延期にめげない幸福論実践記 ~ニジガクと沖縄とパーラーと同人とバンめしとアイマス~ | A Flood of Music

延期にめげない幸福論実践記 ~ニジガクと沖縄とパーラーと同人とバンめしとアイマス~

 

前置き

 

 

 久々の更新と相成った今回は端的に言えば上掲記事の続き、もう少し言葉を尽くすなら対を成す或いは補完するものです。予てから時宜を窺いアップしようと思案していた内容で送るにあたり、必要な情報が出揃ったため筆を執ります。斯様な真面目な書き出しですが、当ブログでは珍しく写真付のプチ旅行記がメインなので気軽にご覧いただければ幸いです。その後は『バンめし♪』と『THE IDOLM@STERシリーズ』の音楽への言及があります。

 

 

公演延期…からの振替日決定!…からの?

 

 延期の一報を受けた時は「残念」というより「やっぱり」との思いが先行しました。山口さんが心身共に本調子でないのは5月の帯状疱疹公表の時点で明らかでしたし、6月には某週刊誌報道も加わって精神負荷の高さを察せたので、ドクターストップが掛かるのも已む無しだなと。前記事の中で公演の可否について「一応は最悪も想定している」と予防線を張ったのは、後でこれがフラグになったと自虐を述べるためではなく、その可能性も充分あり得ると言えるだけの布石が打たれていたからです。

 

 当初は一ヶ月だった休養期間はその後先行き不透明な感じになり、ホールツアーの6月公演が半年以上先に振り替えられていたので;況してやUnderworldサイドとの調整が必要なツーマンとなれば、リスケは万障繰り合わせたとしても一年後とかになるのではと予想していました。UWが当該公演開催への意欲を示したInstagramのストーリーを見ていなければ、サカナクション側の事情は関係なく中止になる未来のほうを濃厚と思っていたことでしょう。

 

 

 

 ところがどっこい、今月17日のお知らせで振替日が今年の10月5日になることが示され、「単独公演と違って相手がいるから優先的に消化しようのムーブね」と邪推するに至ります。最終的な開催可否判断が9月の中旬にあるそうなので、その時点でも体調が思わしくないとなれば今度こそ中止だろうと覚悟済みです。とはいえそれは残念だけれどまだマシなケースで、最も怖いのは「何とか一日目は乗り切ったけど連日は無理です」となり、二日目が直前にもしくは公演中に取り止めになることですね。

 

 そうなったら嫌なので年内は療養に専念して来年から活動再開するぐらいのペースで良いと個人的には思うのですが、本人が意欲的であるならそれは尊重されるべきですし、エメットの法則が説くように先延ばしが精神衛生に悪影響を及ぼす面があるのも理解出来るため、早期再開に努める姿勢にも一理はあると言えます。加えて僕にはUWファンとしての立場もあるので胸中は一層複雑で、とりわけ大阪公演に当選していた人には同情を禁じ得ません。仮にツーマンが中止になっても来日公演自体は日を改めて行ってくれると信じたく、東京単独があったなら会場如何ですが申し込みたいです。

 

 

人生初のコラボルーム体験

 

 

 

 人間、関心を寄せるものが多ければ多いほど、ますます幸福になるチャンスが多くなり、また、ますます運命に左右されることが少なくなる。かりに、一つを失っても、もう一つに頼ることができるからである。      

               バートランド・ラッセル『幸福論』(1930)

                安藤貞雄訳(1991), 岩波文庫, p.176

 

 加速度的にきな臭さが増す昨今なので目下読み返しているラッセルの『幸福論』。その第11章より引用した上記の指針は従前から僕が支持するところで、今般の延期に際しても章題に倣ってこの「熱意」に救われました。本来は更なる楽しみとしてぶっこんでいた虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会コラボルームへの宿泊は、公演延期の発表がちょうどキャンセル料が発生し始める初日だったこともあって、めでたくメインイベントに昇格した次第です。

 

 ※ 以降に自分で撮影した写真の掲載が続きますが、無編集である点と一部はスクショでリサイズしたものである点をお含み置きください。

 

