ぼなぺてぃーと♡S | デタラメなマイナスとプラスにおけるブレンド考 / ブレンド・A | A Flood of Music

ぼなぺてぃーと♡S | デタラメなマイナスとプラスにおけるブレンド考 / ブレンド・A

 ブレンド・A(ぶれんど・えーす)による両A面シングル『ぼなぺてぃーと♡S / デタラメなマイナスとプラスにおけるブレンド考』のレビュー・感想です。現在放送中のTVアニメ『ブレンド・S』のOP曲/ED曲を収録したディスクになります。

ぼなぺてぃーと(ハート記号)S/デタラメなマイナスとプラスにおけるブレンド考/ブレンド・A

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 アーティスト名のブレンド・Aというのは、作中のメインキャラのCVを担当している声優陣からなるユニットのことで、和氣あず未・鬼頭明里・春野杏の3名がボーカルを務めています。上のジャケ写にあわせて一応キャラ名も併記すると、桜ノ宮苺香(中央)・日向夏帆(右)・星川麻冬(左)がメンバーです。

 深読みによる補足:よくある「キャラ名(CV:声優名)」というクレジットのされ方ではないので、作中キャラが歌っているという体ではないのかもしれません。…と言うのも、OP映像では当該の3名+後加入の2名の都合5名で歌っているような感じなので、キャラ名で書くと映像との整合性に疑問符が付き得ると推測したからです。声優名のみなら歌と映像を切り離せるので無問題ということですが、「何言ってんだコイツ」と思われた場合はスルーしてください。笑




 『ブレンド・S』は今期のきらら枠ですね。原作は全く知らないのでアニメで初見組ですがそこそこ楽しく観ています。散々言われているでしょうが『WORKING!!』っぽいので入りやすかったのかもしれません。きらら系にしては珍しく男性キャラもメインなのが新鮮で良いと思います。

 内容は「属性」特化の喫茶店コメディといった趣。属性としてなら苺香のドSっぷりが一番ツボなんですが、単にキャラの好みで言えば麻冬がいちばん好きです。妹属性云々は関係なく、素の冷静な感じからキッズアニメ好きという意外な一面、或いは成人らしからぬ容姿というギャップにグッときます。笑


 アニメの話はそこそこに早速楽曲レビュー!…といきたいところですが、CDのパッケージデザインが中々凝っていて良かったので、先にそれらを紹介することにしました。一部はネタバレ回避で詳細をぼかしておきます。

 まず外側のケースですが、所謂スリーブケース(二/三方背)ではなく特殊ボックス仕様になっています。突起と切込によって閉じれるようになっていて、その接合部の上には丸いシールが貼ってあるという、開封の楽しみがあるデザインです。

 開けると内側のケース(普通のプラ製のやつ)がお目見え。すると今度は歌詞カードの形が凝っているとわかります。おそらく紙ナプキンの形を模しているのだと思いますが、しっかりと喫茶店要素が取り入れられていますね。

 最後のお楽しみはジャケ裏(内側ケース裏面)のイラストです。表の絵=ジャケ写(冒頭のAmazonリンク参照)は当然外側のケースに描かれているわけですが、この絵を後ろから見た図;つまり3人の後ろ姿がジャケ裏には描かれています。表の絵をよく見るとわかりますが、全員何かに腰掛けているんですよね。その「何か」の答えがそこにはあるということです。笑


 側の処理は粗方終わったので、ここからは肝心の中身を見ていきます。…と言いつつ「きらら系アニメの主題歌について」という外堀からレビューを始めてしまったため、依然間怠っこいとは思いますがお付き合いください。曲の中身に具体的に言及していくのは、2つ目の埋め込み動画(サムネがドSのやつ)以降です。

 なお、以降で何度も「きらら系アニメの主題歌」と書くと文字数を食ってしまうので、「きらら楽曲」とシンプルに表現します。


01. ぼなぺてぃーと♡S

 注意:1曲あたりに割いた文章量としては過去最高レベルに長くなっています。しかし僕はこういう楽曲(たかがアニソン/萌えソングと誤解されがちな曲)こそ、細かく分解することでその良さを伝えるべきだと考えているので、ドン引きされようが構わず書いていきますね。笑



 『ブレンド・S』OP曲。きらら楽曲らしいドタバタ感のあるナンバーだと言えます。しかし実を言うと、初めて聴いた時はCDを買おうと思えるほど気に入ったわけではありませんでした。

 「楽しげで良いけどレンタルで済まそう」程度の認識から、なぜ購入するまでに至ったのか?…という観点で曲の魅力に迫っていこうと思います。

 弁明:僕は時々「レンタルで済ます」と一見ネガティブな表現を使いますが、これは僕の中では「結構気に入った」というポジティブな意味合いです。音源として聴く価値ありと踏んだことの証左なので、そもそも琴線にふれなかった曲はレンタルすらしません。当たり前のことを書いている気がしますが、一応の予防線でした。


 当ブログに於けるきらら楽曲のレビュー記事は、『うらら迷路帖』OP曲のもの以来です。リンク先の中でも書いていますが、この曲は「初聴時からガツンと来た系」でした。

 曲調やジャンルを問わず、きらら楽曲にはこのタイプがいちばん多いと思っています。2016年のアニソンよろず記事の中でも、『あんハピ♪』OP/ED曲や『ステラのまほう』OP曲/ED曲の名前を挙げていますが、何れも聴いてすぐに気に入りました。他には『ひだまりスケッチ』歴代OP曲、『キルミーベイベー』OP/ED曲、『幸腹グラフィティ』OP曲も僕の中ではこのカテゴリです。

