2023年、夏、沖縄 ~Every Trip Has A Soundtrack~ その3 | A Flood of Music

2023年、夏、沖縄 ~Every Trip Has A Soundtrack~ その3

 

 

 本記事は上掲リンクカード記事の続きです。今年9月の沖縄家族旅行を音楽レビューを交えつつ振り返ろうとの趣旨で書いています。目次はこちら

前回のあらすじ!

 

 

 下記引用部の見方 【「その2」の小見出し(丸数字=上掲写真4*2の左上①→右下⑧)┗ 言及した楽曲の基礎データ, ∴=「旅の空にあって相応しいBGM」の例, ∵=「当座のトピックから連想ゲームでこじつけた楽曲」の例】

 

 「その1」のあらすじは省略(①)

 

 Day 3:D-naha ~ ジャッキーステーキハウス(②~③)

 ┗ ∵藤堂陽南袴「Jack the GAME」(2021), ∴与那国緋花里「てぃだんちゅ MEETS てぃんがーら!」(2023)

 

 Day 4:ヤチムンの里 ~ 熱帯DC ~ りうぼう(④~⑦)

 ┗ ∴輿水幸子・多田李衣菜・藤原肇・水本ゆかり・森久保乃々「いとしーさー♥」(2018), ∴BEGIN「オジー自慢のオリオンビール」(2002), ∴ALI PROJECT「熱帯性植物園」(2002), ∵岡崎体育「私生活」(2019)または(2013)

 

 

 Day 5:D-naha ~ サンエー那覇MP ~ 美咲(⑧)

 ┗ ∵フレデリック「YOU RAY」(2022), ∵書籍掲載の20曲(後述)

 

 「その2」ではディーナハジュンク堂編と称して、那覇店で購入した書籍の紹介をしている途中でしたので、本記事はその続きからスタートします。『琉球怪談デラックス』と『沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる』に次いで、3冊目に取り立てた『90年代アニメ&声優ソングガイド』の話の続きです。

 

 列挙した「自分史に於いてエポックメイキングな20曲」のうち、最も懐かしいと感じた&この機会を逃すと二度とレビューしそうにないと思ったとの理由により、西脇唯の「君がいるから‥」(1998)をピックアップします。あらすじの画像⑧の右上に見切れているのが証拠に懐かしの8cmシングルをフィジカルで所持していて、世紀末の頃は『金田一少年の事件簿』と『名探偵コナン』の主題歌にお気に入り*7が多かった小学生でした。

 

 *7 金田一では他にGRASS ARCADEの「BRAVE」とTWO-MIXの「JUSTICE~Future Mystery~」が(共に1999)、コナンでは小松未歩の「謎」(1997)/「願い事ひとつだけ」「氷の上に立つように」(共に1998)とTWO-MIXの「TRUTH~A Great Detective of Love~」(1998)とB'zの「ギリギリchop」(1999)が好きで、親にねだって買ってもらった記憶があります。

 

 

 イントロの特徴的なシンセがフックとして優秀で且つサビ始まり、西脇さんの儚さと力強さが両立する歌声のインパクトも相俟って、アニメのOPにばっちりな惹き込ませる序幕です。タイトルロゴを背景にした王道のリフセクションを経て、意外とロックなオケの上を切ない旋律が走る平歌の音像は、歌声とのバランスが非常に良く取れています。映像面ではBメロの"壊れずに"で美雪がリップシンクするのが好きでした。冒頭のシンセがスピーディーな変貌を遂げてフィルイン的に機能しサビへ、1番の時点でもうラスサビに入ったかのような盛り上がりを見せるところは、OPの尺だけでも充足感を得られるようにするためでしょう。"信じることも今は まぼろしに変えてしまった街で"は、推理モノの世界観にも不穏な時世を反映させたリアルにも刺さる見事な表現です。一転してCメロの気持ち前向きな進行も素晴らしいので、ぜひフルで聴いてみてください。

 

 以上、「その2」に掲載した分と合わせて3冊分の雑感を書き終えたところでジュンク堂編は終わりにします。

 

 

 

 Day 3と異なりこの日は途中でディーナハから離れておもろまちへ、サンエー那覇メインプレイスを初訪問です。特段の目当てや目的があったわけではないため適当にブラブラし、遅めのランチを取ったかつ乃屋ではロースかつ鍋定食(沖縄県産豚肉使用)ときなこミルクぜんざい(沖縄ではかき氷を乗せたものが一般的)を食しました。買い物は全国展開しているルピシアだけですが、選んだのは沖縄限定のお茶4種類です。那覇MPはガイドブックにも載っているスポットとはいえ基本的には地元民向けのショッピングセンターだと評しつつ、こうして観光客ムーブを楽しむこともできます。

