今日の一曲!カラスは真っ白「秘密警察」 | A Flood of Music

今日の一曲!カラスは真っ白「秘密警察」

 

乱数メーカーの結果:1182

 

 上記に基づく「今日の一曲!」は、SHOW BY ROCK!! タイアップバンド楽曲のセクション(1168~1182)からカラスは真っ白の「秘密警察」です。詳しい選曲プロセスが知りたい方は、こちらの説明記事をご覧ください。

 

 

収録先:『かいじゅうばくはつごっこ』(2013)

 

 

 当ブログ上にカラスは真っ白の単独記事を立てるのは今回が初ですが、同バンドはサンリオのIP『SHOW BY RCOK!!』とのタイアップでシロラクロスカ?として作中に存在しているため、これをきっかけに過去にも幾度か名前を出してその音楽性に言及していました。中でも旧アプリゲーム時代の音楽を特集した記事のそれは概説的と言えるので、アーティスト紹介も兼ねて以下にセルフ引用します。なお、下記に於ける鍵括弧内の文言は公式サイトのものです。

 

 その音楽性の描写は紹介文のものが端的で、「やぎぬぱんのウィスパーボイス」と「楽器隊のタイトでグルービーなファンキーサウンド」が合わさり「ファンキーポップな世界観」を奏でていると書けば、シロラクロスカ?のオリジナリティは説明可能です。ボーカルの心地好さとメロディのポップさに対して、ともすればミスマッチにも響きかねない演奏陣のハイスキルなプレイが、不思議と噛み合って独特の音像を形成しています。

 

 悪い意味でなくポップに聴き流せるキャッチーさを有していながらも、オケに能々耳を傾けてみると非常に高度な演奏を堪能出来るという、ギャップにこそ魅力を感じるとの理解です。こうして僕は作品外でも同バンドが好みに;つまりシロラクロスカ?としてだけではなくカラスは真っ白として高く評価するようになり、タイアップ楽曲以外にもお気に入りが増えていきました。今回レビューする「秘密警察」もそのひとつで、自作のプレイリストに照らした場合でも上位15曲までにランクインさせています。

 

 SB69のオリジナルバンドおよび単独で枠を設けているマキシマム ザ ホルモンを除いて作品と関係のある複数のアーティストの楽曲が、タイアップ・ノンタイアップを問わず犇めき合うセクションでの話ゆえ殊更に上位争いは熾烈です。カラスは真っ白に限ると他には「RADIPHONE」「浮気DISCO」「ヒズムリアリズム」を上位15曲までに、「サヨナラ!フラッシュバック!」「シャイ・ルック・ホームズ」「正義とアクチュエータ」「ねむれないマスカレード」を上位30曲までに、「9番目の「?」」を上位45曲までにリストしています。都合9曲も占めているのはかなり好んでいることの証左なので単独化させてもいいのですが、既に解散していてこれ以上持ち曲が増えないのをネックとして二の足を踏んでいる次第です。

 

 

歌詞(作詞:ヤギヌマカナ)

 

 秘密警察ないし政治警察と呼ばれる組織は種々存在するけれども、"黒のマントが目印/今夜、窓に立つ ご注意/エーテルかぶって ビールは飲めない/シーツに潜って ディストピア"という歌詞からは、やはり最も有名なナチスドイツのゲシュタポが連想されます。"エーテル"もルドルフ・シュタイナー(ヴァルドルフ教育)に関連させたワードと捉えれば、政治的にもオカルト的にもイデオロギーが対立するヒトラー一派から狙われている状況に納得です。

 

 …と、真面目に読み解けそうな箇所を取っ掛かりに史実と絡めてみましたが、本曲の内容をこのようにお堅く捉える必要は別段ないのではとも思います。素性を隠した者同士の危ない関係性、とりわけ恋の駆け引き的なドキドキを愉しんでいると解釈する余地も充分です。ラストの"簡単でしょう? 突き破って/回るライト持って/目隠しのままで 探って/秘密警察"は、私が好きなら同じ想いを見破ってみなさいよといった挑発にすら感じられます。

 

