青空のラプソディ / fhána | イシュカン・コミュニケーション / ちょろゴンず | A Flood of Music

青空のラプソディ / fhána | イシュカン・コミュニケーション / ちょろゴンず

 現在放送中のTVアニメ『小林さんちのメイドラゴン』のOP曲「青空のラプソディ」及びED曲「イシュカン・コミュニケーション」のレビュー・感想です。OP曲はfhána、ED曲はちょろゴンずによる楽曲。

TVアニメ『小林さんちのメイドラゴン』OP主題歌「青空のラプソディ」(アニメ盤)/fhana

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 今回は両曲とも配信で単独購入したためc/wやアートワークについてレビュー出来ないので、アニメを軸にまとめて記事に厚みを持たせました。

 OP曲は先月発売ですしED曲も今月8日の発売なので新譜レビューとしては随分遅くなりましたが、それはOP曲の良さに最近ようやく気付いたからです。


 折り返し地点(6話~7話)あたりで急に好きになる楽曲というのが1クールに数曲あり今回はその枠が「青空のラプソディ」だったということですが、このパターンで好きになる楽曲は所謂スルメ曲とはまた違います。

 スルメ曲はどちらかといえば地味な曲に対して使われる形容だと思いますが「青空のラプソディ」に関してはむしろ逆で、キャッチーすぎてあまり心に響かなかった楽曲の良さを素直に受け取れた瞬間好きになるというパターンなのです。

 これは音楽を多く聴く人ほど共感できるあるあるだと勝手に思っていますが、プロセスはともかくとても好きな曲になったことには間違いないので遅ればせながらレビューしたいと思います。

 今回は楽曲だけでなく映像(MV及びアニメOP・ED)にも特筆したいことが多いので、まず曲のレビューを行いその後映像について言及するスタイルにします。



青空のラプソディ / fhána

~楽曲編~



 fhánaの10thシングルで『小林さんちのメイドラゴン』OP曲。個人的にfhánaの楽曲は4thシングル「いつかの、いくつかのきみとのせかい」(2014)以来です。


 ディスコティックでご機嫌なイントロで幕開け。そのまま逸るようなクラップが印象的なAメロへ。細かく刻まれる音符がビートとよくマッチしていて、異種間交流モノのハチャメチャ感全開という趣があって非常に好みです。

 一転してBメロは音間に余裕ができて少し落ち着いた雰囲気に。歌詞も連動するように過去を遠い目で見るような視点に移行。こういう日常のほっとする感じを味わえるのも異種間交流モノの醍醐味ではないでしょうか。


 サビはなんといってもメロディが素晴らしい。キャッチーでポップなんだけどなぜか泣きたくなるような切なさをはらんだ絶妙な旋律。勿論メインメロディ自体が良いというのもありますが、ここではコーラスワークの妙に注目。

 よく聴くとサビ前の"どこへでも"から一つの長いコーラスとして機能している("uh"等を挟んで繋がっている)のがわかりますが、これが独特の浮遊感を生み、青空を駆けるドラゴンらしいイメージがより強固なものになっていて巧いなと思います。

 特に好きなのは"(なんてったってコングラッチュレーション!)"の後、続けて"nnn wow uh"と歌われるところ。歌詞にない細かいところまで作り込まれているのがよくわかるパートですし、隙間の埋め方としてもハイセンス。

 後半("ちぐはぐなコミュニケーション?"~)でメロディが一気に走り出しますが、その勢いの後に挿入されるディスコ・ストリングスのたまらなさといったらないですね。いちばんグルーヴを感じる部分なのでアニメOPで腰振りダンスさせたくなる気持ちもわかります。笑


 2番の後はそのまま雪崩れ込むようにCメロへ突入。"太陽"へ向かい急上昇するような勢いが感じられて素敵です。それに続くは最大のディスコパート。ここは完全にフロア向けなのでライブで演ったらさぞ盛り上がるでしょうね。

 このままラスサビに突入するかと思いきや間奏があったのは意外でした。ここもオーディエンス向けというかクラップやコールがやりやすそうな構成になっていますね。楽しげに暴れ回るキーボードが地味にツボです。


~映像編~

 まず「青空のラプソディ」MVについて。fhánaメンバーが躍っているというだけで面白いんですが、個人的にツボなのはkevinさんの動きのキレの良さです。笑

 CMで観るたびに髪色が明るい人の動きに目が行くなとは思っていましたが、改めてMVを観てもkevinさんだけ動きのレベルがひとつ上の次元にあるように感じたので目を奪われたのも納得です。いちばんはっちゃっけているというかダンスを楽しんでいるのが伝わってくる。

 すごくどうでもいいけどカメラを引いた時に水道橋博士に見えるというのも個人的には面白ポイントでした。笑



 続いて『小林さんちのメイドラゴン』OP映像について。本当は埋め込みたいんですが公式にはアップされていないので文章だけですみません。

 キュートでカオティックなところが癖になる中毒性の高い映像ですが、個人的に気に入っているのはフォント/パターン見本市のような内容になっているところです。

 ここでいうフォントはタイトルロゴが出るまでの"Maid"と"Dragon"の字体変更フラッシュのことを指しています。これはわかりやすいですが、様々な柄(パターン)が印象的に使われているということも観ればわかりますよね。


 イントロ~Aメロでは、トールが(タータン)チェック・カンナがドット・ルコアがボーダー・ファフニールがペイズリー・エルマがストライプをバックに登場しますし、Aメロ終わりのニューロン状トールもフラクタルですよね。このパートはキモいという声もあがっていますが、このキモさこそフラクタルの魅力だと思うんだけどな。笑

