2023年、夏、沖縄 ~Every Trip Has A Soundtrack~ その4 | A Flood of Music

2023年、夏、沖縄 ~Every Trip Has A Soundtrack~ その4

 

 

 本記事は上掲リンクカード記事の続きです。昨年9月の沖縄家族旅行を音楽レビューを交えつつ振り返ろうとの趣旨で書いています。本記事がラストで本題の後に、とある懸賞当選記と帯状疱疹闘病記が続きます。目次はこちら

前回のあらすじ!

 

 

 下記引用部の見方 【「その3」の小見出し(丸数字=上掲写真3*3の左上①→右下⑨)┗ 言及した楽曲の基礎データ, ∴=「旅の空にあって相応しいBGM」の例, ∵=「当座のトピックから連想ゲームでこじつけた楽曲」の例】

 

 「その1」と「その2」のあらすじは省略(①)

 

 Day 5:D-naha ~ サンエー那覇MP ~ 美咲(②~③)

 ┗ ∵西脇唯「君がいるから‥」(1998), ∵同曲の周辺にあるアニメ主題歌7曲, ∴いーどぅし「アナタにアイタイ」(2021), ∴同曲の歌詞に登場する沖縄関連の10曲, ∴RADWIMPS「夏のせい」(2020)

 

 Day 6:勝連城跡 ~ 果報バンタ ~ 公設市場(④~⑦)

 ┗ ∴イクマあきら「ダイナミック琉球」(2008), ∵堀江由衣「バニラソルト」(2008), ∴The Chemical Brothers「Live Again」(2023), ∵D.A.N.「Overthinker」(2021)ほか4曲

 

 Day 7:国際通り(アニメイト ~ ドンキ ~ 88)(⑧~⑨)

 ┗ ∵鈴木このみ「Secret Code」(2022)ほか3曲, ∴沖縄電子少女彩「カスミソウ」(2022), ∴久川颯「Packing Her Favorite」(2022), ∵久川凪「14平米にスーベニア」(2021), ∴Mia REGINA「月海の揺り籠」(2021), ほか中山真斗ワークスの2曲

 

 「その3」はDay 7を書き終えた後、構成の都合上で今般の旅行記とは別のトピックスを挟んでいましたので、閑話休題してDay 8からスタートします。正確には三度目のディーナハ探訪もDay 8のイベントですが、その分も含めてDay 3とDay 5に記述を集約させたためここでは省略とさせてください。

 

 

Day 8:首里城 ~ まんぷく食堂 ~ 那覇空港

 

 

 最終日には首里城公園を訪れました。ご存じの通り首里城は2019年に主要部が燃え落ちてしまったため、主だった目的は城址巡りというより復元工事見学です。守礼門をはじめとした種々の門が無事だったので暫くは実感が湧かなかったけれど、下之御庭まで来て奉神門しか残っていないのを目の当たりにすると、本当に正殿や南北殿は焼失してしまったのだな…と衝撃を受けました。しかしその度に建て直されてきた歴史があるからして、史上5度目の焼失になったとて再建を諦める道理がないのも然りです。その過程を「見せる復興」として開示することの意義深さは言うに及ばずでしょう。

 

 

 ここでのレビュー対象はDA PUMPの「琉STYLE」(2003)で、歌詞に"首里人"(しゅりんちゅ)と出てくる点を重視しました。"発つ弾リズムと言葉だけだ/Break Beat三線Sound Mix!"と紡がれている通り、ヒップでホップなビートに力強い三線の音色を合わせたマブイ揺さぶるトラックと、琉球に根差した"俺達の風"を感じさせるジョートーなラップが光るドープな楽曲と評します。

 

 沖縄が生んだ男性ダンス&ボーカルグループと言えば今尚彼らが第一線に居るとの理解で、そのデビュー時に小学生だった僕もご多分に漏れずハマっていた存在です。ゆえに多人数体制の新生ダパンプよりは初期メン4人でのパフォーマンスが一層の好みではあるものの、「U.S.A.」(2018)がヒットした際には誉め言葉として「ダサカッコイイ」の系譜に本曲を連ねる言及をしていますし、アニメ関連では『魔入りました!入間くん』の主題歌にて馴染みがあり、m.c.A・Tが手掛けた「No! No! Satisfaction!」(2021)は90年代と変わらぬパッションの迸りに懐かしさを覚えて気に入っています。

 

