2023年、夏、沖縄 ~Every Trip Has A Soundtrack~ その2 | A Flood of Music

2023年、夏、沖縄 ~Every Trip Has A Soundtrack~ その2

 

 

 本記事は上掲リンクカード記事の続きです。今年9月の沖縄家族旅行を音楽レビューを交えつつ振り返ろうとの趣旨で書いています。目次はこちら

前回のあらすじ!

 

 

 下記引用部の見方 【「その1」の小見出し(丸数字=上掲写真4*3の左上①→右下⑫)┗ 言及した楽曲の基礎データ, ∴=「旅の空にあって相応しいBGM」の例, ∵=「当座のトピックから連想ゲームでこじつけた楽曲」の例】

 

趣旨説明:旅行記+音楽レビュー

┗ ∴Mr.Children「1999年、夏、沖縄」(2000), ∴サザンオールスターズ「平和の琉歌」(1998), ∵ROTH BART BARON「Ubugoe」(2021)

 

Day 0:旅行前のこと(①)

┗ ∴B'z「さまよえる蒼い弾丸」(1998), ∴吉田拓郎「30年前のフィクション」(1990), ∵速水奏「Hotel Moonside」(2015), ∴asmi「破壊前夜のこと」(2023)

 

Day 1:海洋食堂 ~ 新原ビーチ ~ 国際通り(②~⑤)

┗ ∴久石譲「Play on the sands」(1993), ∴琉球アンダーグラウンド「kokusai dori dub」(2002), ∵Orbital「Ringa Ringa (The Old Pandemic Folk Song)」「Day One」「Are You Alive?」(全て2023)

 

Day 2:ミッションビーチ ~ A&W ~ ちぬまん(⑥~⑨)

┗ ∴放課後クライマックスガールズ「ビーチブレイバー」(2019), ∴くっつくパピー「チェリーコークとルートビア」(2019), ∴BUBBLE-B feat. Enjo-G「ちむどんDONK」(2022), ∴BUBBLE-B「ZANSHIRO」(2002)/「RYUKYU ANJU」(2009), ∴スピッツ「ヘチマの花」(1994)/大好物(2021)|∵「手鞠」「未来未来」(共に2023)/「紫の夜を越えて」(2021)

 

 

Day 3:D-naha ~ ジャッキーステーキハウス(⑩~⑫)

┗ ∵Poppin'Party「White Afternoon」(2019), ∵NonSugar「ノンピリオド」(2021)

 

 「その1」ではディーナハ駿河屋編と称して、那覇沖映通り店のキャラクター雑貨アウトレットでの発掘品を紹介している途中でしたので、本記事はその続きからスタートします。非アウトレット10点、アイマス21/33点、プリティーシリーズ17点に次ぐ4枚目の「写真で見る!購入履歴(一部)」です。

 

■ 複数作品22点(合計3,850円) 

□ ラブライブ(PACIFIC関連3点・缶バッジ), マクロス(ホビー付属品), このすば(缶バッジ3個・イラストボード), まぞく(アクスタ), ぼざろ(A5クリアファイル・マルチケース), まどマギ(色紙), GuP(フィギュア・16頁折ポスター・A3クリアポスター3枚・クリアート・色紙), ひぐらし(フィギュア), 艦これ(フィギュア)

 

 

☆ その他目ぼしいものをピックアップしてみました。ラブライブのは4点とも掘り出し物だと感じ、パシフィックのは全て個人スポンサーコースの特典(別けて感温マグカップのギミック性がグッド)、スクフェス感謝祭2022の缶バッジは県を跨ぐスタンプラリーの交換品と、入手難度がそれなりに高そうだからです。ランカのは謎アームの存在で何かの付属品を疑ったところ正解で、VF-25Sメサイアファイター[オズマ機]の痛車的スタンドでした。 

 

