの広さを誇る露天風呂よね」「に、にひゃくごじゅうっ!? ちょ、何それ、わたしの部屋何個分!?」 両手の指を開いて数えようとするアキ。「いや、誰もアンタの部屋の広さなんか知らないし」 呆れた目つきをアキに向ける優奈。「えーと、大体10個分くらい?」「アキの部屋、25畳もないでしょうが」と、突っ込む七瀬。「至る所に配された巨石がなんとも良い味を出していて、周囲には北アルプスの雄大な景色! 美しい山の緑に囲まれた中、肌を撫でる爽やかな高原の涼風。とにかくここの大露天風呂は、『入れ!』としか言いようがない、それくらい素晴らしいロケーションよ」「へ、へぇ……そんなに、凄いんだ」 高い塀に囲まれた女性用露天風呂を眺めまわしながら言う七瀬。「そりゃそうよ、ここに来て大露天風呂に入らないなんて失礼だし、来た意味がないわ」「塩原どんがそこまでゆくれなら、入らんわけにはいかんねぇ」 頬をピンク色に染めた圭が言うと、追随するように汐音も頷きながら口を開いた。「混浴って言うけれど、女性は湯浴み着着用が義務付けられているようだし、それなら安心じゃない?」「ま、まあ、それなら確かに」 七瀬も心動かされたのだろう、肯定しかけるが。「でも、見られることはないけれど、相手のは見えちゃうけれどね」「なっ……やっぱり無理無理、そんなの無理よ!?」 穂波に悪戯っぽく微笑みながら言われ、真っ赤になって頭を振る七瀬。そんな七瀬の反応を見て笑う他の皆。 温泉のことを語り出した途端、穂波は活き活きとして見え、アキとしてもちょっと安心した。「ねえねえ、そろそろ出ないと、夜ご飯に間に合わないんじゃない?」「そうですね、夜ごはん、楽しみですね!」 萌の言葉に涼香が続き、皆で露天風呂を後にする。ちょっと物足りないとアキは感じたが、もともと夕食までの時間を使ってのことだったのだ、夜にまた今度は大露天風呂に入れば良いだろうと思った。第二章第3話 終東京テルマエ学園サイトhttps://tokyo-terumae.com/→こちらから漫画編を読むことができます。

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  • 25Nov
    • 小説「東京テルマエ学園」第二章 2話「飛騨高山と奥飛騨温泉郷」

      第二章 第2話「飛騨高山と奥飛騨温泉郷」 東京からバスに揺られること四時間以上、途中で休憩も挟みつつようやく到着した高山市。時は四月の中旬、カレンダー上では春とはいえ、この時期の高山はまだ肌寒く、カーディガンやジャケットを重ね着しないと体が冷える。しかしながら、気温こそ寒さを覚えさせるものの、高山市を包み込む熱気はそのようなことを全く感じさせなかった。 「うわぁ、凄い、なんか凄い人だね!」 まずは市内見学ということでバスを降り立ったアキの眼前には、大勢の人達で賑わっている高山の街。 「ちょうどお祭りの時期だからね。ほら、『春の高山祭』!」 隣に立つ七瀬がアキに教えるように人差し指を立てて言う。 「ああ、そういえば。ええっと、確か」 岐阜県といえばアキ達の故郷でもある渋温泉のある長野県とお隣さんである。それゆえにというわけでもないが、アキも岐阜のことは多少なりとも意識して覚えるようにしていた。かつて脳味噌に叩きこんだはずの知識を総動員して口にしようとしたところだったが、アキの言葉は他の人の声によってかき消された。 「――そう、まさに今は『春の高山祭』に向けた準備の真っただ中ですね。高山に春の訪れを告げるのがこの『春の高山祭』こと『山王際』です。これは、旧高山城下町南半分の氏神様である日枝神社、すなわち“山王様”の例祭なわけです。なお、『秋の高山祭』は『八幡祭』ですが、これは秋になったら説明しますからね!」 横から出てきて嵐のような勢いで説明をしたのは、テルマエ学園の専属ツアーガイドである林出修であった。 バスの中でも、これでもかとばかりに熱いパッションを叩きつけてきていたが、不思議と押しつけがましさというものはあまり感じられず、決して不快だとは思わなかった。ただ、圧倒されはしたが。 「うーん、素晴らしいですね、『春の高山祭』といえば屋台です! お祭り本番に向けて華やかに飾り付けられていく屋台を見るのもまた楽しいですね」 嬉々として話を続ける林出に、他の生徒達も熱心に聞き入っている。それどころか、近くにいた観光客たちまで、面白そうなことをやっている出し物とでも勘違いしたのか近づいてきていた。 「こうして見ると、観光客の人も凄く多いわね」 「うん、渋温泉とは大違いだね。何がそんなに違うのかな?」 七瀬の言葉を受けて、アキは素直に首を傾げた。 今までそのようなことを考えたことも無かった。だが故郷である渋温泉を、祖母の旅館を盛り立てるには外部からの観光客をいかに呼び込むかが重要になってくる。それも、リゾート開発の力などではなく、昔ながらの、今の渋温泉の良さを活かしてだ。 その点、百年以上前の家屋が立ち並び風情ある町並みを現在に残す飛騨高山や、あるいは合掌造りで有名な世界遺産・白川郷の集落など、昔ながらの風景を残しながら観光客を呼び込んでいるのは参考になる気がした。特に高山における外国人観光客は、年間五十万人を超えるほどだし、温泉旅館だってもちろん有名な場所が数多くある。 「何かしら渋温泉にも取り込める農法を持って帰りたいね」 と七瀬にささやくアキ。 「え、何、農業とコラボするの? そりゃ、面白い発想かもだけど」 「ていうか、何で農業?」 と七瀬がアキに切り返すと、 「そうだよ、せっかく来たんだから、お客さんを呼び込むためのテクニックや技術、手法を知りたくない? 七瀬だって」 「そりゃもちろん。ていうか、技術とテクニックと手法って同じ意味だからね、って、あーはいはい、それに農法じゃなくノウハウね!?」 「だからそう言ったじゃん、七瀬ってばー」 「農法なんて言ってないよ、アキは言ってないからね!」  呆れたように七瀬は大きく息を吐き出した。昔っからアキは、思いついた言葉をすぐ吐く癖があるのだが、言葉の意味を理解していないことが多いことを。 「……そっか。でも、そっか、アキがね」 「ど、どうしたの、七瀬? わたし、変なこと言った?」 「ううん。そうじゃなくて、まさかアキがそんな風に考えていたなんて、ちょっと驚いただけ」 「失礼だなー、私だってちゃんと真剣に進路遠望してテルマエ学園に入ったんだから」 心外だ、とでもいうように口を尖らせて言うアキ。 「……あながち間違っていないように聞こえるけれど、それって深慮遠謀ね。漢字がちょっと間違ってるよね。でもそうか、いつの間にかアキもそんな立派に育っていたんだね」 「えへへ、まあね」 「ホント、こんなずっしりと手の平に乗っかるくらい育ってねぇ」 「そこの成長!?」 いつの間にかアキの背後に回っていた七瀬は、ごく自然にアキの胸を揉んでいた。もはや熟練した痴漢の域である。 「Oh! This is “YURI” of JAPAN!」 「Lovely!!」 「May I take a picture?」 すると、なぜか外国人観光客がアキと七瀬の方に近づいてきて、写真を撮らせて欲しいとカメラを向けてきた。どうやら二人も見世物だと思われたようだ。何せ二人とも入学式と同じ高校の制服姿で、コスプレと勘違いされても不思議ではない。なぜ制服で来てしまったかというと、なんとなくとしか言いようがないのだが。 「あわわ、ご、ごめんなさい、私達はそういうのじゃないんで!」 「ただの一般人なんです!」 慌てて違うのだと説明するが、英語で話せないためなかなか納得してくれない。そんな困っているアキ達を助けてくれたのは、またしても渡だった。横から現れて外国人観光客と話すと、外国人観光客はあっさりと納得したようでその場を去っていった。 ほっと安堵するアキと七瀬に、渡は怜悧な視線を向ける。 「まったく、余計な手間をかけさせんなよな」 「な、なにそれー!? 別に助けてくれなんて頼んでないし」 「ちょ、ちょっとアキやめなよ。助かったのは事実なんだし」 「そう素直にお礼も言えないのはどうかと思うぜ。それで接客業ができるのか?」 「むっきー!」 掴みかからんとばかりのアキを、どうにか七瀬が羽交い絞めにして抑える。そんな二人に軽く口の端を上げてみせ、渡は他の男子生徒達の方へと歩み去っていく。 「本当、感じ悪っ!」 渡の姿が見えなくなってもアキはまだ納得いかないようで、鼻息も荒い。 「アキ、せっかく高山まで来ているんだから、カリカリするのやめなよ。でも、アキがそんな風になるの珍しいね」 「なんか相性が悪いのよ、アイツとは」 「アキちゃん、ナナちゃん、何しているの?」 いきり立つアキのもとに、とことことやって来たのは涼香だった。 「あ、と、涼香ちゃん、なんでもないよ」 誤魔化すように言うアキ。 「じゃあ、一緒さ行ぐべよ。林出先生がおもしぇ話してるよ!」 涼香に手を握られ、再び林出達のいるところへ向かうアキと七瀬が見たものは。 「――今も朝市などが開かれ、賑わっている「陣屋前」ですが、これはですね、元禄時代に出羽国上山藩って分かります、今でいう山形県です。その出羽国上山藩への転封で江戸幕府直轄の「天領」となったことで、藩主であった金森の下屋敷は取り壊され、後に「陣屋」 となったのです。こういう歴史的背景を考えますと――」 熱弁をふるう林出の周りには、いつの間にか人垣が二重三重に出来上がり、大変な盛況となっていた。 「な、何コレ、なんでこんなことになっているの?」 「いや、確かに林出先生の説明は面白いけれど、明らかにおかしいでしょ!?」 驚くアキ、ツッコミを入れる七瀬。 「はぁ、凄いねこれ。ちょっと、他のお客さんにも迷惑だよね」 アキが人波をかきわけるように歩いていると、斜め前方にショートボブの少女を見つけた。 「穂波さん、だよね……?」 クラスメイトであり同じ班でもある塩原穂波の後ろ姿を目にして、アキは声をかけようとした。穂波は一人で立っていて、皆とははぐれてしまったのだろうと思ったのだ。 しかし、後ろ姿ではあるがどこか違和感を覚える。穂波とは知り合ってまだほんの数日、よく知った仲ではないが、あのように背を丸めている姿を見た記憶は無かった。 「穂波さ……あわわっ」 アキが声をかけようとする前に、外国人観光客の集団がやってきて目の前を横切り、気が付けば穂波の姿は見えなくなっていた。 「アキ、どうかした?」 追いついてきた七瀬がアキに尋ねる。 「あ、ううん、別に」 その後、しばし街を見て回った後に集合した時には穂波の姿もあり、優奈と何やら話をしている様子では特に変わったところは見られなかった。もしかしたら長時間のバス旅行で疲れでもしたのか、ならば旅館に行ったらマッサージでもしてあげようか、そんなことを考えるアキであった。第二章第2話 終東京テルマエ学園サイトhttps://tokyo-terumae.com/→こちらから漫画編を読むことができます。

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  • 21Nov
    • 小説「東京テルマエ学園」第二章 1話「回想」

      原作:只野温泉ストーリー:東京テルマエ学園 共同製作委員会第二章 第1話 『回想』誰かに呼ばれたような気がした。 声の出所を探そうと周囲に視線を巡らせたところで、違和感を覚える。 立っている場所が、目に見える風景が、視界に捉えた人達が、どこかふわふわとしていて掴みどころがなく感じられた。見えているのに、実際にこの場には存在していないかのようで、例えるならば蜃気楼だどか。 なぜだろうかと首を傾げる。 気にすることはない、そんな小さなことなど無視して歩けとその声が言う。少しばかり思い悩むも、深く考えようとしたところで眩暈に似たものに襲われて立ち眩み、その場に膝をついてしまう。『……どうした、もう疲れたのか?』 声に、頷く。『だらしねぇな、さっさと立てよ。置いてっちまうぞ?』 口調はきつく、言っている内容も厳しいものだが、その声に染みこんでいる優しさと温もりを感じる。 いやだ、置いていかないで欲しい。でも、足がうまく動かない。どうすればよいのか。『余計なこと考えるから疲れるんだよ。考えずによ、楽にいこうぜ。その方が人生、良いだろ?』 本当に考えなくて良いのだろうか。 でも、考えると辛くなる。頭がくらくらする。ならば、やはり考えない方が良いのか。『あたりめぇだろ、ほら、疲れたなら手ぇひいてやっから』 温かく、懐かしいように感じるその口調に涙が出そうになる。 差し出された手を握ると、力強く握り返してくれて嬉しくなる。この温もり、この柔らかさを失わない為ならなんだって出来る、そう思えた。 引かれるままに歩いていく。どこに向かうのか分からないが、手を繋いで引っ張っていってくれるのであれば問題ないはずだ。だって、彼が間違っているわけがないのだから、何も考えずついていけば良いのだ。(……てやんでぇ、べらぼうめ!) また、声。しかも先ほどまで同じ声に聞こえるのに、なぜか別人としか思えない。(いつまでそんな手、握っているつもりだ。さっさと離して、よく見てみろよ) 言われて、素直に手を離し、手の平に視線を落とす。 なんだこれは。いつの間にか手にべったりと付着した、ぬるりとして、得体のしれないもの。先ほどまで繋いでいた手に、こんなものついていただろうか。説明してほしくて、安心させてほしくて、“彼”を見上げる。(ちゃんと見てみるんだよ、目ん玉かっぽじってよ。目をそらさずに、な) 男の表情は見えない。ゆっくり視線を下ろしていくと、男が着ているシャツの鮮やかな柄が目に入ってくる。 ……いや、それは柄などではなかった。では何だというのか。嫌な汗が背中を伝い、尋ねてみようと再び顔を上げてみると。 その“彼”はいつの間にか遥か先を歩いていた。慌てて追いかけようとするが、足が動かない。 どれだけもがいても、足掻いても、体を動かすことも声を出すことも出来なかった。 出来ることは、決して届かぬ手を伸ばすことだけだった。 震えながら、姿の見えなくなっていく“彼”に向けて、ただ伸ばすだけ――――「…………待ってっ!!」 びくん、と体が痙攣して跳ね起きる。 束の間、自分が今どこにいるのか分からなくなる。目を見開き、周囲の喧騒を視界に捉えるにつれ、ようやく少しずつ理解し始める。 先日のゆかり女史の宣言通り、飛騨高山に向かう途上のバスの中だ。昨夜なかなか寝付けなくて寝不足だったためか、はたまた適度な車内の温度と程よい揺れのせいか、いつしか眠りに落ちていたのだ。 車内を見回せば、馬鹿みたいに大声ではしゃいでいる男子生徒、お菓子を交換して食べ比べをしている女子生徒、携帯ゲームに熱中している男子。やっていることは様々だが、誰もが自分自身のことに夢中で気付かれた様子はないのが幸いだった。 だが、さすがに隣席に座っている相手には気が付かれただろうと横目でちらりと窺ってみると、源口優奈もまた目を閉じて規則正しい寝息を立てていた。 安堵すると同時に、先ほどまでの“夢”のことを考えて頭を振る。 既に夢の中身は朧になりつつあったが、それでも忘れられないこともあった。 あの声、あの後ろ姿、そしてあの――――「……くっ」 手で額を抑え、吐き捨てるように呟く。「ああもう、最低……っ」 これが、塩原穂波の飛騨高山での課外実習の始まりであった。第二章 終東京テルマエ学園サイトhttps://tokyo-terumae.com/→こちらから漫画編を読むことができます。

