2017年のアニソンを振り返る・Part.5/5【秋アニメ編】 | A Flood of Music

2017年のアニソンを振り返る・Part.5/5【秋アニメ編】

 注意:『YouTube』動画の埋め込みが多いため、読み込みに少し時間がかかると思います。


● はじめに

 Part.4に続く、「2017年のアニソンを振り返る」シリーズのPart.5です。企画の趣旨はPart.1にて説明済みですが、「2017年にレビューし損ねたアニソンを紹介する記事」という理解で相違ありません。本記事では、「2017年の秋アニメ(10月~12月)に関する楽曲」がレビューの対象となります。


● 注意事項 (Part.2~5で共通)

 Part.2で書いたことと同じなので、お手数ですがリンク先を参照してください。


● レビュー済みの作品一覧

 先述の通り「レビューし損ねた」が題目に含まれるので、当ブログにて既にレビューを行ったものについては、以下に当該記事へのリンクをしておくことで振り返りの一環とします。要するに以下のラインナップは、個人的なヒットチャートですね。

■ サタデー・ナイト・クエスチョン / 中島愛
    『ネト充のススメ』OP曲
■ Here / JUNNA
    『魔法使いの嫁』1stOP曲
■ ぼなぺてぃーと♡S | デタラメなマイナスとプラスにおけるブレンド考 / ブレンド・A
    『ブレンド・S』OP曲|ED曲
■ 動く、動く | More One Night / チト(CV:水瀬いのり)、ユーリ(CV:久保ユリカ)
    『少女終末旅行』OP曲|ED曲
■ 鏡面の波 / YURiKA
    『宝石の国』OP曲

 これらに加え、単独記事ではありませんが『ラブライブ!サンシャイン!!(第2期)』に関する楽曲はPart.1にてレビューを行ったのでリンクしておきます。と言っても、アニメ関連の楽曲にはふれていないので悪しからず。


● 対象作品とクールの総評

 ここからがようやく本題です。上掲のアニメ6本も含めると、2017年秋クールは都合22作品を観ていました。残りの16作品を英かな混在のあいうえお順で書くと…

 【『アニメガタリズ』、『いぬやしき』、『妹さえいればいい。』、『URAHARA』、『お酒は夫婦になってから』、『キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Series』、『クジラの子らは砂上に歌う』、『このはな綺譚』、『3月のライオン(第2期)』(2クール?)、『Just Because!』、『十二大戦』、『食戟のソーマ 餐ノ皿』、『タイムボカン 逆襲の三悪人』(2クール?)、『干物妹!うまるちゃんR』、『UQ HOLDER! ~魔法先生ネギま!2~』、『ROBOMASTERS THE ANIMATED SERIES』】

 …となります。『お酒』(5分アニメ)と『ロボマス』(全6話)は特殊ですが、通常の30分アニメが20本前後というのは個人的には丁度好いと思います。冬(15本)と夏(21本>ただし30分作品は16本)はやや物足りなく、春(28本)は多過ぎる。

 また、こうして並べるとシリーズものの新作が多かったこともわかります。リメイクや過去の別作品の続編という変化球まであるので、一作目を観ていない人には厳しいクールだったかもしれませんね。「作品自体は面白そうだけど1期を観ていないしなぁ…」という理由で視聴リストに入らないのも結構ありますから。出戻りヲタのつらいところ。笑


 レビュー記事の中でも書きましたが、このクールで最も面白く感じたのは『宝石の国』です。評判も上々のようですし、CGアニメだということを考慮すれば売上的にも大健闘ではないでしょうか。記事中では3話のCGの出来を絶賛しましたが、その後の10話は更にハイクオリティで驚きました。それも同じくダイヤモンドが活躍するシーンですが、魅力的なキャラだけに制作陣の気合いも一層入るのでしょうね。

 これも過去にふれていますが、『少女終末旅行』もかなりツボな作品でした。記事では主にOP曲の素晴らしさについて熱弁しましたが、その後ED曲の魅力がグンと上昇する聴き方を発見したので報告します。冬、もっと言えば忘年会シーズンであることが幸いしたのですが、『①寒空の下②人気の少なくなった夜のビル街で③酒の入った状態で聴く「More One Night」』は、8話をフラッシュバックさせるのでトリップ感が半端ないです。笑 ここまで条件を揃えなくても、冬の夜に外で聴くだけでハッピーな終末感を味わえるのでおすすめ。