 サビ直前のパソコンから飛び出すカンナはアスキーアートということかな?サビの走るトールの残像が重なる感じもどこかで観たことあるなと思っていたら『ジョジョの奇妙な冒険』のエニグマ戦だと思いだしました。ということでここはちょっとエッシャーっぽい。

 サビはアート方面に舵が切られている気がするので、もしかしたら他のカットにも何かデザイン的な元ネタがあるのかもしれません。


 デザイン以外のところ地味に好きなのがリップシンクがきちんとしているところです。Bメロのカウントダウンはわかりやすいですが、AAカンナの口がきちんと"どこへでも"になっているところや金太郎飴エルマが"ちぐはぐなコミュニケーション?"と歌っているところも細かいよね。

 次のチューリップファフニールはわかりにくいですが、口の形がそれぞれ違うので"でも別に構わない"の順に開花していると思われます。最後に大きく咲くやつ[i]の口してるしね。

 サビのモブキャラ回転インザスカイも楽曲編でふれた腰振りダンスも観れば観るほど味わい深くて、流石京アニと賞賛を送りたいです。このOPもMVも楽曲も全て含めて"ダンス・チューン"に徹底的にこだわっているのがわかるので、ダンスをやらせたらやっぱり強いと改めて思いました。


イシュカン・コミュニケーション / ちょろゴンず

TVアニメ『小林さんちのメイドラゴン』ED主題歌「タイトル未定」/ランティス

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~楽曲編~

 『小林さんちのメイドラゴン』ED曲で、作中キャラによるユニット・ちょろゴンずにより歌われています。ちょろゴンずは、トール(桑原由気)・カンナ(長縄まりあ)・エルマ(高田憂希)・ルコア(高橋未奈美)の4人(?)組。ちなみに作曲者はfhánaの佐藤さんで、yuxukiさんもギターで参加しています。


 この曲で最も好きなのはイントロ・間奏・アウトロを担っている"パラパ パパラパ パラパッパラ"のパートです。ここだけ延々と流していたいぐらいだったので、フルで聴いてアニメED以上に長く流れるパートがなかったのは少し残念。

 フェードアウトで終わる曲というのは色々と不便だからか最近(というか2000年以降)はほとんどないような気がしますが、この曲はずっと"パラパ"~でフェードしておやすみ感醸して欲しかった。笑


 Aメロ・Bメロ共に4人のパートが均等に振り分けられてて共存感はばっちり。キャラにあわせた歌詞がきちんとキャラ声で歌われているところもアニソンらしくて良いと思います。

 そんな中で特にツボなのはBメロの"倫理なんていりませんよ"のところ。なんとなくとしか言えないけどトールの歌い方が凄く好き。基本人間を舐めてるスタンスが心地好いのかな。笑


 アレンジ面で特筆したいのはまず2番Aメロ。シンセベース?かどうかはわかりませんがビートを担っている低音が素晴らしい。2番だしED曲とはいえこの音数の減らし方は冒険しているなと感心。

 あとはCメロ後間奏のギターソロにも意表を突かれました。ギターサウンドによる癒しを入れてくるような曲だとは思わなかった(出てくるとしたらブラスセクションかなと思っていた)ので、個人の予想が外れただけに過ぎないんですが良い裏切りでした。


 サビは歌詞もメロディもひたすら優しくて癒されます。この幸せな世界観に関連して、曲のレビューからは脱線してしまいますが「今期は人外アニメが熱い」ということについて少しだけ書かせてください。ここでいう人外とは「人の形をとっていても元が人間ではない」ぐらいの意味です。

 この『小林さんちのメイドラゴン』はもちろん、前に記事にした『けものフレンズ』も『亜人ちゃんは語りたい』も『カヴリールドロップアウト』も異種間交流が主軸にある作品としてどれも人気ですよね。ガヴリールだけ毛色が違うと思いますが便宜上まとめます。

 第三種接近遭遇を望んでいる人が多いと解釈すると人間世界も愈々末期だという感じがしてきますが、今の保護主義的な世界情勢にあてられて狭い世界で狭い交流も止む無しといった風潮に呑まれそうになると、せめてフィクションでは幸せな「イシュカン・コミュニケーション」を拝みたいと思うのも自然ではないでしょうか。

 現実的に考えれば異文化コミュニケーションが相当する概念でしょうが、グローバリズムを標榜する大学教育を受けた身としては、せめてこの価値観が無駄にならない世界になればいいなという思いがあります。

 こういう意味では異種間交流アニメが受けるというのはある種希望のようにも思えますが、人間とのコミュニケーションを放棄した人が多いと解釈すると、単に逃避したい人が多いだけなのかなという気もしてくるのが恐ろしいところ。笑


~映像編~

 『小林さんちのメイドラゴン』ED映像について。これも本当は埋め込みたいんですが公式に上がっていないので文章だけで簡単に失礼します。

 タイトルの「イシュカン」は"一週間"との掛け言葉でもあるということがわかる"chorogons 7DAYS"。Bメロのゆらゆらしているちょろゴンずも可愛いし、サビのシールみたいな演出も素敵だし、OPほどじゃないにせよEDの映像にも中毒性があります。

 ここも楽曲編と同じく"倫理なんていりませんよ"のトールのやれやれ感がすごく好きです。笑



 以上です。映像込みとはいえ2曲だけとは思えないほどつっこんだ内容に仕上げました。

 特に人外アニメに関する一考は最初はもっとドン引きするぐらいの長さを誇っていたんですが、流石に脱線通り越して大事故レベルにまで話がこじれていったので全部消してエッセンスだけ残すことにしました。

 こうして色々と考えさせられたことを思うと、「実は社会派アニメだったのか『小林さんちのメイドラゴン』…」という気になってきます。笑 ちょいちょい人の闇についてふれるアニメでもあるしね。