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  • 17Nov
    • 小説「東京テルマエ学園」第一章 12話「ドローン出現」

      原作:只野温泉ストーリー:東京テルマエ学園 共同製作委員会第一章 第12話 『ドローン出現』そんな女子たちのさざめき声が、5階の開け放った窓から男子寮の中に聞えていた。「そやからな。目的はあくまで、ハンちゃんの確認や」 大塩八郎が男子全員の懸念をよそに説明を行っていた。その手には文庫本ほどの大きさしかないドローンが乗っている。「男が男を覗いても、悪いことなんかあらへんやん」「いや……でも、ハンちゃんだけじゃないだろ。今入ってるの」「そらしゃーない。間違ってほかの女の子見てまうのは事故や、不可抗力や」「ムチャな事言うなー」「もう暗いから、こんな小っさいドローンなんか見えへん見えへん」 微かに金属的な風切り音を残して、ドロンーは5階の窓から外に飛び出した。八郎がタブレットを見ながらコントローラーを操作する。「ああ……結構風あるなぁ、難しいわ」  ドローンを一度学園のビルから大きく離し、それからゆっくりと接近させた。 「よっしゃよっしゃ、まっ正面に来たでえ……」 見たこともないような数の全裸女性が、遠景ながらちらちらと見え始めた。 「これで、急に動かしたら気付かれてしまうんや……ゆーっくり、な」 そのとき、ビル沿いの風に煽られてドローンが急に降下した。 「あかん……ぶつかってまう」 八郎が細かく操作をすると、今度ドローンが急上昇した。急速にビルに接近していく。 「うわ、やば!」 女子の一人が洗い場で立ち上がって顔を上げ、真っ直ぐにドローンを見上げた。 「あ、あかん……あれ、七瀬ちゃんのツレや。アキちゃんやんか!」  男たちが一斉に声を上げた。ドローンはアキの顔を大写しにして、その頭上をかすめるようにして浴場に突入した。そしていくつもの全裸を一瞬だけ映して茶色いお湯に着水した。 「あかん、窓閉め! 知らんぷりや! 俺ら関係あらへん」 「知らんぷりって、ドローンどうするんだよ!」 「証拠なんかあらへんやん。あれに名前書いてないし」 その頃、露天風呂では女子が全員凍り付いていた。浴槽ではお湯に漂うドローンに洗い桶がかぶせられている。 「どうするの……これ?」と七瀬。 「さ、殺虫剤?」とアキ。 「いや、ゴキブリじゃないから」 「今のドローンでしょ? 誰か覗いてたってこと……だよね?」 「お湯に沈めちゃえば、死ぬんじゃない?」 「だから、ゴキブリじゃないって」 とりあえずお湯に沈めてから引上げて、もう寮母さんは帰っているのでどうしたらいいのか男子に相談することにした。  浴室を片付けてから男子たちに来てもらい、ドローンを見せた。  「飛び込んできた?」  17人の男子が現場検証のように開放窓や浴槽を見て回ったが、当然のように何もわかるはずがない。 「警察に届けるか?」 「届けたって何もわからないだろ。これは再発防止を……」   女子たちの不安をよそに、妙に白々しい議論が行われていた。  「これ、俺たちが預かって調べてみるわ」 八郎がドローンを振って水を切りながら言った。 「アキちゃん、怪我せーへんかった?」 「うん」  浴場を出ようとしていた涼香が足を停めて、ぼそっと言った。 「何で大塩さん、温水さんにぶつかりそうになったの知ってるんだが?」  全員がその瞬間に凝固した。 「いや……何でも何も……最初にそう聞いたやんか。なあ……あれ?」 八郎が同意を求めるように振り向いたが、そこにいた男子グループはいち早く脱衣場に逃げ去った後だった。 「誰もドローンが温水さんにぶつかりそうになったなんて、言ってないわよね」 優奈が冷ややかな口調で断言すると、八郎が青ざめた。 「カメラで見てない限り、わかるわけないよねー」 萌が嫌そうな口調で言った。 「ちょっ、ちょっ! 待った! 話聞きいや!」 女子グループに詰め寄られて、八郎は両手を体の前で振って懇願した。 「この期に及んで何の話よ!」 「ワイは覗きがしたかったんやない! ただ確かめたかっただけや!」 「はあ?」 「なにをよ?」 「ハンちゃんや。女子だけで確かめよったみたいやけど、男子はどんなか確認してへんやんか。そんなん、片手落ちやないか」 「はあ?」 女子全員が揃って声をあげた。 「なに勝手な言い分……」 「女湯覗いたことに変わりないでしょ! セクハラじゃないの!」 雨あられと浴びせられる非難の声を平然と受け流して、八郎はなおも強弁した。 「セクハラ言うたら、あんたらがハンちゃんの裸見たのもセクハラやないか! ハンちゃん戸籍は男ゆうてたやん! それなのに体調べるのは男に対するセクハラやんか!」 「なにわけわかんない理屈言って……」 「だからや! 男が男調べる方が理に合ってる思わへんか? それ言いたくてもハンちゃんあんたらと風呂入ってしもたから、そやからドローン使ったんや」  女子全員が口を閉じた、あまりの屁理屈に呆れてしまったのだろう。 「まあ……そこまで言うなら、しゃーないけどね……」 穂波が首を振りながら脱衣所に向かった。 「そやろ、ワイは決してスケベェなこと考えて……」 「って、誰がそんな嘘八百信じると思ってやがるんでぇ!」 穂波が脱衣所引き戸の前で身をひるがえし、八郎の背後を襲った。 「はぐぅおげ!」 変なうめき声と共に八郎は白目を剥いた。 「うわ……すごい、卍固め……」 汐音が胸の前で手を握り締めながら言った。 「やめろやめろ! 死ぬ死ぬ! ゴングゴング!」 優奈が叫びながら八郎と穂波を引き離した。 「あああ……ヤバいヤバい、完全に失神してるよ!」 「おいが、やりもす!」 圭が後ろから人垣をかき分けて来て、八郎を引き起こして背活を入れた。 翌朝、なぜか昨夜の騒動は学園に知れていた。 朝の7時にアキたちの班は地下二階のジムに呼び出されたのだが、八郎たちの班が先に正座させられていたので、質問も抗議も口にはできなかった。 「何でこうなったのか、わかってるわね?」 口いっぱいどころではなく、全身の穴という穴にフリスクを詰め込まれたほどに寒気を覚える声でゆかり女子が言った。 「ちょい待っとくんなはれ!」と八郎。 「先生! これは!」 「お黙り!」 八郎と穂波の言葉を、ゆかり女子は激しい声で遮った。 「8人ひと組のチームだってことは、繰り返し説明したでしょ? 誰か一人がやらかしたことの責任は、全員が取るのよ!」 ゆかり女史は腕を組んで鼻でため息をついた。 「大塩八郎は無許可でドローンとか飛ばした上に、女子が入浴中の浴場に墜落させた責任! 塩原穂波は寮の担当部署に指示を受けずに勝手な判断を行った規律違反! 何か申し開きはある?」 ゆかり女子に睨めつけられて、何か言い出す者などいるはずがなかった。 「まあ……初日からやらかしてくると思わなかった、こっちが甘かったのよね」 ゆかり女子は苛立たしそうにハイヒールの音を立てた。そのいで立ちは昨日とほぼ一緒だが、シャツが濃いピンクでスカートはレザーになっている。それだけでも何か凶悪な雰囲気なのに、その上に白衣を羽織っているので禍々しい気配まで漂っていた。 「そらぁ、お互い様ってところやありまへんか?」 「うるさい!」 八郎が、ゆかり女史の怒りに油を注いだ。 「もう下らなすぎて、学園長に報告するのも嫌だわ。2班と5班は、今週中寮の浴場と学校内のトイレ清掃をしなさい! それと!」 まだ何かお仕置きが降ってくるのかと、2班と5班の16人が首をすくめた。 「ちょうどいいわ……難しいから選定に困ってたの」 邪悪な笑みがゆかり女史の唇に浮かんだ。 「第一回の課外実習のレポート、あんたたちで行ってもらうわ」 『課外実習セミナー』が全国の温泉を巡って施設や歴史や地元の風土を学ぶ旅行であることは、昨日のガイダンスで聞かされていた。だがそれをゆかり女史から、こんな不吉な口調で伝えられたくはなかった。 「行き先は奥飛騨温泉郷、高山祭で地獄のように忙しい地元の旅館をサポート。丁稚奉公状態でこき使われてきなさい! しかも行った先があんたらの評価を出すのよ、先方で働きが悪いって思われたら容赦なく減点喰らうわよぉ……もしトータル評価マイナスになったら、地獄が楽だって思える補講が待ってるわよぉ」 「ひいぃぃぃ……」 声のない悲鳴が16人の口から漏れた。第一章 終東京テルマエ学園サイトhttps://tokyo-terumae.com/→こちらから漫画編を読むことができます。

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  • 13Nov
    • 小説「東京テルマエ学園」第一章 11話「裸の付き合い」

      原作:只野温泉ストーリー:東京テルマエ学園 共同製作委員会第一章 第11話 『裸の付き合い』浴場にアキの空気に飲まれたまま引っ張られた形のルームメイト同士たちは、露天風呂で各々の感想をぼやいていた。露天風呂は想像していた通り、いやアキたちが想像していた以上に豪華なものであった。八人で同時に浸かっても余裕がある広さ、湯温は決して高くないが、ゆっくりと浸かるには丁度良いくらいだとアキには思えた。 八人の仲間、といいつつも多くは初対面。誰もがまだぎこちなく、探り合いのような雰囲気はどうしても捨てきれない。例外は、アキくらいであろう。 「でも、担任のゆかり女史って面白いわね。混浴コンサルタントだって!」 「バカ、冗談じゃないわよ。なんで男子生徒と一緒のお風呂に入らなきゃならないのよ!」 水着姿でも恥ずかしいというのに、裸身を見せるなどとんでもないと七瀬は思う。 「別にいいじゃん、見せて減るもんでもなし、男なんて単純だから胸みせておけば喜ぶし」 なぜか露天風呂でも隣になった優奈の言葉に、ムッとする七瀬。 メイクを落としたというのに、優奈の美貌は全く損なわれていない。キツめの派手さが消えて素顔くらいの方が七瀬的には話をしやすいが、話の内容は乗り辛いものだった。 「でも、いいんじゃない。裸になれば誰でも平等なんだし」 「そりゃあアキはいいわよ、そんだけ立派なおっぱい持っているんだし」 「うぎゃーっ、やめて!」 突然七瀬の揉み手を叩くアキ。 「馬鹿ね、女の色気は胸の大きさじゃないわよ。ま、馬鹿な男達ならそれで良いかもだけど、ね」 と、余裕の表情を浮かべる優奈。 聞けば優奈は既に二十歳を超えているとのことで、その差だろうか。考えてみればキャバクラで働いているのだ、未成年のわけがなかった。 「……好きで胸大きくなったじゃないし、確かに小さいころは牛乳いっぱい飲んでたから大きくなったかもしれないと思ったけどさ、それもこれも七瀬がふざけてしょっちゅう胸を揉んでくるからで、人に揉まれると大きくなるという都市伝説はまことしやかなわけで」 暗黒面に陥り、ぶつぶつとぼやくアキ。 七瀬にとっては羨ましい胸の大きさも、アキにとってはコンプレックスなのだということを知っている。それでも茶化すのは、それが二人にとってのルーティンであったから。 「でも、ここのタオルって変なデザインこつさねぇば」 話を変えたのは圭だったが、それは七瀬も気になっていることだった。 タオルは無料で備え付けのものを使用できるのだが、問題はデザインである。 そのデザインを思い出して、顔が熱くなる七瀬。 「見方によっては男のシンボルにも見えるし、ねぇ」 言いにくいことを口にしたのは萌。 「うち、恥ずかしいわー。タオルで前隠すと、だって、ねえ?」 汐音が言うと何人かが笑ったが、七瀬は聞こえないフリをする。下ネタは苦手だった。 「でも実はこれ、道祖神と言って生殖器崇拝とも言われ、けっしてイヤらしいものではないのよ」 すると、穂波が真面目な口調で話題を引き取った。 他の七人の目が穂波に向けられる。 穂波曰く、古代から男性の生殖器をかたどった造形物には、多産、豊穣などをもたらす呪術的な力をみとめ、それに対する信仰、崇拝がなされているとのこと。 長野の美ヶ原温泉街で行う【道祖神祭り】では、法被を着た男性の担ぎ手たちが集まり、男性シンボルを形どった巨大な木製のご神体を担ぎながら温泉街を練り歩き、各旅館を訪問し、宿泊客の女性を乗せて豪快な掛け声とともに除災招福・子孫繁栄を祈願するという。 「だから、“わりとヤバい祭り”で有名なのよ」 締めくくるように言うと、アキが感嘆の表情で穂波を見つめていた。 「へぇ~、そうなんだ。穂波さんってメチャクチャ博識。東京生まれなのに、なんでも知っているのね」 「私、銭湯や温泉好きで、全国500ヵ所の温泉と、東京の銭湯はすべて制覇したほどなの。温泉学を極めて、銭湯経営に取り入れたいためにこの学校を選んだのよ」 先ほど寮で見せたべらんめぇ口調から、とんでもない子だと思っていたが、こんなにも温泉に詳しいとはアキには意外だった。考えてみれば生徒の殆どは温泉旅館の関係者、言葉遣いは変でも、温泉については人に負けない何かを持っているのかもしれない。 「凄い、わたしなんか全然知らなかったよ。うー、ヤバい、なんか急に不安になった!」 頭を抱えるアキ。 「大丈夫よ、そのための『テルマエ学園』なのだから」 「えっ、あ、ゆかり女史!?」 露天風呂に姿を現したゆかりを、皆がぎょっとなって見つめる。 風呂だから当たり前だが裸で、そのボディラインには同性ながら思わず目が釘付けになってしまう。さすがの優奈も、ゆかりほどの大人の女性としての色気は持っていない。 「学園の授業をしっかり受けて卒業すれば、きちんと身に付けさせてあげる。もちろん、どこまで伸びるかはあなた達次第だけど、ね」 ウィンクをしながら告げるゆかり。 「わたし、頑張りますよ! リゾート開発なんかに負けてられないんだからっ」 威勢よく言うアキに目を向けると、ゆかりは口の端をあげた。 「その気持ちよ、さすが気合入っているのね」 「そりゃもちろん、すぐにでも講義を受けたいくらいですから」 「ちょっと、アキ」 あまり余計なことを口にするものではないと窘めようとする七瀬。嫌でもすぐに講義は始まるのだ、今この瞬間くらいのんびりしていても良いのではと思う。 実はこの学園、積極的に外国人留学生も今後取り入れていくそうなのである。C組にも4人の留学生が入ってきている。その中でインド人のカトリーナと、アメリカ人のミッシェルは全く気にすることもなく浴槽の縁に腰を下ろしてタイ人のハンと英語で談笑している。二人とも、数日前まで女子高生だった連中が怯むほどの胸を気にすることもなくはだけている。アメリカ人のミッシェルはまだ良いとして、インド人のカトリーナまでもである。七瀬や圭など一部の女子は、昔男だったハンにも見劣りしていた。 「これで混浴なんて……何て言うか、地獄だわ」 七瀬が湯に体を沈めて呻くように言った。 「混浴は、さすがに湯浴み着とかだよね」 「そうでなかったら耐えられないよ」 お湯に浮きそうな、アキの豊満な胸を横目で睨みながら七瀬が言った。♨♨♨♨♨♨♨♨つづく東京テルマエ学園サイトhttps://tokyo-terumae.com/→こちらから漫画編を読むことができます。