 フィギュアはレシート曰く「ジャンク品擬似品」で、アンチョビ・魅音・時雨改二をゲット。ドゥーチェのはCV33と乗馬鞭が欠品だからでしょうね。他二体は撮影上台座を外しただけなのと、しぐしぐの浮き輪は本来腕に通す仕様であることを補足しておきます。あんこうチームのポスターは16頁折なだけはあって凄く大きいです。さやかちゃんの色紙はフレームに入れたら更に良い感じになりました。

 

 以上、「その1」に掲載した分と合わせて70/137点と購入品の約半分を写真で見せたところで駿河屋編は終わりにします。

 

 

 

 Day 3の夕食はジャッキーステーキハウスにて。Day 1で寄ったステーキハウス88のルーツが1955年なのに対して、こちらのsinceは1953年です。いずれにせよアメリカ世(ユー)からの味ということになります。赤信号の点灯が伝えるがままの満席で外には大勢の人だかり、結局入るまでに40分近くかかりました。焦らされた甲斐もあってお肉は非常に美味しく、写真には載せていませんがオリジナルスープの独特なテイストも味わい深かったです。わしたショップオンラインでは「ちょっと不思議なあの味」と評されています。笑

 

 

 妙なミルキーさと粉っぽさでともすれば数口目まで受け付けない人も多そうな気さえしたけれど、次第にクセになってきて「この洗練されていない感じこそが何十年レシピ不変の証なのでは…?」と、じんわり納得するに至りました。再現動画に「エバミルク(無糖練乳)」を入れているものがあり、調べたらCarnationなる海外製の商品がとりわけ沖縄と関係が深いとわかったため、秘訣の一端はこれかもと睨んでいます。関税割当制度の利用を示す「沖縄専用物資」の表示がある缶の画像をアップしている方もいて、この辺りの複雑な事情;即ち沖縄県に於ける畜産物の生産流通に関しては、『沖縄総合事務局50年資料集』(外部リンク:PDF)に詳しいです。文書内を「沖縄枠」で検索して前後の文章を読めば、乳製品の一部が本土復帰後も特別措置を受けていた経緯がわかります。

 

 

 二次元趣味全開のDay 3を締めくくる音楽レビューはやはりそちら方面からということで、英語表記のJACK'S STEAK HOUSEからの連想ゲームで藤堂陽南袴が噛ますビーフソング「Jack the GAME」(2021)をチョイスです。作品名…というよりメディアミックス名と表現するのがベターな『イロドリミドリ』からの楽曲で、母体の『チュウニズム(CHUNITHM)』はもちろんのこと、他のSEGA発リズムゲームとまとめた呼称の『ゲキチュウマイ』を対象に取ったうえで、僕が2023年に新たにハマった音楽系IPのひとつ*5であるとの認識をまず述べておきます。

 

 *5 ここの言外に想定した別作品は『IDOLY PRIDE』と『ワールドダイスター』です。既に自作のプレイリストに枠を設けているくらいには何れの音楽も質が高いと評していています。同リストに照らすとゲキチュウマイとアイプラが15/16thの登録で、WDSはまだ枠を組める最低ライン(15/3[=5*3])に届くだけの曲数を音源として所持していないため、間もなく発売するユメステのアルバムの内容次第で17thに登録するつもりです。同盤には与那国緋花里が歌う「てぃだんちゅ MEETS てぃんがーら!」(2023)も収録予定で沖縄要素も期待できます。

 

 

 話を「Jack~」に戻しまして、同曲の特徴はとかく攻撃的なリリックとサウンドです。それもそのはずで「襲来のシンセ研編」(外部リンク)をご覧いただければわかる通り、主人公バンドにビーフを仕掛ける文脈にあるためその歌詞にはディスが多分に含まれています。上掲マンガ内では言及されていませんが幕間のボイスドラマ(外部リンク)とそのサムネ(豪華盤のブックレット内にも掲載)に、白奈のヒップホップカルチャー解説があるのでビーフに不案内な方は参照してください。

 

