絶対零度θノヴァティック・破滅の純情 / ワルキューレ +α(1stアルバム) | A Flood of Music

絶対零度θノヴァティック・破滅の純情 / ワルキューレ +α(1stアルバム)

 現在放送中のTVアニメ『マクロスΔ(デルタ)』の作中に登場する、戦術音楽ユニット・ワルキューレ(Walküre)の最新2ndシングル『絶対零度θノヴァティック/破滅の純情』および1stアルバム『Walküre Attack!』についてのレビュー・感想です。その前に長めの前置き(読み飛ばし可)がありますが、きちんとマクロスに繋げるので安心してください。笑

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 プロフのフリースペースでこっそり暴露しましたが、僕は数年単位のブランクを挟んで突然アニメ好きになることがあります。まあ別に隠しているわけじゃないから暴露というのもおかしいんですが、たまたまこのブログを書いていた期間はアニメ好きの周期と重ならなかったため、このブログだけ見ていたら唐突に思うかもしれません。といいつつ、今までも漫画の記事は嬉々として上げていたし、坂本真綾さんの楽曲レビューなんかもしていたので、ヒントはあったといえるかも。

 さて、坂本真綾さんと言えば菅野よう子さんと連想される方も多いのではないでしょうか。今でこそ菅野さんのプロデュースから離れてもう長い真綾さんですが、脱菅野後にも両者のタッグは度々復活していましたし、過去の曲(および関連アニメ)も人気が高いので、やっぱり真綾さんと菅野さんは切っても切れない関係だよなぁと思うわけです。そんな二人の作品の一つに「トライアングラー」という名曲があります。『マクロスΔ』の前作にあたる『マクロスF(フロンティア)』(2008)のOP曲で、同アニメの音楽は菅野さんが担当されていました。

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 プロフにも書いていますが、『マクロスF』は大好きなアニメのひとつです。マクロスシリーズは歌(音楽)も主軸の一つなのでFのCDもたくさん出ていますが、菅野作品なので全て揃えていて、昔からよく聴いていました。といっても実はアニメはリアルタイム視聴組ではなく、去年の暮れにMXでやっていた劇場版2作を観てからハマった超後発組です。その後すぐ、Amazonで7巻までのDVD(新品・初回)が破格の値段で売っていたのを発見し、一気買い(残り2巻も初回で揃えたく定価↑で購入)してTVシリーズも視聴しました。従って、楽曲だけリアルタイムで聴いていたのにアニメは後から観るという、まるでCDでしっかり予習してライブ会場に赴くファンのような気持ちでFを観ていました。真綾さんから入って菅野さんの作品に手を出しまくっていたので、菅野さんが音楽担当のアニメやドラマはほとんど後追いになってしまうんですよね。

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 『マクロスF』の放送から8年後、現在は後作である『マクロスΔ』が放送中です。作中でも同様に、ΔはFから8年後の世界。最初はキャラデザがあまりピンとこなかったのと、音楽が菅野さんじゃないということもあって、そんなにΔには期待していませんでした。けれどもそこは流石マクロス、いざ視聴してみたら面白い!キャラデザも全然嫌いじゃないというかむしろ良い。そして肝心の音楽も悪くない!『Cut』(2016, 8)での河森正治総監督「2、3話に1回新曲が出ればいいという時代ではなくなってしまった。」(p.35)の言葉通り、話が進む毎に増えていく、エピソードとマッチした良曲の数々にすっかりはまってしまいました。


 前置きはここまで。ここから、ワルキューレ『絶対零度θノヴァティック/破滅の純情』のレビューです。ワルキューレは5人組の音楽ユニットで、作中では"美雲, フレイア, カナメ, レイナ, マキナ"がメンバーですが、現実では各キャラの声および歌を担当している"JUNNA, 鈴木みのり, 安野希世乃, 東山奈央, 西田望見"がメンバーです。ややこしいので、レビュー中では基本的にキャラ名を使って書き進めていきます。