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  • 09Nov
    • 小説「東京テルマエ学園」第一章 10話「ルームメイト登場」

      原作:只野温泉ストーリー:東京テルマエ学園 共同製作委員会第一章 第10話 『ルームメイト登場』オリエンテーションを終えた新入生たちはデッキがあった建物正面に集まった。スーツに法被の職員が待っていて全員を誘導した。「寮はここの校舎の4階から8階までです。皆さんに渡した温泉手形。いわゆるIDカードがないと、専用エレベーターには乗れませんからねー」 C組一行は4階の入居者用ラウンジに集められた。30人が入るには少々狭く、椅子やテーブルは壁際に寄せられている。そこにはロゴが入ったブルゾンを着た男女が待っていた。「皆さん、今日はお疲れ様でした。厚生課の船井です」 スーツ姿の男性がまず挨拶した。「こちらの寮で、皆さんのお世話をさせていただきます。秋元です」 寮母さんということなのだろうか、いかにもな雰囲気の中年女性だった。「今から寮の使用細則を配りますので、後で必ず目を通しておいてください。禁止事項に違反すると、他の生徒まで不快な思いをさせてしまう恐れもあります。門限は、許可がない限り午前0時です。ただし皆さんが在学中に20歳を過ぎた場合、その日から門限は解除になります」 船井課長は図面を貼ったホワイトボードを指した。「これが4階から8階までの構造で、それぞれ部屋をご覧になればわかることですが、8人がひと部屋と言いますか洋室4部屋がある4LDKを8人で使っていただきます。トイレは3箇所それぞれについていますので不便はないと思います」「また……豪華なようなそうでないような」 男子の誰かが言った。「キッチンには必要な調理器具と、食器などは全部揃っています。ですから食堂を使わず自炊することもできます。こちらは乾燥機付き洗濯機。こちらも各部屋に3台ずつ置いてあります」 一行は実際に部屋を見て回った。寝室ひとつを2名で使用するようになっている。「もう説明を受けていると思いますが、ここで一緒に暮らす8人と言いますのは授業や作業を行うときのチームです。これは2年間変わりません」 共同スパの清掃や維持管理を行うのは業者が行うのだが、ペナルティがあれば寮生自身で、スパの清掃も行うらしい。特に門限には厳しいとのこと。「では皆さんのIDカードの左上に部屋の番号が入っていますので、お部屋に移って下さい。朝にお預かりした荷物はもうお部屋に運んであります。どの部屋を使うかは皆さんでお決め下さい。明日は9時から授業が始まります。くれぐれも遅刻はしないように」 なんとも優美な太陽の光差し込む贅を凝らした造りの女子寮の中、共有ルームのソファでアキは七瀬と溜息を吐いた。七瀬もアキにぐったりした様子を隠さない。 「疲れたぁ。この施設、ちょっとついていけない。テンション高過ぎる。学校じゃなくてリゾートホテルの間違いじゃないの?」 アキの疑問に七瀬が何処か考えるようにしながら応じる。 「なんか、ここの理事長が東京の大手IT企業経営者なんだって。ミネルヴアグループって確か野球の球団も持ってるって聞いたけど……」 「うち、お金ないのにここの入学金や授業料が払える範囲っておかしいと思ったんだ」 「道楽にしては規模が大き過ぎるし、何か目的があるのかもね」 そこに大人しそうな声が響く。アキが七瀬と振り返れば、先ほど教室で話し掛けてきた涼香の姿。涼香はアキと七瀬だと気付いていないらしい。 初めましてとおずおずと掛けられた声にアキが私だよと返すと、メガネっ子はアキと七瀬に気付いて嬉しそうにはにかんだ。 「え、嬉しい!! アキちゃんら一緒の部屋とは思わんかっただ」 「仲良くしようよ。これも何かの縁だしね」 「嬉しい」 涼香は教室と同じくアキに抱き着いて感極まったと言わんばかりに涙まで潤ませているので、アキの方は苦笑いである。気持ちはわからなくもないとアキも思う。このトンデモ学園で一人の心細さなら、アキだって七瀬がいたから耐えられたのである。 アキに飛び付く涼香を七瀬が何となく腑に落ちないのは、私の親友は同郷のアキであり、アキの親友も自分だと七瀬が自負しているからなのだろう。 「すんもはん、クラスも部屋も一緒でごわすな」 突如と扉が開いて響いたのはテレビの大河ドラマの中でしか聞いたこともないような口調。アキと共に七瀬がぎょっとすると、そこにたたずむのは教室で一緒だった大洗圭。鹿児島の霧島温泉から来た彼女は、他にとりえはないが弓道で全国大会に出たと告げた…。十分とりえがあるではないか?ますます自己嫌悪に落ち込むアキであった。 彼女の鹿児島弁の独特の口調が強過ぎて、解読と通訳にてこっずったが、圭曰く口調は標準語が話せないのレベルであるらしい。そういう問題ではないと突っ込みたいと七瀬が感じていると、部屋の奥から姿を現したのは、例の金髪の女性。 「うるっさいわねぇ。もうちょっと静かにして。わたし、これから仕事があるのよ」 あくびを噛み殺しながら告げられた言葉に七瀬とアキが仕事と首を傾げると、彼女は続ける。やはりあくびを隠さないままで……。 「源口優菜よ、出身は静岡修禅寺温泉。これから夜の仕事なの。悪いけど仮眠の貴重な時間を邪魔しないで。あんた達と違って、自分の学費を稼がなきゃいけないのあたしは」 「ああ、ここよ、私の職場。新宿歌舞伎町『MINERVA』,ここの学園長が経営してるの。キャバクラ経営もしてるのよ、ここの学園長」 優菜の言葉に集まっていたメンバー四人一同で驚きの声を上げると、突然の乱入者。勢いよくドアを開け、突如とアクロバットな動きで掛け声大きく響かせながら、どこの舞台と間違えてるのだろうと言わんばかりの華麗なダンスをミニスカートに披露する。例の八頭身の美女であった。モデルと見違わないほどのスタイルと麗しの脚線美で魅了したのちに、スカートの裾をひらりと持ち上げて片足を折って一礼。乱入者はにこりと微笑んだ。 「お邪魔しま~す。お取込み中に失礼。わたしは福井県の芦原温泉から来ました。向坂汐音と申します。先ほどもゆかり先生の方から紹介されたかと思いますが、特技はダンス。チアダンス部に所属、昨年は世界大会にも出たことがあるの」 「知ってるわよ、アメリカでの世界大会で優勝したチームね」 突然の舞台乱入者、汐音の言葉にアキは呟く。 「ああ、オリエンテーションの時にスタイルのいい美人がいるなって思ったんだ。にしても、いきなり踊り始めることはないと思うんだけど……」結構KYの汐音がアキに向かって言った。 「ねぇ、ここでもチアダンス部作らない?」 「あ、いやいや、ごめんなさい。わ、私、ダンスとかからっきし駄目で運動神経も鈍いし」 アキの濁した言葉に七瀬はすかさず被せてアキを抱き締めると、アキが悲鳴とぐぇっという潰れた声を上げた。涼香の羨ましそうな視線に、内心で勝ったと七瀬が微笑んでいる。   するとゴーっという廊下でローラーが走る音が。廊下は滑らず歩きましょうと突っ込みたくなるような音が轟き、そのまま威勢のいい音が響いて扉が開く。ヘルメットを脱いで、スケートボードを片手にした女性が失礼しまぁすと間延びした声で現れた…………。 「初めまして!! 秋田県、泥湯温泉から来ました。平泉萌と申します。」またしても派手な登場である。 「あぁバイクで登場した人。あんたの彼氏? あのさ、間違えなら悪いんだけど、野球とかやってる人かな? なんか、どっかで見た覚えのある動きをしてたような…………」 優菜の言葉に萌はからからと笑う。 「あれは私の兄貴。昨日まで兄のマンションでルームシェアしてたから。へぇ、兄貴の動きで野球選手と見抜いたか!!」 すると優奈はすかさず、 「へー兄貴なんだ。てぇってことは、兄貴、東京エンゼルスの平泉翔平!?」 何故か興奮気味の優菜に、萌はあははとペロっと舌を出す。 「えへ、バレたか。その通り、平泉翔平よ。うち、経営する旅館、2年前火事に見舞われてね~。お兄ちゃん大学行くの諦めてプロ野球に入ったの。お兄ちゃんの契約金で何とか旅館も建て直すことができて、しかも私の学費まで出してもらってるんだ」  なんて優しいお兄さんなんだろうとアキが感心すると、優菜は萌のお兄さんを紹介しろと迫りだした。何でも、優菜は東京エンゼルスのファンで、萌の兄のファンだとか。 強引に迫る優菜に萌がたじろいで、七瀬がキャバ嬢と野球選手が付き合える訳ないじゃんと突っ込めば、優菜は剣呑な瞳で七瀬を睨み付ける。 「うるっさいわね。誰が誰を好きになろうが勝手でしょ」 一触即発のムードに陥りかけた部屋に、 「やめな、優奈」の声が響き渡った。 ふと一同が、その声の方を見ると、おかっぱ頭で端正な顔立ちの女性が突っ立っている。きょとんとするアキたちを尻目に、その女性がやくざのように立膝でタンカを切ってきた。 「さぁて、皆様ご歓談中に失礼いたします!!お控えなすってくださいませ。申し訳御座んせんが、皆様の中にお邪魔致しやすよ?遅れての登場申し上げます!!わたくし、塩原穂波と申し上げやす!!」 いや、これだけど派手な登場が続くとは逆に凄いだろう。しかもなんだその口調はとアキが唖然としていると、 「縁あって、ここにいる優奈とはこれまで一緒のルームメイトでございます。根は悪い奴じゃございませんが、渡世のよしみ、今後とも仲良くしたっておくんなさいまし」 またとんでもない女が現れたものである。しかも渡世のよしみと言ったって、私たちはヤクザもんなんかではない。 何処の出身と聞けば、穂波は答えにくそうに口ごもった。 「実を言うと、東京都葛飾区柴又なの」 「え、東京なの?ていうか、普通に喋れるんじゃ?」 七瀬の声に、穂波はアハハと笑う。 「葛飾で親は銭湯を営んでます。父が病気で寝込んだので、最近は手伝いをしておりやす、ようやく身体の具合がよくなったんでこの学園に入学することになりやして…………」 「へーそうなの。でも穂波さん、いつもそんな口調なの……」 アキが突っ込むと、よく言ったと思わず七瀬はアキの冷静なツッコミに感心した。  すると優奈が口を挟んだ。「ああ、その子の間違えた方向、深く考えないで。ていうか、止めなって言ったじゃん。アンタの言葉、突っ込むしかないから。人情時代劇、ヤクザ劇好きの人に懐いてた子でね、間違えた方向に趣味を走らせて、誰が使うんだっていうべらんめぇ口調に憧れちゃってさぁ。見なよ、みな引いてんじゃん」 優菜の言葉に不貞腐れた様子の穂波に、一同で目を丸くする。 「優菜さんと穂波さんは知り合いなんだ?」 アキの言葉に、優菜と穂波はあっけらかんと返事を返す。優菜と穂波、全く印象の異なる二人だが、元々の知り合いだとは思えなかった。 しかしルームメイトのほとんどが、凄い子たちばかりである。こりゃコンプレックス感じてる余裕なんかはない、あまり物事をくよくよ考えないでおこうというモットーのアキは、「よーし、全員揃ったんだから、お風呂行こ、お風呂!!みんなで親交を深めようよ」 アキの元気な言葉に涼香、圭、優菜、汐音、萌、穂波、そして七瀬と苦笑いで返すのであった。♨♨♨♨♨♨♨♨つづく東京テルマエ学園サイトhttps://tokyo-terumae.com/→こちらから漫画編を読むことができます。

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  • 03Nov
    • 小説「東京テルマエ学園」第一章 9話「学園案内」