 結成の経緯から疑問を呈す"落とした単位の数とウワサに踊り踊らされ誕生/そのバンドのトボけた血統"や、那知の存在も勘定に入れたのであろう"近接 隣り合う7和音 じゃディスコードも当然"、芹菜に照準を合わせた"ままごとはうちでやんなカレー屋"に、バンド名を小馬鹿にするような"「ステージで探しましょ」 なんてウスノロは出禁のイロモノ"など、鏤められたトゲの鋭さは蓋し"ヒリついちゃうバース"です。一方でa.k.a. FJBKMをアゲるフレーズも格好良く、鮮やかなライム捌きが光る"キスマークで表すキルレイト/6人でレイド?やってみ?こっちはシングルプレイよ"や、子役上がりの経験に裏打ちされた"あたしが見りゃそれもう テキスト最初のページの必須事項"など、マウント上等で高所から咬みつくスタイルが好ましくすらあります。

 

 そんなイルな言葉繰りを一段とドープにするトラックの多彩さも聴きどころです。ビート優位でラップのオケに徹した序盤の組み立てがメロディアスなフレージングによって破られる([0:57]~)のに伴いフロウの流麗さも増し、殊に"Aye プレイヤー速やかにジャッジしちゃって/どっちにつく me or them/we hope your better choice (Ah)"のリズミカルさにはイヤガズムを覚えます。"リリックスカスカ"のくだりに歯抜けの印象を受けるコミカルな音を入れたり、"カレー屋"のところでバングラビート風*6にしたりする芸の細かさも素敵です。

 

 *6 このジャンル名には異議ありの方もいるでしょうが、有名曲で言えばDillon Francis, DJ Snake「Get Low」(2014)のドロップを想定した「風」なので、あくまでEDM/Trapに於ける感覚的なものとお含み置きください。いわゆるスタブ音の連続で構築された特徴的なセクション([1:37-40], [3:00-03])の変形に聴こえるため、クラブミュージックに寄せて形容したまでです。

 

 

 

Day 4:ヤチムンの里 ~ 熱帯DC ~ りうぼう

 

 

 この日はまずヤチムンの里へ赴きました。沖縄の焼き物を指す語をずばり冠した工芸村で、複数のギャラリーや窯元がこの地に集結しています。写真上の象徴的な構造物は登り窯で、実際に目の前にすると歴史を感じさせる佇まいです。写真下は北窯の売店で、ここではティーカップや御猪口や箸置きを購入(郵送をお願い)しました。加えて、実用性とは関係なく見た目に惹かれて買ったものもあります。それがこれです。

 

 

 詳細不明の遺物感を出したくてゴシックテイストで撮影してみました。機能的にはお椀か小物入れの類だと思うものの、蓋の意匠が月に映るため占星術の道具っぽさもあるなと。もっと俗でレトロな例えをするなら、昔の飲食店に置いてあったルーレット式おみくじ器みたいですよね。笑

 

 

 このタイミングで紹介するのはTHE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS LITTLE STARS!のシリーズから「いとしーさー♥」(2018)です。Day 3の二次元趣味を引き摺る選曲だけれど、沖縄と陶芸をキーに脳内から引っ張り出せた楽曲がこれしかなく、寧ろよく思い付いたと手前味噌を並べます。…と言っても本曲の陶芸要素は間接的で、歌い手の一人に陶芸アイドル・藤原肇ちゃんがいるからという理由です(備前じゃなくてすみません)。各人のソロ・リミックスに注目すると、サビの合いの手「ハイ!」を最も民謡らしく発声しているのは彼女だとわかって一層の好感を持てるでしょう。

 

 メロディもアレンジもザ・琉球音楽の趣なので田中秀和さんらしい独特さは鳴りを潜めているものの、fumiさんによるキュートでテクニカルな韻律の歌詞と相俟って非常に中毒性の高いリズムメイキングになっている点は流石と感じます。その一部をレゲエないしダブが担っているのも聴けば瞭然ながら、田中さんの手に成るならこれくらいのクロスオーバーは独特のうちに入らないとの認識です。というよりご本人がリファレンスにBEGINの「オジー自慢のオリオンビール」(2002)を挙げていること然り、僕の中の「ザ・琉球音楽」にはレゲエとの親和性についてもインストール済であるため、2018年にトラックメイカーが選択しうる組み合わせとしては決して異端ではないと考えます。

