If you wanna / Perfume
Perfumeの24thシングル『If you wanna』のレビュー・感想です。23thから約半年と、普段通りのリリース間隔で発売されました。
If you wanna(完全生産限定盤)(DVD付)(スペシャルパッケージ仕様)/Universal Music =music=

¥2,430
Amazon.co.jp
今のところ2形態(後に通常盤が出る?)で発売されているようで、完全生産限定盤と初回限定盤では付属DVDの収録内容が異なるのですが、ここでは完生限盤を扱います。
早速レビューに入りますがその前にひとつだけ注意点があります。01.「If you wanna」のレビューの中で過去曲「Spending all my time」(2012)を頻繁に引き合いに出しているのですが、「Spending~」に関してはディス表現が多めなので好きな人は警戒しながら読み進めてください。
01. If you wanna
SUNSTAR Ora2のCMソングとしてタイアップがついていた楽曲。付属DVDに収録されているMVはc/wの「Everyday」のものですが、ご覧の通りティザーが存在するのでこちらにもきちんとMVはあるみたいですね。
『ZIP!』のインタビューでも言及されていましたが、ジャンルとしてはフューチャー・ベース(FB)であるというのが「If you wanna」最大の特徴です。…と言っても僕自身あまり詳しくないジャンルですし、その定義も今まさに過渡期にあるんじゃないかというくらい曖昧なものだという印象なので、「楽曲製作者(中田ヤスタカ)がそう言っているならそうなんだろう」と受け止めておきます。
しかしいい機会なのでFBについて軽く調べて上位に来るようなページには目を通しましたが、やはりどのページでも明確な定義付けは避けていますね。ただ、英語版wikipediaには百科事典らしくきちんと特徴が記述してあり、「デチューンしたシンセの音(主にノコギリ波と矩形波を含む)で作った重厚なベースラインにフォーカスしている」と、シンセシストやDTMerならイメージしやすい表現で説明がなされていました。
これだけだとまだ他ジャンルの名前が優勢な感じですが、これに加え"twinkly-sounding"であることがFBをFBたらしめている重要な要素みたいです。日本語で言えば「キラキラした感じ」ですね。確かにとっつきにくいハードなサウンドやリズムでも、綺麗でラグジュアリーな装飾を施すことでかなり一般向けになるので人気が出ているのも分かります。
そのキャッチーな側面を押し広げたものだと推測しますが、FBは日本で独自の発達を見せていまして、「kawaii future bass」なるニュージャンルも台頭しているようです。こちらはアニメやゲーム文化との関わりが深いらしく、参考にしたページの中には「乱暴」と前置きしつつも「ナードな人のEDM」という表現もありました。
僕はナードコアは大好物なので、ナードコアのような良い意味でふざけていてオタク全開の音楽に対してナードと使うのは納得がいくのですが、このKFBに関してはそこまでディープな印象は持てませんでした。それが悪いとか嫌いって意味ではなく、可愛いや萌えの要素があったとしても目指している場所はお洒落ミュージックだと思ったからです。試しに数曲聴いただけですけどね。
それはEDMというカルチャーも含めたサウンド自体がそうさせているのか、或いは二次元趣味の地位が昔よりは向上している気がするからなのか…何ひとつ定かではありませんが、とにかく「ハードなシンセサウンドにハッピーでキュートなウワモノをのせるのがクール」という動きがあるのは理解出来ました。
ということで「If you wanna」に話を戻しますが、確かにトラック自体(ベースラインやリズムセクション)はハード且つ複雑なので、シングル曲として出したのはかなりの冒険に思えます。しかし使われているサウンドはまさにキラキラでポップ、そしてPerfumeのボーカルはメインメロディでもチョップされたコーラスパートでもキュートなので、決して聴きにくいというわけではない。この橋渡しにFBというジャンルは効果的なのかもしれませんね。
