ことばの力は恐ろしい だから… | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。



朝のドラマ『とと姉ちゃん』には、大切なメッセージがある。

『暮しの手帖』初代編集長の花森安治さんがモデルになっている

花山伊佐次(唐沢寿明)のセリフに、心打たれた。

8月15日を境に、人生観が変わり、二度とペンを握らない理由を語る場面。

長いセリフだが、忘れてならない重要なことが込められている。

花山は戦時中、内務省で戦争標語作りをしていたが、そのことを悔いている。


「ことばには、人を救う力があると思っていた。

 だから、力のあることばで、人の役に立つ仕事をしたかった。

 国が勝てば全ての国民が幸せになると思い、

 一億一心の旗を振って、戦争標語を作っていた。

 何よりも正しくて、優先させて守るべきことがあると思っていたが、

 間違っていた。

 ことばの持つ怖さに無自覚だった」

「焼夷弾は恐るるにたらず。退くな逃げるな必死で消火。

 消せば消せる焼夷弾…。誤ったことばを教えてしまった。

 子どもや老人や女たちが、バケツで水を運んだ。

 気がついたときは、逃げ道がなかった。無駄に死なずに済んだのに。

 ことばの力は恐ろしい。

 そんなこともわからず、ことばに関わってきた。

 信じていたことの全てが間違っていた」

ことばは使い方しだいで武器になってしまう。

取り扱い説明書などははない。だから、相当慎重に選んで使わねばならない。

もう2度と、扇動されてはなるまい。



(大橋鎮子さん、花森安治さん)


花森安治は、『暮しの手帖』創刊を前に、こう語っている。

「戦争は恐ろしい。

 何でもない人たちを巻き込んで、末は死にまで追い込んでしまう。

  戦争に反対しなくてはならない。

 国は軍国主義一色になり、誰もかれもが、なだれをうって

 戦争に突っ込んでいったのは、

 一人一人が、自分の暮らしを大切にしなかったからだ。

 もし、みんなに、あったかい家庭、守るに足る幸せな暮らしがあったなら、

 戦争にならなかった」
あたりまえの暮らしを守るため、花森は再びペンを握る。