 このように後年のキャリアも評価しているわけですが、本曲の収録先『疾風乱舞 -EPISODEⅡ-』(2004)は初の完全セルフプロデュースによるアルバムで、オリジナルメンバーのままm.c.A・Tの元を離れた言わば中期の作風も、なかなかどうして魅せられる音楽性で侮れないです。初期のブレイクはいわゆるヒップポップ(J-POP+Hip-Hop)の取っ付き易さが広く世間にも受け容れられたゆえとの認識ながら、そのイメージから脱却して硬派にヒップホップと琉球音楽の融合が試みられています。一方でホーンとストリングスによるアプローチも随所に見られ、別けても切ない方向性の「You are the "ONE"」「Night Walk」「Silent Rain」「Cross Over」あたりは、今の若い人に再評価されそうなサウンドです。

 

 

 遅めの昼食はまんぷく食堂で。人気No.1の牛汁はもちろん山羊汁だけでなくあひる汁や馬汁まで味わえる点で特色のあるところで、過去にも何度か訪れています。山羊料理は提供不可のタイミングだったけれど、今回は元より変わり種に挑む気はなく安定の豚軟骨ソーキそばです。その後は定番のTギャラリアで免税品を物色しました。謎の銅像みたいな写真はそこの駐車場で撮ったもので、遠目からは本当にそれらしく見えたのですが近付いたら「何この…何?」だったという。本当の名称やら某事件との関係やらで一部では変に有名かもしれない、通称くじら公園も遠景から一枚。この日だけは雨勝ちの空模様で、そのことに託けたここでの選曲はRYUKYUDISKO*8の「Ami Nu Ku Tuu」*9(2007)です。

 

 *8, 9 MONDO GROSSOとしても有名な大沢伸一さんをフィーチャーした楽曲で、下掲アートトラックは大沢さんのアルバム『The One』(2007)に収録の別バージョンであることに留意してください。また、曲名のウチナーグチは「アミ ヌ クトゥ」と読むしかなく、「Ami」が人名の線も捨てきれないものの素直に解するなら「雨のこと」だと思うので、「雨の事」ないし「雨の言」と捉えました。

 

 

 RYUKYU~の名前は当ブログに幾度か出していて、「その1」で『ソナチネ』のサントラにふれた際にリンクした記事内でも、琉球音楽×電子音楽の好例として紹介しています。その他の言及は主に雑誌『Sound & Recording Magazine』関連で、誌上のハウツーコーナー「DAW Avenue」のCubase担当が一時期彼ら廣山兄弟だったのでノウハウを参考にしていました。本曲は収録先の『INSULARHYTHM』でいちばんのフェイバリットで、両者に期待される個性が素直に溶け合ったオシャレなインストナンバーと言えます。穏やかなフレージングにリバース系の変化が生まれる、[2:19]または[4:20]からの展開が格好良いです。

 

 

 一週間ぶりに那覇空港に戻って来まして、最後のお土産買い足しを済ませ帰宅の途に就きます。荷物でひとつ気懸りなものがあり、それはDay 3の駿河屋発掘品紹介に載せたバンドリのB2タペストリーです(上下のバーと布地が分離できないタイプ)。丸めてキャリーの対角線上に置いても微妙に収まらず、かと言って機内持ち込みは「その他凶器となりうる物」(外部リンク)に引っ掛かりそうな長物と言えなくもないため、扱い方をグランドスタッフに尋ねてみました。持ち込みの可否ではなく「どうすれば?」を訊いたのが良かったのか、本来はゴルフクラブや釣り竿用の特殊な段ボールに入れて預け荷物にする提案をいただき、有難くそうさせてもらいました。てっきり別料金がかかるものと思っていたのに、資材代すら請求されずサービスの範疇だったようです。

 

 

 

 先の外部リンクがJALのものだったことから察せるように往きも帰りも日本航空で、過去にレビューしていなければUnderworldの「JAL to Tokyo」(2005)をチョイスしているところですが、今回は椎名林檎「JL005便で」(2014)のリミックス音源「JL005便で ~Flight JL005~ (B747-246 Mix by Yoshinori Sunahara)」(2022)にフォーカスします。まりんの手に成るリミックスということで、僕が気に入らない理由がありません。初期のアルバムや12インチで繰り返し飛行機や空港がテーマの作品をリリースしているだけはあって係るサウンドスケープはお手の物、しかし当時のラウンジらしい音作りではなく『liminal』(2011)に聴こえるような精緻なビートメイキングでまとめてきており、原曲の楽想を大きく崩すわけではないけれどよりシステマティックになった趣が平成と令和の時代差を感じさせてくれます。