 

 

 前の記事では詳細をぼかしていたけれど、画像の通り僕が泊まったのはQU4RTZルームなのでした。作中唯一の4人組ユニットゆえスペースを圧迫気味なのはともかく、イベント会場や街中と異なり居住空間に置かれたキャラクターパネルの存在感はなかなかに等身大でグッときます。

 

 

 

 壁紙はこんな感じ、可愛い。チェックイン時に貰えるグッズのタオル(泉天空の湯×ニジガクのやつ)と同じイラストが使われているため、おそらく他のユニットルームも同様かと思われます。

 

 

 

 照明をいじって雰囲気を出してみたり、

 

 

 

 テレビ上のYouTubeアプリでニジガク関連の映像を流したり、BluetoothスピーカーにQU4RTZの楽曲を飛ばしたり、

 

 

 

 合わせ鏡を利用して不思議な写真を撮ったりして楽しみました(ベッド上が汚くてすみません)。

 

 

ショッピングシティでもニジガク

 

 

 目当ては勿論ニジガクトキメキSHOPです。上掲の撮影OKの棚に僕が買った商品はなく、戦利品は以下の通り。

 

 ① B2タペストリー 2年生水着ver.

 ② ミニタオル エマ ホテルヴィラフォンテーヌ制服ver.

 ③ アクリルスタンド かすみ 〃

 ④ ワイヤーキーホルダー 栞子 〃

 ⑤ ぎゅぎゅっとアクリルキーホルダー 彼方

 ⑥ クッションカバー 彼方

 

 ①:普段は立ち絵を組み合わせたタイプの図柄にはあまり購入欲をそそられないのですが、2年生のはポージングの妙かまたは侑ちゃんの存在でキャラが重なっているからか、他より一枚絵の感が出ていたので惹かれました。敢えてQU4RTZを外したチョイスでもあります。

 

 ②~④:せっかくだからとホテルとのコラボグッズを優先しました。ちなみにしお子のはラス1で、品切れ情報を逐一発表している公式Twitterもすぐに反応していたため入手の喜びも一入です。

 

 ⑤:作品問わずぎゅぎゅっとシリーズが好きなので代表して彼方ちゃんのを。りなりーのはコッペパンver.のほうがあったら買っていました(見落とした可能性あり)。

 

 ⑥:レジのお姉さんに「あと2,000円ほど買えば1回多くガラポンが回せますよ」と唆されて薦められて、その価格帯から追い彼方ちゃんしました。クッションの中身は駿河屋で中古を安く買って節約です。なお、抽選の結果は3回ともポストカード:エマ・せつ菜・ミアでした。

 

 

 

 モール内に点在しているQU4RTZのパネルは積極的に探していないためコンプは出来ませんでしたが、かすみんと彼方ちゃんのはたまたま立ち寄った範囲で発見したのでパシャり。

 

 

 

 彼方ちゃんの置き場所は見落としそうだなぁと感じたものの、たぶん水のテラスを訪れる過程で見つけてほしい配置なのだと思います。レストラン街しかやっていない夜に訪れたので動画は観られなかったけれど、テラスそのものは「ランジュが歌ってたとこじゃん!」と結構感動しました。

 

 

 

 ついでにはらたく細胞のパネルも。笑

 

 

更なるトキメキを追い求めるか…?

 

 振替後の日程でもまたヴィラフォンテーヌグランド東京有明に泊まるつもりでいて、その頃にはコラボも終わっているから今度は普通の部屋を予約しようと考えていたら、9月から「もっと!トキメキ有明ツアー!」が開催されることが発表されたのでどうしようか迷っています。

 

 

 ユニット別ルームも引き続き用意されていたなら今度はA・ZU・NAのところに泊まりたかったのですが、さすがに第1弾は今月末で終了となるそうで選びようがないため、学年別ならどこが個人的にベストか悩みます。イラスト的には第2弾の冬私服ver.がいちばん魅力的に感じるけれど、新しく音声コンテンツが追加されるならFuture Parade ver.一択ですよね。ってよく見たら全ルーム対象か。