 他の作品もなかなか粒揃いの印象でした。色々な意味で冬らしい画作りが上手かった「ジャスビコ!」、連作短編であることの妙が流石の言わずと知れた人気作「キノの旅」、色彩の遊び心や完成度の高い話運びに時折驚かされた「このはな」、(外務省が定義するところの)ポップカルチャー的なkawaiiさの裏に不穏な要素が見え隠れしていたのが実に原宿らしい「URAHARA」、一見ポル産クソアニメかと思いきやキャラの葛藤描写に光るものがあると感じた「妹さえ」、この5本も毎週楽しみでした。

 

 簡単に総評を終えたところで、上掲のアニメラインナップ(22本)に関する楽曲から、気に入っているけれどレビューし損ねたものについて言及していきます。

 アニメ自体を気に入った上掲5作品の主題歌が最初のレビュー対象です。たまたまですが音楽的な好みとも一致しているので、もう少し突っ込んだアニメの感想とあわせてレビューしていきます。その後は雑多に好きなナンバーを紹介するとしましょう。

 例によって本記事に於いても見出しは全てそのまま作品名にしましたが、こうなるとPart.2だけが「カジュアルな見出し方式」で浮いてしまいましたね。アニメの名前が太字になっている方が見やすいと理解したのはPart.3からなので、結果的にPart.2だけが妙なスタイルになったことをお詫びします。

 加えて、本記事には過去の炎上マターに言及する箇所が複数存在するため、批判的な(ともすれば攻撃的な)態度を隠しきれていない節があることを注意喚起しておきます。それにつられてか、アニメや楽曲に対する表現にもきつい言葉が多く含まれている気がするので、ここまでの4記事に比べると読み手に不快感を与える可能性が高いということも断っておきます。



☆ Just Because!

 次の項で紹介する「キノの旅」の主題歌も含めて、実質「やなぎなぎ特集」からスタートです。彼女が手掛けた楽曲を軸にまとめていきます。まずはOP曲の「over and over」をご紹介。




 "記憶の君に告ぐさよなら"という冒頭の一節だけで、切ない物語を予感させるのには充分ですね。アニメの内容と厳密に照らし合わせると歌詞はあくまでもイメージだという気がしますが、疾走感を纏ったメロディとあわせて一つの青春の終わりが鮮やかに切り取られているので、主題歌としての役割は十二分に果たしていると思います。

 作編曲者が北川勝利さんであることも個人的には安心要素でした。当ブログに於いては坂本真綾さんおよびワルキューレの作品レビュー記事にてお名前を出したことがあるぐらいですが、第一次アニヲタ期にROUND TABLE featuring Ninoにハマったことがあるので、元々好みのサウンドクリエイターなのです。


behind[TVアニメ「Just Because!」エンディングテーマ]歌:夏目美緒(cv..../NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン

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 ED曲の「behind」は作中の女性陣によって歌われているナンバーですが、作詞作曲がやなぎなぎさんによるものなので、OP曲に対する据りは抜群だと言えます。解釈は割れるかもしれませんが、OP曲は男性目線/ED曲は女性目線の内容だと感じたので、その意味でも「対であること」が楽曲に深みを与えているとの理解です。

 こちらもOP曲に負けず劣らずの切ない歌詞で、恋愛に於ける微妙な"距離感"の描写の上手さに胸が締め付けられました。特に落ちサビの"この距離感で いたって/誰も叱らない 誰も気にしない"が好きで、当事者間の問題なのに第三者に視点を飛ばしてしまう感覚はわかるなぁと。

 (歌詞との兼ね合いも含めた)メロディの美しさにも特筆すべきものがあります。中でも蜃気楼のような儚さが漂うAメロの淡さは、"今振り向いたら/何もかもなくなっちゃいそうだ"という歌詞の通り、旋律自体に吹けば飛んでしまうような脆さがある点で気に入りました。サビ(とCメロ)終わりのリフレイン部に相反する"知りたい"と"知りたくない"を並べているのも、メロ自体がこの歌詞を引っ張り出してきたと思えるほどに自然で流石です。


 公式にはアップされていないので埋め込めず残念ですが、ED映像(通常の方)の素敵さもこの曲を一層魅力的にしていました。一種のフェチなのでしょうが、独りきりの冬の帰路(特に好きな人と別れた後)というのは二次でも三次でも大好物のシチュです。根底にはおそらく自己陶酔があるので他人のそれを見ても本来的には無感動のはずですが、この場合僕はキャラ全員に移入した上で評価しているのでフェチが成立します。性別が異なるなんてのは些細なことです。笑

