今日の一曲!忍迅雷音「Ninja Fanka」【2018年振り返り・SB69編】 | A Flood of Music

今日の一曲!忍迅雷音「Ninja Fanka」【2018年振り返り・SB69編】

 【追記:2021.1.5】 本記事は「今日の一曲!」【テーマ:2018年のアニソンを振り返る】の第三弾『SHOW BY ROCK!!』編です。【追記ここまで】





 『SB69』にとっての2018年は5周年のメモリアルイヤーにあたり、それを記念したシングルの発売がありました。今年のフィジカルリリースはこの1枚だけなので、「今日の一曲!」に入る前に『ENDLESS!!!!』(2018)の収録曲をざっと振り返ろうと思います。




 表題曲の01.「ENDLESS!!!!」とc/wの02.「Eternal Unity -明日へのメロディ-」に関しては、アーティスト名がSHOWBYROCK!! Familyとなっており、これは作品オリジナルバンドの声優陣およびタイアップバンドのメンバーによる混合ユニットが歌唱を務めているという意味です。01.と02.で人選は異なり、参加者の詳細は上掲動画内の記述をご覧くださいと丸投げしますが、所属の垣根を越えた面々が一堂に会して作品を出したこと自体に意義があり、ひいては作品愛を感じますよね。わかりやすく例示すれば、両曲共に「We Are The World」(1985)的な良さがあって素敵だということです。

 もうひとつのc/wである03.「光ノTSUBASA」はSHINGANWHITEEZ(シンガンホワイティーズ)のナンバーで、今年のエイプリルフール企画に由来しています。普段(シンガンクリムゾンズ)の赤黒さとの対比で、一層際立つ白さに目が眩むほどです。特にエンジェリックなギターが格好良い。




 さて、去年の振り返り記事でも言及しましたが、音ゲーアプリとしては当然ながら、今年もゲーム内に新たに実装された楽曲はそこそこあります。それらは未だCD化されていませんが、配信でリリースされたものはいくつか存在するので、以降はその中からの紹介が中心です。

 本当は次のベスト盤がいつか出るまで配信曲の購入は我慢しようと考えていたのですが、Vol.1と2と同じく1枚30曲×2がワンセットだと考えると、ストック的に発売はまだまだ先になりそうなので(Vol.3だけでいいなら出せそうですが)、本レビュー執筆のために個別で買いました。iTunes Storeでリリース年が2018年になっているオリジナル楽曲を網羅したつもりですが、見逃しがあったらすみません。

 また、配信での購入ゆえに正確な歌詞はわからず、なるべく引用しないように努めましたが、どうしても言及したい場合は自分で聴き取った歌詞を載せました。従って、内容の正確性は表記揺れや改行位置等も含めて保証しかねます。加えて、Amazonは配信の対象サイトになっておらず、楽曲へのリンクを埋め込むことが出来ないため、代わりにバンドの関連グッズへのリンクを表示させました。無理に何かを貼り付ける必要はありませんが、視覚的な仕切りが欲しかったのでご容赦ください。

【追記:2020.1.3】

 後年に『SHOW BY ROCK!!』の総括的なエントリーをアップしており、本記事で取り上げた楽曲の再レビューも正しい歌詞を引用したうえで行ってあるので、リンク先もご覧になることをおすすめします。

【追記ここまで】





 ということで、漸く紹介に移れる「今日の一曲!」は忍迅雷音の「Ninja Fanka」(2018)です。当ブログでの言及は初となる作中バンドですが、ともするとディスと受け取られかねない書き出しになることを先にお詫びしておきます。最終的に絶賛へと至る論理展開なので、そこまで構える必要はないかと思いますが、一応の注意喚起です。

 なお、副題として「ダサカッコいい曲とは何か?」と付すべき、回りくどい内容になっていることも予告しておきます。「如何にして本曲を気に入ったか」というプロセスを記すことに注力したので、楽曲自体のレビューとしては、文章量の割に内容に乏しいかもしれません。