 

 

 『百薬の長』で最もツボだったトラックは再びの登場となる大沢さんがリミックスを担った「意識 ~Consciously~ (Shinichi Osawa Remix feat. Daoko)」です。元々「意識」(2003)は中学生の頃に初めて聴いた時分から高く評価し続けている楽曲で、収録先に拠りラスサビ周りのアレンジに顕著な違いがあってベストレコーディングを決めきれずにいました。これまでは「~戦後最大級ノ暴風雨圏内歌唱~」のオルゴールの発条切れの如くスローダウンするクロージングを暫定トップに据えていましたが、本リミックスを受けてその地位が入れ替わります。リズミカルなカットアップとダウナーなベースラインでダンサブルな変貌を遂げただけでも新鮮な聴き心地なのに、ラスサビ前にまさかのラップインサートで度肝を抜かれ、DAOKOをフィーチャーした新規セクションが存在するのはもはやリミックスの域を超えていると大絶賛です。

 

 そのリリックは決してシンプルではないけれど、「意識」本体の歌詞(というか『加爾基 精液 栗ノ花』全体の作風)が殊更に文学的な表記延いては内容であるため、2番後のこのタイミングで俄にストレートな言葉繰りで「○○したい」と願望が連ねられると、一段と時代感覚が曖昧になってまさに意識へと深く作用してきます。ラスサビの歌詞との整合性も匂わされていて、"子供の様に喚き散らしたい/誠の言葉で包まれて寝たい"の本音を努めて平静に内観へと落とし込んだのが、"まう是以上知つて 眠らない夜と心中未遂/思ひ出に酸化した此の含嗽藥 迷彩/無い物 頂戴なんて憤つてゐる幼児同様/お母様 混紡の僕を恥ぢてゐらつしやいますか"とも取れ、20年近い時を経て歌詞世界に奥行きが生まれるのは反則だろうと脱帽です。とはいえ"幾つに成れば淋しさや恐怖は消へ得る/子供を持てば軈て苦痛も失せるのか"は本曲の枢機たるフレーズで、これに鑑みれば子を持つほどの時間経過と環境変化で価値観が成熟するのは寧ろ自然と言えます。"遺伝子"もキーで、歌詞の主体が親から子へ移っているとも解釈できそうです。"短い命をぼくとシェアして"今日まで繋いで来た生き物なのですから。

 

 

 

After Days:旅行後のこと

 

 

 沖縄旅行記はこれにておしまいです。ここからのトピックスは今般の旅行と直接的には関係ありませんが、ひとつは旅行中密かに恵まれていた幸運について(「その1」の趣旨説明で「オチ」と表現したもの)、もうひとつは度々先出しで語っているように帯状疱疹を発症した不運についてなので、強いてまとめるなら「因禍為福、成敗之転、譬若糾纆」を実感した2023年秋を振り返るエピローグと受け止めてください。引き続き音楽レビュー要素を適宜盛り込んでいくスタイルです。

 

 

 

 旅行から帰ってショッピング用のメールアカウントをチェックすると、らしんばんからのとあるメールが目に入ります。月並みなオタクらしさが萌芽して以降、繰り返し利用している中古アニメ系ショップの一角です。旅行中に商品が届く不用心はしていないので注文の確認や発送の告知はあり得ず、常日頃クーポンやセールのお知らせが届くため当該メールも一瞬その類と思ったけれど、プレビューが問い合わせの返信みたいな件名と書き出し(要するに名指し)になっていて、身に覚えがないながらに開いてみました。すると飛び込んでくる「プレゼント」「厳正な抽選」「当選の権利」の文字。これらが意味するところは…そうです、プレゼントが貰えるキャンペーンに当選したということに他なりません。

 

 このメールが届いたのが9/11(旅行記ではDay 3)で返信期限は一週間、それに気付いたのが9/17のこと(那覇→羽田の最終便利用で帰宅は0時を過ぎ実質Day 9)だったため、実は権利失効の危機だったのです。Amazonや楽天レベルの大手ECサイトではないので詐欺を疑う必要はほぼないものの、念のためそのキャンペーンが存在していたのかの確認と、僕がそれに正しく応募していたかどうかを顧みまして、結果どうやら本当らしいと下掲リンクカードのページにて確証を得られました。

 

 