僕は勿論Perfume自体も好きなのですが、聴き始めたのは以前からヤスタカファンだったからというのが理由なので、これから書くことはPerfume単体のファンからは反感を買うかもしれません。それでも敢えて書きますが、この曲におけるPerfumeはあくまでもただの素材だなと感じました。そしてそれが非常に格好良く、何よりこの曲(FB)にあった使い方だと思います。
まず歌詞カードを開いた時から予感はあったんですよね。厳密には発売前に『シブヤノオト』で披露されたのを観た時ですが、「歌詞の情報量少なっ」と。「Spending all my time」がリリースされた時も同様のことを思ったのですが、Perfumeらしさよりも販売戦略とか新ジャンル開拓を優先したんだろうなと思わせる楽曲の存在のことを。海外を意識してか英語がメインで、言い方が悪いけど中身の薄い歌詞が特徴。
ただ、それ自体はチャレンジ精神にあふれていて良いことだと思います。シングルでやるというのもリスクを取っていて評価出来る。しかし正直「Spending~」はそのリスクに見合うリターンを得られていないという認識でいます。個人的にそう思うというだけなので「単に好みじゃなかっただけだろ」と言われればそれまでなのですが、ともかくこの「If you wanna」も今後どうリアクションされていくかが量りにくいという点で共通しているのではないでしょうか。
この点に関して個人的な結論を先に述べるなら、「If you wanna」は良いリアクションを得られる楽曲であると思っています。「ボーカルが素材的」という旨のことを先に書きましたが、そこまで振り切っているからこそこの曲は格好良く仕上がっているのだという感想を持ったからです。
思うに「Spending~」は中途半端だったのではないかと。下手にPefumeらしさを残そうとしないで、やるならやるでもっとEDM全開にしたほうが良かった気がします。当時のインタビューでもPerfumeと中田さんとの間で認識に差があったことが読み取れますが、僕は中田さんが最初に思い描いたままで届けて欲しかったと思っています。
その時に感じた物足りなさが「If you wanna」では解消されていると感じたので余計に気に入ったという側面は確実にありますね。仮に音楽的な知識に乏しい人がこの曲を聴いたとしても、未来的なイメージを浮かべる、或いは「なんだこの曲!」と驚きを感じるであろうことは想像出来るので。
知識があると僕みたいにジャンルがどうこう言い出してしまうのですが、そういう先入観無しの真っ新な状態で聴いた時の凄みというか、そういうサプライズに関するポテンシャルの大きさが「If you wanna」は圧倒的だと思うし、新しい時代ひいては新しいPerfume像の提示にも成功していると思いました。
2:43と短いのも良いですね。短い分、曲中のハードなパート(特にサビ…歌詞カードで言えば★のところ)の衝撃が大きく感じますし、ボーカルチョップがあることで全編ボーカルというかノンストップで駆け抜ける感じも醸されていて素敵です。いや、ビート的には駆け抜けるというより踊り続けると表現した方がしっくりくるかな。モーションが大きく緩急が激しいタイプのダンスのイメージです。
02. Everyday
c/wにもタイアップがついていまして、Perfume × Panasonic AWA DANCE キャンペーンソングです。「泡」をテーマに両者がコラボした企画だけあってMVもあわあわな仕上がり。MVについては付属DVDの項で後ほどふれます。
楽曲自体にも泡要素がありまして、サビは"(Hour)"のコーラスから始まります。笑 「あーわあーわ」と言うとThe Bugglesの「Video Killed the Radio Star」(1979)が有名でビールのCMに使われていたこともあったそうですが、意味は違えど英語にも日本語にも共通の音で構成された語があると面白い使われ方をすることがありますね。
こちらは01.とは異なり実にPerfumeの曲らしいなと思います。MVもタイアップもあるので他のc/w曲と同列に扱うのはどうかという気もしますが、「c/wに隠された名曲」特有の切なさがきっちり潜んでいるなと思いました。特にAメロには何処か懐かしさすら覚える。