      原作:只野温泉ストーリー:東京テルマエ学園 共同製作委員会第一章 第9話 『学園案内』先導して学園内を案内しながらゆかり女史は説明する。 「まず授業の内容は、温泉学、経営学、ツアコン過程、集客マーケティング理論の四つから構成されます。これに外国語コースが加わります。これからの旅館経営には海外からのお客様のために外国語をマスターしなきゃあダメよ」 外国語、と聞くと、アキは今朝の出来事の事を思い出してしまう。勉強は苦手とは言え、高校までで勉強していたはずなのだが、実戦では何の役にも立たなかった。 「次に特別課外実習。これは全国各地の人気温泉地に出掛け、なぜ流行ってるのか、なぜ集客が出来ているのかのレポートを書いてもらいます。このレポートが単位取得につながるので、真面目に書いてね」 説明を受けながら、視線を感じたように思えて壁を見ると、変な絵画が飾ってあるのに気付いた。モナ・リザっぽい絵画や、フェルメールの「青いターバンの少女」のパロディ、ピカソのアヴィニョンの娘たちのフェイク、ルノワールのイレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢に似ている絵まで飾ってある。 だが、アキは「高そうな絵が飾ってある」と感心しながら眺めるだけだった。「それと私のことTVで知っている人いらっしゃるとは思いますが、私の研究課題は『混浴学』よ。世の中に「混浴温泉の素晴らしさを伝えること」がわたしのモットーだから、みなさんもヨロシクね」 ゆかり女史がそう言うと、「えー、それって俺たちも混浴体験できるんすかー?」と、とある男子生徒が聞いてきた。「もちろんよ! それもこのクラスで体験してもらうわよ」「「「えぇーーーーーー!!!!」」」その言葉を聞いた女生徒たちはたちまち青ざめ、男子生徒が「おぉー!」と歓喜の声を上げるのであった。 騒がしい中で、七瀬はアキの服をくいっと引っ張り、その耳元に口を近づけた。 「思い出した……あの先生、どこかで見たことがあると思ったら…、確かマルコの知らない世界で見たことあったのよ!ど、どうしようアキ……私、混浴とか絶対ヤダ!身体に自信ないもの…」 そういう七瀬に向けて、親指をぐっと立てたアキは能天気に「ダイジョーブだよ、私たち猿と一緒にお風呂入った事あるから」と返す。 この時、七瀬は真剣に思った。私の親友はアホだったと。つまり相談する相手を間違えたのだ。「あの、いやいやいや、猿は猿でしょ…?」「え?猿も人間も霊長類のオスじゃない?一緒よ一緒!」「いやいやいや!まったく違うから!人間のオスと猿のオスと一緒にしないで!!」七瀬はそれなりの大きさの声を上げたが、周りの騒ぎ声にかき消されていった。 4階の階段を上がった先には、ゲートのような扉がある。扉の前には「学生寮」と立て看板が置いており、入り口には「当学園の生徒以外の通行は禁ず」と書かれていた。ICカードで、ゆかり女史が扉を開ける。自動扉になった門を開けると、1号室が書かれた扉が廊下を挟んで何か所かあった。まるでホテルの客室か分譲マンションのようである。「まず、ここが学生寮。皆さんはここで暮らして頂きます。シェアハウスになっていて八人一組になっています。キッチンとトイレは共用ね」  空き部屋になっているドアを開けると、広くてきれいな部屋が目に飛び込んできた。「一応先に注意しておきますけど、男子は決して女子寮に行かないこと!」 と、ゆかり女史は男子生徒を見ながら強めの口調で言った。「すべてのドアはオートロックで、この温泉手形がないと入れません。温泉手形は絶対に失くしちゃあダメよ」 七瀬は珍しそうに部屋中を見回す。 「へぇ、マンションみたい……ずいぶん豪華じゃない。私の部屋より立派……」 アキも一緒に見回しながら「すっごい豪華……こ、こんな所で暮らせるのかぁ」 そう呟いて、アキは目をキラキラと輝かせていた。 校内食堂も広くてきれいな空間だった。「ここが食堂よ。バイキング形式で好きなものが食べられます。もちろん味も最高よ。なんたって一流ホテルのシェフが作っているからね」 入学式前に待機していたカフェも立派だったが、構内食堂はさらに立派なたたずまいがあり、どちらかと言うと高級ホテルのレストランのような雰囲気がする。「一品二〇〇円程度だから、とぉってもリーズナブルよ……食べ過ぎに注意ね。ちなみに、ここもカフェになってて、お酒も飲めるのよ。ここから見る東京の夜景ってきれいよぉ……ただしお酒は二十歳からね!」「へぇーっ、スイーツまで選べるんだぁ……確かに、食べ過ぎに注意しないと……」 アキは、鮮やかな色の聞いた事もないようなオシャレなスイーツが並んでいる光景が思い浮かべていた。「そうだよ、アキ……食べ過ぎてそれ以上育ったらどうするの?」「なんか言った、七瀬?」「なぁんでもない」 七瀬はわざとらしく口笛を吹きながら目を逸らした。「ここがレクリェーションルームよ!」 生徒の間から「わぁ!」という歓声が上がる。「ミニシアターやカラオケの舞台もあるし、ビリヤードやダーツ、それに卓球台まであるわ!」 みんなで談笑したり、遊んだりする交流の場になるのだろう。「ちなみにカジノゲームなんかもできるわよ。もちろん換金はできないけど雰囲気だけは楽しめるわよ。カジノ法案が国会で通ったのも皆さんはご存知ね。いずれ日本はラスベガスやマカオのようにホテルの中にカジノが出来るんだから、ここでカジノの勉強もすればあなたたちもプロのディーラーになれるわよ」 そして次に案内されたのは体育館だった。「ここではバレーやバスケット、テニスやフットサルまでできるわよ」  アキの母校の体育館よりも広くてきれいな施設だ。 「すっ、凄い」 アキがそう言うと、ピカピカの床に声が反響した。 「先生!質問があります」身長は170㎝近くはあろうだろうか、すらりと伸びた手足と、小顔で目鼻立ちが整った顔立ち。いかにも八頭身ばりの女子生徒から質問が上がった。 「ゆかり女史と言ってね」 「はい、ゆかり先生。ここってダンスのレッスンできるところってあるんですか?」 「あるわよ。この体育館の向こうはアスレチックジムスタジオとエアロビクスやダンスもできるような一面鏡張りのスタジオもあるわよ」 女子生徒は言った。 「えー、感激!ここでもダンスできるなんて夢みたいです」 ゆかり女史は言った。 「たしか、あなたって高校のときチアダンスで世界大会に出場したメンバーだったよね」 「はい、先生。福井は芦原温泉からやってきました、向坂汐音と申します。福井県立福井北高校出身。チーム名は「スターウォーズ」でキャプテンやってました」 えーっていう女子生徒たち。アキもそのチーム名くらいは知っている、確か5年連続してその福井のチームは全米制覇したはず。そんな凄い人がなんで温泉経営の学校なんか入ってきたのだろうか。私なんて運動とは全く縁遠い人だし、まして胸が高校の時から大きかったせいか走るたびに胸がゆれ、体育の時間の時なんかは男子生徒の注目になったりなんかして、どちらかと言うと体育は嫌いな授業だった。 「そして……」 橘ゆかりはここぞとばかりにタメる。 「ここが、みんなが入れる浴室よぉ!」 『テルマエの湯』と書かれた場所の暖簾をくぐると、浴室があった。中は男湯と女湯の看板で分かれている。ゆかりは、まず男湯の扉を開け、生徒全員を中に入れた。湯の匂いから、そこが天然温泉である事が分かる。「ここは、200mボーリングして掘り当てた天然温泉ね。ジェットバスから寝湯、ネオン風呂から露天風呂まで付いてるわ」 「そしてここはサウナ」 「あえて部屋に浴室が付いてないのは、ここで他のクラスの人と交流を深めるため、という意図があるの。裸になれば皆同じ。みんな平等よ。」 「入浴時間は、朝六時から夜は十二時まで。ただし十時~十五時までは清掃タイムだから注意が必要よ!」 ゆかりの説明にも熱が入り、早口になっている。 「うちの旅館のお風呂よりも凄い!」 女子生徒の誰かがそう言った。 並の温泉よりも施設が充実している。これが学校施設の一つだとは思えないほどの豪華さである。屋上の露天風呂からは東京全体が見下ろせる。今日は晴れていて、より遠くまではっきりと見えた。 長野の山は見えるだろうか、とアキは目を凝らしてみたが、そこまでは確認できなかった。ここは新宿、当たり前である。  「ゆかり先生、ここも男女混浴で入ってええんですか!?」 手を上げて質問をしたのは八郎だった。 期待に満ち満ちた顔をしており、他の男子も程度の差はあれども同じような気持ちを抱いていることが分かる。「馬鹿ね、入り口にちゃんと男湯、女湯と書かれているの見えなかったの。私の『混浴学』はあくまで私の授業における時だけ。普段、そのようなことをしたら、覗きどころか侵入罪で断罪しますからね、体罰程度ではすまないわよ」「ええっ、そんな殺生なぁ」「それにエロ目的の混浴行為は許しません。いいですね?」 不平、未練を残しているような八郎だったが、ゆかりから釘を刺されて元気なく萎れてしまった。発言内容はただの助平心丸出しだったのに、消沈ぶりがあまりに情けなかったので、アキを含め周囲からは、またしても笑いが起こった。 ところが、ここで誰一人考えもしていなかった事態が発生した。 「チョト、イデスカ?」留学生の一人が手を上げた。タイの留学生でニムライチャッカ・ソムバルメークンだ。本名は長いから愛称の『ハン』で呼んで欲しいと、留学生の自己紹介の時に言っていた。 「ワタシ。国ノ、戸籍、オトコデス。ドッチ入リマスカ?」 一瞬、全員がその場で固まった。 「ええーっ?」 次いで全員が声を上げた。 「ツゥーイヤーズ。二年、マエ『レディーボーイ(ニューハーフ)』ナリマシタ」 「取っちゃったの?あんた」 先ほどの金髪の生徒が平然と聞くと、ハンはにっこり微笑んで頷いた。胸の膨らみも、顔も体のラインも女性にしか見えない。 「学園長は、知ってるんだよね?」とゆかり女史が言うと、 「チャーイ(はい)」 猫が鳴くようなエロい声でハンが答えた。 「マンゴロー、サンガ、ヘッドティチャーに、オネガイしてクレマシタ」 「マンゴローさんって、誰?」 「マンゴローサンは、シンジュク2丁目の、有名ナヒト。ワタシの国デ、レディボーイタクサンお世話ナテル」 「あー、何となくわかったけど……まあいいや。ちょっと、いちお、体見せてくれる?」 そう言って金髪の女性はハンを女湯の方に連れて行った。他にも数人の女子が二人について行った。やがて悲鳴に近い歓声がどこかから聞えてきた。 「文句なしに女だわ」 ラウンジに戻ってきて金髪の女性が言った。 「体で負けるの、何人かいるだろうね。あれ男子と一緒にしたら男子の方が可哀想だわ」の声が起きたのであった。 「まぁ、いいわよ。あなた女性として登録されているし、当然女湯に入っても差し支えないようだし」 そして、ゆかり女史から生徒たちに向かって最後の言葉が発せられた。 「これだけの勉強と実地研修そしてインターン実務の他に、あなたたちは自力で学費を支払うためにアルバイトをしなくちゃいけないのよね。大変だと思うわ……アルバイト先と仕事や勤務については詳しいことを学校に報告。まあ、よほど変な仕事じゃないかぎり不許可にはならないでしょうけど。質問があったらどうぞ」 「すんまへん」 またもや大塩八郎が手を上げた。何事にもめげない性格は羨ましい限りである。 「またあなたなの。名前と出身地があれば名乗ってね」 「せんせ、わいの名前は大塩八郎、大阪生まれの大阪育ちでっせ。実家は『なにわ温泉物語』つー、スーパー銭湯チェーンやっとります」 わかりやすい関西弁だった。 「わいは奨学金免除なんやけど、アルバイトはしてええってことでっしゃろか?」 ゆかり女子は、何か誘うような粘液質の笑顔で頷いた。 「この東京テルマエ学園を経営するミネルヴァグループは、入学金や授業料欲しさで生徒集めをしている学校とは違うの。より良い温泉旅館・ホテル経営を目指す学生のために私財を投げ打って建てた学園なの。よって学生の抱え込みや青田刈りを考えているわけじゃないわよ。ミネルヴァが奨学金を出して、あなたたちは勉強しながらそれを返済することができるっていう制度があるということがこの学校の唯一の利点。ここにいる何人かの生徒は、高校を卒業したらそのまま家業の温泉宿を手伝う以外に選択肢がなかった人もいるはずよね」 アキと七瀬は一瞬顔を見合わせた。そんな身の上は自分だけではないと、さっき白布涼香や大洗圭と話していて知ったのだ。 「それとは逆の人もいるわね」 ゆかり女史のぽってりと艶やかな唇、その端に意地の悪そうな笑みが加わった。 「いずれ家業を任せなくてはならないのに、仕事に対する理解がなくお客様をクレジットカードとしか見ていない……そんな問題を抱えてここへ送り込まれた人もいるらしいわね」「わ……ワイは、そんな……」 八郎がたじろいだが、ゆかり女史は彼に視線を向けたまま小さく首を振った。「あなたがそうだとは言っていない。ただそんな個人の事情は、その温泉が抱える悩みそのものでもあるの」 ラウンジの後ろにあるドアが開いて、スーツやトレーニングウエアの一団が入ってきた。 「まあそれば別のこと。あなたたちが学ぶのは温泉施設の経営と運営、運営は施設のなかで実際に働くのが早いし有効なのよ。つまり現場での教育……それじゃ私の話はここまで。あとは職員の人たちから寮の説明するから話を聞いててね」♨♨♨♨♨♨♨♨つづく東京テルマエ学園サイトhttps://tokyo-terumae.com/→こちらから漫画編を読むことができます。

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  • 30Oct
    • 小説「東京テルマエ学園」第一章 8話「ゆかり女史」