 

 

 ここで紹介するナンバーはいーどぅしの「アナタにアイタイ」(2021)です。歌詞に"おもろまち"と"サンエー"が出てくる(文脈的にMPのことではない)からという選出理由ながら、本曲のローカル要素は歌詞全体に及ぶので正直どのタイミングでふれようと旅空BGMとして機能します。例えばDay 1なら"国際通り"と"ブルーシール"と"ゆしどうふソバ"を、Day 2なら"A&W"(読みはエンダー)と"ルートビア"をキーにしても良かったでしょう。沖縄出身の女性デュオならではの(過剰なまでの)具体性に富むその内容は、曲名から単なるラブソングと思いきや"イタイ女"に掛かっているのがミソで、悪く言えばストーカー気質の歌です。笑

 

 

 本曲のまた面白いところはラスサビ前のスタンザで、沖縄出身アーティストの手に成る有名曲からの引用で欲張りセットになっています。【HY「366日」(2008), かりゆし58「アンマー」(2006), Kiroro「Best Friend」(2001), ポニーテールリボンズ「モアイ大好き金城さん」(2012), ORANGE RANGE「上海ハニー」(2003), 森山良子「涙そうそう」(1998) [BEGIN作曲・夏川りみのカバーも有名], MONGOL800「小さな恋のうた」(2001) [入りの"アナタに"は「あなたに」(2001)由来とも言える] は確実です。微妙なのが歌詞にないコーラスの'no more cry(ing)'で、元ネタがあるとすればD-51「NO MORE CRY」(2005)か安室奈美恵「no more tears」(2000)でしょうか。言及しなかった【"思い伝えたくて", "相談したけど", "行きなよって", "それじゃ", "ワタシの"】の部分にも参照先があるかもしれません。

 

 

 この日の夕食は美咲で山羊料理をいただきました。ここのは本当に臭みがなくて苦手意識をお持ちの方にもおすすめできます。山羊刺しはもちろんチーイリチーも写真を撮り忘れた山羊汁も下手を打てばエグい味になるのに、どれも僅かにすら雑味がなくしかし野性味はあって美味しかったです。ママにその秘訣を聞いたら仔山羊を使っているという意味合いで、「かわい子ちゃんだから♡」と返されました。笑

 

 素材の良さは前提として調理の腕も確かで例えば先のチーイリチーはフーチバーと炒めて臭み消しに努めているとわかりますし、写真右のサービスで作ってくれた〆のメニュー(胡瓜と竹輪の和え物に砕いたアーモンド?が振ってある)は脂っこい口内を爽やかにしてくれます。極め付きのにんじんしりしりは過去どこで食べたものより佳味で、ママ曰くの「某ホテルからレシピを訊かれたけど教えなかったわ~」にも腹落ちで顎も頬も落ちました。

 

 

 MVにヤギが出てくるのと夏の旅行記であることを強調する意図で、RADWIMPSの「夏のせい」(2020)をレビューしてDay 4を終えます。夏特有の万能感にフォーカスした歌詞内容に甚く共感でき、お気に入りのフレーズは"忙しない だらしない 今までない 二度とこない/果てしない夏の予感"です。アクティブに動き回って他が疎かになった場合でも無為に過ごす贅沢を貪った場合にも機能する、この"だらしない"は実にニクい言葉選びだと思います。陽キャムーブも陰キャムーブも受け入れる包容力が夏にはあると換言して、"胸躍るものだけが 呼吸するこの季節に"の"もの"を「ワクワクさせるモノ」と「ワクワクできる者」のダブルミーニングに解すれば、パーソナリティや行動様式に拘らず「期待こそが生命の原動力である」と結べ、これが"異端者も 科学者も 夢想家も 解けたことない/命題"ではないでしょうか。

 

 このような趣旨はともすればその刹那主義的な部分だけが切り取られ、アッパーな曲調のパーティーソングでアウトプットされてもおかしくありません。そういうのも嫌いなわけではないことは、Day 2で「ビーチブレイバー」(2019)を挙げていることから推し測れると期待します。しかし本曲は切ない立ち上がりながらも次第に確信を得ていくような壮大なアレンジが印象的で、ゴスペルライクに展開していくピアノ主体のミッドバラードをバンドサウンドとプログラミングとオーケストレーションで彩るという、種々の劇伴制作経験が反映された近年のラッドが得意とする多層的でナラティブな編曲です。このアプローチには夏を愛する人のみならず、夏に愛されなかった人にも誘い水を向ける優しさがあると感じます。

