言葉の木を育てる | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。

著者のひきたよしあきさんは、小学校3年生のとき、「言葉」という漢字を教えてくれた先生の話を鮮明に覚えている。

「言葉という字は『言う葉っぱ』と書きます。きれいな言葉を使えば、きれいな木に、汚い言葉だったら汚い木になっちゃいます。きれいで正直な言葉を使いましょう」

 

ひきたさんは、博報堂でCMを手掛けながら、言葉の木を育ててきた。

いまは、コミュニケーションコンサルとして、幅広く活躍している。

「あなたという人間は『言葉』でできています。磨き抜かれた言葉をもっていれば、その『言葉の木』は上質なものになります。言葉の気遣いひとつで、あなたの印象がまったく変わってくるのです。ビジネススキルの高い人は、論理的に正しい言葉だけでなく、人情の機微に触れる噺、人類が培ってきた普遍の箴言、場の空気を好転させる力のあるジョークなど、さまざまな色合いの言葉を抜群のセンスで使いこなします。この本を読み終えたあと、あなたの『言葉の木』から新芽がひとつでも芽吹いてくれることを期待します」と、まえがきで書いている。

ボクも、嬉しいことばの種まきをしているが、種を蒔いたら、あとは、それぞれが水やりを怠らず、手入れを怠らず、嬉しいことばの木を育ててほしいと思っている。

 

言葉の木を育てる具体的な方法が満載だが、たとえば…

伝える技術、伝わる表現の章。

●表面的な表現になる形容詞は少なくして、具体的な動作が目に浮かぶ「動詞」を多用しよう。

●声の高さ、早さ、トーン、ニュアンスを巧みに変えて直接話法で。

●相手の話から3つのキーワードを探し出しながら聞く。

●五感を研ぎ澄まし、表現する。

●出来得る限り、鮮明に言葉を届ける相手を思い浮かべる。

●先入観で判断せず、相手の視点で考える。

 

言葉の木は、一人では育てられない。

コミュニケーションによって力をつけて洗練されていくものだ。

絵文字やスタンプに心情を託したり、かつて日本人同士が心を揃えた時候の挨拶もお蔵入りしている。「日本人が大切にしてきた日本語の妙味が薄れ、子どもが駄々をこねるような幼稚な言葉遣いしか使えなくなってしまうのではないか」と、ひきたさんも憂えている。

そこへ三密回避の世の中になり、人間関係の分断が進むいま、言葉の木を絶滅危惧種にしてはならないと切実に思う。