 作品に対する感想として先に「色々な意味で冬らしい画作りが上手」という表現をしましたが、これはわかりやすい季節的な描写(雪や受験)だけでなく、循環の最後(高校生活の終わりひいては人間模様の変化)の描き方までが素晴らしいという意味です。甘酸っぱくほろ苦い恋愛モノとは言え、作品に終始漂っていた仄暗い「冬」の雰囲気が嫌いじゃなかったと、そうまとめておきます。



☆ キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Series



 15thシングルと同日発売の16th(両A面)のうちの一曲、「here and there」がOP曲として起用されているわけですが、ナンバリングシングルの同日発売は懐かしい売り方だなと思いました。しかもそれが同一クールの別作品の主題歌となると、もしかしてどちらかの放送時期がずれた?と邪推してしまいます。笑

 「やなぎなぎ特集」と銘打っておいてなんですが、この曲に関しては中沢伴行さんが作編曲を務めたナンバーであることの方が個人的には大きな要素です。「元」が付きますがI've所属の人気クリエイターとして数々の名曲を世に残した御仁で、ごく一部ではありますが過去にこの記事の中で彼の楽曲にふれているので参考までにリンクしておきます。

 イントロのシンセからして「まさに」という感じで懐かしくなる。フレーズとしてはキャッチーですが決して下品ではなく、優しく爽やかな音遣いであるところが実に中沢さんらしいなと。これは彼の幅広いトラックメイキングの一側面に過ぎませんが、たとえハードなタイプの楽曲でも一音一音に対する処理が心地好いという点では共通しているという理解なので、納得のサウンドだと評するほかありません。




 ED曲「砂糖玉の月」もA面だけあって非常に良い曲です。自分でもびっくりしましたが、ここまでに紹介した3曲を比較対象とすると、アニメで聴いた段階では最もぱっとしない曲だと思っていたのに、音源で聴いたらいちばん好みだったという意表の突かれ方をしました。歌詞もメロディもアレンジも全てが神懸かり的に美しい。

 まず歌詞ですが、どこを取っても感動的なので紹介するにあたって特定の引用箇所を絞れずに困っているレベルです。ゆえに大きくまとめてしまいますが、タイトルである"砂糖玉の月"に対する遠近感と質感の表現や、不可逆のライン上に置かれた主人公(=我々)の無常観に係るフレーズには心が震えました。サビの"届かないから美しい"と、冒頭の"小さなお別れの連続/いずれはあなたに続いてる"が、それらを端的に表していて涙を誘います。

 メロディに関しては、暗くて美しいと形容するのがシンプルで良いでしょう。綺麗な旋律の途中に、ふと絶望が顔を覗かせたような揺らぎ方をする箇所があるのが素敵。特に好きなのはBメロで、同じ旋律なのに2回目("分かって"~を1度目、"あなたは"~を2度目とする)はサビに入ったかと勘違いするほどに熱量が増しているという、この歌い分けが非常に巧みです。

 こう感じるのにはアレンジの力も大きい。何気に複雑なビートメイキングと踊るようなストリングスによって、メロディが際立っている良編曲だと思います。アレンジャーは劇伴も担当している出羽良彰さん。今まであまり意識したことのない方でしたが、調べるとMEG・坂本真綾・バンドじゃないもん!・大森靖子あたりで僕には既に耳馴染みがあったようなので、自身の不覚が恥ずかしい。

 「キノの旅」は僕の第一次アニヲタ期(2004~2007年)の時点で既にレジェンド作品だというイメージですが、きちんと観たのは今回のリメイク版が初でした。短編でお話が進むということも知っていましたが、話のひとつひとつがコンパクトにまとまっていて、且つ教訓があるというか寓話めいている点で普遍的なので、これは多くの人の心を打つのも当然だと思いました。


☆ このはな綺譚



 OP曲はeufoniusによる「ココロニツボミ」。いきなり余談ですが、OPはクレジットが縦書きだったため「ミ」を三点リーダに空目していて、暫くの間「ココロニツボ…」という謎の余韻がある曲名だと勘違いしていました。笑

 eufoは当ブログのプロフィール欄のリストB(詳細はリンク先参照)に記載していないものの、一応アルバムは揃えていますし昔から好きなユニットです。というか一時はきちんと名前を載せていました。そんなに頻繁には聴かなくなってしまったことと、未だに過去の発言が尾を引いていて素直に向き合えない(と久しぶりに表舞台で曲を聴いて思った)ので、この状態で載せ続けるのは却って失礼だと感じ、リストから外しました。