 というわけで勿体付けていますが、僕が応募したキャンペーンは去年の7/28~8/14に開催されていた「【全店対象】ラブライブ!プレゼントキャンペーン」で、当選したのは「Aqours賞(1名)」で景品は「グッドスマイルカンパニー Blu-ray ジャケットVer.フィギュア 高海千歌」です。市販品ゆえ限定の意味合いは薄れるとはいえ、いわゆる「1名様に当たる!」系に選ばれたのは人生初だったのでテンションがとっても上がりました。ちなみに応募条件は「ラブライブ!の関連商品を含む2,000円以上のお買い上げ」で、履歴を見たら7/31の注文にラ!サ!!劇場版ブルーレイの特装版(116円)とAqours CLUB CD SET 2020 BLACK EDITIONの初回盤(286円)が含まれていたため、実店舗での記憶が曖昧ながらおそらくオンラインを通じたこの一口だけで当選を掴んだ形です。μ's賞も考えたけれど購入内容がサ!!なのでAqours賞にした記憶があります。

 

 

 上掲写真が当選の証です。証書の用紙は全体をアップすると悪用されないとも言い切れないので、敢えて上部は隠して文字も重ねておきました。2018年末の発売とはいえ現在でも中古品の値段が定価とほぼ変わらないため、フィギュアとしての人気と価値が維持されているものと推察されます。今も未開封のままなのでレビューはできかねますが、商品ページ(外部リンク)にはオフィシャルの紹介動画やアメブロに展開しているカホタンブログへの導線が引かれているため、入手検討者のみならず僕みたいにパッケージを開けられない人間にも親切です。健脚美の眩しさとスクールバッグのリアルな質感が別けても素晴らしいと感じます。どちらも海砂で軽く汚すカスタマイズを施したい。

 

 

 ここでの楽曲紹介は順当にちかっちのソロ曲を対象にすべきだろうということで、「ナミオトリフレイン」(2022)とかなり迷って「One More Sunshine Story」(2017)にしました。曲名の「サンシャイン」が象徴するようにある意味では作品の表題曲とも言え、"特別な輝きが欲しい…!"の初期衝動にふれこれからの展望に想いを馳せる未来志向のナンバーです。「ストーリー」の要素も色濃く表れ、楽曲のつくりはミュージカル風でそのサウンドはライトミュージック的なワクワクに満ちています。以前に僕がこれらのジャンル名を共時させて形容したのは奇しくも同じライブライブ!シリーズからで、μ's「嵐のなかの恋だから」(2015)への言及です。当該部をセルフ引用すると―

 

 いざサビに入るとミュージカルのコンセプトが強まってメロディおよびコーラスワークに空間的な広がりが生まれ、この絢爛さは海外の美学で説明を付けたくなります。大幅に曲調が変化して遊園地やホリデーシーズンの音景が浮かぶCメロ付近も、そのサウンドはライトミュージック的です。非常に包括的なジャンル名ですが僕が言わんとしているのは、Leroy Andersonの「Sleigh Ride」(1948)に代表されるようなポップスオーケストラ系で、それこそ演劇やショーには打って付けの音楽と言えます。

 

 ―となり、これを先に述べたワクワク感の補足とします。「軽音楽」という訳語と相俟ってライトミュージックが具体的にどういうものを指すかは文脈依存度が高いけれど、「そりすべり」の例示も含めて僕が共感を覚えてソースにしているのはDE DE MOUSEが『farewell holiday!』(2015)のリリース時に語ったインタビュー記事の内容(外部リンク)です。括弧内は編集註かもしれないのでデデマウスの発言とは表現せず、「1940~50年代の軽音楽」でピンと来る人は少ないでしょうから代表曲とセットで説明することに賛同します。

 

 

 

 注意①:以降は帯状疱疹の話で患部の写真をデカデカと載せることはしませんが、リンクカードのサムネには表示されてしまい人によっては苦手かもしれないので、スクロールの際はお気を付けください。

 

 下掲の画像はクッションです。無編集だけれどレンズの悪戯かステーキハウスのネオンが逆さまに映って空中で結像したみたいになったトリック写真。ゴーストもたくさん湧いています。

 

 

 10月下旬に当選品が届いた時は、「Day 6で訪れたパワースポット効果かな~!」などと浮かれていました。しかし今思えば去年のブランク空け記事に「心身共に健康です」と書いたのがフラグになったのか、或いはもっと遡って一昨年のプチ旅行記(偶然これもラブライブ関連)に病名を出したのが引き寄せてしまったのか、程なくして帯状疱疹を発症しました。ほんと因禍為福(以下略)ですね。

 

 