 

 

Day 6:勝連城跡 ~ 果報バンタ ~ 公設市場

 

 

 予定盛りだくさんのこの日はまず世界遺産の勝連城跡から。写真は熱帯DCの場合と同じく別々にアップするつもりの4枚を1枚にまとめたことに加えて、トリッキーな画面分割をしたためいまいち雄大さが伝わらないかもしれませんが、かつての要害なだけはあってそこそこの険しさを伴います。羽搏く鳥を捉えたものは奇跡の瞬間で、風景を撮影したら偶々写り込んでいて驚きました。

 

 ここは勝連按司(人名というより称号:勝連のアジ=主)の一世から数えて十代目の阿麻和利に至るまでの14~15世紀にかけ、その位置する半島を支配していた一派の居城跡です。最後の城主である阿麻和利の英雄的側面が後の研究により注目されていて、同様に謎多き九代目(和人[倭寇]説・女性説)の茂知附按司による悪政を謀反で挫いたり、海外との交易を積極的に行い地域の一層の繁栄に寄与したりと傑物だったそう。ゆえに首里王府からは野心ありと危険視され、その真偽の程や込み入った経緯は省略しますが最終的には琉球王国の尚泰久王の命を受けた討伐軍に敗れます。従って、正史では逆臣扱いです。

 

 併設の資料館その名も「あまわりパーク」の歴史文化施設は当然ながら英雄像を主に語っており、後の王府が編纂した琉球最古の歌謡集『おもろさうし』に阿麻和利を讃える歌が残されていることや、沖縄学の父である伊波普猷の論考がそれを支持していることなどから、その人物像と係る歴史が再評価されています。同施設のライブシアターではアニメ『勝連おもろそうし』が上映されていて、YouTubeでも観られる(外部リンク)ため興味のある方はご覧ください。CVに古谷徹さんと下地紫野さんを起用する気合の入れ様なので声優ファンの方もぜひに。ちなみにDay 3でふれたユメステの楽曲を歌っている与那国緋花里のCVも下地さんで、沖縄出身なだけはあって沖縄関連の仕事に所縁がありますね(デビュー作品の『島んちゅMiRiKa』も県の事業)。

 

 

 ここで紹介すべき楽曲はイクマあきらの「ダイナミック琉球」(2008)一択です。MVのロケ地が勝連城跡で、先掲アニメの「阿麻和利編」で茂知附按司のCVを務めたのもイクマさんという関連性があります。本曲はとりわけ応援歌として全国的な知名度を誇っており、流行に至る背景や特異な音楽性について詳説したページが多くあるため、代表として『Real Sound』の記事(外部リンク)に導線を繋いでおきましょう。種々のクロスオーバーが見られるので要素毎にジャンル名を挙げてその音楽的様式を明らかにせんとしても良いのだけれど、それよりもオフィシャルが謳う「ハイパーエイサーミュージック」こそが的確な形容だと納得させるだけの凄みがあり、僕が時折用いる定型句で言えば「良さは聴けばわかる!と感性に丸投げしたほうがベター」としたい系譜の楽曲です。

 

 

 ここで道中写真のコーナー再び。海中道路を渡って宮城島へのルートです。右上のキジムナーもまた偶然撮れたもので、PCで画像を確認している際にその存在に気付きました。拡大がキツく粗さが目立つのを詫びまして、ツリーフォークの間に映るはパラグライダー、ほぼ真っ黒のはドローンを捉えています。シルエットにしないと「蠅かな?」と見紛うレベルだったのでNoirフィルターです。その左は桃玉名の樹で、右下はざわわな感じには未だ遠い夏植えの砂糖黍畑だと思うものの、植物系は同定に100%の自信がありません。

 

 

 小見出しに書き切れなかった訪問先にぬちまーす観光製塩ファクトリーがあります。と言ってもここは果報バンタのお隣というか同じ敷地内です。工場見学に食事に買い物と「塩」を堪能してきました。写真中央は沖縄で見られる雪景色、同社が誇る「常温瞬間空中結晶製塩法」(外部リンク)により降り積もった塩です。その左の豚煮も当然ぬちまーす仕込みで、とても柔らかく仕上がっており美味でした。扉向こうの螺旋外階段は封鎖も注意もなかったため上ってみましたが、立ち入って良かったのか微妙な雰囲気だったうえに足元が若干不安でしたので、推奨されていなかったならすみません。

 

 