 

 

 フレーミングとフィルターとコラージュをいちばんガチった上掲写真は、海洋博公園内にある熱帯ドリームセンターで撮影したものです。元々は3*3のを4枚別々にアップするつもりでしたが、ブログだとくどいのと全部まとめたほうが色彩的に面白そうだったので6*6と相成りました。3*3の名残で9枚毎にテーマがあり、【上左「植物1」, 上右「建物」, 下左「円」, 下右「植物2」】です。

 

 ここは非日常に溢れた施設で見所がたくさんあります。基本的にはいくつかある温室を順繰りに巡っていくつくりの植物園で、目玉となる多種多様なランだけでなく熱帯性の花々や果物も数多く鑑賞可能です。「建物」の9枚から伝わることを期待しまして、屋外はファンタジーゲーム宛らの異空間で公式曰くの「古代遺跡を思わせる」(外部リンク)にも得心がいきます。遠見台(塔)の存在感よ。「建物」の青い扉の向こうはプチ水族館でしたし虫の展示室もありました。催物は『らんまん』の放送時期だったからか牧野富太郎展をやっており、博士自身が作成した標本や精緻な植物図に感服した次第です。

 

 

 曲名および"蘭"のルビを「はな」としている一致からここでの旅空BGMはALI PROJECTの「熱帯性植物園」(2002)を措いて他にないと感性が譲らないため、またもアニソン寄りの流れから脱せませんが同曲にタイアップがあるわけではないですし、アリプロは(ついでに言えば先のMONACAも)二次元趣味の範疇外にあっても好きなアーティストなので可とします。アルバムでは共に黒アリな表題曲と代表曲に続くナンバーということで、本曲の持つコンパクトな美しさと輪廻の詩趣が尚の事馨る構成です。古川望さんの雄弁なギタープレイも素晴らしく随所で物語性を強めており、だからこそ2番後間奏のシンプルなリフが意外に響きそれが温かみのあるキーボードと絡み合うものだから、なぜだか涙が零れそうになってしまっても不思議ではないのです。

 

 

 この日は空のスペクトルがスペクタクルだったので道中撮った写真も載せておきます。虹を見やすくするために加工アプリでLinearフィルターをかけ他の3枚も質感の統一で同様にしたため現実よりコントラストがキツいです。…と、こうして綺麗な風景をシェアしたかったことに嘘偽りはないけれど、実はDay 4のみ夕食がイレギュラーで写真がないので画像枠を埋める目的もあります。そのイレギュラーとは「旅行中なら」の但し書きが付くもので、行動としては寧ろレギュラーなものです。リウボウストアの名前を出してネタばらし、この日はスーパーでお惣菜を買ってホテルで食べました。

 

 とはいえ決して見劣りする夕食になったわけではありません。買い出しに訪れたのはホテルからほど近い栄町りうぼうで、ここは24時間営業の店舗です。ゆえになのかは断定できませんが、普通のスーパーなら争奪戦に敗れて微妙なおかずしか残っていないような時間帯に入店したのに、驚くほど種類も在庫も豊富で目移りしてしまいました。ウチナータイムの影響もあるのかもしれませんね。記憶を辿って戦利品を思い返すと、沖縄そばにジューシーにラフテーにフーチャンプルーと王道なのばかりです。そしてここでDay 2でレポしたホテルの庶民派の特色が活きてきます。各階でレンタルないし利用可能なものに電子レンジがあるため温めは問題なし、折り畳み式の机も人数分持ち出して並べるスペースを確保し、意外としっかりとした食卓を創造することができました。「その1」に続いて再び『孤独のグルメ』から引用するなら、「うわあ なんだか凄いことになっちゃったぞ」状態です。笑

 

 