 コロナ禍から今日まで幸いなことに新型コロナには罹らず、とはいえ一週間以上旅行をしたらインフル含めて何かしらの呼吸器疾患に感染するかと思いきやそれも杞憂で、何なら今までの人生で一度もインフルに罹ったことがないくらいには流行性の病気に強いと自負していたのに、各種マスコミの報道にある通り「子育て世代で急増」や「20~40代で発症率約2倍」にがっつり当て嵌る、嫌な流行に乗ったことは自分的に凄く意外でした。上にリンクしたNHKのが去年の10/10で後にリンクするTUTのが10/18と、タイムリーな警鐘から間もなくの発症というのも因果なものです。以下、日付と共に経過を語ります。

 

 注意②:なるべく医学的に当を得た表現に努めましたが、ずぶの素人ですので誤用があってもお目溢し願います。本記事の内容を鵜呑みにはせず、専門的なことは医学・医療に携わる方にお尋ねください。以降の記述を利用して生じたいかなる結果についても、筆者である僕に一切の責任を求めないことに同意した上でのものと見做します。これは単なる個人の闘病記で、YMYLの領分で言えばExperienceはあれど続くE-A-Tは皆無です(リンク先のページはこの限りではありません)。

 

10/22 | 原因?と自覚の日

 

 帯状疱疹の背景に別の重大な疾患が潜んでいる可能性があるのは事実ながら現状何某かの病識も通院の経験もないためこの場では除外しまして、「これが発症のトリガーになったんじゃないかなぁ」と思い当たる節が実はあります。…が、それは音楽レビューと絡めて語りたいので最後に改めてふれることをご容赦ください。

 

 起床と同時に左腕全体に痺れを感ずる。普段左側臥位で寝るため自重が変に作用して橈骨神経高位麻痺(腕枕の後になるやつ)にでもなったかと軽く考える。午後になると筋肉痛の如き様相を呈し始めその痛みが肩甲骨や胸筋の位置にまで広がる。何れも左のみで以降に出現する諸症状についても部位は同様。

 

10/23 | 悪化を自覚した日

 

 痛みが酷くなって次第に肩と腕の可動域が狭まり腋のリンパにも腫れ感を覚える。肩関節周囲炎つまり早くも四十肩かと疑う。

 

10/24 | 引き続き痛む日

 

 依然痛みが止まないので湿布や湯たんぽやマッサージで対処を試みる。処置を施している間は気持ちが好い。

 

10/25 | 病状が変化した日

 

 筋肉痛的な症状が多少和んだ代わりにピリピリとした痛みが出現。同時に肌が突っ張ったような感覚を生ずる。湿布を剥がすと従前には現れたことのない発疹が認められ接触皮膚炎を起こしたかもと過剰貼付を後悔する。

 

10/26 | 帯状疱疹を疑い出した日

 

 敢えて全ての対処を中止するも病状変わらず。このタイミングで帯状疱疹について検索し「前駆痛」という概念を知る。結果これが正解(即ちこれまでに挙げた病名は全て間違い)で湿布かぶれと誤認するのもありがちらしい。

 

10/27 | 本当の自覚の日

 

 発疹に重なるように水疱が出現し帯状疱疹をほぼ確信。痛みは擦過傷的な性質を帯び典型的な主訴の「ヒリヒリ・チクチク・灼熱感」をコンプリートする。僅かに動いて服が擦れるだけでも痛くQOLがだだ下がる。(もし帯状疱疹なら)禁忌とは知りつつ確認のためにステロイド外用薬の塗布と患部の冷却を行うと案の定症状が悪化し更なる確信を得る。この頃には前駆痛に伴う症状は消失する。

 

 

 上掲の放送内容ではTUT20代記者さんの言が我が意を得たりで、「日に日にどうしようもない、寝返りも打てない痛み」にも「このまま仕事してたらやばいなって思って耐えれる痛みを越した」にも首肯しまくりです。僕の場合は背中(左肩甲骨周り)の広範囲が絨毯爆撃されたように荒れ、且つ胸部にも帯状疱疹の方言のひとつ「袈裟懸け」が正中線を越えずに止まった風に斜めの傷ができ、更には腋と腕の一部に出現した少しの水疱も地味に痛さを上乗せしてくるという、同時多発的な発症(語弊があるので後述:これでも実は一ヶ所扱い)で地獄でした。

 

10/28 | 激痛の日:治療1日目

 