      原作:只野温泉ストーリー:東京テルマエ学園 共同製作委員会第一章 第8話 『ゆかり女史』「よかったぁ、アキと同じクラスで」七瀬は、アキの隣の席から声を掛けた。「うーん、七瀬と同じクラスなのはよかったんだけど、ほら、あっち。あっち見て!! 絶対によくないかも!!」 アキの言葉に七瀬が視線を向けると道案内を申し出た青年の姿があった。「あ、あの人、ここの生徒だったんだ?」「うぇ~。何であんなのと同じクラス……。ユーウツだわ」「あのぉ!あらためまして白布涼香です。よろしゅうお願い申し上げます。仲良うすたってください」 何処か内気げな雰囲気は眼鏡からくるものだろうか、いや、この子の雰囲気だなとアキは緊張した面持ちのメガネっ子に笑いかけた。「こちらこそよろしくね涼香ちゃん。あ、この子は同郷で親友の七瀬。星野七瀬。東京で女優を目指してるんだ」すると七瀬が目を吊り上げてアキに怒る。「余計なこと言わんでいいよ、アキ」「いいじゃん、七瀬。別に話をしたって」「あんたはすぐに人にぺらぺら話すから、私の商品価値が落ちちゃうじゃない」「商品価値って、まだオーディションも受けてもいないのに。しゃべって減るもんじゃないでしょ」「うるさい!」とますます怒り出す七瀬。元来女優を目指している割には内向的で、前に出るのが嫌いな七瀬は、天真爛漫なアキに常日頃から辟易していることもある。二人の掛け合い漫才のような会話に、くすっと笑った涼香は、「まぁまぁ、二人って仲が良いんね。わだす、上が兄二人の末っ子だったもんで、女の子の友達ずっと欲しくて……。アキちゃん、ナナちゃん友達になってもらってもええんでけろか?」アキも目を輝かせ満面の笑顔で、「もちろん!!涼香ちゃん。私も兄弟もいないし親もいないんで、友達は一人でも多い方が楽しいよ。仲良くしてね」 アキの言葉に涼香は驚いたが、感情表現が豊かなのかもしれない。和やかな会話に声を弾ませていると、八郎が調子よく3人の会話に割り込んできた。「まぁまぁまぁ、お嬢さん方。今後2年間お世話になりますさかい、よろしゅうに」「え、あ、うん、よろしく」と七瀬が相変わらず愛想のない返事をした。「ええー、ちょっと無視せえへんといてや」 わかりやすく落ち込む八郎。その姿を見て、くすくすと笑うアキと七瀬。 新しい学園でどうなるかと思ったが、思いのほか早くに級友たちと馴染めそうだと安堵していると、教室の外からコツコツとハイヒールが床を打つ音が聞こえてきた。ハイヒールの音は教室の扉の前で止まり、いきなり教室の扉が開けられた。その瞬間、姿を見せたのは、胸元の大きく開いたオフホワイトのブラウスに豊かな胸の谷間を覗かせ、ぴっちりとしたタイトスカート姿の、妙齢の女性だった。 服装だけでなく髪もメイクも派手に決めており、色気むんむんのその姿に、教室内の男子生徒達の視線が集中する。 八郎などは、あからさまに鼻の下を伸ばして胸を凝視している。「あれが先生? キャバクラか何かと間違えてるんじゃないの?」 小声で呟く七瀬。 男子たちの唖然とした視線を特に気にした様子もなく女性は教壇に立ち、生徒達を見下ろす。その視線を受けて八郎が体をビクリと震わせる。「初めまして、皆さん。私がこのクラスを受け持つことになった橘ゆかりです」ホワイトボードに、あえて赤のボードペンで大きく「橘ゆかり」と名前を書いた。「みなさん「ゆかり女史」と呼んでね」 外見に違わぬ艶めかしい声色に、男子生徒達は喝采をあげる。一人、渡だけが冷めたように腕組みをしたまま前方を凝視している。 一方で女生徒達は置いてけぼりをくらったようになっている。 まさか学園の教師がこんな色気ばっちりの、同じ女として脅威を感じるような人とは思ってもいなかったのであろう。 ゆかりが片手をあげると、測ったかのように教室内のざわめきが収まる。ゆかりは満足そうな笑みを浮かべ、口を開いた。「前置きはさておいて。本日はオリエンテーション。特に授業をするようなことはありません。今から皆さんに学園の案内をするわよ、ついてらっしゃい」 いきなり学園の案内をするなんて何なのだろう。あっけに取られながらも ゆかりの言葉を受けて席から立ち上がり、生徒達は教室を出て行く。 アキと七瀬も並んで歩く。 そのアキの隣で、七瀬が首を傾げながら言う。「あの先生、どこかで見たことがあるような……?」♨♨♨♨♨♨♨♨つづく東京テルマエ学園サイトhttps://tokyo-terumae.com/→こちらから漫画編を読むことができます。

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  • 26Oct
    • 小説「東京テルマエ学園」第一章 7話「萌登場!」

      原作:只野温泉ストーリー:東京テルマエ学園 共同製作委員会第一章 第7話 『萌 登場』「今から皆さんに温泉手形をお渡しするので、各自大事に持つように」事務長の轟と名乗る人物から渡された温泉手形が配られると生徒達がざわめく。これは学園からの支給品であり、クラス分けが記載されているとの言葉に続けて、とんでもない説明が始まった。一見すればただの温泉手形に見えるのだが、ICチップ搭載の思い切り現代のハイテク技術を詰め込んだ代物で、個人情報のデータ。学園外出の際の出入り、浴場の出入り、学食の決済からクラス分けに寮の部屋割りまで埋め込まれているという。紛失してもGPSが埋め込まれており、どこに置き忘れたのかスマホアプリと連動しており直ぐに判る。「あ、わたしC組」とアキ。「え、アキと一緒よ」と喜ぶ七瀬。「わだすも一緒だ、うれしー」「ほんとだ、おいもおんなじC組」と涼香と圭。何処に驚いてよかったのか見えなくなってきた二人の不安を裏切って、同じクラスと知ったときは何だか込み上げるものがあった。アキは七瀬と同じクラスになれたことへの喜びを噛み締めた。その様子を見ていた八郎が、「みなさん、感謝せなあかんで。なんと俺もおんなじC組」アキは、さっきまでの喜びもつかの間、なんて不幸なんだろうと呟くのであった。変な横やりも入ったが、セレモニーやクラス分けも無事終了して、午後のオリエンテーションが始まる間、講堂横のカフェで食事をしながら談笑しているアキたちのもとに、都庁の方向から雷のような轟音が響いてきた。緑色の大型バイクが都庁の方向からもの凄いスピードで走ってきて、学園前の信号が黄色から赤に変わる直前に交差点に飛び込んだ。それは派手なシフトダウンでひときわエンジン音を高めて、学園の前でぴたりと停まった。カフェの中がざわめき、男子が何人か立ち上がっている。「うえっ?」 アキの背後で奇声が上がった。金髪で派手な化粧をした女性が立ち上がっている。「ちょっと……あれ」「何よ、迷惑だから座んな。あんたバイクなんか興味あったの?」 派手な女性の隣にいた、アキたちよりは年上に見える女性が言った。「バイクじゃなくて、乗ってる男よ」「知り合い?」「もしかしたらね。まあ……こっちが一方的に知ってるんだけどさ」 アキと七瀬が首を伸ばして道路の方を覗くと、バイクは停止しているのに地響きのようなエンジン音を響かせていた。バイクに跨がっていても長身とわかるライダーの後ろから、女性が身軽に飛び降りた。お揃いのヘルメットを外してバイクのライダーに渡し、大きなカバンを背負いなおした。「萌、兄ちゃん行くからな」「うん、兄貴も元気でね」 バイクが二度三度と落雷のような轟音を立てから、もの凄い勢いで走り去った。それに手を振って見送り、女性は急ぎ足で受付に向かってきた。「すいませーん! 遅れまして、平泉萌と申しますー!」「平……泉……ぃ?」 立ち上がったままの女性が呻くように言った。「うるさいよ、何なのよ」「何でもない!」 女性は乱暴に腰を下ろした。やがて新入生を教室に誘導する職員の声が聞えた。♨♨♨♨♨♨♨♨つづく東京テルマエ学園サイトhttps://tokyo-terumae.com/→こちらから漫画編を読むことができます。

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  • 23Oct
    • 小説「東京テルマエ学園」第一章 6話「入学式」

      原作:只野温泉ストーリー:東京テルマエ学園 共同製作委員会第一章 第6話 『入学式』 どう考えてもこれを作った人間は何を考えてるんだと突っ込みたくなったのはアキだけではなく七瀬も同感らしい。現代日本の東京都心に突如として現れたのは、確か歴史の教科書か何かで見たことのある古代ローマの神殿とマンションが合体したような外見だった。誰が表現してもたぶんそうなるだろう。「な、なにこれぇ~!!?」「いや、古代ローマ王朝の神殿……」 呆然と答える七瀬にアキは自分の認識が間違っていなかったことに安堵と不安を覚えるも、それだけで現実は二人を逃がしてはくれない。異様な建物の目の前に不気味に鎮座する招き猫の像が手を挙げる。二人して思わず抱き締め合ったアキと七瀬の前に、開いたのはこの異様な雰囲気を醸し出す建物の扉。「ローマ王朝神殿で自動ドア?」「七瀬、もう突っ込んじゃダメ」中に入ると大きなパラソル付きのテーブルがいくつも置かれ、オープンエアのカフェになっていた。そしてそこには『東京テルマエ学園新入生受付』と書かれた大きな看板が立っている。「テルマエ学園新入生のかた、どうぞこちらへー!」 スーツの上に法被をはおった女性が、何かの呼び込みのように声をかけてきた。「郵送した入学書類をお出し下さーい。はい、お荷物はこちらでお預かりしまーす!」 アキと七瀬は何が何だかわからないうちにカードを首にかけられ大きな名札を胸に付けられ、パラソル下の席に引っ張って行かれた。ここまで案内してくれた男子にお礼を言う余裕もなかった。「遠いところお疲れ様でしたー! メニューがそこにありますから、お好きな飲み物言ってくださいねー! 何杯飲んでも無料ですからー!」 渡されたメニューはムーンバックスのもので、七瀬が振り返るとさっきの受付横にはムーンバックスの黄色い移動販売ヴァンがあった。「ダブルショコラ、フラペチーノ……お願いします」 七瀬が頼んでアキに視線を向けると、緊張がほどけたアキは完全に魂が抜けている有様だった。「……ふたつ」「この人、大丈夫だが?」アキの向かいにいた女性が声をかけてきた。「あ……駅で、迷って、ちょっと疲れてるだけで……済みません。たぶん、大丈夫」 アキが反応できないでいるので、七瀬が代わりに答えた。色白で少しふっくらした顔立ち、大きなレンズのメガネが何となく愛嬌を感じさせる。名札には『白布涼香 高湯温泉玉湯旅館(福島)』と書かれていた。「渋、温泉って……言うんだが?」 これが福島弁なのだろうか。涼香の言葉は抑揚がない平坦な話し方で、語尾だけが上がる。「長野市の奥で……志賀高原の麓にある温泉旅館です」とアキが言うと、「高湯も……ふぐすまの、安達太良山の中腹にある凄い山ン中だが」涼香は少しはにかんだ表情で答えた。フラペチーノが来た。涼香と二人でアキの手を持って、プラカップを持たせてストローを口まで持っていってやった。「失礼……しもんで」 もう一人、職員に案内されてきた子が聞き慣れない挨拶をしてきた。「いけんしもしたか?」 その子もアキの有様を見て心配したようだ。名札には『大洗 圭 霧島温泉清流荘(鹿児島)』と書かれている。「えーっ、薩摩おごじょ?」 七瀬が思わず言った。 職員まで心配してアキの様子を見に来たが、フラペチーノをひと口飲むと何とかアキの魂は戻ってきた様子だった。 訛りの強い二人と、自分たちの温泉についてぽつぽつ話し合っているうちに待合カフェの席は埋まってきた。そこにいるのはだいたい同じ年齢の男女で、少し女性の方が多い。 予定ではもう入学式が始まるはずだが、法被を着た職員達は落ち尽きなく行き来して頻繁に時間を確認している。職員たちも入学式の定刻前になったのか「時間です。そろそろ講堂にお入りください」と生徒たちに、しきりに呼びかけている。職員に促されながら、アキと七瀬、涼香、圭の4人が講堂に入っていくと、講堂の中は多くの生徒達で満たされていた。全員がテルマエ学園に新たに入学することになる生徒達だ。講堂はビルの1階から2階にある『ユヤ・バルネア新宿』というスパ施設のホールだった。天井まで20mはあるのだろうか、古代ローマの神殿を模したホールに似つかわしくない普通のパイプ椅子が並べられ、仮設らしいステージも設けられていた。強い花の香りが会場を満たしている。 新入生全員が席についた瞬間に、もの凄い音量でファンファーレが鳴り響いた。「ひえっ?」アキの隣で、七瀬と涼香が椅子から飛び上がった。 手で音楽を止めるように指示しながら、入学案内の写真で見たカーネルサンダースのような男性が演壇に上がった。「馬鹿げた演出はしなくてよろしい。ど肝を抜かせて楽しんでいただくのはお客様だ」 そこでカーネルサンダースは新入生を見回し、小さく頷いた。見渡す限りのステンドグラスと大きなパイプオルガンは、まるでローマの大教会を訪れたように錯覚してしまう。 アキが首を傾げて隣の七瀬にケンタッキーの社長がどうしてここにいるんだろうねと囁くと、七瀬は頭を抱えた。「バカ、あれ、学園長だよ。この学園の長!! ていうか、ケンタッキーの社長じゃなくて、あれってお店に飾っている人形でしょ」 壇上では年のころは60歳を過ぎたとおぼしき白髪白髭の老人が口を開き始めた。「新入生諸君、ようこそ。東京テルマエ学園へよくいらしてくれた。記念すべき学園の誉れ、一期生諸君にまずは歓迎を申し上げる。私が学園長のミネルヴァです。」 ざわざわしていた場内も、しんと静まり返っている。「この学園の設立の目的は古き良き日本の伝統文化を守り語り継ぐ後継者達の育成を目的としておる。いわばホテルや温泉旅館経営のための初の専門学校である」学園長は言葉を続けた。 「この学園には入浴施設だけでなくスポーツ施設やアスレチックスタジオ、図書館、飲食店、マッサージ室、娯楽室など、小さなテーマパークが存在する。何故か?この学園の様式美を用いたローマに置いて、風呂というものは娯楽施設であったということを学園生徒諸君の身で持って体験して頂くためになる」 「この学園で、浴室とは何か、温泉とは何かを自分にとっての答えを見出し、温泉についての学や教養から経営まで、二年かけてじっくりと学んで頂きたい。若き伝統の後継者達、諸君をミネルヴァと東京テルマエ学園は心より歓迎する。早速ではあるが、クラス分けから発表していこう」すると学園長の声に突如と場違いな声が響いた。表か裏かさっぱり判らないスーツを着た、ボサボサの頭の背の低い小太りな男が、アキたちの座っているパイプ椅子のところに割り込んできた。どうみても、この日のためにあつらえてきた洋服なのか、寸法が合わなかったのだろう。袖が手の甲のところにまで被っている。 「悪い悪い、遅れてしもてすまんな。あ、えろうすまんへん、兄ちゃんちょっと席変わったってくれへんか? え、ああ、ちゃうちゃう。オレ、そこにおる隣のきれいなベッピンさんとお近付きになりたいねん。むさ苦しい野郎の横やと入学式も楽しないしなぁ。オレ、名前?あぁ大塩八郎っていいまんねん。大阪はなにわ区ちゅうところから来ましてん。ちょっとベッピンさん、お名前聞かしてぇや」アホかこいつ?とアキは自分というものを差し置いて七瀬に言い寄る男を睨み返している。あきれてるというか感心してるというか。七瀬が美人なのは理解できるが、突如と現れて初対面の女の子になんて態度だろう。アキたちにすると物怖じしないのレベルではなく、まるでKYなんじゃないだろうか。これが都会の標準なんだろうか。七瀬も何とも言えない顔をしている。さらに相手は金ぴかのスマホを取り出したのもギョッとした。こいつどんな趣味なんだ。金銀張り付けたスマホのデコレーションに七瀬は嫌悪感を抱いたようで、ちょっかいを出してくる彼を完全無視と決め込んでいる。「いやぁ、クールビューティでんなぁ。ますます気に入ったで!! ベッピンさんがつんと澄ましかえっとるのも絵になってええわ!! 目の保養、目の保養」さらに八郎が立て板に水のごとくまくしたてる。「なんやここ、どうみても風呂屋やんか?うちも大阪でスーパー銭湯経営しとるんやけど、まだうちの方が上品やで。どうせならパーッと金ピカにしたらええと思いまへんか? ほれワイのスマホなんか18金のカバーに24金ビリケンさんで、合わせて56金でんがな」 八郎また勝手に一人で大笑いしたが、七瀬は何が面白いのかわからなかった。「そこ突っ込んでや! 『足し算間違っとるやんけー!』って」七瀬は八郎を相手にせず、醒めた表情でそっぽを向いている。アキと七瀬も、まさかこんな図々しい男が、このあととんでもない事件を起こすとは知る由もなかった。♨♨♨♨♨♨♨♨つづく東京テルマエ学園サイトhttps://tokyo-terumae.com/→こちらから漫画編を読むことができます。