 「旅先にも日常がある」という当たり前ながら忘れがちな面に目を向け、歌詞に"スーパー"と"マーケット"が分かれて登場する、岡崎体育の「私生活」(2019)をここでのレビュー対象とします(上掲動画では[10:07]~)。インディーズ時代のアルバムにも同名のトラックがあり、そちらを初出とするなら(2013)です。コミカルもシリアスも得意とする岡崎さんですが本曲は完全に後者で、アンプラグドなイントロから鼓笛隊然としたドラムスと哀感のストリングスが繰り出される[0:32]までのオケだけで既に良曲の気配、しかしキックとベースはダンサブルでエレクトロなウワモノが重ねられる期待通りの作風も顔を覗かせます。電子音楽畑のミュージシャンがともすれば陥る音圧病(漫画家の空白恐怖症みたいなもの)に罹らず、引き算の美学を弁えたサウンドが好感触です。
 
 "十四歳"にとって学校と家庭のまさに"トワイライト"な狭間と言える"午後五時半"即ち放課後に、母親に連れられてきた"大型スーパー"で"クラスメイトと遭遇"(向こうも親同伴・女子)するというシチュエーション。互いの"私生活"が垣間見えるその瞬間に、可笑しさと気まずさと変な嬉しさが綯い交ぜのソワソワを味わった経験が誰しもにあるのではないでしょうか。特段意識している存在ではなかったのに、"あのコのことちょっと好きになる 小さな街のマーケット/恋の何歩か手前 私生活"と一人舞い上がるのもありがちです。"それぞれの家族 それぞれの夕飯 レジも段々と混んでいく"いつもの光景が、"そして隣の台にはなんと麗しき女神"で非日常と化したのは"偶然性の一コマ 小さな街の出来事"に過ぎないけれど、"どこの街だってあり得る 私生活"なのは間違いなく、なればこそ確率の問題でそのうちのいくつかが「本物」になるのも道理でしょう。自分語りながら僕は岡崎さんとほぼ変わらない年齢なので"攻略本読んでる"の時代背景に共感できましたし、中学生の時分に運動部だったので"体操服のままだ/あっ部活帰りか 下だけウィンドブレーカー"の描写を懐かしむと同時に一種のフェチを想起させられました。
 

 

Day 5:D-naha ~ サンエー那覇MP ~ 美咲

 ゆいレール個人観光デーの二日目です。Day 3で説明した通りこの日もディーナハからのスタートで今度はジュンク堂編になります。都合8冊購入した書籍のうち、沖縄関連の2冊とそれ以外の1冊を紹介しましょう。

 

 

 まずは『琉球怪談デラックス』から。原作者の小原猛さんが蒐集した沖縄怪談の数々を太田基之さんが漫画にした一冊で、12年前に出版された『琉球怪談』にネット公開の未収録作品と新作を加えたものなのでデラックスなわけです。漫画60本と怪談22本が掲載されており、個人的に心惹かれたエピソード3選は「ウニングヮ」「カジョーラー」「フッケーラのアクマ」で、この字面だけでも異質さが伝わってくるのがまさに沖縄と言えます。

 

 ウニングヮは鬼子のことですがその誕生の考え方がユニークで、夜の雲に潜む鬼がアクティユ(悪露)となり洗濯物に落ちてそれを着た女性が孕むという、理不尽なようにも科学的な考証もできそうな因果関係のぼかし方が好きです。カジョーラーは帯状疱疹を彷彿させる内容で、あの見た目と激痛には呪いっぽさがあるなと身を以て知ったので共感できました。実際「一周すると死ぬ」系の迷信が昔からあるらしく、各地の方言が白蛇だの袈裟懸けだの胴巻だのになるのも納得です。詳細は「その4」に書く予定ながら少し先出しますと、僕の発症部位で最も酷かったのが背中なのでユタに熱した草履で叩いてもらいたい思いました。笑

 