 ただ、正直に言うと文意がよくわからないフレーズもいくつかありまして、例えば"絆創膏でふさいで 番号順のフライデー"と綺麗な押韻の後に、"完全なら振りかぶって"と続くと脳内に広がるのは野球のイメージです。他には"誤解よ、誤解よ ろくろ首が来る/ななめの重力"も比喩表現なのでしょうが、字面通りに想像を巡らすと世界観が渋滞していると形容したいカオスな画が浮かびます。そんな不思議なヤギヌマワールドでもとりわけ"明るくなったら 亜音速未満"はお気に入りの言い回しで、そのままでも下位の概念であるサブソニックに更に未満を付す絶妙な速度調整にこだわりが窺えるからです。

 

 

メロディ(作曲:ヤギヌマカナ)

 

 厭世的で気怠い音運びのAメロとオケに呼応して足早に展開するBメロというギャップで聴かせる平歌部分が示唆するように、本曲の旋律面での魅力はその緩急の鮮やかさにあると主張します。別けてもユニークなのは登場の度に変化を見せるサビメロで、ポップで覚えやすい1番のものを基本形として2番も繰り返し分こそあれ依然基本に忠実とすると、間奏以降の応用的なラインには新鮮な驚きを覚えるでしょう。

 

 アレンジの話に食い込みますが2番サビ後の間奏は飽和的な音作りで、ともすればこのまま楽曲が終了しそうな散逸の向きがあります。しかし[2:51]からのダ・カーポで言わば仕切り直しが行われ、楽想的には落ちBメロに移行する段階で楽曲全体のテンポも下がって従前と全く異なる音像に生まれ変わるのです。Bは前述したオケとの呼応がより円熟したものとなり、サビは寄せては返す波のような心地好い断続性を伴っています。ブレイクを挟んでラスサビでは再び勢いを取り戻し、これまでで最も旋律の振れ幅が大きく自由な逸脱を見せるところはクライマックスに相応しいメロディの振る舞いです。

 

 

アレンジ(編曲:カラスは真っ白)

 

 怪しげなベースから幕を開けるのは如何にもスパイや探偵モノっぽいサウンドスケープだなと納得しつつ、楽器隊がファンク・ジャズ出身だからか安心してグルーヴに身を任せられます。とはいえ変に大人びたサウンドで落ち着いてしまっているわけでもなく、特にギタープレイの荒々しさは若くて素敵です。楽想に沿って緩急を付けた演奏になっている点の技巧性は、先に説明したものとして本項では割愛します。

 

 

 
 

備考:『SHOW BY ROCK!! Fes A Live』について

 

 少し前に別の記事で明かした通り、現在はゲームに割く時間的な余裕がなくなって殆どのスマホゲーを引退しており、中でもながらプレイが不可能なリズムゲーは如何ともしがたかったのですが、残念ながらショバフェスに関しては当該の引退ラッシュが来るより前にプレイを止めてしまいました。IPが嫌いになったわけでは勿論なくゲーム性にも特段大きな不満はなかったけれども、労力(プレイ時間もしくは課金額)と報酬のバランスが個人的に許容出来なくなり、1.5周年辺りの時期に起動しなくなってそのままです。

 

 新アプリから登場のバンドによる音楽も一段とハイレベルで、アニメ『ましゅまいれっしゅ!!』勢(Mashumairesh!!・DOKONJOFINGER・REIJINGSIGNAL)はそれぞれ特集したいくらいに好みですし、アプリ勢ではゼロティックホリックがキャラデザも設定もどストライクなうえにZ世代らしい歌詞世界とひねたメロディラインがツボで困ります。新タイアップバンドもホルモンにfhánaと元々好きな面々が参加してきて寧ろ続けたい要素は充分だったものの、こと運営に関しては旧アプリ時代の作品愛を知っているがゆえに物足りなく感じたのかもしれません。

 

 ともかく音楽はこれからも追い続けますしアニメの新作もあれば観ないわけがなく、その際に連動でキャンペーンがあれば再度アプリも起動するかもしれないので、サ終が発表されない限りは復帰の可能性を捨てないでおきます。別IPの話で恐縮ですが昨日歌マクロスのサ終が告知されてある意味タイムリーだったのと、同様に先んじて引退していたスクスタも新作アニメの放送日にはログボ目当てに暫定復帰しているため、ショバフェスも或いはと言ったところです。