 純粋に忍迅雷音の音楽が好きなファン(シュラライザー)の方々には申し訳ありませんが、僕の中に於ける同バンドへのイメージはずっと「正直ダサい」でした。それは主にボーカルの声質に起因していて、何処かコミカルに感じられるというか、他のアーティストを引き合いに出すならば、BUMP OF CHICKENの隠しトラックに見られるようなねっとり感が、何だか気になってしまうのに似た感覚です。それ自体が悪いわけではなく、バンプのように狙ってやっているなら寧ろ好物なんですけどね。

 音楽に限らず、ひとつの趣向として「ダサカッコいい」が存在することは有名ですが(今年のヒットで言えばDA PUMPの「U.S.A.」は好例でしょう)、僕は普段からこの類のノンスタイリッシュさにも寛容ではあります。しかし両者の配分は重要で、英語で表現するなら'wack(y) cool'は文字通り「ダサカッコいい」で許容範囲内だけれど、'wack(y) but cool'だと「ダサいは前提として確固たるものである」とのニュアンスが窺え、後に「だけどカッコいい」と続いたとしても、それは「ダサカッコいい」とは微妙に異なるものであるというのが、個人的なこだわりのポイントです。専門的になるので記しませんが、構文木(ツリー構造)で示せば両者の違いが意識しやすいと思います。

 この観点で忍迅雷音を評価しようとすると、その扱いは実に難しいです。上記の差異を「このダサさは狙っているのか否か」との疑問に置き換えたとして、意図せずにダサさが滲んでしまっているなら、それは僕の中では'wack but cool'となり、先述の「正直ダサい」につながります(「正直」に言外の意を含ませた形)。特に初期の3曲にはこれが顕著だと感じていて、そのファーストインプレッションによってこの失礼なイメージが醸成されたのでしょう。しかし後にリリースされる楽曲によって、段々とこの認識は変わり始めます。たとえば「手裏修羅雷」(2016)は、正しく「ダサカッコいい」ので好きでしたし、「-BAKUEN- Dead or A live!!」(2016)と「水面の歌」(2017)は、素直に「クール」だと思いました。


 こうして徐々にポジティブな印象に推移していたところに放たれた「Ninja Fanka」で、僕は更に混乱することになります。なぜなら、本曲の初聴時の感想は「ダ、ダサ過ぎる…!!」だったからです。ボーカルのねっとり感は過去最高レベルだし、ライミングというよりはダジャレの向きが強い歌詞に、Aメロの旋律をなぞる不意気なシンセと、あまりにクセの強いアウトプットに面喰ってしまいました。「やっぱり忍迅雷音は苦手だわ…」と、また否定的な思いが顔を覗かせつつある中で、ジャンルとしては畑違いのミュージシャンを嘗て好いていた経験が、この状況の打破につながります。



 ということで、リファレンストラックとしてSkrillex feat. Sirahの「WEEKENDS!!!」(2010)を埋め込みます。EDM界隈では…いや、そうでなくとも説明不要なほどにスクリレックスは有名かと思いますが、ブロステップをメジャーにしたアーティストとして重要な存在ですよね。僕は2011年から2013年頃にかけて彼にハマっていて、EPも揃えてよく聴いていたぐらいには、その斬新な音楽性を気に入っていました。余談ですが、2014年の初アルバムは完全に時期を逸したなと思っています。来年には宇多田ヒカルとの共作シングルも発売となりますが、これでまた話題となるのは喜ばしいことではないでしょうか。

 結果的に世界的な評価を得ていることからも、彼の音楽はストレートに「格好良い」に分類していいでしょう。しかし、同時に「下品だ」といったアンチ寄りの意見にも同意は出来、冷静になるべき場面でアクセルを踏むかの如き遠慮のなさが、長所兼短所として存在しているとの分析も可能です。これが強く発露している例として「WEEKENDS!!!」を取り立てた次第で、たとえば1:10~1:40のサウンドメイキングは、今聴いても少し笑ってしまうほどに「ジャンクだなぁ(誉め言葉)」と思います。