 フッケーラは【曰く因縁の詳細が失せている, 明らかに害意を撒き散らしている, 出現するムン(怪異)が多様, 臭いものに蓋をしただけの封印, 年寄の言う「自業自得」】と、深遠な深怨の深淵を覗き込んだかのようなスケール感が好みです。靄に覆われた塵捨て場に夥しい数の矢が刺さった真っ白な牛を見て恐怖に慄き、走り逃げるままに登校したら小学校も妙な霧に包まれ始める描写の不気味さに毛骨悚然とします。

 

 

 ここでのこじつけ楽曲レビューはフレデリックの「YOU RAY」(2022)です。ウチナーグチで表せば「ユーリー」つまり「幽霊」を指します。曲名はそれとrayを自動詞として「あなたが(光となって)現れる」そして「零」と三つを掛けているのでしょう。フレは過去に何度か取り上げている存在ですが、相変わらず面白いバンドだなと興味が尽きません。中でも本曲は近年のキャリアに於けるいちばんのフェイバリットで、ボーカルを三原弟(康司さん)に委ねたことが見事に功奏した名曲との評価です。この点は『FREDERHYTHM ARENA 2022』の曲前MCでふれられており、デモを聴いたお兄ちゃんが「これは康司が歌ったほうがいい」と判断したそう。曲後MCで健司さんが自分の声に関するコンプレックスと反骨精神について語るので殊更に決断の重みが感じられます。

 

 物憂げで童謡チックなマリンバと寂寥感を携えたストリングスのコンビネーションで楽曲の雰囲気が決定付けられ、仰けから"幽霊"が出てくるには申し分ないサウンドスケープです。往年の歌謡曲然とした進行で歌われる旋律もまた儚げで、葉も疎らな木々が立つ湖畔のベンチに腰掛け目前の水面を眺めている男のビジョンが浮かびます。別れの瞬間を描いた冒頭のスタンザのみ"外で飲む炭酸"や"ポツリ雨降る音"から暖かい季節が想像されるものの、直後の間奏で文字通り時間が流れ"傷つかぬ繊細と"と共にリズミカルに動き出す弦を通じて、「喪失で止まった自分の時間」に相対する「外世界の通常の時間の流れ」が嫌に速く感じるのを表現しているふうに聴こえました。"あなた"と共有した時間を正の数として次第に"0になって"いく歌なのでカウントダウンと共に時間も進み、"幽霊みたいに 透明"な思念上の存在と化す頃にはすっかり寒空、"枯れそうなほどの声"をそのメタファーと捉え、愈々"0"になってようやく掛け替えのないray(光)に変わったのだと結べます。

 

 

 お次は『沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる』です。同作との出逢いは去年のこの記事に書いており、銀座のわしたショップ本店でジャケ買いをしたことを明かして、ボイス付き販促動画を埋め込み声優陣の豪華さから「アニメ化を見据えた狙いを感じます」と書いたら、やっぱりアニメ化が決定(外部リンク)しました。よきよき。ジュンク堂那覇店にはお祝いイラストもありました。沖ツラを本場で買えて良かったことは、特典ペーパーがバンチコミック販売協力店のだけでなく「うちなーの皆さま」向けのも付いていたことです。7巻のネタで今般の旅行記にも絡められるのは「その1」で飲んだルートビアだけれど、漫画ではその名称が使えないのか缶の絵で察せるようにしていましたね。笑

 

 

 Day 1の最初で8月の台風6号に言及しましたが、TBS系列のニュースで作者の空えぐみさんが停電の取材に応じていて(上掲リンク先に動画あり)、その苦境は僕にもわかると4年前のことを思い出しました。電気がないことによるQOLの低下は想像以上で、家電が使えない点に意識を奪われがちな中で地味に困るのは、照明が脆弱だとちょっとした物の移動さえ慎重になるところです。幾つか光源を設置或いは持っていようと室内の殆どは暗闇ですから、テキトーに物を置いてその場を離れるといとも簡単に見失います。

 

 