 

 部屋で自ら動画や音楽を再生したのもその表れと言えるように、もっとAV機器を活用してもいいんじゃないの?というのは宿泊時に覚えた物足りなさのひとつなので、痒いところに手の届く新要素だと評価します。テレビに表示されるホテルの案内画面でメンバーが喋ったり、室内BGMとして作品の音楽を流せる機能があったりするのかなと、泊まる前に想像していましたから。

 

 

 
 

北へ。

 

 有明周辺だけで2日分を潰すのも味気ないなということで、北上を続けて他にも色々してきました。「この見出しだと北海道やんけ!」…と古参ヲタにしか通じないネタは扨措き、移動方向とは裏腹に心は南下していきます。

 

 

■ 銀座わしたショップ本店

 

 まずはわしたへ。ほぼ毎年旅行に赴くぐらいには沖縄好きな僕ですが、コロナ禍以降はご無沙汰なのでせめて気分だけでもと。去年はオンラインの取り寄せを利用しましてそれも悪くはなかったけれど、やはり実店舗のほうが目に楽しくワクワクでした。購入物の殆どは食品でそれらをレビューするのは当ブログの領分でないため、二次元趣味の範疇から下掲の作品を紹介します。

 

 

 

 空えぐみさんによる漫画、『沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる』。店頭で見かけるまでは存在を知らなかったため、完全にタイトル或いはジャケ買いです。内容はまさに表題通りで僕が概説を載せるより百聞は一見に如かず、くらげバンチで数話分が無料で読めるので気になる方はアクセスしてみてください(ダイマ)。

 

 既刊5巻分を読み終えての感想として、自分にはそこそこ沖縄関連の知識があるがゆえに「ベタなネタだなぁ~」と決して悪い意味でなく思うこともあれば、「なるほどそういうことだったのか!」と今まで表層的にしか知らなかった事柄の背景や理由付けに納得したり、「なにそれ!?」と全く馴染みのない文化に対しててーるーばりに驚いたりしています。あとは結構小ネタというかパロディが多いので、サブカルに明るければ一層面白く読めるのではないでしょうか。

 

 

 手っ取り早く作品の雰囲気を掴みたいのなら、公式のボイス付き販促動画もおすすめです。CVに鬼頭明里さんとファイルーズあいさんをキャストするガチさに、アニメ化を見据えた狙いを感じます。

 

 

■ 資生堂パーラー 銀座本店サロン・ド・カフェ

 

 

 引き続き銀ブラ続行でスイーツ休憩を取ろうと、銀座でパーラーと言えば資生堂か千疋屋で迷って前者に赴きました。老舗中の老舗で超が付くほどの有名店ではありますが、男には敷居が高い(誤用)イメージがあって当然ながら初訪問です。カフェは3Fなのにビルに入るなり案内人が付くのは流石というか自社ビルの強みだなと感心しつつ、適度な暗さと狭さに心躍る階段を上がった先のコーナーで席が空くまで待ちます。訪問時は満席で自分の前にも数組の待機客が居たため、二十分近く経って漸くテーブルに通されました。

 

 上手く写真が撮れなかったので文章だけなのをご寛恕いただくとして、頂いたのは「長野県産 信州畑工房“恋姫”のストロベリーパフェ」2,200円です。おあずけの分だけ膨らんだ期待の大きさと確かな価格設定への信頼というバイアスが多分にかかっているとしつつも、今までに食したどのパフェよりも美味しかったと舌の記憶に刻まれています。甘味と酸味のバランスが云々と味覚の細部を描写していくより、「食べた瞬間生き返った」とか「細胞に染み渡っていく気がした」とかの感性に委ねた表現のほうがしっくりくる甘露でした。

 

 これも写真に不都合があってアップ出来ずに恐縮ですが、帰りのエレベーターの階数ボタンが円を描くように配されているのが独特で面白かったです。「資生堂パーラー エレベーター ボタン」で画像検索すれば出てきます。普通に1Fを押そうとして「えっ?どこ?」と指が宙で止まってしまったのは初めての経験でした。