しかし曲全体で判断すると、しっとり系というよりはしっかりダンスチューンなのが素敵です。ちょっとメロディ構成の扱いに悩むのですが、"(Hour)"から始まるところをサビとすると、ここはBメロ(歌詞カードで言えば※部分)の発展形といった感じですよね。
敢えてBを設けずに※がサビ始まりで"(Hour)"の部分はサビ後半と捉えてもいいのですが、ともかく英語パートのところには連続性があるので、積み重ねによってじわじわと盛り上がっていくダンストラックらしさが良く出ている…と、これがここで伝えたいことです。
そのメロディ構成の巧さも勿論なのですが、ダンサブルな質感を最も巧みに演出しているのは全編を通して特徴的なシンセのリード音だと思います。説明が正しいか甚だ不安ですが、共鳴管がきちんとあるタイプの鍵盤打楽器系の音…と言えばいいのかな。マリンバの低音部のようなというか。イメージでいいなら水琴窟の音も浮かぶのですが、とにかく反響が綺麗な音のことです。
この音が耳を通じて脳内を駆け抜けていくような感じが曲に疾走感を与えているという印象です。実際にビートを担っているキックのほうが補助的に思える。所謂シンセらしい音もきちんとバックで鳴っていますが、これも曲にメリハリを付けるという意味で良い仕事をしていると思います。
03.と04.は各曲の「-Original Instrumental-」です。
続いて付属DVDの内容について簡単に紹介していきます。冒頭でも書きましたが完生限盤を扱うので、収録コンテンツ数は4つです。
01. Everyday -Video Clip-
CDの02.「Everyday」のMVです。楽曲レビュー時にも書きましたが、PerfumeとPanasonicが「泡」をテーマにコラボした「AWA DANCE」というキャンペーンが背景に存在するので、MVも泡がモチーフとなっています。
もう一つ「時計」もモチーフですね。そのまま出てきたりバラバラになってPerfumeの面々を彩る舞台装置になったり何かと多く登場します。厳密には「時間」が重要なキーになっているのだと思いますが、歌詞にある"(Hour)"やタイトルの「Everyday」から着想すれば当然でしょう。泡とアワーの掛け言葉。
特に印象に残る場面はPerfume3人の下半身と時計の下半分が泡になって落ちていくところです。画的に割とショッキング。「泡になって消える」みたいにファンシーな感じじゃなくて、文字通り「泡になって落ちる」(=落ちた泡が下に溜まっている)のがリアル。ポジティブに捉えれば「積み重ねの象徴」、ネガティブに捉えれば「失った時間」であると僕は解釈しました。
02. Everyday -メイキング映像-
タイトル通り「Everyday」MVのメイキングです。上掲の下半身が泡になるところを編集している画面が映るのでなんだか安心しました。笑
観ていて思いましたが、実際の泡を使った映像って難易度高そうですね。予期せぬタイミングでの落下や、欲しい画が来るまで待たなきゃいけないのはイライラしそう。泡職人の技量も問われますね。
以降はライブ映像です。『Perfume FES!! 2017』から23thシングル曲「TOKYO GIRL」とそのc/w「宝石の雨」の模様が収録されています。楽曲自体のレビューは過去に行っているので参考までにどうぞ。
03. TOKYO GIRL -Perfume FES!! 2017-
音数の少なさによる緊張感がライブ演出にも反映されている感じですね。照明もMVのレーザーを思わせます。
ちょっと前の『SWITCHインタビュー 達人達』(NHK)に振付師のMIKIKO先生が出演していましたが、「TOKYO GIRL」のダンスに猫要素が取り入れられていたとはあまり意識していませんでした。いや、猫っぽいとは何処かで思ったかも知れませんが、歌詞の"熱帯魚"に絡めていたところまでは見抜けなかった。流石です。
04. 宝石の雨 -Perfume FES!! 2017-
改めて思いましたが良い曲ですよね。聴けば聴くほど雨上がりのキラキラ感が増していく気がする。こういう曲があるとライブでは有難いのではないでしょうか。
以上、新曲2つと映像コンテンツ4つでした。言いたいことは各項で書ききったので特にまとめは必要ないと思うのですが、01.「If you wanna」が今後どういう風に受け入れられていくかは楽しみですね。