 前日のうちに病院にかかることを決めるも比類なき痛みで一睡もできずそのまま朝一で近所の皮膚科を受診。患部を見せ即座に無事(じゃないが)帯状疱疹と診断される。問診票をやたら詳しく書いたからか「お見立ての通りです」と言われる。たまたま歩いて行ける範囲に評判が良く土曜の午前にも診療を受け付けている医院があって心底良かったと思う。実際非常に好感の持てるドクターだった。

 

 治療方法は「抗ウイルス薬を一週間内服する」に決まる。処方されたのは「アメナリーフ(一般名アメナメビル)」。他に痛み止めと胃薬と非ステロイド系軟膏も渡される。サカナクションの山口さんが帯状疱疹を公表した際に「薬高いのね」と;受付の人も「ちょっとこのお薬は高いんですが」と仰っており蓋しな出費と感じる。しかしこの苦しみから逃れられるなら安いものと本気で縋ったのもまた事実。

 

 

 この薬は抗ヘルペスウイルス薬の中では新しいもので、従来の帯状疱疹向けの薬より種々のメリットがあるようです。わかり易いのは腎機能に影響せず1日1回飲めば済むという点で、作用機序の新しさについては専門的でよくわかりません。帯状疱疹について書かれたページにふれると、「発疹が出てから3日以内の投薬が肝要」との所見を多く目にするものの、アメナリーフに関しては上掲ページにもある通り、「(早いに越したことはないが)目安として皮疹出現後5日以内」と若干の猶予を持たせているように感じられます。後遺症への影響をどこまで考慮するかで起点終点がズレるのかもしれませんが、できれば3日以内・遅くとも5日以内がコンセンサスになっているようです。

 

10/29 | 続・激痛の日:治療2日目

 

 「すぐに効果が表れるわけではないので諦めないで飲み続けてください」の言葉通りアメナリーフに即効性がないのを実感する。痛み止めと軟膏が焼け石に水なことも。耐え難い激痛に襲われ続けて誇張でも冗談でもなく金曜の朝から連続で50時間以上起きている計算に。どこかで睡魔が勝つだろうと考えても全くそんなことはなく寧ろ丸2日以上寝てないのに微塵も眠くないことに恐怖する。この状況で脳や心臓に致命的な症状が出やしないかと別口の不安が頭を擡げる始末。

 

 60 hrs awake[Lotusの曲名「72 hrs awake」(2009)の捩り]に差し掛かる頃になって気絶に近い就寝を得る。入眠時の記憶がないが4時間ほどで目覚める…と、明らかに痛みが和らいでいて驚く!依然としてかなりの痛みはあれど堪えて身の回りのことができる程度には持ち直す。睡眠の修復力と薬の効力が噛み合ったのを感じ気持ちの面でかなり楽に。激痛の間でも常に食欲はあってきちんと食べてはいたものの食事開始から終了まで悶えて席を立たずに済んだのが3日ぶりなのがここ数日の異様さを物語る。

 

10/30~11/3 | 順調に治っていく日々:治療3~7日目

 

 以降はまともに睡眠が取れ薄紙を剥ぐように症状が軽くなる。「だとしても一週間しっかり飲み続けてください」と釘を刺されていたので従う。実感するような副作用もなく一安心。寧ろ副効用があり左腕の肘窩に数年前からあった謎の小さな白い塊が消えて「あれもウイルス性の何かだったのか」と驚く。

 

11/4~5 | 薬なしで過ごした日

 

 処方された薬を使い切ったので様子見。結果痛み止めが実は効いていたと知る。痛みのピーク時には無力に思えて軽快してくると飲む必要性を感じないくらいだったがいざ切れると純粋に傷としての痛みが顔を覗かせてくる厄介さ。

 

11/6 | 再診の日

 

 経過報告と痛み止め欲しさに再び病院へ。患部を見せると「この治り方なら早いほうです」と言われる。従前は50歳以上に好発の病気なのでもっと長引く方も居るらしく比較すれば若い人はマシとのこと。このまま症状が落ち着いていけば大丈夫と判断され痛み止めと胃薬を二週間分と軟膏を多めに貰う。

 

 10/27でふれた「語弊」について:先述したように僕の帯状疱疹の発症部位は背中・胸・腋・腕と同時多発的でした。しかしこれらは全て胸椎神経に沿った発症と一元的に説明できます。もし「複数個所に帯状疱疹が出るのは重症」といった文言に覚えがあるなら、それが意味するところは「複数の神経支配領域に~」です。神経節に長らく潜んでいたウイルスが神経を破壊しながら皮膚上に出てくる病気なので発疹は神経の分布に従います。隣接する領域にまで拡大しても体の片側に止まるならともかく、発疹が両側或いは全身に出ればそれは複数の領域が侵されている証と言え確かに重症扱いとなるでしょう。されど下掲ページのような知見もあるため、単発か複発かよりも合併症ないし後遺症の有無で症状の程度が決まるのだと捉えました。あとは発症部位によるリスク差もあり、顔面に出た場合には一層の注意が必要となりますね。