 同施設のカフェに塩ソフトのメニューが豊富な点に託けて、ここでの楽曲レビューは堀江由衣の「バニラソルト」(2008)です。『どらドラ!』のED映像のイメージが強く、今回改めて調べるまでこんなに特筆性の高いMVがあるとは知りませんでした。その内容は全編に亘ってPerfumeのパロディが繰り広げられる;ヘアスタイル・ダンス・プロップ・照明・レイアウトと多方面に既視感を覚えるもので、正統派の人気声優が歌うラブコメ作品の主題歌でこんな攻め方する必要あった?…と思わなくもありません。しかしよくよく考えるとその「正統派」とは彼女の声質もしくは演じるキャラの傾向がという話であって、声優としての堀江さんはアイドル路線の走りから第一線で活躍し続けている寧ろ特殊な存在ですよね(要するに「声優だけどアイドル」)。

 

 一方でパフュームも「アイドルかアーティストか?」の議論が成立する狭間の存在なので、その両者を「ビジュアル」で結んでみることに映像制作者の意図を見出せそうな気がしました。2023年から見れば声優のドル売りもアーティスト像を練り上げるアイドルも別段珍しくなく、言葉の区別やカテゴライズは詮ないことになったと良くも悪くも感じるけれど、ゼロ年代後半なら充分に成立する切り口でしょう。この立脚地から鑑賞するとハードカバー『SANTA FE STYLE』を登場させているのも意味ありげで、宮沢りえの有名過ぎる写真集を連想させて「アイドルなのにヌード」のボーダーレスっぷりに意識が向くようにしているのかもと深読みできます。こればかりは現在でも依然レアですが。笑

 

 

 話を音楽面に移しまして、その実「テクノポップな音楽性からパフューム風にしただけ」と言われても得心がいくほどには電子音楽志向のつくりです。これは本曲に限らずとらドラの主題歌およびキャラソンに象徴的な作風と言え、四つ打ちやピコピコは基本としてスパソ系のシンセリードにトランス風のアルペジオ(シーケンスフレーズ)にオートチューンの多用など、これらのワードにビビっと来たならお気に召すトラックも多いかと思います。良く言えばリファレンスに忠実な、悪く言えばどこぞで聴き覚えがあると表現したい、抜群にキャッチーなメロを持つ曲が殆どなのは取っ付き易さの観点でプラスです。この折紙付のポップさを"アマいだけのバニラより"に擬えるなら、上述の電子的なサウンドは"ちょっと塩した方が/甘みも増してゆくしね"の「塩」に相当し、ゆえに"飽きがこない…"のも然りと言えます。

 

 

 景勝地と各企業の関係性はよくわかりませんが、ファクトリーの敷地内とされている「命御庭(ぬちうなー)」と、現地の案内板に拠れば伊那食品工業の会長が命名したらしい「果報バンタ(カフウ-)」の写真です。前者にはパワースポットが3つあり、エネルギーは「龍神風道(りゅうじんふうどう)」→「三天御座(みてぃんうざ)」→「はなり獄(-だき)」の順で流れています。写真は右下→その左2枚→上段右から2枚目がそれぞれです。別けても龍神風道は立った瞬間に亜熱帯の潮風とは思えない爽やかで涼しい金風が身体中を強く駆け抜けたため、確かにここは旺気の取入口だと秒で腹落ちしました。果報バンタはご覧の通りの絶景で、この水天一碧の美しさに過ぎたる言葉は不要です。活溌溌地に至れそうなこの状況に鑑みて、ここではThe Chemical Brothers『For That Beautiful Feeling』(2023)に収録の「Live Again」を取り立てます。

 

 

 話の流れ的には解説を敢えてしないのが最善ながら本曲について少し語りますと、このアルバムタイトルにこの曲名が感動の代弁に相応しいのを前提に、真実の言葉だけで構成されているがゆえに簡潔な歌詞は冒頭部で早くも実質的な役割を終え、その後は只管に"Yeah, we'll live again"が繰り返されるのみという直截なメッセージ性が、バイタルなビートメイキングと多幸感に満ちたコーラスワークにマッチした名曲です。

 

 

 Day 2で匂わせた"公設市場"は勿論ここ第一牧志公設市場のことで、持ち上げシステム(外部リンク)を利用してイラブチャー(舞鯛類の総称)とヤクゲー(夜光貝)を調理してもらいました。前者は唐揚げと刺身、後者はバター炒めと刺身です。別にアバサー汁とパパイヤイリチーを注文し、豪華な夕食と相成りました。夜光貝のバター炒めが殊に滋味深かったです。

 