 それでも幾度も聴きたくなる魅力があるのは確かで、これと同種のツボを「Ninja Fanka」にも覚えたというのが、ここで言わんとしていることです。キーワードとしては「突き抜け感」が挙げられ、両曲とも「ダサさも突き抜けると格好良くなる」ことを証明しているとまとめられます。『ん?だから要するにそれが「ダサカッコいい」だろ?何を長々と…』と思われたかもしれませんが、これには単なる「ダサカッコいい」とは異なるロジックが背景にあるので、最後にその点について解説します。

 またも英語を持ち出しておさらいしますが、僕の思う「ダサカッコいい」は'wack cool';つまり主体はあくまでも'cool'にあると考えいて、いくら「ダサい」と言っても、音楽的には「格好良さが少なからず意識されている」、換言すれば「打算的な面があるもの」を指すとの認識です。一方で、先述した忍迅雷音の初期3曲のような'wack but cool'のパターンは、「ダサいの前提が大きい」と捉えているため、「クールな要素」があったとしてもその比重は小さく、あまり好みにはならないケースとなります。


 では、肝心の「Ninja Fanka」はどうなのかと問われれば、分類上は後者です。ということは「好みでない」の評価を下しそうなものですが、ここで先程の「突き抜け感」が重要となってきます。「ダサい」と思った認識は決して消えないけれど、それを超える強さで「格好良い」も主張して来るため、'wack but cool'を超越する意味で、'wack but awesome cool'的な理解に落ち着くロジックです(強調語は別に何でも構いません)。並べるとわかりやすいと思いますが、最終的に「ダサカッコいい」に収束する音楽でも…

① wack cool:趣向・ジャンルとして確立している
② wack but cool:個人の好みによる・場合によっては技量不足
③ wack but awesome cool:稀有な名曲

 …の三種類があるとの分類で、③に該当する「Ninja Fanka」のようなナンバーはレアだと捉えています。比較対象としてはスケールが異なり過ぎますが、スクリレックスがワールドワイドで流行したことや、「ダサカッコいい」の好例と言える「U.S.A.」が国内でヒットしたことと、似通った構造によって僕の中でヒットソングにまで昇格したというわけです。


 この領域まで来ると、先に「面喰ってしまいました」と書いて例示した諸要素は、全て「ツボ」へと変貌します。「ボーカルのねっとり感は過去最高レベル」でも不思議と心地好く、「ライミングというよりはダジャレの向きが強い歌詞」も一周回ってユーモアに感じ、「Aメロの旋律をなぞる不意気なシンセ」もたまに食べるファストフード的な良さがあって味わい深いです。



 補足として、キャラクター群としての忍迅雷音に言及するならば、公式サイトの言葉を借りた「サイバー忍者」が端的な形容だと思います。…と同時に、この言葉の組み合わせを見た場合に、『ニンジャスレイヤー』を思い浮かべた方も多いのではないでしょうか。時代背景や舞台設定はサイバーパンク・SFの世界観を踏襲し、日本的な諸要素が誇張されているところを共通項として作品名を出しましたが、日本人ゆえに感じられる現実的な認識とのズレが、良い意味でダサカッコよさを演出している点でも、両者のキャラ像には近いエッセンスを覚えます。

 そして、この解釈は音楽にも反映されているとの理解です。忍迅雷音に関してはこれまでに示した通りですが、『ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン』のコンピ盤(2015~2016)も、参加アーティストが好みというか豪華であったために「忍」「殺」「伐」の全てを揃えていて、何処となくシェアラブルなセンスを感じました。ちなみに3枚目の「伐」には、カラスは真っ白の「サヨナラ!フラッシュバック!」(2016)が収録されているので、SB69er的にはシロラクロスカ?の音楽にもふれられて満足です。



