恋?で愛?で暴君です! / Wake Up, Girls! | A Flood of Music

恋?で愛?で暴君です! / Wake Up, Girls!

 Wake Up, Girls!の6thシングル『恋?で愛?で暴君です!』のレビュー・感想です。現在放送中のTVアニメ『恋愛暴君』のOP曲が収録されています。

恋?で愛?で暴君です!/Girls! Wake Up

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 WUGはベストアルバムの1と2しか聴いていませんし(それも割と最近に)、アニメもちらっと観た程度でしかないので所謂にわかファンです。仙台に行った時に和菓子屋?にキャラのパネルがあったなぁぐらいの思い出しか持ち合わせていません。笑

 しかしこの記事の最後の方で書いた通り、音楽制作集団のMONACAの良さに遅ればせながら気づいたので、彼らが手がけた作品をぼちぼち集めている最中なのです。WUGもその過程で手を出したのですが、プロダクション単位で気に入ったのはI've以来なので集め甲斐があって嬉しい限り。


 参考までにベスト2枚(ディスクとしては4枚)で特に気に入った曲を昇順で5つ挙げると、「16歳のアガペー」「Beyond the Bottom (Album ver.)」「オオカミとピアノ」「極上スマイル I-1club ver.」「素顔でKISS ME」です。「太陽曰く燃えよカオス」も好きですがカバーなのでここでは除外。

 このラインナップでファンの方ならピンと来ると思いますが、田中秀和さんの楽曲が特にツボみたい。和音の使い方が独特というか、良い意味で耳に違和感を残すのが巧い人だなと思います。

 今回紹介する「恋?で愛?で暴君です!」も彼が作編曲を務めた楽曲ですが、アニメOPでイントロを聴いた瞬間「田中さんのだわ」とわかるぐらいにはファンになっています。笑 ということでこのままレビューへ突入。


01. 恋?で愛?で暴君です!



 TVアニメ『恋愛暴君』OP曲。アニメ自体は好きでも嫌いでもない感じですが、グリちゃんが可愛いのでオッケー。主人公にもう少し魅力があれば…というか未だにどういうキャラなのかよくわからないのが惜しい。ギャルゲーの喋らない主人公の如くに顔が見えないなと思うのですが、作品の設定上あえてのような気もするのでなんとも。

 ともかく、様々な理由でモテまくる青司君にアタックを仕掛けるヒロインズの心情が歌われているのがこの「恋?で愛?で暴君です!」です。作詞は畑亜貴さんなので、WUG関連ではカバーとはいえ「太陽曰く燃えよカオス」と同じクレジット(畑さん×田中さん)ですね。


 いきなりボーカルスタートですが、Cメロ始まりという珍しい幕の開け方をします。"何と何と"~をA、"ダイスキだーい"~をBとした場合の話で、この2つを分けなければBメロ始まりと表現してもいいのですが、要はプレコーラスが独立して最初に出てきているということです。この攻めた構成がまず気に入りました。

 しかしこのCを最初に持ってきたのはわかる気がします。可愛いんだけど奇妙なコード感で凄く耳に残るから。楽器隊と主旋律が一体になってリズミカルなのも強い印象を付与する要因になっていますね。

 つまりフックとして機能している…わかりやすく言えばつかみはばっちりということですが、それが歌詞の"こっち向いて"に対応しているのならば大成功だと思います。


 A~Bメロは旋律自体もノリが良くて可愛いのでめちゃくちゃツボなんですが、それを支える楽器隊の素晴らしさにも耳がいってしまいます。素敵なグルーヴを奏でていて気持ち好い。

 クレジットにきちんとプレイヤー名(Ba./Gt./Dr./Pf.&Org.)が載っていることからもわかるように、生ならではのこだわりを感じられるのがMONACAの良いところですね。メンバーにクラップを担当させているのも高評価ポイント。

 ここの歌詞は"ダイスキだーい スキは最終宣告です"がお気に入り。「確かにその通りだ」と思ったので。"ノーはノーは選べない"のところもアニメOP映像の「はい」と「Yes」の二択とあわせて笑えます。あとは細かいところだと"着々と"の歌い方がキュートで好き。


 冒頭でふれたCメロ(プレコーラス)を挟んでサビへ。サビはWUGらしい爽やかさが全開で、この曲の中では若干浮いていると思えるぐらい綺麗な旋律です。歌詞にある通り"楽園"、もっと言えば天界らしさの表現ならば文字通り浮いちゃっているのも納得。特に"ずっと(恋で)ずっと(愛で)"のところが美しい。

 2番は"ランナウェイボーイ"とか"言動不一致です"あたりの歌い方がくせになる。拗音と促音の使い方が上手。これは偏見なのですが、アニソンの2番って歌詞が適当というか…1番にあった言葉と旋律の調和はどこへ?みたいなのが多いと思うんです。笑 この曲はそうではないので好感が持てました。


 2番サビ後はロックなDメロが登場。サビが「天界」だったとしたらこちらは「冥界」パートといった趣?いや、冥界側にはヒロインがいないから違うか。最初は樒がそうなのかと思っていたけど違うっぽいし。

 とにかくこのDメロのところにはちょっとシビアな質感が加わっていると言いたかった。恋愛における生存競争の面を押し出した感じかな?楽器隊もいちばん暴れていて熱量が凄い。

 間奏後再度プレコーラスを挟んでラスサビへ。OP(TV edit.)でも最後の"どうなっちゃう? わからなーいっ"の部分は使われていますが、この締め方大好きです。楽典的にも綺麗な着地の仕方だし、就寝感が出ているのも(OP曲とはいえ)深夜アニメの曲としてはいい演出だと思います。