 Day 6を終える楽曲レビューは選曲に悩みまして、歌詞に"公設市場"が出てくるナンバーは既に消化済みなので単なる「市場」にまで対象を広げるも、Day 4の"マーケット"と被り気味なためこの路線は取り止めることに。ならば「夜光貝」はそのままでは無理筋でも「夜の光」ないし「貝」になら絡められそうと目論めど、幾つか浮かんだ候補曲では目下筆が乗りそうになく振り出しに戻る。「鯛」「ハリセンボン」「パパイヤ」で再試行しても同様の結果に。もう何も出てこないと諦めたところで「今再ハマり中のD.A.N.を紹介すればいいか」と、執筆時に流していた「Overthinker」(2021)の歌い出し"別に いいんじゃない?"に後押しされました。この選曲プロセスがそも「考え過ぎ」の産物ですしね。"眠れない夜 まるで深海"で夜と海をカバーし、"Just sinking in the spiral"のスパイラルを巻貝に結び付ければ、何とか「夜光貝」を連想する余地が生まれるとこじつけることにします。

 

 

 当ブログにダンの名前を出すのはこれが二度目で、一度目はAPOGEEの5thアルバムをレビューした後記に音楽シーンを語る文脈でSuchmosとPAELLASと並列させたうえで、「ここに名前を出したバンド全てもっと売れろ!」および「こういう音楽がもっとスタンダードになれ!」とストレートな願望を述べていました。これが2018年3月のことで、この時点のダンは未だ1stとミニしかリリースしておらずそれでもその独創的なサウンドは注目に値していたため、期待を込めて例示したのです。この頃は「Curtain」(2016)がいちばんのお気に入りでした。そして期待通りに2nd『Sonatine』(2018)では更なる深化が見られ、日本人のスリーピースバンドが奏で得る典型を大胆に超越したスタイルで、ミニマルを基調とする電子音楽のエッセンスと有機的なバンドサウンドの見事な融合を果たし、比類なき陶酔性を宿すオリジナリティを開花させたと評します。特に「Borderland」と「Pendulum」が衝撃でした。

 

 

 この驚きを優に上回ってきたのが3rd『No Moon』(2021)の完成度で、「アルバム」の単位が軽視されがちな近年に於いて、良質の小説や映画を鑑賞し終えた時のような余韻に浸れる稀有な一枚です。先に埋め込んだ「Overthinker」は一推しで、場合によってはダサく受け取られることもある日英ちゃんぽんの歌詞が、トリッキーな譜割りが醸成する不思議なグルーヴにぴったりと重なって異様に格好良く、モーラとシラブルの往来をここまで鮮やかに紡げるのは神業だと絶賛します。"不安定な音程 頭いかれそう"はともすれば楽典的な自己言及の歌詞ですが、自身に潜む複数の存在が順番に顔を覗かせてくるような目まぐるしいボーカルタッチの変化はアイデアとして秀逸ですし、このカオスも含めて歌詞のコンセプトに相応しく蓋し"Overthinker"の脳内世界に鳴り渡る音楽です。実際に他のアーティストをフィーチャーした「The Encounters」の多層的な混声も素敵で、Takumi(MIRRROR)の本格ヒップホップにもtamanaramenのウィスパーボイスにも馴染むダンのオケが、如何にハイポテンシャルであるかを物語っています。

 

 

 

Day 7:国際通り(アニメイト ~ ドンキ ~ 88)

 

 個人観光デーの三日目でありながら、この日はゆいレールを利用していません。Day 3での説明がわかりにくかったと言い訳しつつ、朝食後~夕食前を各人の自由時間に充てたのは確かにDay 3, 5, 7で間違いないけれど、ディーナハに個人で訪れたのはDay 3, 5のみで残す1回はDay 8に家族揃ってだったのです。しかしオタク趣味に費やした点ではDay 7も同様で、小見出しにあるようにアニメイト那覇国際通り店とドン・キホーテ国際通り店にそれぞれ購入品があります。

 

 

 沖縄関連は3点で、全く知らないのにグッズに手を出してみたVTuber根間ういちゃんのキーホルダーとA4クリアファイル、ちいかわからシーサーのを買わない選択肢はないのでご当地キーホルダーをゲットしました。その下のセクシーなマグネットは包装を捨ててしまい詳細が不明なため(注:無関係なアクキーの上に置いています)、もしかしたら沖縄限定の何かかもしれません。迫真のJAPANが主張するように外国人観光客向けでしょうが、外国の雑貨屋で要らないのに微エログッズに食指が動くのと同様のマインドが発動してしまったのです。笑

 