 楽曲自体は変わらずに素敵だと思います。アニメの雰囲気にもマッチしていたので主題歌としても申し分ありません。静かな立ち上がりから徐々に駆け出したい気持ちが強くなっていくようなアレンジが心地好く、メロディも綺麗。ラストの謎言語コーラスによる畳み掛けも実にeufoらしくて良かった。

 アニメは最初のうちは世界観がよくわからなかったのと、柚の純粋さを掴みきれずに情緒不安定な娘と誤認していたせいで危うく切りかけたのですが、慣れていくうちに作品の機微に気付くことが出来、最終的には良いアニメだったと思うに至りました。特に5話と8話が秀でていて、前者はエピソードとリンクした画面の色彩変化の美しさが、後者はミスリードと伏線回収が鮮やかな話の高い完成度が、それぞれ見事だったと称賛したい。


☆ URAHARA



 OP曲である「アンチテーゼ・エスケイプ」は、上坂すみれの1stEP『彼女の幻想』に収録されているナンバーです。聴けばすぐにわかる安定感だと思いますが、Part.3および4でも名前を出したORESAMAがトラックメイキングを担っています。

 曲中でテンポが変わったりメロに対して語りで呼応するようなパートがあったりと、ルールに縛られない自由な楽想がアニメの主題とも合致していたので、「URAHARA」(原宿)らしいカラフルさとポップさを兼ね備えたグルーヴィーなダンスチューンであると形容しましょう。

 いちばん好みの箇所は1番サビ終わりから2番Bにかけてで、サビで駆け足になったテンポが元に戻り、"ウラハラシック"のコーラスを巻き添えにしながら、軽い足取りに少しの迷いが滲んだような繊細な旋律を持った2番Aを経て、Bからインするダンサブルなベースによって浮足立った雰囲気に質量が与えられ、重力によって地に足が付いて踊り出すような感覚になる、このシークエンスの素敵さ加減が少しでも伝われば幸いです。

 今回はORESAMAによるトラックということでのピックアップですが、上坂さんの楽曲は毎回クオリティが高いと思っています。Part.4ではふれませんでしたが、『アホガール』ED曲の「踊れ!きゅーきょく哲学」も幻惑的で好きでしたし、春クールには彼女の冠番組も観ていたので「ヤバイ○○」もお気に入りです。今のところ他に所持しているのは1st, 2nd, 7thシングルですが、アルバムにも手を出そうかなと検討中。




 アニメにも言及しますが、『URAHARA』はもっと評価されていい作品だと思います。僕が元々原宿カルチャーに好意的だという贔屓目があるのは否定しませんが、「ポップカルチャーとしてのアニメ」を前面に押し出していたおかげで、ステレオタイプな二次元趣向のイメージから脱却したスタイルで「可愛い」を提示出来ていた点を評価したい。それゆえにボリューム層の嗜好とは重ならなかった(=過小評価になる)面もある気はしますが…

 とは言え、ストーリーは結構ヲタ好みだと思うんですけどね。1話の段階からどこか不穏な空気感があったというか、恐ろしい事態をポップに描くことで敢えて矮小化しているのは明白でしたし、実際中盤以降はヘビーな設定が開示されて険しい展開となるわけですが、なんやかんやで障害を打ち破ってハッピーエンドという王道を行くので、ふわふわした印象だけの作品だと思っているならばそれは誤解であると主張しておきます。

 フッサフサのまつげも個人的には凄くキュートな描き方に感じられて好みでしたし、エンドカードを担当した面々のラインナップからも他の作品とは趣を異にしていることが読み取れたので、このチャレンジ精神ひいてはクリエイティブ・マインドは評価すべきでしょう。Part.3でややディスってしまった『Re:CREATORS』もそうですが、たとえアマレベルでも「創作活動をしたことがあるか否か」が好き嫌いにつながるタイプの作品だった気がします。もしかしたら次に紹介する『妹さえ』も同系統かもしれません。



☆ 妹さえいればいい。



 OP曲・ChouChoの「明日の君さえいればいい。」は、単独記事で普通にレビューするかどうかのライン上に居たぐらいなので、かなりお気に入りのナンバーだと言えます。