 最後に沖縄とは関係ない購入本として『90年代アニメ&声優ソングガイド』をご紹介。ヒストリカルな解説部分もあるものの主軸は純粋な楽曲レビューの連続なので、とにかく色んな曲を知っている or 知りたい方におすすめします。書籍名の通りメインは90年代ながら、プレ90sとして80年代後半のナンバーにもふれられていますし萌えソング台頭の流れでゼロ年代前半も対象に、そして90sリバイバルの文脈ではテン年代後半のカバー曲までカバーする守備範囲の広さです。

 

 作品や声優への思い入れまで考慮すると収拾がつかなくなってしまうため、あくまで音楽の好みだけに焦点を当てたうえで、本書のラインナップから自分史に於いてエポックメイキングな20曲を抜き出して列挙してみます。

 

1.  中村由真「Dang Dang 気になる」(1989)|『美味しんぼ』OP

2.  平沢進「バンディリア旅行団(Physical Navigation Version)」(1991)|『DETONATORオーガン』ED

3.  LINDBERG「大キライ!」(1993)|『平成イヌ物語バウ』OP

4.  奥井亜紀「Wind Climbing ~風にあそばれて~」(1994)|『魔法陣グルグル』ED

5.  奥井亜紀「晴れてハレルヤ」(1995)|『魔法陣グルグル』OP

6.  カヒミ・カリィ「ハミングがきこえる」(1996)|『ちびまる子ちゃん』OP

7.  篠原ともえ「ウルトラ リラックス」(1997)|『こどものおもちゃ』OP

8.  西脇唯「君がいるから‥」(1998)|『金田一少年の事件簿』OP

9.  Gabriela Robin「Moon」(1999)|『∀ガンダム』挿入歌

10. D.U.P.「PARTY☆NIGHT」(1999)|『デ・ジ・キャラット』キャラソン

11. 坂本真綾「プラチナ」(1999)|『カードキャプターさくら』OP

12. 彩菜「Last regrets」(1999)|『Kanon』OP

13. Lia「鳥の詩」(2000)|『AIR』OP

14. KOTOKO TO AKI「prime」(2000)|ノンタイアップ

15. ALI PROJECT「コッペリアの柩(Noir Ver.)」(2001)|『ノワール』OP

16. 坂本真綾「bitter sweet」(2001)|ノンタイアップ

17. 川澄綾子「かえりみち」(2001)|『まほろまてぃっく』OP

18. ROUND TABLE featuring Nino「Let Me Be With You」(2002)|『ちょびっツ』OP

19. KOTOKO「さくらんぼキッス ~爆発だも~ん~」(2003)|『カラフルキッス ~12コの胸キュン!~』OP

20. HUiT「浪漫飛行」(2019)|『八月のシンデレラナイン』キャラソン(カバー)

 

 4.と5.はこの記事で2017年版のグルグルを語った時にふれていて、11.はCCさくらの特集記事の中でレビュー済です。12.~14.と19.のI've Soundに関しては曲名を出したり出さなかったりながらも、この記事に当時の振り返りがあります(或いはKOTOKOの特集記事も参考になるかも)。15.は「今日の一曲!」で取り上げていて、16.は収録アルバムの別曲が「今日の一曲!」の対象でした。18.はアーティスト名を10年以上前にも5年前にも例示していて、音楽性についてもう少し突っ込んだ記述がこの記事にあります。あとは全般的なものとして「ようの誰得アニメコラム(完全版)その2 ―視聴履歴―」から僕のアニソン遍歴を窺えるかもしれません。

 

 

 監修を担当したあらにゃんさんが前書きで「サブスクにはないものを(中略)CDに媒体としての価値を取り戻したい」と述べており激しく同意なので、1.~20.のうちフィジカルに所持しているものをラックから引っ張り出してみました(ここにないいものはデジタルで所持)。初出でなかったりバージョン違いだったりも含まれますが何れも思い出深いです。左上のオーガンのサントラ3作なんか貴重じゃないでしょうか。

次回に続く!

 

 Day 5の途中ですが記事あたりの限界文字数に到達したので、続きをご覧になりたい方は下掲のリンクカードから「その3」へ飛んでください。