 スパイ教室のラバストはブラインド商品でリリィちゃんとモニカが来てくれました。この爆のB5下敷きとライザのアクスタも含めて、現行とひとつ前のクールのアニメに釣られたのがあらわなラインナップとなっています。そういえば過去にも(おそらく2017年に)ガンダムBFTに再放送でハマっていた折に、沖縄のドンキでういにんぐふみなとはいぱーギャン子のガンプラを買ったことを思い出しました。そしてそれらを最初の緊急事態宣言下のステイホームで組み立てたことも。

 

 

 『スパイ教室』は特殊EDが豊富で主題歌も多彩だったけれど、1st season通常ED曲の鈴木このみ「Secret Code」(2022)が最たるフェイバリットでした。鈴木さんの楽曲はアニメタイアップのものしか知らず、「銀閃の風」(2014)や「THERE IS A REASON」(2017)や「真理の鏡、剣乃ように」(2019)など、パワフルな歌唱と熱量を帯びた作編曲で突き進むアニソンらしいものに惹かれる傾向にあったので、R&Bテイストのトラックに乗せてゆったりと歌われる本曲は新機軸に聴こえます。とりわけAメロの"細胞が入れ替わったみたい/別の人になったり"の部分がハイセンスで好きです。制作を手がけたESME MORIのアナザーワークスとして、沖縄電子少女彩「カスミソウ」(2022)の編曲を挙げて沖縄要素も足しておきます。

 

 長かった旅行も明日で終わり、Day 3, 5, 7に紹介した大量の発掘品だけでなく各所で都度買ったお土産もきちんと整理しておかないと、チェックアウトの朝に慌て周章く(ハンタでしか見たことのない漢字表記)ことになるため、この日の自由時間の一部は荷造りに充てました。ちなみに着終えた服や海水浴グッズなどはホテルの有料郵送サービスで段ボールにインしたので、キャリーのスペースにはかなりの余裕があります。買ったものを送るのも手ですが、主に衣類だけにしたほうが重量が嵩みませんし、万一の破損や紛失のリスクを考えれば購入物は自分で運搬したいですよね。

 

 

 このシチュエーションに見合うナンバーとして、久川颯が歌う「Packing Her Favorite」(2022)をレビューします。三記事連続でアイマスからの選曲で何なら次の「その4」にもプランがあるけれど、作品の楽曲数が桁違いゆえにテーマも多様で旅空BGMに設定し易いメリットがあるのです。厳密には上京の歌ながらも"東京"(羽田空港)に向かう点では同じですし、最初から最後まで「荷造り」にフォーカスした歌詞は珍しいと感じます。この記事で言及した「O-Ku-Ri-Mo-No Sunday!」(2019)で久川姉妹に興味を持ち、初めは凪の独特過ぎるキャラクター性がツボでまさにそれを体現した神曲;且つ東京メトロのCM(箭内道彦さんが手掛けた「TOKYO HEART」)っぽい世界観が個人的に強く刺さって更なる加点対象となった「14平米にスーベニア」(2021)をヘビロテしていました。

 

 僕のアイマス楽曲漁りはいきなり音源入手の無軌道でゲームもキャラも声優も先行していませんので、後に聴いた「Packing Her Favorite」も初聴からしばらくは颯のキャラソンと気付かずスルーしていたくらいです。しかしある時ふと本曲のプレコーラスに差し掛かった時に、「あれ?14平米に似てる?」と気付いて改めて向き合ってみると、なぜに三人称と違和感のあった曲名の「Her」について「そういうことか!」と驚心動魄に至りました。時間差で相方の楽曲を発見することのカタルシスに関しては、この記事に類同を幾つか紹介しています。ある程度キャラの知識が付いてくると互いのキャラソンの補完性も魅力的に感じられ、インドアな凪が散策メインで活発な颯が実家で荷造りという一見パーソナリティと逆転しているような歌詞内容ながら、凪のアウトドアはワンルームを充実させるためで颯の念入りな下準備はアクティブに動くためと着地点は解釈一致に描かれており、巧みな行動原理の擦り合わせだなと感心しました。

 

 

 そんな「はー」の"夢も希望も"たくさん詰め込まれた本曲は"キラキラ"なフレーズのオンパレードで、"「まもなく未来です」/チケットが呼んでる"の視界良好な擬人法の心地好さや、"あえて空けた/からっぽのかたすみ/お土産を入れるんだ/絶対 あげるね"のハッピーな計画性に共感を覚えます。一方で気弱な気持ちがちくっと胸を突く瞬間もあり、"やる気ばっかり空回りして/ぜんぜんしまらないな/パツパツのキャリー"のキャパオーバーに悩む心理や、"キラキラの世界のワタシ/ホントは未発見 だけど/ねぇ 約束するよ/見つけるよ 見せてあげるよ"で不安と期待が綯い交ぜになった本音の開陳もまた、上京あるあると言えるでしょう。