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  • 20Oct
    • 小説「東京テルマエ学園」第一章 5話「東京に降り立つ」

      原作:只野温泉ストーリー:東京テルマエ学園 共同製作委員会第一章 第5話 『東京に降り立つ』大宮で新幹線を降り、湘南新宿ラインに乗り換えた。まだ東京にも入っていないと言うのに、大宮駅の混雑はアキと七瀬を怯えさせた。そして新宿駅。世界一混雑する迷路のような駅中を、二人は目眩を感じながら大きなトランクを曳いて歩いた。「こ……ここで、いいんだっけ?」 二人がよく知っている都会は長野駅周辺だけで、長野駅は東口と善光寺口しかないのだから迷いようがなかった。しかし新宿駅は西口、東口以外にも、さらに南口やら東南口やらがある上に、長野市の人間が全部集まったように思えるほど人だらけだった。 学園への案内は『都営大江戸線都庁前駅か西口改札を出て都庁方面への地下道を真っ直ぐ』だったが、二人は中央西口改札から出てしまった。そして小田急線改札の前で呆然と立ちすくむことになった。「大江戸線って……どこにあるの?」「どっち……行ったら、いいの?」 アキが半泣きになっていた。「ちょ……ちょっと、待って……」 七瀬がスマホのマップで位置を見ようとしたが、建物の中なので位置が検出できなかった。二人ともパニック状態で、思考がまったく働いていない。 花屋の店員に西口改札への行き方を教えてもらい、コンコースの中をよろよろと歩いた。そして西口改札の前の人の流れを見て再び立ちすくんだ。「今日、お祭りでも……あるのかな?」 アキが呆然とつぶやいた。あちこちで人に衝突しながらエアポケットのような安全な場所に移動して、もう一度案内図とにらめっこした。大江戸線を探そうとしたが、あっちにもこっちにも『○○線』と矢印が向いていて何が何だかわからない。「わかんないからもう、地上に出よう」 エスカレーターで地上に出ると事態はさらに悪化した。七瀬も完全に方向がわからなくなったのだ。「都庁って……どれ?」 小田急百貨店のビルから出た二人の目には、林立する西新宿の高層ビル群がまるで行く手を阻む巨大なモンスターのように見えた。「これ都庁で……あそこのビルの先だから、きっとそこ真っ直ぐだよ」案内板を見て、魂が抜けかかっているアキの手を引いて七瀬は横断歩道を渡ってビル群に向かおうとした。だがそこはバス乗り場で、ロータリーの真ん中で行き止まりだった。アキが顔色をなくしてバス乗り場の柱によりかかった。まるでダンジョンに捕らわれてしまったような有様だ。「あそこ……ぐるっと、回って行かないとだめなんだ」 まだわずかに判断力を残している七瀬が呆然とつぶやいた。バス乗り場の端にはまた地下へと続く階段があるが、どこに繋がっているのかわからないので降りたくなかった。「あの……済みません。この階段降りたら、都庁の方に行けますか?」 バスを待っている人に聞くと、どうやら新宿スバルビルの地下にある『新宿の目』の前を通って地下道で行けるらしい。言われたとおりに巨大な目のモニュメントの前を通り、無限に続く真っ白な地下道を二人はよろよろと歩いた。そのうちに、地下道を歩いていたのにいつの間にか地上に出た。道ばたの大きな地図を見ると、どうやら都庁の近くまでは来ているらしい。地図と案内図を見比べて、学園がある場所は何となくわかった。しかし二人とも気力が尽きかけていた。曳いているキャリーケースはいつの間にかコンクリートブロックのような重さになり、はき慣れたローファーは鉄下駄のように感じられた。「もうすぐ……着くよ」 七瀬が虚ろな声で言ったが、二人ともそこから動けなかった。「アキ、何してんの。もう行かないと本当に間に合わなくなっちゃう。場所だってよくわかってないんだから。もう、東京って本当ごちゃごちゃしていて分かりづらいよね」 文句を口にする七瀬を横目に、改めて時間を確認すると、入学式までさほど余裕はなかった。 これは確かに早く学園に向かわないと、と動き出そうとしたところで、またしても横から邪魔が入った。「Entschuldigen! Was willst du fragen?」 突如と謎の言葉で話しかけられて、アキは真っ蒼になった。固まったままで、隣の七瀬をつついてひそひそと交わす。「え、ちょっと、七瀬。この人何を言ってんの?」「し、知らない、知らない、流石に私も解んない!!」 及び腰のアキと七瀬に困ったような表情を浮かべた相手の前に、一人の青年が現れて流暢な口調で話し掛けた。「Can you speak English? Brauchst du hilte? Are you in torouble on the road?」「DAnke! I can speak English Yes I’m lost」 もはやどちらが何を喋っているのかも判らないままのアキと七瀬を置いて、会話が繰り広げられた後に、外国人男性はかろうじて二人にもわかるthank youという台詞でにこやかに去っていった。「…………す、凄い。通訳できてる!!」「君たち、東京の子じゃないみたいだけど、迷子?」 青年の言葉に七瀬がむっとしたように口を尖らせる。いや、この場合は青年を責められないんじゃと内心でアキは友人を宥めながら、青年に応じる。「あ、えっと」「迷子ではありません。私たち、東京テルマエ学園という場所に向かうところなんです」「ああ、テルマエ学園ね。そこの新入生か。じゃあ、ついてきなよ」 これには流石にアキがむっとしたが、隣の七瀬が今度は窘める。物には言い方があるだろうにと思うアキを宥める七瀬と、後ろの二人を気にした風でなく歩き始めた三人組が都心の煌びやかな街中を暫く歩くと、高層ビルの中から明らかに異様な建物が現れた。「ここだよ、東京テルマエ学園」♨♨♨♨♨♨♨♨つづく東京テルマエ学園サイトhttps://tokyo-terumae.com/→こちらから漫画編を読むことができます。

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  • 15Oct
    • 小説「東京テルマエ学園」第一章 4話「上京」

      原作:只野温泉ストーリー:東京テルマエ学園 共同製作委員会第一章 第4話 『上京』4月5日の午前5時。アキは布団を畳んで、シーツと枕カバーを外した。パジャマを着替えていると、廊下で猫が襖を開けろと催促をする。襖を開けると猫が部屋に入ってきて、畳に座ってじっとアキを見上げた。「チロ。私が帰ってくるまでお婆ちゃんのこと、お願いね……」 頭を撫でるとチロは喉の奥で声を出し、アキの手を何度か舐めた。午前5時15分。アキは厨房に入って、お客さんの朝食を準備する祖母の手伝いをした。こんな時に限って2部屋ともお客さんが入っているのだ。「いいから、支度しな」 そう言う祖母にアキは黙って首を振り、いつもするように皿を出して盛り付けの順に並べた。口を開いたら泣き出してしまいそうだった。午前6時、アキは夕べ何度も詰め直した旅行用キャリーケースを再び開けた。開けてはみたがやることは何もなかった。アキは無言で今日まで過ごしてきた部屋の中を見回した。チロがまたやってきて、廊下に座ってじっとアキを見つめている。部屋のカーテンを閉め、襖を閉じた。アキはデニムとトレーナーの部屋着を脱いで、下着を全部新品に代えた。黒いストッキングをはいた。タイツははいたことはあるがストッキングは初めてで、かなりおっかなびっくりだった。七瀬と相談して、入学式に着ていくのは高校の制服と決めたのだ。でも女子高生ではないので自分たちで行くとも決めた。上着を着て、スカートをはく。スカートのウエストを2度折って、ひざ上10センチくらいのミニ丈にした。カーテンを開けて、アキは姿見に映った自分の姿に赤面した。30デニールの黒いストッキングは脚のシルエットをひどく強調させて、むっちりしたアキの脚をもの凄く目立たせている。「ひええ……」 恥ずかしくなって、アキはスカートの折りを一回戻した。6時15分、アキは音を立てないようにしてキャリーケースを部屋から玄関に運び出した。それから厨房に入って祖母に声をかけた。「行って……きます」 祖母はコンロの火を弱め、アキの前に来て頭を撫でた。「体に気いつけてなぁ」 何も言えなくなって、アキは口を押さえて頭を下げた。玄関まで来たチロの頭とアゴを撫でて、アキは静かに温水旅館を出て引き戸を閉めた。チロが、最後までじっとアキを見つめていた。 七瀬のお姉さんが運転する車で、アキと七瀬は湯田中の駅まで送ってもらった。「よく……アキのお婆ちゃんが許してくれたね」 角間川沿いの道をゆっくりと走りながら、七瀬の姉である奈美が言った。「もう……今まで通りに、やってたんじゃ。ダメだから……勉強してくるって……」 誰に見られるわけではないのに、ずり上がって腿の半分以上が露出するスカートを引っ張りながらアキが答えた。「まあ……七瀬みたいに動機が不純じゃないからいいんだろうね。アキちゃん、七瀬がちゃんと学校行くように見張ってね」「あたしだってちゃんと勉強して、家の役に立ちたいのに!」 七瀬が憤然と抗議したが、姉は全く信用している様子はない。湯田中駅には、アキと七瀬以外に始発電車を待っている客は一人だけだった。「二人とも、これで顔しっかり拭いて」 奈美が、バッグから濡れティッシュのような物を出してアキと七瀬に渡した。二人がそれで顔を拭くと、奈美は二人の顔に手早く淡い色のルージュとアイラインを引いた。「はい、これで見栄え良くなった」 手鏡で自分の顔を見せられたアキは、何度か瞬きして自分を見直した。唇に色が入って目の縁に線を入れただけなのに、もの凄く顔のイメージが変わってしまった。七瀬と顔を見合わせて、お互いにちょっと目を見張った。信州中野行きの電車が入ってきた。「簡単に男について行くんじゃないよ。あんたらなんて、あっと言う間に騙されるからね」 それぞれ背中を平手で叩かれた。「いろいろ……お世話になりました」「七瀬を、よろしくね」 ホームで、アキはガラスに映った自分の姿に目を留めた。胸の大きさが目立つので、いつも何となく猫背になってしまう。息を吸って背中を伸ばした。もう一度ガラスに目をやると、そこには見たことのない女が映っていた。「信州中野行き、出発しまーす!」 出発の時には『麗しの志賀高原』はかからない、普通のベルが鳴るだけだ。ドアが閉まり電車が動き始めても、二人はそのまま動かなかった。まだ窓の外はうっすら暗く、二人の少女は見知らぬ自分を見つめたままただ立ち尽くしていた。♨♨♨♨♨♨♨♨つづく東京テルマエ学園サイトhttps://tokyo-terumae.com/→こちらから漫画編を読むことができます。

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  • 12Oct
    • 小説「東京テルマエ学園」第一章 3話「入学案内」

      小説 東京テルマエ学園原作:只野温泉ストーリー:東京テルマエ学園 共同製作委員会第一章 第3話 『入学案内』宿泊客がいない旅館の中はひっそりとしていて、七瀬がせんべいをかじる音までがアキの耳に響いてきた。「ねえ、七瀬……」 コップにペットのウーロン茶を注ぎながら、アキが言った。「ん? なに?」「もしかして。機嫌、悪い?」「何で?」「ほとんど、喋らないし……」「そんなこと……」 そう言ったものの、七瀬の視線はアキに向かなかった。「私……何か、言った?」 一瞬だけ、七瀬が上目遣いにアキを見た。「さっき……買収の話し、してたとき」 もう一枚せんべいを取り上げようとして、七瀬は手を引っ込めた。「良いんじゃないかって、言った」 七瀬にそう言われて、アキは何度か瞬きした。「あ……だって。お客さん、来ないし……お婆ちゃんも、もう年……」 向かってきた七瀬の厳しい視線に、アキは思わず口を閉じて体を引いた。「それ、本気で言ってるの?」 口調まで厳しくなった七瀬に、アキは顔を白くして小刻みに首を振った。「お婆ちゃんがあんだけ頑張ってるのに、アキがそんなこと本気で言ったら絶交だよ!」「言わない言わない、言わないから。怒ンないで!」 アキは、ちゃぶ台をひっくり返しそうな勢いで七瀬にすがりついた。「うちと違って、ここは古いから取り壊されてお湯だけ持って行かれちゃうよ! アキの家、なくなっちゃうよ!」「わかったから、わかったからー!」 アキが本気で泣き出してしまい、七瀬は慰めなくてはならなくなった。「どこも苦しいのは一緒なんだから。皆で何か考えて、もっとお客さんに来てもらおうと思ってるのに」 アキに抱きつかれて、迷惑そうにしながら七瀬が言った。「アキー。温泉お湯落として、掃除しといておくれー」 廊下から祖母の声が聞えた。「はーい!」 アキは元気に返事をしたが、七瀬の表情は再び曇った。こんな時間に掛け流しの浴槽からお湯を抜くのは明日の予約がないからだろうが、次に浴槽が満たされるのはいつになるのだろうか。「七瀬、一緒にお風呂入ろう!」 アキが無邪気に言ったが、七瀬は顔をしかめた。「やだ。掃除もさせる気でしょ」「お願いー、掃除は私がするからー!」 しつこく頼むので、七瀬は渋々アキと一緒に部屋を出た。「男湯?」 脱衣所の暖簾をくぐりながら七瀬が聞いた。「一昨日のお客さん、男の人三人で……女湯は先週からお湯入れてないの」 温水旅館は、七瀬の想像を上回る厳しい状態のようだ。「七瀬のとこみたいに、バスでお客さん迎えに行くくらいの旅館ならいいけどさー」 アキは空を見上げてもう一度ため息をついた。「こんないい季節なのにさ、うちは今日も明日も予約なしよ……」 アキが元気なく言うと七瀬も小さく頷いた。「うちもお客さん減ったって言ってるし……週末はいいんだけど、平日だと渋の中歩いてる人も、絶対少なくなったよね」「これじゃもう、風船のともしびだよね……」 アキが言ったことに七瀬が反応するまで数秒かかった。「風船?」「もう……危ないって意味でしょ?」「何で風船が危ないの?」「知らないの? ほら、ロウソクの火に風船が近づいたらパン!って破裂しちゃうじゃない」 納得と疑い半々の表情で七瀬が曖昧に頷き、しばらくしてから聞き返した。「ねえ……それ『風前のともしび』じゃない?」「フーゼン?」「ローソクがね。風吹いてるところに置かれたら、消えちゃうでしょ?」「うん」「だからもう、凄く半端なく危ないって意味」 アキはしばらく七瀬の顔を見つめ、それから聞いた。「風船は?」「風船は……あんまり関係ないと思う」「なんで?」「なんでって……言われても……」「ところで、さっきの……買収の話しに来てた男の人」 湯に浸かりながら七瀬が言った。「うん」「お姉ちゃんに、凄くなれなれしいの。腹立つ」 吐き捨てるような七瀬の口調に、アキはちょっと動きを止めた。「そりゃ……お姉ちゃん美人だし……七瀬も」「取って付けたみたいに言わなくていいから」 何かイベントがあるたびに、春陽館の星野姉妹は組合に引っ張り出されるのだ。「旅館はおっきいし……娘は美人だし……」「またそれ言うか」 七瀬がお湯の中をすーっとアキに近づいた。「あんたにはこの胸があるでしょ?」「ぎゃあっ!」 お湯の中で七瀬がアキの胸を揉んだ。「そうだ、ここのお湯を『巨乳の湯』って宣伝しようよ。アキが看板娘になって」「や、だ!」「絶対人気出るってば」「女の人しか来ないじゃない」「きっとカップルで来るよ」「だから、さわらないでー!」 湯船の中でのろのろと追いかけっこをしていると、不意にアキが止まった。「あ、タロだ」「へ?」 アキの視線をたどって七瀬が見上げた先には、露天風呂の目隠しになっている松の木。その枝に灰色の大きな塊がとまっている。「あ、あのサルまだ来るんだ」「ヒマなとき、お婆ちゃんも時々エサやってる。あいつイタズラしないし」 サルが身軽に露天風呂の塀に飛び乗り、それから風呂の中に降りてきた。「ひさしぶりー」 アキが言うとそのサルは洗い場を歩いて近寄ってきた。「残念、いまあげる物ないよ」「そいつ、何持ってるの?」 七瀬の言ったことが理解できたように、サルは座って片手に持っていた物をアキに差し出した。「なにか、くれるの?」 アキがそう言うと、サルは歯をむき出して小さく声を出した。「違うの? 見せに来たの?」「何なの?」 七瀬が覗き込もうとすると、サルは威嚇するような声を上げた。「七瀬は見ちゃだめなの?」 それはポケットティッシュほどの四角いビニールパックだった。「あ、それ。この前駅で配ってたやつだ」 七瀬が言った。「それ、飴入ってたでしょ」「あ、入ってる。もしかしてこれ出してほしいの?」 サルが喉の奥で小刻みに音を出した。「あ、そうなの」「アキはいつからサル語喋れるようになったの?」 七瀬が聞くと、アキは袋を空けながら首を傾げた。「喋れるって言うか……何となく言いたいことわかるくらいだけど。はい、これでしょ?」 中に入っているミルクキャンディーの包みを剥いて渡すと、サルは手で受け取ってすぐ口に入れた。「こっちは? いらない?」 一緒に中に入っていた紙に、興味はない様子だった。「私ももらったけど、飴だけ食べて見ないで捨てちゃった。何なのそれ」 アキが二つ折りの紙を広げると七瀬も覗き込んだ。『聖・東京テルマエ学園開校・一期生募集!』 と。「……東京テルマエ学園?」 アキと七瀬の声が重なる。 そう、この一枚の紙片が、しがないただの女子高校生だったアキを変えることになる、全ての始まりだった。 もちろん、この時のアキはその後の自分がどうなるかなんて知る由もなかった。 東京テルマエ学園なんてうさんくさそうな名前の学園が、果たして何をする場所なのかも知らなかったのだから。「日本初の、温泉……専門学校?」「テルマエって……なに?」「七瀬?」 もう一度話しかけると、七瀬は慌てたように顔を上げて瞬きした。「あ……はい」「のぼせた?」「ううん」 二人とも何となく松の枝を見上げたが、もうサルの姿はなかった。♨♨♨♨♨♨♨♨つづく東京テルマエ学園サイトhttps://tokyo-terumae.com/→こちらから漫画編を読むことができます。