 

 

■ 駿河屋 秋葉原本館

 

 銀座から更に北上して秋葉原へ。実は初日と二日目で二度訪れています。中古同人ソフトとタペストリーを目当てにしていたので両日とも5Fに入り浸る形で、事前に同店のマケプレである程度在庫を確認していたとはいえ実店舗特有の乱雑な陳列(誉め言葉)のおかげで、目を皿にして棚の端から端までお宝の発掘に勤しむことになりました。都合25点を購入するに至りましたが、その殆どがR18作品のため詳細は明かしません。別にリンク先にも具体名は載せていないけれど、ここ1年分のヲタク的買い物記はここに書き足し続けています。

 

 

 

 プチ旅行記はここまでで以降は音楽ネタです。前置きで述べた通り本記事は前回の記事と「対を成す或いは補完するもの」と位置付けたため、新たにトピックスを立てるというよりは前回の続きといった向きがある点に留意してください。

 

 

 
 
 
 

【続・遅報】 『バンめし♪』にもハマる

 
 

 

 遅蒔きながら『ひなビタ♪』の音楽の虜になったことは前に熱く語ったので割愛するとして、その続編というか世界観を共有する『バンめし♪』の存在もまた後追いで知りました。企画者が同じなだけあってか音楽のクオリティは非常に高く、手を出して最初に心に電撃が奔ったナンバーはVanitas Lacrimosaの「至上のラトゥーリア」(2020)です。

 

 

 独語を象徴的に扱うゴシックロックは一種の様式美となっており、近しい雰囲気の楽曲なら他のいくつかの音楽系IPでも聴いてきているけれども、音作りないし音像への並々ならぬこだわりを感じさせる本曲によってそれら比較対象は一切の過去となりました。闇に轟く刺々しいバンドサウンドが空間を支配してヤワな音の付け入る隙を排し、そこから唯一浮かび上がる正道でのみ許された祈りの如き歌声とコーラスワークの美しさたるや、蓋し「♰シスター3人組による神も悪魔も宿る最強ゴスバンド♰」のスケープです。

 

 

 主人公バンド・Blanc Bunny Banditの持ち歌では、『漂白脱兎』(2019)収録の「アバンギャルド・バンドガールズ」がいちばん気に入っています。アホ毛と黒アリのぶっ飛んだ掛け合いが特徴的な同曲は、ご機嫌なロックンロールを基本としながらも個人にフォーカスするセクションではキャラクター由来のサウンドに寄ってジャンルを横断していくプログレッシブなつくりです。とはいえ歌詞の面白さも相俟って底抜けにノリが良く、音を奏でる楽しさの初期衝動に触れたかのような高揚感が湧いてきます。

 

 

 同盤からは作詞および作編曲のクレジットが同じ「たたえよ!絶対覇権アリーシャ帝国」も中毒性が高くおすすめで、「アバンギャルド~」では一部のみだったロシア要素が前面に押し出されたまさに亜理紗のためのカワイイ・ナロードナヤ・ペースニャです。あとこれは個人的に驚いたポイントなのですが、本作にやぎぬまかなさんの名前を見たのは望外の喜びでした。前の前の記事でたまたまカラスは真っ白を取り立てていたこともあって、楽曲提供という形ではあれ再びヤギヌマワールドに浸れて満足です。

 

 

 別けても『共鳴性白染自由主義』(2020)収録の「砂漠を泳ぐ」はそのあまりのエモさに初聴時から甚く感動しきりで、作詞作曲編曲の全てのフェーズで表現力が増し名トラックメイカーとして花開いたやぎぬまさんの高みを見た気がしました。夜風のソロ曲として物語性も申し分なく、「脱出」を本願に据えた少女の歌う"見たことのない青だけを求めて 砂漠を泳ぐ"には希望に満ちた絶望が滲んでいます。言葉にならない感情を表現するのはやはりギターで、もう一人のボーカルと表現してもいいほどには雄弁です。