 作詞が松井洋平さんで、作編曲がfhánaのyuxuki wagaさんというクレジットですが、両名ともPart.2にもリンクしてある『小林さんちのメイドラゴン』主題歌の記事にて馴染みがありました。松井さんに関しては、これまでにもTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDやTO-MASの名を出すことで間接的には何度か言及していますけどね。

 ChouChoさんの楽曲で今までに手を出したことがあるのは、「Authentic symphony」(2011)と「Asterism」(2016)の2曲だけというにわか以下ですが、瞬間的なメロディの美しさが映える歌声の持ち主だという認識でいます。その「瞬間」とは主にサビ始まりの部分を指しているのですが、この曲では"誰も主人公だって誰かが言ってた"のところの美メロっぷりがそれに該当し、モメンタムで言えば秋クール随一の旋律だと絶賛したいレベルです。

 歌詞も素晴らしく、小説家(クリエイター)達の成長譚としての側面が素直な言葉で表現されていると感じました。物書きが主人公のフィクションというのはどうしても入れ子構造になるので、作中キャラの心理描写として機能するのと同時に、現実で創作活動を行う人に対するエールにもなっているのが上手いですよね。「明日の君さえいればいい。」というタイトルも未来志向で良いじゃないですか。

 冒頭のアニメ総評パートでは「一見ポル産クソアニメ」と酷い言葉を出してしまいましたが、その後「キャラの葛藤描写に光るものがある」とフォローしているように、心情や行動原理に関しては丁寧に描かれていたと思うので、なかなか良い作品だったという感想を持っています。無駄に肌色が多いのは否定しませんし、テーブルゲームとお酒に関する説明には知識ひけらかし系の同族嫌悪を覚えなくもないのですが、どちらも作品の主軸には直接関係のない「彩り」なので楽しく観ることが出来ました。…我ながら厄介な視聴者だなと思います。笑


☆ アニメガタリズ



 ED曲・GATALISの「グッドラック ライラック」をMONACA枠として紹介。田中秀和さん作のトラックが好みであることは、Part.3にもリンクしたWUGのシングル記事の中で一度語っているのですが、そこで僕は田中さんを「良い意味で耳に違和感を残すのが巧い人」と表現しています。

 この曲に於いては、Aメロコーラスの"(chu chu)"やBメロの半台詞的な部分("ちょっと"や"まるっと")が僕にとっての「良い違和感」です。聴いていて小っ恥ずかしくなってしまうようなところが逆にクセなるので、この辺のバランス感覚の鋭さこそが田中さんの魅力ではないでしょうか。

 これは余談ですが、「chu」縛りでいくなら「キノの旅」の項でお名前を出した元I'veの中沢さんによるトラック「恋愛CHU!」(2001)の方が一層強烈です。これに比べたら「グッドラック~」はかなりお洒落だと思います。笑

 歌詞はお馴染みの只野菜摘さんによるものですが、"ライラック"を軸にした遊び心が満載で面白い内容です。曲名の踏韻もそうですが、"chu-lilas"に異名(リラ)を含ませたり、良い意味ばかりの花言葉が列挙されていたりと勉強になりますよね。"ウキウキウィキ 花言葉を調べた (まじか)"という表現もぼかし方が巧みで感心。


 アニメは途中まではタイトルに偽りなしで、多くの作品を知っていればいるほど楽しい内容で良かったのですが、終盤は「脚本家が全滅したのか?」と言いたくなるような超展開で、パロはあれどもギャグが薄くなってしまったので困惑しました。この展開自体が高度なメタネタというか業界パロなのかなとも思いましたが、何にせよずっとハッピーなテンションのまま終わってほしかったというのが本音かなぁ。

 ただ、終盤には個人的に気に入っている描写がひとつあって、それは最終話Aパートラストの「道の向こうからアイキャッチ画面が迫って来てAが終わる」演出です。「SCP-2614(洗剤のCM世界に入るくだり)」っぽい怖さがあってゾクゾクしました。



☆ 干物妹!うまるちゃんR



 妹SによるED曲「うまるん体操」。正直ED映像も曲自体もあざと過ぎて、全く鼻につかないと言えば嘘になるのですが、こんなにひねくれた感想を持つ人はどうやらマイノリティのようなので、ヒゲドライバーさんに寄せている信頼と日曜深夜という放送時間帯まで考慮した結果、「素直に好きだと認めろ」という脳内指令が下りました。笑