If you wanna(完全生産限定盤)(DVD付)(スペシャルパッケージ仕様)/Universal Music =music=

¥2,430
Amazon.co.jp
今のところ2形態(後に通常盤が出る?)で発売されているようで、完全生産限定盤と初回限定盤では付属DVDの収録内容が異なるのですが、ここでは完生限盤を扱います。
早速レビューに入りますがその前にひとつだけ注意点があります。01.「If you wanna」のレビューの中で過去曲「Spending all my time」(2012)を頻繁に引き合いに出しているのですが、「Spending~」に関してはディス表現が多めなので好きな人は警戒しながら読み進めてください。
01. If you wanna
SUNSTAR Ora2のCMソングとしてタイアップがついていた楽曲。付属DVDに収録されているMVはc/wの「Everyday」のものですが、ご覧の通りティザーが存在するのでこちらにもきちんとMVはあるみたいですね。
『ZIP!』のインタビューでも言及されていましたが、ジャンルとしてはフューチャー・ベース(FB)であるというのが「If you wanna」最大の特徴です。…と言っても僕自身あまり詳しくないジャンルですし、その定義も今まさに過渡期にあるんじゃないかというくらい曖昧なものだという印象なので、「楽曲製作者(中田ヤスタカ)がそう言っているならそうなんだろう」と受け止めておきます。
しかしいい機会なのでFBについて軽く調べて上位に来るようなページには目を通しましたが、やはりどのページでも明確な定義付けは避けていますね。ただ、英語版wikipediaには百科事典らしくきちんと特徴が記述してあり、「デチューンしたシンセの音(主にノコギリ波と矩形波を含む)で作った重厚なベースラインにフォーカスしている」と、シンセシストやDTMerならイメージしやすい表現で説明がなされていました。
これだけだとまだ他ジャンルの名前が優勢な感じですが、これに加え"twinkly-sounding"であることがFBをFBたらしめている重要な要素みたいです。日本語で言えば「キラキラした感じ」ですね。確かにとっつきにくいハードなサウンドやリズムでも、綺麗でラグジュアリーな装飾を施すことでかなり一般向けになるので人気が出ているのも分かります。
そのキャッチーな側面を押し広げたものだと推測しますが、FBは日本で独自の発達を見せていまして、「kawaii future bass」なるニュージャンルも台頭しているようです。こちらはアニメやゲーム文化との関わりが深いらしく、参考にしたページの中には「乱暴」と前置きしつつも「ナードな人のEDM」という表現もありました。
僕はナードコアは大好物なので、ナードコアのような良い意味でふざけていてオタク全開の音楽に対してナードと使うのは納得がいくのですが、このKFBに関してはそこまでディープな印象は持てませんでした。それが悪いとか嫌いって意味ではなく、可愛いや萌えの要素があったとしても目指している場所はお洒落ミュージックだと思ったからです。試しに数曲聴いただけですけどね。
それはEDMというカルチャーも含めたサウンド自体がそうさせているのか、或いは二次元趣味の地位が昔よりは向上している気がするからなのか…何ひとつ定かではありませんが、とにかく「ハードなシンセサウンドにハッピーでキュートなウワモノをのせるのがクール」という動きがあるのは理解出来ました。
ということで「If you wanna」に話を戻しますが、確かにトラック自体(ベースラインやリズムセクション)はハード且つ複雑なので、シングル曲として出したのはかなりの冒険に思えます。しかし使われているサウンドはまさにキラキラでポップ、そしてPerfumeのボーカルはメインメロディでもチョップされたコーラスパートでもキュートなので、決して聴きにくいというわけではない。この橋渡しにFBというジャンルは効果的なのかもしれませんね。