01. 絶対零度θノヴァティック



 『マクロスΔ』後期OP曲。前期OP曲「一度だけの恋なら」がかなりツボだったということもあって、正直最初はサビ以外あまりピンときていませんでした。曲としてはいいと思うんだけど、OPとしてはどうなんだろうってしばらく思っていました。しかし、何回かOPを観ているうちに、それまでバラバラに聴こえていたそれぞれのソロパートを繋いだ全体のメロディーが把握できてきて、実は多層的に練られた構成だったんだなと評価が変わりました。
 今回、CDできちんと聴いて、改めて技巧の凝らされた曲だということがよくわかりました。5人のパート分けが細かく、一人一人は短いフレーズしか歌っていないけれど、それらが重なることで絶妙のハーモニーが生まれています。メインの旋律を複数人で繋いでいくパターンに加え、コーラスが食い込む形で次に繋ぐパターンもあり、更にボーカルの位置がC, L, Rと次々パンするので、歌としてもかなりアクロバティックなんですが、この激しい切り替わりは、ライブステージ上での立ち位置の目まぐるしい変化を思い起こさせて、映像的にも縦横無尽で宇宙的だなと感じました。こういう曲だからこそ、サビの5人が揃う"超ビッグバン深呼吸ジェネシス"の部分がめちゃくちゃ格好いい。聴けば聴くほど、曲への理解が深まるほど、マスターワークだなと感じる一曲です。

02. 破滅の純情

 後期ED曲。ワルキューレ全員参加していますが、美雲で始まり、サビも美雲メインで、終わりも美雲という曲構成からわかるように、かなり美雲フィーチャー。ホーンセクションが印象的なのは前期ED曲「ルンがピカッと光ったら」と同様ですが、曲調はうってかわって、哀愁漂う、今後の展開を暗示させるような曲。情熱的なパーカッションに唸るギターソロも加わって、美雲の力強い歌声を扇情的に彩っています。
 タイトルの"破滅の純情"という言葉は、"たとえ最悪でも 未来を選べ"や"たとえ最低でも 自分を選べ"などの歌詞にも潜んでいると思いますが、最後は許しの果てに"混沌(カオス)の絶頂!"となるようなので、それぞれの思惑が交錯しながらどんどん渦巻いていくアニメの展開がどういう決着を見るのか(メタ的なことを言うと、TVシリーズで終わるのか?笑)、楽しみです。

03. 風は予告なく吹く

 Mission 19(話)特殊ED曲。作詞が坂本真綾さんなんですが、冒頭から素晴らしいです。フレイアが"30年に一度の星座が近づいてる"と歌う意味を思うと、ウィンダミア人の悲哀を感じずにはいられません。同じ時を違う時間軸で生きていることの残酷さが鮮やかに描かれていて、真綾さんの歌詞の中でもかなり好きです。カナメ・レイナ・マキナのコーラスパート"(ねえ私今生きているわ)"もかなり堪えるところがあります。
 サウンドは、ストリングスなんかはプログラミングみたいですが、バンドサウンド+ピアノの生音でしっかり奏でていて、より感情的な表現になっています。作編曲が北川勝利さんだということもあって、真綾さんのオリジナルアルバムに入っていてもおかしくないように思いました。表題の2曲に負けない名曲です。

 04.と05.は1stアルバム収録「GIRAFFE BULES」のフレイアソロと美雲ソロVer.。この曲については以降でふれているので、ここでは割愛します。06~09.は各曲のインストです。

 記事タイトルの音楽レビューは以上です。シングルですが、インストを除いて5曲も大作が収録されているので、ミニアルバムぐらいのボリュームに感じて大満足でした。2ndアルバムの発売も決定していて、もはや名盤確定ではないかと今からワクワクしています。サントラはまだ買っていないんですが、このハマりようではいずれ買いそう。「クラゲ音頭」ちゃんと聴きたいし、ハインツの風の歌も憎いけど欲しい。


 今後書く時期を逸しそうなので、ついでにワルキューレ1stアルバム『Walküre Attack!』もレビューします。全曲レビューではなく、抜粋で。

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 そっちのアタックか!といいたくなるような熱いジャケ。セールス的にも大好調で、期待を裏切らない名盤です。