 映像も音楽もとにかく「可愛い」に尽きますね。それさえおさえていれば他に語ることもないかなという気がしますが、敢えて言うならサビのキャッチーなメロには僅かにセンチメンタル成分が入っているように感じられるので、ちょっとだけ涙腺にくるような作りになっているところがにくいと付け足しておきます。

 OP曲も嫌いではありませんが、そちらは1期の方がより好みでした。両曲ともうまるの二面性をきちんと意識したがゆえのプログレッシブなアレンジだということには納得なのですが、2期のははちゃめちゃが過ぎるという気がします。もう少し全体的にメロディアスであってほしかった。


☆ UQ HOLDER! ~魔法先生ネギま!2~



 当ブログ史上最長の5記事に跨った本企画ですが、大トリは懐かし枠に明け渡すとしましょう。ということで、作中ヒロインズによって歌われているOP曲「ハッピー☆マテリアル」を紹介します。元は『魔法先生ネギま!』の主題歌として2005年にリリースされた楽曲なので、ある意味セルフカバーと言っていいかもしれません。

 当時を知るアニヲタの中には、この曲に纏わる大きなムーブメントを覚えている方も多いかと思います。調べればわかることなのでネガティブな面にも言及しますが、某歌手の発言によってアニソンに対する偏見が顕になった瞬間でもあったので、アニソン史を語る上では無視出来ない重要な曲だという認識です。今彼がどういう考えなのかは知りませんが、もし以前と変わらぬスタンスでいるならば、アニソンがヒットチャートにバンバン食い込むようになった現状はさぞ面白くないでしょうね。

 歌い手やタイアップ側の性質(剰えリスナーの層)のみで楽曲を判断し吐き棄てるという行為は、そもそも音楽に対する反応ではないので取り合う価値もないと、冷静になれば(アニソンファンとしては)腹を立てる必要もないのですが、当時はアニソンに対する偏見や冷遇が顕著だった記憶があるので、抑圧されていたものが噴出したのだと思います。10年以上も前のことを蒸し返されているのには同情しますが、仮にSNSが主流の時代であったならばより大規模な炎上になっていたかもしれない案件ですし…という感じです。


 …と、このように懐かしいだけではなく、複雑な気持ちで向き合うことになってしまうのが心苦しいのですが、久しぶりに聴いても良い曲だという'音楽の'評価は変わりません。アニソンとして理想形のようなポップさとキャッチーさを宿したこのフレッシュなメロディは、10年以上経っても通用する普遍的なもの(=そう判断したからこその再タイアップだと思う)なので、こうして歌い継がれていくことに意義があると言えます。

 この言わば「UQ HOLDER ver.」は、アレンジが洗練されている上にボーカル陣の声質が心地好いからか、メロ自体の素敵さが一層際立つ仕上がりになっているところが好きです。特に"何が待っているのかな"の部分は、旋律自体が流麗且つ"かな"という「疑問+詠嘆」が映える切ない余韻を含んでいるので、歌詞とメロディの寄り添い方が尊いと言うほかない。2番の"受け止めてくれるかな?"も同じくです。


● おわりに

 以上、「2017年のアニソンを振り返る・Part.5/5【秋アニメ編】」でした。「2017年」と言いつつもっと過去まで飛んでしまうことも多かった気がしますが、「アニソン史」を記述したものとして少しでも濃い内容にしたかったので、今まで蓋をして見ないようにしていた部分にも敢えて踏み込んでみました。


 さて、既に2018年冬アニメは続々と始まっているわけですが、現段階で早くも買おうと思えるほどに気に入ったアニソンがいくつか出てきているので、好調な滑り出しが嬉しい限りです。通常3話までいけばどのアニメもOPとEDが出揃いますが(映像が間に合わないのはともかく)、こうやって大量の新譜に晒されている時がいちばん楽しいなと毎クール思いますね。笑

 じわじわと時間をかけて6~7話あたりで好きになるタイプや、全話視聴後に好きになるパターンもあるので、「アニソンの世界は奥が深くて面白い」という言葉でもって、全5記事のまとめと代えさせていただきます。

 アニソンの記事は勿論アニソンファンに向けて書いている部分が大きいのですが、「音楽好きだけれどアニソンには手を出していない」という層をこちら側に引きずり込めたらいいとも思っているので、この連載記事がその誘い水となれば幸いです。