 

 

 

 ストーリーの経過はアメブロ上で展開されていた時期もあったようで親近感を覚えて埋め込んでみましたが、振り返るとコロナ禍が本格的に訪れてからは現実と連動しているがゆえの哀しい投稿が続いていて切ない気持ちになりました。現在進行中!となっているSEASON3のふるさとグランプリ全国大会編もROUND4がペンディング状態のまま一年半以上経過していますし、パラダイムシフトの煽りをモロに受けて可能性のある良質な音楽が埋もれている現状はただただ遣る瀬無いですね。

 

【追記:2024.5.7】

 

 『ひなビタ♪・バンめし♪』双方の特集記事をアップしました。下掲リンクカード記事からご覧ください。

 

 

【追記ここまで】

 

 

 
 
 
 

サブスク解禁!…には無頓着なアイマス特集

 

 前回の記事で説明した特殊な事情を再掲しますと、僕が持つアイマス関連の知識は初代のTVアニメと大量の同人誌に依存していてゲームは一切遊んだことがなく、そのくせCDだけは無軌道に買い漁っているため音楽が先行してキャラを把握している状態です。種々の理由から現物志向の性分なのもあり先達てのサブスク解禁(ついでにモバマスのサ終)も自分には縁遠い話で、1枚77円以下なら即買いの条件でちまちまCDを集めています。ここ三ヶ月の間にも再びまとめ買いを行うタイミングがあったので、その中から殊に琴線に触れたものをピックアップしましょう。

 

 

 

 歌詞・メロディ・アレンジの全てがツボだったのはmiroirの「O-Ku-Ri-Mo-No Sunday!」(2019)です。双子のキャラソンというカテゴリに於いては今日までに多くの作品で多様な表現がなされていますが、"Oxymoron"(日:撞着語法)をテーマにする着眼点はとりわけ斬新だと思いました。大別すればシンクロやユニゾンで双子の絆をアピールしていく路線と、反対に両者の差異にフォーカスしてカウンタラクティブまたはインタラクティブな趣を見せる路線に二分されがちな中で、"Oxymoron"の概念はそれら全てを共時的に扱えるレトリックですよね。

 

 もっと対象を広く取って一般に作詞術として語れば、歌詞に撞着語法を使うこと自体は珍しくない中でずばりそのものに言及する思い切りの良さに加えて、擦られ過ぎて食傷気味に感じる「矛盾」や「二律背反」や「逆説」といったワードで良しとしなかったハイエンドな語彙選択に賛辞を呈します。楽曲を手掛けたのは烏屋茶房さんと篠崎あやとさんによるタッグで、TOKYO LOGIC Ltd.を特集した際に本曲を例示しなかったのが悔やまれるくらいには両者のセンスが光る良曲です。

 

 凪の淡々とした語り口調からぬるっと歌い出しに移行するユニークな立ち上がりでもう掴みはバッチリ、合いの手の緩いyeahと可愛らしい"Yes"のキメが心地好いディスコティックなフックに心が弾み、颯がメロディアスなパートを歌い上げる傍らで歌詞通り"マイペース"に間隙を縫って歌う凪に姉妹の関係性を見て、しかし交互に歌い継がれるプレコーラスで次第にデュエットソングらしさが増していき、波長が合ってきたところでダンサブルなサビに入るという一連の流れが実にユーフォニックだと言えます。

 

 

 

 レイジー・レイジーによる「クレイジークレイジー」(2018)は、アイドルソングとしては異質なほどの完成度の高さに圧倒されました。僕がジャンルとしてのフューチャー○○に若干の苦手意識を持っていることはPerfumeの記事(フューチャーベース)や、DÉ DÉ MOUSEの記事(非kawaii系FB)や、Run Girls, Run!の記事(フューチャーコア)で都度語ってきているけれども、この中では好意的な受け止めが出来ていたデデマウスの「next to you」(2018)への所感が、本曲に対して抱いたそれと近しかったので以下にセルフ引用します。

 