02. ゆき模様 恋のもよう

 c/w・1曲目は時季外れのウィンターソング。wikipediaを見たところ、今年の1月に上演された舞台版WUGで使われた曲だそうなので納得。こちらは広川恵一さんのトラックで、作詞もお馴染みの只野菜摘さん。

 広川さんの作品も結構好きです。正統派の綺麗なメロディが上手い方だなと思っています。アイドルソングとしては王道を歩んでいるといえますね。この「ゆき模様 恋のもよう」も清純さに満ちたピュアな楽曲で、まさに!という感じです。


 この曲もよく聴くと結構メロディ構成が変わっていると思います。サビの後半部("そっとまわり始めた"~)だけが冒頭で出てくるというのは別に珍しくありませんが、この後半部があるのは1番サビとラスサビのみで、2番のサビ後半だけは全然違うメロディなんですよね。

 表現を変えれば、2番だけサビ前半で終わってそのままCメロに移行しているだけとも言えますが、間が無いことや歌詞カードの書き方から判断するに、僕はサビ後半を2種類用意したのだと解釈しました。このことにより冗長な印象を与えないことに成功しているのではないでしょうか。

 単純にメロディだけを取り立ててもこの2番サビ後半(Cメロ)部がいちばん好きです。キャッチーだし、決意に満ちた歌詞とよくマッチしている旋律だと思います。


 舞台版は当然として先述の通りアニメもなんとなくしか知らないレベルですが、仙台が舞台(これはロケ地の意味)なのは知っているので、歌詞にある"街路樹を氷のモザイクが飾る下をゆく"というのもおそらく仙台を表現した一節なのでしょう。

 同じ広川さん×只野さんの楽曲で先に名前だけ出した「16歳のアガペー」にも、"嬉しくって見つめあいたい/ペデストリアンデッキで"というフレーズがありますが、これも仙台駅を出たところの風景ですよね。こういう具体的な場所がイメージできる歌詞、大好物です。

 仙台には幾度か行ったことがありますが、ああいう高架建築のことを"ペデストリアンデッキ"と呼ぶのは実はこの「16歳のアガペー」で知りました。笑 メロディのせいで区切りが独特なのもあって、この単語を知らないと歌詞が聴き取れないと思います。


03. TUNAGO

 c/w・2曲目も同じく広川さん×只野さんのトラックで、イオン東北「にぎわい東北」のイメージソングです。5:46とやや長尺のナンバー。

 タイトル/歌詞通り"つなごう"がテーマのメッセージ性の強い楽曲で、歌詞もメロディもアレンジも力強さに満ちています。2番Aの"風や光 卵や種 収穫や連鎖 めぐる季節"という歌詞が特にお気に入り。


 この曲にもメロディ/アレンジで意表を突かれました。1番サビの"手をつなごう"から続く"心をつなごう"までの間、完全にラスサビのそれ。実際にラスサビもこのアレンジなのですが、1番の段階で落ちサビっぽいアレンジの曲にはたまにしか巡り合えませんね。つまり2番サビだけがいちばんナチュラルだということになります。

 Cメロ後の間奏もストイックで素敵です。ここからまたAメロに戻る(3番が始まる)ので、"繋がりあう"というか循環している様が曲の構成からも感じられるところが巧いなと思います。


04.~06.は各曲の(Instrumental)です。



 以上、インスト除いて全3曲でした。3曲ともどこかしらで予想を良い意味で裏切る構成になっていたのが個人的には嬉しかったです。

 表題曲の01.「恋?で愛?で暴君です!」は、今期アニメOP・ED曲が一通り出揃った段階でいちばん気に入った曲だったんですが、CDで聴いてもやっぱり良いと思いました。つくづく田中さんが作る曲の世界観が好きなんだなと再認識。


 c/wの2曲は初聴ではあまりピンときませんでしたが、3周目ぐらいの割と早い段階で良さに気付けたので満足です。広川さんの楽曲はキャッチーで綺麗なものが多いと思いますが、それゆえに僕みたいなひねくれたリスナーは少し聴いただけでは「物足りない」と感じてしまうこともあるんですよね。

 しかし広川さんの楽曲はパッと聴きシンプルでも、よく聴くとかなり練られているのがわかるので、後から僕の方が浅はかだったと気付かされることが多いです。笑 「16歳のアガペー」も今でこそ大好きですが、最初は全く響いてなかったぐらいだし。



TVアニメ『フレームアームズ・ガール』 エンディング・テーマ「FULLSCRATCH LOVE.../日本コロムビア

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 ついでなので今期アニメで広川さんが手がけている楽曲をもう1つ紹介。『フレームアームズ・ガール』ED曲「FULLSCRATCH LOVE」。歌っているのは作中に登場するFAガールズで、毎話歌唱メンバーが違うというストパン方式。

 このシングルは買うかレンタルで済ますかの当落線上にいたので、「店舗で見かけたら買おう」ぐらいのスタンスでいたのですが、店舗にはアクリルキーホルダー付きの初回限定盤しかなくて買うのをやめてしまいました。通常盤があれば買ったのに。

 「FULLSCRATCH LOVE」はアレンジが広川さんらしからぬというか…最初に聴いた時はサビ後のギターリフのまま突入するAメロが攻めすぎでびっくりしたのですが、慣れてくるとこのロックアレンジも悪くないなと思えてきました。

 軸はロックなのにED映像は可愛いわ合いの手もあるわで中々の中毒性を誇る曲だと思います。"特別なあなたに"のところの詰まる感じのメロディも非常に好み。やっぱり通常盤を見かけたら買おうかなぁ。笑

 ちなみに村川梨衣が歌う同作品のOP曲「Tiny Tiny」は、広川さんの師匠である神前暁さんの作品です。流石のポップセンスで安心します。