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  • 09Oct
    • 小説「東京テルマエ学園」第一章 2話「リゾート開発」

      小説 東京テルマエ学園原作:只野温泉ストーリー:東京テルマエ学園 共同製作委員会第一章 第2話 『リゾート開発』 きっかけは去年の秋、まだアキが将来に関して何の展望も持っていなかった頃だった。中間テストが終わった開放感と、それと同じだけの脱力感を抱えながらアキと七瀬はいつものように家路をたどっていた。「そうだ、ねえアキ、アキ、試験、どうだった?」 時は十月、秋の気配も深くなり、栗やらりんごやら胡桃やら、秋の味覚がアキの味方になって久しい。但し、乙女の体重的には敵だ。口惜しい、試験のストレスで思わず食べ過ぎてしまったのだ。そんなどうでも良いことを考えている学校からの帰宅途上、アキに話しかけてきたのは親友である七瀬。 後ろでポニーにした髪の毛をゆらゆらと揺らしながら、体を傾け上目遣いに媚びを売るようにして、情け容赦なくアキの痛いところを突いてくる。だがなぜか、この無自覚なS的性格をアキはどこか心地よいと感じてしまう。おそらくそれは、幼いころからそういうやり取りを続けたことで身に染みてしまったせいだろうと思っている。我ながらどうかとは思うが、見事な美少女に育った七瀬から言われるのだから、役得だと思うことにしている。「その様子だと……無事に死んだ?」 七瀬がアキの顔を覗き込んで聞いた。「追試かな……めんどいよぉ……」「そんな難しかった? 今日の」「だってあたし頭悪いし、どうせ追試受けたって赤点だし……」「アキの場合、頭じゃなくてやる気の問題でしょ?」 答えながら、足元に転がっていた石をアキは思い切り蹴っ飛ばす。 石は見事に勢いよく飛び、道と並行するようにして流れる川へと飛び込んでいった。近くに誰もいなくて良かったと秘かに安堵する。 アキの暮らす渋温泉の街は都会のような洒落た場所はないが、いまだ壊されていない自然に溢れている。山々が連なり、四季それぞれで顔を変える姿は疑うべくもなく美しく、透明度の高い水が流れる清流から感じられる匂いは心地よい。ちなみに渋温泉は信州・湯田中渋温泉郷とも呼ばれ、長野電鉄湯田中駅から2キロほど奥にある山間の温泉である。メインストリートには石畳が敷かれ、両側にはノスタルジックな旅館や土産物屋、遊技場などが並ぶ情緒あふれる温泉街。なお渋温泉には九つの外湯があり、九湯巡りという渋温泉に宿泊している方のみが利用できるという特典があり、宿泊者は各旅館から外湯めぐり専用の鍵を借りて、1番湯から9番湯まで、すべて無料で自由に外湯めぐりができるという。 二人で追いつ抜かれつしながら歩を進めていくと、やがて前方に見えてきたのは温泉街。その温泉街の一画で、アキの実家も温泉宿を営んでいるのだが、アキが7歳の時に母親を病気で亡くし、苦しい家計を助けるため東京に出稼ぎに行った父もやがて音信不通となり行方不明。両親のいなくなった旅館を、普段は祖母が何人かの従業員とともに切り盛りしている。  かっての旅館は毎日色々な客が訪れ、アキが傍から見ているだけでも大変な毎日であると実感していた。将来のことはまだ完全に決めきれているわけではないが、高校を卒業したら祖母を本格的に手伝いたいとアキは考えていた。旅館を継ぐかどうかはまた次の問題で、まずは祖母を手助けしたいという思いが強い。 そんなアキに向けて、冷や水を浴びせるように七瀬が口を開く。「アキ。温泉宿って経営でしょ。学歴だけじゃないかもだけど、経理や財務が分からないと駄目だし、今の世の中だと集客の為のビッグデータ活用やマーケティングとか、その辺諸々知らないと今後はやってけないよ?」「ぐふっ!? な、七瀬がそんなことを言うなんて……そ、そういう七瀬はどうするの?」 ダメージを受け、手で胸を抑えながら言うアキ。 同時に、手の平に伝わるふくよかで柔らかな感触に、「あ、また少し大きくなったかも……」などと考える。そんなアキの様子にお構いなく、七瀬はあっけらかんと答える。「私は東京に行って女優になるんだ」「へえ、そうか、女優か。そうだよね、七瀬は昔から女優になりたいって、いやいや東京の大学に行くんじゃなかったの、ど、どういうこと!?」「ほら、うちはお姉ちゃんがいるから家を継がなくても大丈夫なんだわ。だから、東京行きも快く賛同してくれて」「はぁ~、女優か。七瀬ならなれそうだもんね、美人はいいよねぇ」 隣を歩く七瀬に目を向けるアキ。 七瀬の容姿はひいき目を抜きにしても美少女といえる。切れ長で意志の強そうな瞳、すっと通った鼻梁、やや薄い唇、全体的に大人っぽく、年齢を重ねれば誰もが振り向くような美女になることが想像できる。 美人というだけではなく、細身の肢体でスタイルが良く、特に制服のスカートから延びた太腿は、アキですらむしゃぶりつきたくなる。「七瀬と比べたらわたしなんか月とすっぽん、豚に真珠、草津温泉と渋温泉……」「アキ……」「あ、ち、違う、別に渋温泉を馬鹿にしたわけじゃないよ!? ただこうなんというか、老舗温泉旅館の娘としては、素敵感満載なところが妬ましいというか、真似できないのが悔しいとか、そんなんじゃないからね!」「結局は僻みかい」 そう言いながら七瀬はため息をついた後、とびきりの笑顔をアキに向け、サムズアップしてみせた。「大丈夫、アキにはおっぱいという兵器があるから!」「そうよね、わたしにはおっぱいミサイルが、っていやないからね!? っていうかそれを言うなら武器じゃないの、最終破壊兵器みたいに言わないでよっ」「あははっ」 笑いながら逃げる七瀬を、同じように笑いながら追いかけるアキ。 二人にとってはいつも通りの他愛のないやり取りをかわしながら温泉街に入り、やがてアキの実家の温泉宿が見えてきたところで異変に気が付く。「あ、誰か来てる」玄関の上りかまちにアキの祖母が正座し、スーツを着た男性に応対している。だが祖母の表情を見る限り、その男は客ではない雰囲気だ。男性の後ろには、やはりスーツを着てカバンを持った女性が控えている。「……あれね」 七瀬が固い表情でアキに告げた。「この辺再開発するって言ってる会社の奴らよ」「再開発?」 アキが聞き返すと、七瀬は小さく頷いた。「和合橋から天川橋の間にある小さい宿とかを買い取って、でっかいスパリゾートにするって言ってるの。あの辺の古い家、いくつかなくなって空き地になってるでしょ?」「あ……そう言えば、食堂の建物なくなってた」 アキが子供の頃からあったラーメンが美味しい食堂が、主人が亡くなったなったために閉店した。そこがいつの間にか空き地になって、杭と針金で囲まれていたのだ。「それじゃ……うちも?」 アキの言葉に七瀬が頷いた。「ここのお湯はあんまり熱くなくて扱いやすいから、スパとして欲しいんじゃないの?」「買って……くれるんだ」 つぶやくように言ったアキを七瀬は奇妙な表情で見つめて、それから首を傾げた。「うちは今のまんま、グループの提携旅館にならないかって言われてるけど。古くなった建物なおしてくれて、送迎バスとかいろいろ向こうでやってくれるって……」「だったら……いいんじゃないかな?」「何が?」「いまの……」 アキは、掃除は行き届いているものの古さは隠しきれない玄関先をながめて言った。「週に、お客さんいない日が多いほうの旅館より……」 七瀬の表情が一瞬強張ったが、アキはぼんやりと玄関に目をやっていたので気がつかなかった。「お帰りいただけませんかねぇ」 大きくはないが、きっぱりとした祖母の声が聞えた。「うちはこれでも150年、ここでお客様をもてなしてきてるんでね。スッパだかスッポンだか、わけのわからないところに場所空けるなんてあらすけー(ないよ)」「いえ、今日明日にお譲りいただきたいと言ってるのではなく……」「明後日でも、し明後日でもだめだよ。あいく(早く)帰っておくれ」 祖母に追い立てられるようにして男女が去って行くと、それを睨みつけるようにしていた祖母が立ち上がって言った。「アキ、塩撒いとき」「し……塩……」  アキはあたふたとしながら下足箱の脇に置かれた木箱を持ってきた。盛り塩のための道具から食塩の袋を取り出して、手に振り出した。「これって、どうやるの?」「え?」 何かぼんやりとしていた様子の七瀬が聞き返した。「塩撒けって……」「ああ……」 七瀬は、アキの手に山盛りになっている塩に目をやった。「それ……漬け物にできそうだね」「やっぱ多かった……かな?」 七瀬は首を傾げた。「もうバァーって、撒いちゃえば?」「バァーって……」 アキはすくい上げるように腕を振って、玄関先を真っ白に染めてしまった。「何か……土俵入りみたい」 七瀬が呆れたようにつぶやいた。♨♨♨♨♨♨♨♨つづく東京テルマエ学園サイトhttps://tokyo-terumae.com/→こちらから漫画編を読むことができます。

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  • 05Oct
    • 小説「東京テルマエ学園」第一章 1話「アキと七瀬」

      小説 東京テルマエ学園原作:只野温泉ストーリー:東京テルマエ学園 共同製作委員会第一章 第1話 『アキと七瀬』2018年3月15日「温水アキ」 名前が呼ばれた。「はい!」 アキの返事は一瞬遅れた。 アキはぎくしゃくと椅子から立ち上がった。109人の卒業生一人一人の名が呼ばれ、最後に卒業生代表が全員の卒業証書を受け取った。 卒業証書と赤いカーネーションを持って、アキは在校生の拍手の中を泣きじゃくりながら校門を出た。そこで肩を叩かれた。「こら、一人で帰る気か?」「あ……」 クラスメイトの星野七瀬も目を真っ赤に泣きはらしていた。二人はなかば呆然と、口数も少なく信州中野の駅まで歩き電車に乗った。「これから……何するんだっけ?」 力が抜けたような声でアキが言った。「あとは……来週になったらもう一回学校に来て、調査書出してもらって……願書の提出」「あ……写真」「なに?」「願書に貼るの。撮らないと……」 アキに言われて七瀬は少し考えた。「えーと確か、湯田中駅近くにあったと思うよ?」「プリクラじゃだめかな?」 アキが言うと七瀬が嫌な顔をした。「たぶん、怒られると思うよー」 アキは家に戻ると制服のまま机に向かい、大きな封筒を取り出した。それを手にしてから毎日毎日何度も出しては見入ることを繰り返しているので、封筒の端はもう擦り切れている。そして今度こそ、本当にこれを郵便局の窓口に持っていくのだ。アキの胸はいつものように不安と期待で苦しくなる。 アキは返送用の簡易書留封筒を取り出して、ボールペンを握りしめた。印刷された宛名の下についている『行』には、すでに念入りに斜線が引かれている。あとはこの下に『御中』と書けばいいのだが、なかなかそれができない。むろんこれまでの人生において入学願書なんていうもの、生まれてこのかた出したことなどない。アキは目を閉じて大きく深呼吸した。2学期の期末から3学期の期末テストまで、わずかの間にアキは成績を上げた。下から数えた方が早かったのが、真ん中あたりまで上げたのだ。それで奇妙な専門学校へ進むことに、しぶしぶながらも祖母は同意してくれた。「気合い、入れろ……あたし」 息を吸い込んで止め、アキは思い切ってボールペンを持ち直した。「やった……」 数十キロのバーベルでも持ち上げたかのように息を切らせ、アキは畳に仰向けに寝転んだ。やや斜めになっているが、宛先には『東京テルマエ学園入学課 御中』と書き込まれていた。「行くんだ……東京……」♨♨♨♨♨♨♨♨つづく東京テルマエ学園サイトhttps://tokyo-terumae.com/→こちらから漫画編を読むことができます。