 中でもいちばん好きなのが、07.「AXIA ~ダイスキでダイキライ~」。作中ではMission 9,10で印象的に使われていた一曲。ワルキューレに美雲が加入する前、カナメエース時代の曲で、メッサーのブレスレット型プレイヤーに唯一入っていた、彼にとって救いの曲。
 9, 10話のエピソードは悲しい死別なので、歌詞もそこはかとなく死の匂いを感じさせるものになっています。サウンドは、切なさを纏ったストリングスから物悲しく始まりますが、全体的にはキックがよく効いた疾走感のあるビートの曲です。そこにシンセ, ピアノ, ストリングス, アコギ等が重なって、より一層切なさを駆り立てる音作りに。サビのマキナとレイナのコーラスも地味にいい。メロディーは、かなり主観的な説明になるのですが、一昔前感があるといいますか、"アイドルが歌う、片思いや失恋がテーマの切ないタイプの曲"らしさが溢れる旋律ですごく好みです。アニソンにはいくつかあるのですが、こういうタイプの曲を狙って集めたいと日々思っているくらい。

 1stシングルで、前期OP曲の02.「一度だけの恋なら」と前期ED曲の10.「ルンがピカッと光ったら」(アルバムでは別Ver.)も、当然ながら素晴らしいです。
 02.はワルキューレらしさというか、歌い手が5人居るということを上手く活かしていると思います。それぞれのソロと複数名が重なるパートが、規則性を持たせつつも目まぐるしく入れ替わるあたり、高速の戦闘と歌で激しく画面が切り替わるマクロスらしさを強く感じます。特に好きなのがAメロで、1番のフレイア→カナメも2番のカナメ→フレイアのどちらの順でも、歌詞・メロディー・歌声が見事に調和していてゾクゾクします。次のBメロ、美雲・フレイアのツインに他3人がコーラスにまわるところもいい。



 10.はこのアルバムの中では異色というか、一応ワルキューレ全員参加しているけれど、タイトルからもわかるようにほぼフレイアの曲。短命であるウィンダミア人だからこそ目一杯前に進もうという健気さと、そんなことなど感じさせない普段の天真爛漫さが両立している、これぞフレイアの歌って感じ。歌・声担当の鈴木みのりさんは、マクロスの歌姫を選ぶオーデションで見事勝ち抜いて、フレイア役がデビューという作中とリンクするような登場ですが、彼女の声、いいですね!幼いけれど芯がはっきりある感じで。しかも歌も上手い。Fのランカ役の中島愛さんも同様の登場でしたが、初々しいけれど味がある歌声の持ち主を見出す慧眼には驚かされます。ラスサビコーラスの"huh huh"がツボ。

 04.「不確定性☆COSMIC MOVEMENT」もかなりお気に入り。アニメの内容上、"戦術"音楽ユニットとしての側面が強い曲が多い中、この曲は"音楽"のほうの比重が大きい感じで、躍り出したくなるグルーヴ感に満ちていてグッド。こういうハッピーな楽曲が"不確定性"という題を冠しているのも、幸せの不確定性を思わせて好きです。

 他にも、アルバムを挟むかたちで収録されている01, 12.「恋! ハレイション THE WAR」は、ワルキューレの世界観をゴリゴリに提示してくる、始めと締めに相応しい良曲。03.「ジリティック?BEGINNER」は、擬態語だらけの歌詞にキュートなサウンド+所々ピポパポアレンジで、可愛らしい外見とは裏腹に電子戦とメカニック担当のレイナとマキナらしい一曲。05.「僕らの戦場」や08.「GIRAFFE BLUES」など、劇中歌としてガツンとインパクトのあった名曲達も収録されていて、層の厚さを実感します。

 以上、リリースの順番と前後してしまいましたが、1stアルバムのレビューでした。2ndシングルのとあわせてかなりのボリュームになってしまいましたが、今後アニソンもレビューしやすくするために、マクロスに先陣を切ってもらいました。

 アニメの内容まで深くふれると更に長くなってしまうため、この記事では最小限にとどめましたが、一点だけふれるとしたら、"ここからミラージュの逆転はあるのか?"は非常に気になります。別にミラージュが悪いわけじゃないと思うんだけど、もうハヤテとフレイアの間に入る余地ないじゃん…ってくらい二人の世界出来上がってますよね。短命設定やハヤテ父絡みで、もっとこじらせてくるんだろうか。でもやっぱり、ミラージュには申し訳ないけどハヤテとフレイアを応援しちゃうな~。
 と、アニメにも少しふれてこの記事を終わります。


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