僕は勿論Perfume自体も好きなのですが、聴き始めたのは以前からヤスタカファンだったからというのが理由なので、これから書くことはPerfume単体のファンからは反感を買うかもしれません。それでも敢えて書きますが、この曲におけるPerfumeはあくまでもただの素材だなと感じました。そしてそれが非常に格好良く、何よりこの曲(FB)にあった使い方だと思います。
まず歌詞カードを開いた時から予感はあったんですよね。厳密には発売前に『シブヤノオト』で披露されたのを観た時ですが、「歌詞の情報量少なっ」と。「Spending all my time」がリリースされた時も同様のことを思ったのですが、Perfumeらしさよりも販売戦略とか新ジャンル開拓を優先したんだろうなと思わせる楽曲の存在のことを。海外を意識してか英語がメインで、言い方が悪いけど中身の薄い歌詞が特徴。
ただ、それ自体はチャレンジ精神にあふれていて良いことだと思います。シングルでやるというのもリスクを取っていて評価出来る。しかし正直「Spending~」はそのリスクに見合うリターンを得られていないという認識でいます。個人的にそう思うというだけなので「単に好みじゃなかっただけだろ」と言われればそれまでなのですが、ともかくこの「If you wanna」も今後どうリアクションされていくかが量りにくいという点で共通しているのではないでしょうか。
この点に関して個人的な結論を先に述べるなら、「If you wanna」は良いリアクションを得られる楽曲であると思っています。「ボーカルが素材的」という旨のことを先に書きましたが、そこまで振り切っているからこそこの曲は格好良く仕上がっているのだという感想を持ったからです。
思うに「Spending~」は中途半端だったのではないかと。下手にPefumeらしさを残そうとしないで、やるならやるでもっとEDM全開にしたほうが良かった気がします。当時のインタビューでもPerfumeと中田さんとの間で認識に差があったことが読み取れますが、僕は中田さんが最初に思い描いたままで届けて欲しかったと思っています。
その時に感じた物足りなさが「If you wanna」では解消されていると感じたので余計に気に入ったという側面は確実にありますね。仮に音楽的な知識に乏しい人がこの曲を聴いたとしても、未来的なイメージを浮かべる、或いは「なんだこの曲!」と驚きを感じるであろうことは想像出来るので。
知識があると僕みたいにジャンルがどうこう言い出してしまうのですが、そういう先入観無しの真っ新な状態で聴いた時の凄みというか、そういうサプライズに関するポテンシャルの大きさが「If you wanna」は圧倒的だと思うし、新しい時代ひいては新しいPerfume像の提示にも成功していると思いました。
2:43と短いのも良いですね。短い分、曲中のハードなパート(特にサビ…歌詞カードで言えば★のところ)の衝撃が大きく感じますし、ボーカルチョップがあることで全編ボーカルというかノンストップで駆け抜ける感じも醸されていて素敵です。いや、ビート的には駆け抜けるというより踊り続けると表現した方がしっくりくるかな。モーションが大きく緩急が激しいタイプのダンスのイメージです。
02. Everyday
c/wにもタイアップがついていまして、Perfume × Panasonic AWA DANCE キャンペーンソングです。「泡」をテーマに両者がコラボした企画だけあってMVもあわあわな仕上がり。MVについては付属DVDの項で後ほどふれます。
楽曲自体にも泡要素がありまして、サビは"(Hour)"のコーラスから始まります。笑 「あーわあーわ」と言うとThe Bugglesの「Video Killed the Radio Star」(1979)が有名でビールのCMに使われていたこともあったそうですが、意味は違えど英語にも日本語にも共通の音で構成された語があると面白い使われ方をすることがありますね。
こちらは01.とは異なり実にPerfumeの曲らしいなと思います。MVもタイアップもあるので他のc/w曲と同列に扱うのはどうかという気もしますが、「c/wに隠された名曲」特有の切なさがきっちり潜んでいるなと思いました。特にAメロには何処か懐かしさすら覚える。