 『Mikiki』では「〈Kawaii〉系ではないシックなフューチャー・ベース」と形容されています …[中略]… 本曲から滲む「背伸びして大人になろうとしてみた感」にはグッとくるものがありました …[中略]… FBを象徴する"twinkly-sounding"は終始顕在化していながら、声ネタのビター加減やブラスの派手過ぎない取り入れ方が、「可愛い」と言われて嬉しいお年頃を脱していると喩えたく思います。

 

 要するにFBでも大人びたアウトプットになっていれば受け入れやすいという話で、本曲は歌詞内容からして一線を踏み越えんとする場面にシュートしているため、キラキラしているだけもしくはキュート一辺倒のサウンドでは不適格との判断に至るのは解釈一致です。この立脚地を補強したいと調べて新たに仕入れた知識としては、ジャージークラブというジャンルの要素が多分に盛り込まれている点がここで言わんとしている大人っぽさの醸成に寄与しているとわかり腑に落ちました。

 

 

 

 上掲のnoteが非常に参考になったのでリンクを貼りまして、「クレイジークレイジー」の項もあるためその様式的な起源や文化的な背景に関する深い理解を得たい方は是非ともご覧ください。アッパーで特徴的なキックのパターンから攻めの姿勢ないし早鐘を打つ心臓の音風景を感知し、コケティッシュなボイスサンプルが刻むリズムは嬌声の如き機能を有していて誘惑に駆られそうになり、その果てを暗示させるように鳴るベッドの軋み(所謂キコキコ音)にジャージークラブの効能を知ると、なるほどこれは子供騙しではないと得心がいきます。

 

 とはいえ決して下品な仕上がりになっていないのは詩趣に富んだ歌詞のおかげか、"コーヒー"の温度変化と"映画"の再生状況を通じてタイムラインを動かす見せ方の巧さと、"空飛ぶ夢"が単なる夢から願望へと変わって"きみ"を巻き込んでいく不可逆のシークバーで、"おかしくなっちゃう"ことはおかしいことではないと外堀が埋められていくので、果たして"きみ"に抗う術などあるのだろうかと疑問ではなく反語で〆たいドラマチックさが素敵です。これで拒もうものなら、crazy for youじゃなくてgo madですよ。

 

 井上拓さんのトラックメイキングは自分の嗜好にマッチしているようで、前の記事中で代表的に試聴動画を埋め込んだ「Radio Happy」(2016)も軽くふれた「Light Year Song」(2017)も氏の手に成るものと知って驚き、自作のプレイリスト(アイマス関連は25*3の全75曲編成:MONACAプロデュースを除く)に照らして上位25曲までに入れている「Romantic Now」(2013)と「さよならアンドロメダ」(2017)も井上ワークスとわかって更にびっくり、巧まずしてリスト最上位帯の1/5を占めている事実でもって白眉のクリエイターっぷりをわからせられました。

 

 

 

 本当はもう数曲紹介するつもりだったのですが、写真や埋め込みが多いせいで字数制限がキツいため泣く泣く切り上げます。「キラッ!満開スマイル」(2017)と「リトルリドル」(2018)の特筆性もカットするには惜しいのに…またの機会ですね。ちなみに前者を手掛けたササキトモコさんもまたどストライクの作家で、「キラッ!~」に加えて「アタシポンコツアンドロイド」(2013)と「秘密のトワレ」(2015)の3曲を上位25曲までにリストしています。彼女は『ひなビタ♪』に於いても素晴らしい楽曲を提供していて、以前に絶賛した「温故知新でいこっ!」と「クラゲファンタジーソーダ」(共に2015)にも依然夢中です。

 

 

 
 

後書き

 

 前記事のラストに書いた「次の更新はライブレポになるのではないかな」は元来7月中の更新を予告するもので、公演が延期になってからもこれを律儀にというか意地で守ろうかとも考えたけれど、三ヶ月以上ブランクを作るのは本意でないため今回のつなぎ記事が完成しました。本当に開催されるか半信半疑ではありますが、再度同じ文句「次の更新はライブレポになるのではないかな」で結んでおきます。