 

 ゆるくてキュートなラップが刻むライムとフロウも耳がハッピーで、ここすきラインは"東京だし負けられないし/まーけっこう顔可愛いし?(へへー)/思いっきり肩出しワンピ/ママウケ賛否? でも着たい!/(もってきまーす)"、"「そろそろ寝なさい」/バイマイマザー フロムリビング/そーこーしてたら/やばいてっぺんてマジ?"、"そーだあれも必須だ/地元じゃ着れない背伸びのコーデ/寒いとヤダしカーデ スニーカーで遠出/って待って やっぱ入んない!(えーん)"と何れもガーリーなワードで編まれたものです。更に旋律性が失せて半ばセリフと化す2番サビ後のパートもクセになる節回しで、"あぶなかしい?"と"ちゃんと考えたし!"と"…じゃあ、ちゃんと見てて?"のそれぞれで芸術的な間の取り方が披露されていると感じます。長々と書いて結局言いたかったのは、最初は凪に魅せられたのに「推しの推しが推しになる」現象で今は颯のほうが好きになっているという話です。笑

 

 

 写真をまとめた都合上ここでアニメイト訪問時までタイムラインを戻しまして、那覇国際通り店にあったキャラクターパネル等を紹介します(店員さんに一応了承を得てから撮りました)。左から『白い砂のアクアトープ』の海咲野くくる、『SK∞ エスケーエイト』のサイン入りスケボーやTシャツ、『原神』のナヒーダです。前二作はアニメを視聴済みだったので舞台が沖縄だからかとすぐに得心がいったのですが、原神は未プレイなため軽く調べてみても所以を発見できず仕舞でした。各県に異なるキャラのが置いてあるのかな?…話題は変わって右の3枚はまたもステーキハウス88での夕食で、しかしDay 1は松尾店で此度は国際通り店です。Aサインも収めておきました。

 

 

 最後までアニソン特化で『白い砂の~』ED曲、Mia REGINA「月海の揺り籠」(2021)をレビューしてDay 7を終えます。ミアレジのディスコグラフィーに於いて最も好きになった一曲で、自作のプレイリストの特殊枠「Animation Song Other」でも「1st」(上位80曲)に位置付けているくらいには高評価です。過去のレビューでは偶々バラードを取り上げていたとはいえ、鈴木このみさんのケースと同じで力強い楽曲のイメージが優勢だったミアレジに、ピアノとストリングスが主体の劇伴的なアレンジが光る楽曲を歌わせるのはチャレンジングだなと思いました。というか初めてEDで耳にした時は、テロップにその名が表示されて「嘘!?」と疑ったほどです。3人とも歌い方からして変えてきていますよね。

 

 草野華余子さんの手に成る「夢の跡」から始まるビターな歌詞が主人公二人の影を浮き彫りにし、果報バンタの感想に使用した「水天一碧」が一続きの青さを語るのとは対照的に、"ふたつの青を分つのは 一筋の水平"と境界を意識させる言葉繰りになっているのが尚の事切ないです。しかし続く歌詞とEDの一枚絵が伝えるように二人の出逢いがその境を曖昧にし、"忘れられない 痛みもいつか過去に変わってゆく それで良い"と時薬の助けも借りて、共に前を向こうとする決心に救われます。その機微に応えるようにエモーショナルに展開する後半のメロディもまた草野さんの確かな作曲能力の表れで、"ただ寄せて返す日々に 微かに差した光に"の通り波状に繰り返される旋律のシンプルさは摂理の美学です。"光"を音で捉えた管弦楽の技巧性に酔い痴れられるのもこのセクションで、プレイヤー陣の腕前もさることながら中山真斗さんの編曲センスも卓越しています。

 

 

 中山さんのアレンジは曲毎にかなり違う印象を受け、例えば「未完成ストライド」(2012)のようにバンドサウンドとプログラミングのハイブリットな仕上げもお手の物です。同曲はイントロやサビ前に出てくるスキールノイズみたいなSEが論功行賞モノだとずっと思っています。体育館でバッシュがキュッキュ鳴るアレです。作曲面では「獄鎌・イガリマ」(2013)の生みの親でもあり、先の「Packing~」のところでふれた「相方の楽曲」が存在するタイプでリンク先でも言及しています。

次回に続く!