 

 

11/7~ | その後の日々

 

 残っていた痛みが時間の経過と共に痒みへと移行する。瘡蓋となればもうウイルスを撒き散らす心配はないらしいが何となく掻くのは憚られる。ゆえに暫くは痒みを堪え続けなければならずこれはこれで辛い。唯一積極的に刺激を与えられる機会が入浴時でシャワーが快感と化す。とはいえこの状態も数日間で過ぎ去り治療開始から二週間後の11/11には略治と言っていいレベルに落ち着く。

 

 そして現在。皮疹出現から4日目での治療開始とやや遅れを取るも(湿布が発疹の発見を邪魔したため5日目の可能性あり)、痛覚過敏やアロディニアを伴う帯状疱疹後神経痛と言えるような目立った後遺症状はありません。徐々に薄くはなっているものの色素沈着で発症部位をまだ視認できるのと、一部の瘢痕が点で痛む瞬間が僅かにあるぐらいの軽い古傷感はあるけれど、QOLに影響するほどではなく見た目が完全に治ればそれすらなくなるだろうと楽観視しています。

 

 

 「場所は伏す」のをご寛恕願いまして、左の札には以前「水疱瘡神」と書かれていました。原因となるウイルスは同じなので時代に合わせて表記をアップデートしたのだと思われますが、右の石祠に刻まれている通り本来は「疱瘡神」を祀ったものでその対象は天然痘です。嘗ては水痘と区別されていなかったため由縁の拡大解釈は甘んじるとして、再発のないように祈っておきました。というのも僕が帯状疱疹に苦しめられている折、疱瘡神に関して因果を感じるシンクロニシティがあったからです。

 

 日付は遡って10/26:僕が帯状疱疹を疑い出した日。この日に放送された『呪術廻戦』のアニメ第38話「揺蕩」は、冥冥&憂憂 VS 疱瘡神からスタートする構成でした。作中では特級特定疾病呪霊・疱瘡神として登場するも原作コミックスのおまけページで正しくは疱瘡婆と明かされており、元ネタが地域の妖怪と全国区の疫病神では恐れの総量に差がありそうですから、偽夏油が性能を盛ってみせたのでしょう。ともあれ特級には違いなく領域展開が可能で、術式の必中効果(とそれが招く結果)に「3カウント以内に脱出しなければ病死」があるため対処には即応性が求められます。

 

 「疱瘡」というワードによる繋がりに加えて望ましい猶予期間が「3」をキーとしたものである共通項には、帯状疱疹とその治療方針を連想させるものがあって符牒の一致に少しの恐ろしさを感じました。更に妄想力を上げてこじつければ、疱瘡婆を祓ったのが姉弟2人の連携技なのと領域内に巻き込まれた烏が2羽であったところは、アメナリーフが1日2錠の服用を要することに結び付けられます。余談ですが墓石攻撃は疱瘡婆の出典元『奥州波奈志』に於ける重石の記述から着想を得たのだと推測されるも、イスラム教の聖典『コーラン』に鳥が落とした石に当たって疱瘡を発症する描写(エチオピア軍を撤退させた天然痘蔓延の背景には斯様な神の奇跡があったとの解釈)があると知って驚きました。

 

 

 (上) 沖縄で出会した領域展開。リアデフォッガーで見にくいのとトリミングしていることとは無関係に場所を特定できる材料に乏しく詳細は不明です。この7分後にJimmy'sうるま店の外観を撮っているため大体その辺りとは言えます。ちなみに空港ではジミーのアップルパイを買いました。

 

 (下) 10/22深夜3時近くの南東の空。スマホでの撮影+街明かりが煌々+家々の間の狭い空と悪条件だったので星空を写したものとして残念なのは承知しています。唐突に夜空の写真を貼ったのは先述した『「これが発症のトリガーになったんじゃないかなぁ」と思い当たる節』に関係するからです。

 

 