しかし曲全体で判断すると、しっとり系というよりはしっかりダンスチューンなのが素敵です。ちょっとメロディ構成の扱いに悩むのですが、"(Hour)"から始まるところをサビとすると、ここはBメロ(歌詞カードで言えば※部分)の発展形といった感じですよね。
敢えてBを設けずに※がサビ始まりで"(Hour)"の部分はサビ後半と捉えてもいいのですが、ともかく英語パートのところには連続性があるので、積み重ねによってじわじわと盛り上がっていくダンストラックらしさが良く出ている…と、これがここで伝えたいことです。
そのメロディ構成の巧さも勿論なのですが、ダンサブルな質感を最も巧みに演出しているのは全編を通して特徴的なシンセのリード音だと思います。説明が正しいか甚だ不安ですが、共鳴管がきちんとあるタイプの鍵盤打楽器系の音…と言えばいいのかな。マリンバの低音部のようなというか。イメージでいいなら水琴窟の音も浮かぶのですが、とにかく反響が綺麗な音のことです。
この音が耳を通じて脳内を駆け抜けていくような感じが曲に疾走感を与えているという印象です。実際にビートを担っているキックのほうが補助的に思える。所謂シンセらしい音もきちんとバックで鳴っていますが、これも曲にメリハリを付けるという意味で良い仕事をしていると思います。
03.と04.は各曲の「-Original Instrumental-」です。
続いて付属DVDの内容について簡単に紹介していきます。冒頭でも書きましたが完生限盤を扱うので、収録コンテンツ数は4つです。
01. Everyday -Video Clip-
CDの02.「Everyday」のMVです。楽曲レビュー時にも書きましたが、PerfumeとPanasonicが「泡」をテーマにコラボした「AWA DANCE」というキャンペーンが背景に存在するので、MVも泡がモチーフとなっています。
もう一つ「時計」もモチーフですね。そのまま出てきたりバラバラになってPerfumeの面々を彩る舞台装置になったり何かと多く登場します。厳密には「時間」が重要なキーになっているのだと思いますが、歌詞にある"(Hour)"やタイトルの「Everyday」から着想すれば当然でしょう。泡とアワーの掛け言葉。
特に印象に残る場面はPerfume3人の下半身と時計の下半分が泡になって落ちていくところです。画的に割とショッキング。「泡になって消える」みたいにファンシーな感じじゃなくて、文字通り「泡になって落ちる」(=落ちた泡が下に溜まっている)のがリアル。ポジティブに捉えれば「積み重ねの象徴」、ネガティブに捉えれば「失った時間」であると僕は解釈しました。
02. Everyday -メイキング映像-
タイトル通り「Everyday」MVのメイキングです。上掲の下半身が泡になるところを編集している画面が映るのでなんだか安心しました。笑
観ていて思いましたが、実際の泡を使った映像って難易度高そうですね。予期せぬタイミングでの落下や、欲しい画が来るまで待たなきゃいけないのはイライラしそう。泡職人の技量も問われますね。
以降はライブ映像です。『Perfume FES!! 2017』から23thシングル曲「TOKYO GIRL」とそのc/w「宝石の雨」の模様が収録されています。楽曲自体のレビューは過去に行っているので参考までにどうぞ。
03. TOKYO GIRL -Perfume FES!! 2017-
音数の少なさによる緊張感がライブ演出にも反映されている感じですね。照明もMVのレーザーを思わせます。
ちょっと前の『SWITCHインタビュー 達人達』(NHK)に振付師のMIKIKO先生が出演していましたが、「TOKYO GIRL」のダンスに猫要素が取り入れられていたとはあまり意識していませんでした。いや、猫っぽいとは何処かで思ったかも知れませんが、歌詞の"熱帯魚"に絡めていたところまでは見抜けなかった。流石です。
04. 宝石の雨 -Perfume FES!! 2017-
改めて思いましたが良い曲ですよね。聴けば聴くほど雨上がりのキラキラ感が増していく気がする。こういう曲があるとライブでは有難いのではないでしょうか。
以上、新曲2つと映像コンテンツ4つでした。言いたいことは各項で書ききったので特にまとめは必要ないと思うのですが、01.「If you wanna」が今後どういう風に受け入れられていくかは楽しみですね。