 

 本記事は「その1」「その2」よりリンクカードやPickが少なくHTMLタグで文字数を浪費していないため、続くDay 8(最終日)の分を書けるだけの余裕は十二分にあるのだけれど、その後に小見出しを設けるつもりの二つか三つの話題の分まで書き切れるほどではありません。それらは今般の旅行とは直接的には関連しない事柄なので、仮にこのままDay 8の旅行記を連ねると全く沖縄要素が含まれない「その4」が誕生することになります。それを避け「その4」をDay 8からスタートさせる目的で、本記事はDay 7を書き終えたこのタイミングで意図的に切り上げることにしました。とはいえどうせなら限界文字数に近づけないと紙幅が勿体ないと考えてしまう性分ゆえ、大晦日ということもあり年末の挨拶と謝辞を述べつつ最近の雑感と時季に相応しい別のプチお出かけ記を載せて2023年を締め括ることにします。

 

 昨年は8月の更新を最後に約1年間空白を作ってしまい、今年も本記事で5本目という投稿の少なさではありますが、そのような中でも当ブログをご愛顧いただきありがとうございました。Xでエゴサ…というほどのものではないものの、引用してくださった方のポストは不定期で確認(外部リンク)して活力にしています。アメブロ内のコミュニケーションは開店休業状態がデフォなので交流こそしていないけれど、アルゴリズムがよくわからない点に目を瞑ればこうした数字が出てくるとモチベーションはアップしますね。ちなみにこの日の#アイドルマスター2位の記事も藤原肇ちゃんに言及した内容で(奇しくもその方のも旅行記:そちらはちゃんと備前の)、アメブロ界隈で俄に彼女への注目度が上がっていた事実を記録しておきます。笑

 

 

 おま環かもしれませんが今月に入ってから人間っぽくない不自然なアクセスが多い日があって、更新日が10年以上前の記事に無作為にアクセスしている感じが解析に残っているんですよね。リンク元だと「不明/その他」になるやつ。ブラウザのブックマークからやSNSのサードパーティアプリ経由という線もなくはないけれど、仮に人力だとしたら同じブログテーマ内に集中していたり更新順になっていたり自ブログ内の導線に沿っていたりするはずなのに、それらしい痕跡は見られず本当にアトランダムにしかし重複がないようにアクセスしてくるのが不気味です。

 

 時代が時代なだけにAIの学習材料にされているのも疑えるけれど、AIは音楽を含む文化芸術の解説文は書けても感想文・考察文を書くのは今もこの先も苦手だろうと考えています。ここ一年で実際に多くのAI生成文にふれてみた所感として、AIの書くそれらは非常に普遍的且つ当たり障りのない内容で、別の作品にも流用できる類のものが多いからです。それでも「プログラムのくせに芯を捉えた良いレビューを書くじゃあないか」と唸らせられることがたまにあるけれど、その場合は対象が有名作品ゆえに言及する人の文章も広く存在し、それらを継ぎ接ぎしたのだろうなと推察できます。学習データ期間の問題もあるため、例えば「今週リリースされたばかりの○○の新譜をレビューして!」と頼んでも、○○のアーティスト評を返してきてお茶を濁されるでしょう。その新譜が従来のアーティスト像から大幅に逸脱したものであったら、激しいサウンドのナンバーに「優しい音遣いが特徴的で~」といった的外れな回答をしてくることも予想がつきます。一方で文化芸術そのものにとって脅威なのは同意で、画像生成の凄さは言わずもがな音楽もSuno AIはクオリティが段違いで怖いです。イラストのi2iに相当するm2m/s2s/t2t(music/song/track)的なものが幅を利かせてきたら、良くも悪くも音楽業界は大荒れでしょうね。

 

 こんなことを想像している2023年の暮れなのでした。12月に夏の旅行記をアップしている絵的なギャップを解消するために、今月久々に訪れたイクスピアリの写真を載せて年末感を出しておきます。クリスマスは過ぎてしまったけれども。

 

 

 

 ここでもステーキ。ユニベアのモカのショッパーが可愛すぎる。ベイマックスのおまんじゅうは人気らしくこれは再入荷品。4,500円以上の購入でクリスマスオリジナルチャームが貰えるということでチップとデールのグミで価格調整しました。笑

 

【追記:2024.1.17】

 

 

 イクスピアリ内にある#C-plaでのことを書き忘れたので追記します。カードキャプターさくら×サンリオキャラクターズのを4回ガシャして全5種類中4種を引き当てる神引きでした。残り1種を狙って沼ったら嫌なので潔く撤退です。それにしてもキュートさが限界超えてますね。

 

【追記ここまで】

 

 

 

 インタールードを挟んだ「その3」は以上です。沖縄旅行記の続きをご覧になりたい方は下掲のリンクカードから「その4」へ飛んでください。