 10/22の起床後に前駆痛が出現したわけですが、その就寝前にはオリオン座流星群を観測しようと外に出ていました。この記事でもその一端が窺えるように僕は星を見るのが割と好きです。いつもならキャンプ用の椅子を展開して寝そべって眺めるところ、この日は椅子の調子が悪く使用に不安を感じたので立ったまま見上げていました。ずっと直立不動ではキツいため途中から柱に身を預けていて、ただでさえ寒かったのにその間接触させていた左半身には建物の冷たさが移ったことでしょう。

 

 思い返すとこの数日前には葛根湯を飲む機会がありました。僕がそうしようと決心するのは風邪のひき始めではなく、何だか風邪をひきそうな気がした時でもなく、その予感がしそうな予感がした時です。要するに相当先んじて些細な違和感に対処するタイプでそれが功を奏していると断言こそしないものの、コロナ禍にあって何度か訪れた「これは罹患の前触れでは…」の状況を結局発症なしで今日まで乗り越えてこられたのは、早すぎるくらいの自己判断で葛根湯を飲んでいたお蔭もあるのかなとは思っています。コロナ禍以前は年に最低1回は風邪を引くことがありましたが、以降は手洗いを徹底しているのもあってコロナやインフルはもちろんただの風邪すらひいていません。

 

 とはいえ無症状感染は検査しない限り気付けず5類移行後はわざわざ調べていませんので、10/22の時点で何かしらに感染していたことを否定はできないのです。実際コロナ感染後に帯状疱疹発症のリスクが上昇するという報告もあり(外部リンク)、結果論で疑うこともできます。ともかくその状態で睡眠時間を削ってまで寒空の下に長時間居たなら免疫機能に不調を来しても不思議ではなく、これが帯状疱疹発症のトドメだったかもしれないと自らの不養生を顧みます。

 

 

 最後の音楽レビューは四記事連続でアイマスからの選曲、ミリマスのウィンターソング「瞳の中のシリウス」(2014)です。オリオン座絡みじゃないんかいとのツッコミは当然ながら、その実2023年の同流星群観測に於いては幾つか見られた流星よりもシリウスの瞬きに魅了され、1等星の中でも一際明るいだけはあるメリハリの利いた明滅のパターンに見惚れてしまったことのほうが印象に残りました。オリオン座に関しても三ツ星より小三ツ星がやけに意識上に来るなと感じ、空気がとても澄んでいたのかもしれません。一応本曲の歌詞にも"流れ星"は出てきますし、冬の大三角を形成する恒星と見ればオリオン座(ベテルギウス)とも関連が生まれるので、そこまでズレたこじつけではないと言い訳しておきます。

 

 本曲で殊に評価したいのはメロディラインの綺麗さです。編曲でその煌びやかさが底上げされている面もあるけれど、ワンフレーズのピアノリフを主軸に据え平歌でもサビでもオケに一貫性を持たせているのは、あくまで主旋律を立てるために過度な装飾を控えた結果に聴こえます。しかしずっと一本調子なわけではなく、サビ前のブレイクやCメロの変則で緩急を付けておりちゃんと技巧的です。1番の後すぐCメロに入る意外性もこのためかと分析します。シンチレーションは大気の屈折によるものですが、"溢れる 溢れる 瞳のシリウスが煌いて"および"零れる 零れる 瞳のシリウスが揺らめいて"と、涙液による屈折にフォーカスする歌詞も詩趣に富んでいて好きです。直接「涙」や「泣」を使用していないのが高評価ポイント。

 

 

おわりに:今年もよろしくお願いします

 

 以上、四記事に亘る特別企画「2023年、夏、沖縄 ~Every Trip Has A Soundtrack~」でした。帯状疱疹で予定が一ヶ月狂ったせいで2024年に脱稿です。関西準拠でも松の内は過ぎてしまいましたし年明け早々大災害がありましたので、新年の挨拶は小見出しの簡易なもので済ませます。

 

 

 今週は初詣とは別にお札を返しに成田山新勝寺へ。14日だというのにこの人出です。川豊も臨時店舗(海老屋のところ)へ案内される盛況ぶり。美味しい鰻と肝吸いでしっかり活力を得てきました。

 

 相変わらず今年も当ブログの更新プランは未定ながら、目下取り敢えず着手しようと考えているのはMV紹介記事のラインナップ変更です。40本を全体としてその1/4を入れ替えたいほど、今日までに良質なMVとの出逢いが多くありました。それも最近の作品にではなく一昔前の洋楽中心にです。MUSIC AIRやMTVを観ているとまだまだ往年の名作への理解が浅いなと痛感させられます。

 

【追記:2024.2.4】

 

 

 大改訂が完了しました。12本の入れ替えがあったので宣言以上です。