全国調停委員大会で講演してきた(15日)。
会場の名古屋国際会議場には、全国からおよそ1000人の
調停委員が集まった。
トラブルが起きたとき、双方の言い分を聴き、その「調停」をする人たちに、
『全力で聴く』というテーマで講演をした。
「調停」について説明しておく。
調停とは,紛争を解決するために,裁判所(調停委員会)が仲介して
当事者間の合意を成立させるための手続だ。
調停委員は、裁判官または調停官と共に調停委員会のメンバーとして、
当事者双方の話合いの中で、合意をあっせんして紛争の解決に当たる。
どちらの当事者の言い分が正しいかを決めるものではない。
解決策を考えるために、当事者の言い分や気持ちを十分に聴いて
調停を進めていく。
調停委員は、一般市民の良識を反映させるため、
豊富な知識経験や専門的な知識を持つ人の中から選ばれる。
原則として40歳以上70歳未満の人で、
弁護士、医師、大学教授、公認会計士、不動産鑑定士、建築士、
地域社会に密着して幅広く活動してきた人などから選ばれる。
建築関係の事件であれば一級建築士などの資格を持つ人、
医療関係の事件であれば医師の資格を持つ人など、
事件の内容に応じた、専門的知識や経験を持つ調停委員が指定される。
また、家事調停では、夫婦・親族間の問題であるため、
男女1人ずつの調停委員を指定するなどの配慮をしている。
対立している関係であれば、自分の主張をするがあまり、
相手をなじることばも出てくるであろう。
調停委員に、理不尽なとばっちりがいくこともあろう。
嬉しくないことばのシャワーを浴びる大変な仕事だ。
ムラカミは切り出した。
矢継ぎ早やに質問を浴びせても、相手は心を開かない。
・悩み事や憂い事を抱えて、森のイスキアを訪ねた人たちは、
おむすびを拵えている佐藤初女さんの背中に自ずから話しかけた。
・壁を見つめている精神病の人に話しかけず、
共に並んで壁を見つめて鷲田清一さん。
30分して、精神病の人から「何しているんですか」と話しかけられた。
・新人アナウンサー時代、ことばが溢れ出る言語療法士の木内哲子さんに、
何の質問も出来なかったが、気持ちよく話してくれたのならそれでいいと、
予定調和の質問が必要ないと気づかされた。
・吉永小百合さんに質問して答えがないので、13秒待ったが、
ついに我慢出来ず、事前に調べたことを自分で言ってしまった失敗談。
そんな具体例をひも説きながら、問わず語りが理想だと強調した。
身体全部を耳にして、全身全霊で、ひたすら聴く。
「その気持ちはわかる」と安易な合いの手は入れないで、
ひたすら傾聴する。『沈黙力』の意義も伝えた。
会話には、「すきま」が必要だ。
相手の気持ちに想像を巡らせる時間が必要だ。
ことばにならないことばにも力がある。
問わず語りを心得ていると、調停力に磨きがかかると思う。