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  • 16Apr
    • ひよっこ温泉アイドルが行く!「佐竹ひなの愛コン日記」京都・嵐山温泉編

      隠れた京都を知りたくない人は絶対に読まないでください!朝ドラ「ひよっこ」が始まりましたねぇ。実は、わたし茨城県出身なんです。今は東京に出て来てるけど…。「んだねぇ」「どうすっぺ?」(茨城弁)方言丸出しの「有村架純」ちゃんと、同学年だし、なんだか私とよく似ている(実家も農家だし)架純ちゃんは可愛くて大好きなんだけど、わたしの一番好きだったNHKの朝ドラ「あまちゃん」(2013年放送)の時と設定がよく似ているし、わたしも2013年に東京で「アイキューブ」(事務所でもなんでもないのですが)からデビューしたので、なんだか共通点だらけ(;'∀')そんなひよっこですが1つ気になることがあります。出演者2名(誰のことか判りますよね?)がいわくつきになり、再放送はほぼ無理となった朝ドラ『まれ』とも共通点が多いこと。・主人公が東京を苦手としている・主人公の髪型・芸能人志望の女友達・父親が行方不明・方言が強い などわりと評価が低かった『まれ』ですが、私は結構好きでした。土屋太鳳ちゃんも大好きな女優さんです。「ひよっこ」には、あの「あまちゃん」の“夏ばっぱ”に出てた宮本信子さんも出演しています。今回は、架純ちゃん演じる「みね子」が茨城の田舎から東京に出て来た時に、失踪したお父さんが訪れたことのある洋食屋「すずふり亭」のオーナーに「ちょうど接客係を一人探しているの」と声をかけられます。実はそのオーナーの役を演じるのが「宮本信子」さん。なんと、「あまちゃん」で架純ちゃんの母親役だった人です。「あまちゃん」では、アイドルを目指す「天野春子」こと架純ちゃんを、夏ばっぱ(あだ名)の宮本さんが「バカこくでねぇ」と突き放して対立。その時のケンカのやり取りが面白かったのですが、今回もその宮本信子さんが架純ちゃんの「東京の母親」役となるのですから、どんなやり取りになるか展開が面白そう。それに「あまちゃん」の時と同じく、「上京」「オーディション」「ヒロインの親友が芸能界志望」などなど、共通点大ありで、もしかしたら「あまちゃん」の時みたいに、架純ちゃんもアイドルに(現実も押しも押されぬ人気アイドル女優ですが)なるのではないかと、期待感いっぱいですネ(´▽`*)なにせ、茨城(いばらきと呼ぶんですよ)は、ひよっこだけでなく、最近は稀勢の里関の故郷でもあって、いま注目のエリアなんです(^^)ということで、冒頭から話がそれましたが、今回のレポートは「京都」です。単なる京都観光では面白くない、京都のもう一つの楽しみ方をレポートしたいと思います。アニメ「けいおん!」の舞台となった京都市で聖地巡礼の観光をしてみよう!京都市は言わずと知れた日本を代表する観光地です。碁盤の目のように整然とした区画で整理され、金閣寺や平等院鳳凰堂など歴史的な観光地には枚挙にいとまがありません。有名な場所を回るだけでも魅力的な街の京都。さらにアニメ「けいおん!」の舞台を巡って、より深く京都を味わってみましょう。「けいおん!」は作者かきふらいによる4コマ漫画、そのアニメが大人気となりました。唯、律、澪、紬の4人の生徒がゼロからバンドを組み、部活動を楽しんでいきます。途中からは後輩の梓が入部、5人でのバンド「放課後ティータイム」の活動が展開されていきます。劇中歌の「ふわふわ時間」(ふわふわタイム)は人気が高く、YouTubeやニコニコ動画ではファンが実際に演奏している動画が大流行しました。作中で唯たちが使っている楽器も実際に多くの人に買われ、高校生の軽音楽部の人気も高まるなど社会的にも影響を与えたアニメです。そしてオープニングで4人がジャンプしたのが京都造形芸術大学の入り口にある階段です。瓜生山に面しているため高低差の激しいキャンパスとなっています。芸術学部ではマンガ学科や映像学科などが選択できます。車できた場合は近くの国道30号から滋賀県に向かっての山道をドライブすることも面白そうですね。オープニングや通学シーンで頻繁に登場する踏切があるのが叡山電鉄叡山本線にある修学院駅です。1925年に開業した歴史ある駅を唯たちが使っていました。この駅の踏切には古びた看板の「踏切注意」があります。「けいおん!」ファンなら思わず写真を撮ってしまいますね。アニメでも登場する京都の代名詞、賀茂川オープニングで4人が川を飛び石で渡っているのが賀茂川です。北東から流れてくる高野川と北西から流れてくる賀茂川の合流点は、鴨川デルタと呼ばれ京都の風情を味わえる爽やかな場所です。休日には学生や親子連れで賑わう憩いの場となっています。映画「パッチギ」「鴨川ホルモー」などのロケ地としても利用されました。実は「けいおん!」(1期)のオープニングを見ていると あずにゃん(中野梓)が出てくる 9話 からこのシーンが あずにゃんの紹介に書き換えられているので、けいおんメンバーが4人(平沢唯、秋山澪、田井中律、琴吹紬)の時だけというものなのです。ということはこの場所は「けいおん!」(1期)の1話~8話までのオープニングでしか出てきていません。一度は行ってみたい!銭湯を改装したノスタルジックなカフェ「さらさ西陣」京都・西陣の鞍馬口通に、元銭湯だった建物をリノベーションしたカフェがあるのをご存知ですか?外観は、一見しただけではカフェと気がつかないレトロな建物。一歩中に足を踏み入れると、お風呂屋さん特有の高い天井と、全面張りタイルのアンティークな店内に思わず歓声をあげてしまうかも!こちらは銭湯だった頃、男湯と女湯を仕切っていた間仕切りです。うまく利用して席と席の仕切りになっています。店内に入るとまず目を引くのは、壁一面の鮮やかなマジョリカタイルです。かつての浴室をそのまま使い、レトロな雰囲気を醸し出しています。ほかにも、内装の大部分に元銭湯の造りが活かされています。銭湯当時のままの高い天井は開放感があり、昼間は天窓からの日差しも心地よい、ゆったりと過ごせる空間です。味にもボリュームにも大満足のフードメニュー15時までは週替わりのランチセット、夕方から夜にかけては単品のメニューで、ボリュームたっぷりのおいしいカフェご飯が味わえます。例えば夜のメニューでは、自家製の豚角煮や九条ネギを入れた「豚の角煮と揚げじゃが芋と九条ネギのクリームグラタン」(910円)、猫が好きなツナやおかかを盛り込んだ「猫チャーハンDX」(860円)など、オリジナリティのある一品がそろいます。スイーツや音楽も楽しめます甘いものが食べたい時には、さらさ特製のケーキをはじめ、店内のマジョリカタイルをイメージして作った「さらさのパフェ」(700円)もおすすめです。フルーツやソフトクリーム、タイルの色を模したカラフルなゼリーを盛り付けたパフェに、トニックウォーターをかけていただく一風変わった一品は、食べていくうちにソフトクリームや冷凍ゼリーが炭酸に溶け、味や食感の変化が楽しめます。さらに店内では、毎月第3月曜夜の定期ライブや不定期の企画イベントで、さまざまなアーティストによるライブが行われます。演奏を聴きながら食事やお酒をいただくのはもちろん、最前列でライブを楽しむこともできますよ。西陣の穏やかな時が流れる空間でひと休みしていきませんか?京都といえばお寺や神社巡りがメイン、という方も多いと思いますが、「さらさ西陣」はその合間にぜひ立ち寄っていただきたいお店です。古き良き時代を感じながら、のんびりとした時間を過ごしてみるのも良いのではないでしょうか。京都のお気に入りスポットがまたひとつ増えるかも知れませんよ。施設名称:さらさ西陣住所:京都府京都市北区紫野東藤ノ森町11-1電話番号:075-432-5075営業時間:12:00-23:00(L.O.22:00)定休日:水曜日【URL】http://cafe-sarasa.com/shop_nishijin/京都名物「湯豆腐」しかも温泉付き!湯豆腐と言えば、嵐山・渡月橋スグの所にある有名な料亭旅館「花筏」の湯豆腐。ここは、ほんのり甘い湯豆腐が絶品デス!私たちは、ここで名物「湯葉付き湯豆腐会席」を個室で頂くことにしました。自慢の豆腐は驚くほどなめらかで、ほのかな大豆の甘さが口の中でふわり。女性にとっても、湯豆腐はヘルシーで美容にもいいそうとのこと。ここは京都でも珍しい、湯豆腐料理と貸切露天風呂の日帰りセットプランがあります。公式HPにはhttp://www.hanaikada.co.jp/top.html湯豆腐料理楓(かえで) *昼食のみ ・・・・ 2,500円筏(いかだ) *昼食のみ・・・・ 3,500円花(はな) ・・・・ 4,500円とありますが、湯豆腐というよりも、湯葉ですね。写真の通り、大きな湯葉がどんどん出てきます。沸騰した鍋には湯葉が綺麗にできています。湯葉の前に豆腐を食べなければならないのですが、ものすごいボリュームで、、、。湯葉は、沸騰した鍋をすくって食べる京ならではの風流な食べ方。こうやって、お箸ですくい上げます。みて、きれいに取れたでしょう。えへへッ(^^)湯葉も8枚ほど食べてギブアップしました(笑)。京風湯葉&湯豆腐会席を堪能した後は、貸切露天風呂の方へ行くことに。ここが、そこの入り口階段を登ると貸切露天風呂が中に入るとカップルでちょうど良いくらいの広さです。一人でも良いくらい。2人入れば一杯の、樽風呂です。カップルで入るにはちょうどいいですね。立ち上がれば、桂川も一望できます。この日は晴れていたので、嵐山で結婚式をしていました。覗いているようで、まさかこちらが裸とはつゆ知らず。花婿さんもビックリ(笑)向こうからも、こちらが見えるみたいですネ(^^;)お風呂からあがると、ゆっくりくつろげる個室もあります。冷たいウォーターサーバーも置いているのもウレシイです。嵐山温泉 彩四季の宿 花筏( ハナイカダ)住所:京都府京都市西京区嵐山渡月橋南詰電話番号:075-861-0228アクセス:電車:阪急嵐山線 嵐山駅から徒歩約5分車:名神高速自動車道 京都南ICから約40分■湯豆腐料理楓:2500円 筏:3500円 花:4500円※ご入浴のみのご利用も承ります。【ご利用料金】大人 870円・小人 440円 / タオル付【受付時間】 11:00〜16:00【館内ご利用】11:00〜17:00■貸切風呂:1ヶ所有料 お1人様あたり1,575円■温泉の泉質:低張性弱アルカリ性温泉(単純温泉)■温泉の効能:関節痛、腰痛、美肌、神経痛、慢性消化器系、冷え症、疲労回復湯豆腐と温泉楽しんだ後は、嵐山界隈をお散歩渡月橋。お花見のシーズンなので、人がイッパイ!!渡月橋の上で「ひな」と、つばさちゃん一応、ここが撮影スポットみたい。ひよっこ温泉アイドルが行く!「佐竹ひなの愛コン日記」京都・嵐山温泉編 終わり次回は、ひよっこ温泉アイドルが行く!「佐竹ひなの愛コン日記」京都・花魁変身京町屋編◆温泉ツアーに参加されたい方はこちらまで◆動画配信サービス「秘湯女子図鑑」を見たい方はこちらまで!

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  • 12Mar
    • 「佐竹ひな」の北陸・山中温泉、越前ガニと温泉体験レポート2017.2月 Part.4

      売店 月うさぎ お土産ランキング瑠璃光(るりこう) の1階ロビーにある売店「おみやげ処月うさぎ」の、お土産ランキングをチェック!ランキングをアピールしているわりに、ランクインしているお菓子がバラバラに置かれているので、店内を探し回りました。作戦?(笑)お土産ランキング1位は、「金の梨」というお菓子でした。加賀梨を使ったゼリーなんだって。加賀って、梨の名産地だったんですね。そういえば、食後のデザートに出てきてたかも?お土産ランキング2位は、「加賀紫雲石」というきんつば。「皇太子献上お買い上げの品」と書かれていますが・・・献上?お買い上げ?本当に食べていたってことか、メンバーさんが調べてくれたのですが、結局よく分かりませんでした(笑)今回、瑠璃光(るりこう)ではお土産を買わなかったけど、もし買って帰るとしたら、この「加賀紫雲石」を選ぶかな。美味しそうでした♪お土産を見てまわった後は、再び大浴場&露天風呂で半身浴をして身体を温め、汗をたっぷりと出してから、25:00ごろに就寝。瑠璃光(るりこう)は温泉もよかったし、お食事も美味しかったし、中居さんも感じが良くて・・・また来たいなと思えるお宿でした。■温泉情報■山代温泉 瑠璃光(るりこう)住所 石川県加賀市山代温泉19-58-1TEL 0761-77-2323交通アクセス【JR】北陸本線「加賀温泉駅」より無料送迎バス有(約10分要予約)【車】北陸道「加賀IC」or「片山津IC」より約20分駐車場有り 無料200台【風呂】温泉大浴場・露天風呂・サウナ・家族風呂・ジャグジー【泉質】アルカリ単純泉【効能】疲労回復 婦人病 リウマチ・神経病・5ヶ所の貸切露天風呂は50分3,240円です。(要予約)・一向一揆太鼓(夜21:05〜)無料上演・姉妹館・葉渡莉への湯巡りURL http://rurikoh.jp/spa/「佐竹ひな」の北陸・山中温泉、越前ガニと温泉体験レポート2017.2月 Part.4終わり◆温泉ツアーに参加されたい方はこちらまで◆動画配信サービス「秘湯女子図鑑」を見たい方はこちらまで!

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プロフィール

温水アキ

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女性
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O型
お住まいの地域:
東京都
自己紹介:
私は温水アキ18歳。長野県・渋温泉に住む女子高生。 実家は温泉宿を経営する一人娘。 お母ちゃんはアキ...

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