 話が多方面に飛びまくって濃密な内容となったので、残りの配信曲に関しては順不同で雑多に済ませます。なお、忍迅雷音には今年もう一つの新曲リリースがあり、題を「Falling into the Light」(2018)と言いますが、こちらは文句無しに「クール」なタイプで、もはや直球路線でもファンですね。笑





 プラズマジカからは「Future Girls」(2018)と「檸檬と蜂蜜」(2018)を紹介。前者はシアンとモアがボーカルを務めた、実に'らしい'ガールズロックナンバーです。後者は念願のチュチュソロ曲、鍵盤が彩るシネマティックな雰囲気がお洒落で彼女によく似合っています。





 クリティクリスタからは「Happy Happy Jump」(2018)をレビュー。納得のあざとさで送られるロージアのソロ曲で、"手をたたこう"の歌詞通り、ハッピーなクラップがチアフルで良きです。





 徒然なる操り霧幻庵からは「浮世に舞ふは刹那の華」(2018)が登場。安定の極東サウンドで、旋律や音色やリズムに宿る「和」に安心します。立板に水の流麗な言葉紡ぎが、キャッチーなメロディを巧みに乗り熟し、西洋式ではないノリの良さを生み出しているところが素晴らしい。





 雫シークレットマインドからは「Autumn Sky」(2018)と「Like A Peony」(2018)がリリース。両曲共にブレイクビーツとクリアなボーカルが冴え渡り、相変わらずの瑞々しさです。可憐さが際立つ後者がよりおすすめ。





 「実力のある学生バンド」の設定が反映されているのか、全体的に譜面が難しい気がするウワサノペタルズの新曲「一秒の歌」(2018)。"これは私の中だけの 小さな恋のお墓の歌/千切る花に見合うだけの 泣いて 泣いた 水をあげた歌"という超ポエティックな立ち上がりの歌詞だけでも、名曲認定待ったなしだと絶賛します。儚い歌詞と緩急のある疾走感でもって、ひたすらにエモいところが素敵です。




 ここからは番外編として、『SB69』の楽曲ではないけれど、タイアップバンドが今年のアニメに提供したナンバーをピックアップします。後に更新する予定のクール毎の振り返り記事では言及の対象外となりそうなので、せっかくならば本記事にまとめてしまおうという魂胆です。自分が観ていない作品については調べていないので、洩れがあったらすみません。




 1曲目は『異世界居酒屋~古都アイテーリアの居酒屋のぶ~』のED曲・クラムボンの「Prosit!」(2018)。SB69er的にはラボムンクでお馴染みですね。

 このポップセンスはデビューから長いだけあって安定の心地好さで、食を通じた異世界交流を描いたアニメの内容とも上手くマッチしていると思います。また、個人的にはブラスアレンジの担当がMONACAの神前暁さんであることも大きく、だからより聴き易かったのかと納得です。




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 2曲目は『ラディアン』のOP曲・04 Limited Sazabysの「Utopia」(2018)。SB69er的には04Tobizbitsで通りますね。

 パワフルなプレイとスピーディーなラインに滾らされる感覚が冒険譚の王道といった趣で、これまたアニメに馴染んでいると評せます。"武装戦線 前線 前世でも"と、おそらくパロディであろう歌い出しも好きです。




 長くなりましたが、作品オリジナルバンドの楽曲を中心とした2018年の振り返りでした。新バンド・Yokazenohorizonの実装や(最初に「夜明けのホライズン」と誤認したせいで今でも間違えそうになる)、i☆Risとコラボしたice☆Crhythmの存在など(実質『プリパラ』コラボで驚く)、まだまだ書こうと思えば続けられる要素はありますが、ぼちぼち次に行きたいので切り上げます。

 音楽以外の面では、アプリの運営がギークスからエディアに変わるという大転換も今年の出来事でしたね。あれこれ言いたいことはありますが、メロディシアンとチケットの配布量と機会が目に見えて増えて、LR/URを入手しやすくなったのは良いと思います。