 次に提示したい類型は、所謂「スルメ曲タイプ」です。これは完全に個人の嗜好によるものなので異論反論当たり前だと思いますが、『ご注文はうさぎですか?』OP曲、『NEW GAME!』歴代OP曲、『きんいろモザイク』劇場版ED曲は僕の中でスルメ楽曲に属しています。

 何れもキャッチーには違いないのですが、繰り返し聴くことで作り込みの深さに気付き一層気に入った楽曲群とでも言いましょうか、伸びしろが大きいという点で前者とは異なるという認識です。個人的且つ感覚的な説明で良いならば、ピアノオンリーでアレンジしたくなるような楽曲はスルメタイプのことが多い気がします。


 きらら系作品を全て観ているわけではありませんし(上掲の作品群にすら観てないものが複数ある)、好きな曲しか挙げていないので随分と歪な分類に映っているかと思いますが、この「きらら楽曲に関する一考」を態々書いた理由は、本作「ぼなぺてぃーと♡S」は「ガツンと来た系」でも「スルメ曲」でもない新たなタイプの楽曲だと思ったからです。

 「ガツンと来た系」でなかったのはレビュー冒頭で書いた通りですが、結果的に時間をかけて気に入ったのなら「スルメ曲」なんじゃないの?という疑問は生じて当然かと思います。しかし「伸びしろの大きさ」;換言すれば「スルメ曲の予感」を感じていたわけではないので、これを僕の中で「スルメ曲」とするのは抵抗があるのです。

 じゃあ「ぼなぺてぃーと♡S」の魅力は何なんだ?お前にとってどういうタイプの曲なんだ?と問われれば、「加点方式によって評価が上がったタイプ」と表現出来ます。細かいツボが積み重なることで、「あれ?もしかしてこの曲かなり好きなんじゃない?」と思うまでに至ったという意味です。笑

 最初はレンタルで済まそうとしていたことからわかるように、曲全体として見た場合には「結構気に入った」のレベルにとどまるのですが、細かく聴いていくと「ここのメロディ/歌い方最高!」と思えるような箇所が多い。…とするのが感覚的な理解ですかね。




 ということで、以降ではその数々のツボを曲の頭から詳細に解説していきます。その際、上で示したような「加点」に該当する部分には、文章の前に【+P】と表示することでわかりやすくしておきました。要するに「ツボだった箇所マーカー」というわけですね。ではスタート。


 作品名『ブレンド・S』または喫茶店名「スティーレ」に掛けてか、[s]始まりの英単語コールで楽しく幕開け。"Sadistic"や"Sister"など属性にそのまま対応しているものもあれば、"Smile"や"Surprise"など無難なものもありますね。紙の辞書を見ればわかりやすいですが、イニシャル[s]の英単語が最も多いため、[s]で頭韻を踏むのは定石と言えるでしょう。

 豆知識:昔気付いたのですが、なぜか味に関する語は[s]スタートが多いです。歌詞に出てくる"Sweet"(甘い)もそうですが、他には'sour'(酸っぱい)・'salty'(しょっぱい)・'spicy'(辛い)が挙げられます。また、所謂「うま味」に近い単語は'savory'であるためこれまた[s]なんですよね。日本語でも「酸っぱい」「しょっぱい」「渋い」「食」なんかは[s]始まりですが、不思議な普遍性を感じます。


 【+P】 ブラスによるご機嫌な前奏はサビの旋律を流用しているパターンになっていますが、こういうアレンジは大好物です。曲に疾走感が生まれますし、サビメロを馴染みやすくするという意味でも親切設計だと思うから。

 作編曲者はy0c1e(ヨシエ)さん。アニソンクリエイターとしてよくお名前を見かけますよね。曲のクレジットでは「Programming & All Other Instrumental」と編曲者にありがちな表記のされ方ですが、バンド隊+ピアノにはそれぞれ異なるプレイヤー名が記載されていて、生音の艶っぽさを打ち込みで補助しているという僕が好む編曲スタイルだと言えます。


 【+P】 Aメロは音の隙間(ミュート)の使い方が巧いです。説明のため歌詞に「|」を挿入して引用しますが、"さあ|扉を開けて|未知なるパラダイス|/体験しよう おいでおいでYOU"の部分は、メロと演奏が一体となって短いセクションが積み重ねられていくので、短いミュートで焦らされるのも含めてワクワク感の高まるアレンジだと思います。

 "体験しよう"と"おいでおいでYOU"の間には「|」を書きませんでしたが、ここは逆に間が無いのが良いからです。続いてドラムロールが入ってジャジーなピアノが主張してくるという、今度は逆に隙間の埋め方にこだわりが窺えるような展開になるため、ミュートがくどくなる前に止めているところが流石プロだと評します。


 【+P】 Bメロはボーカル陣の歌い方が癖になります。特に最初の"くーるんくーるん"~"当店自慢のフレイバー"のところが。MVから判断すると、春野さん→和氣さん→鬼頭さん→春野さんの順に歌い手が交代しているようですが、特に春野さんの耳に残るアニメ声が素晴らしい。

 そんな彼女が歌う"当店自慢のフレイバー"は、歌詞を見るまで「縦縞のフレイバー」に空耳していました。それだと歌詞の意味が不明なんですが、音源でもそう歌っているようにしか聴こえません。笑

 逆にこれは音源で聴いて気付いたのですが、1回目は"くーるんくーるん"で2回目は"ぐーるんぐーるん"という、清濁の移行があったんですね。ここの鬼頭さんの"ぐーるんぐーるん"の歌い方が最もキャラ声に近いと感じたので、声優として上手だなという印象です。


 サビは先述の通り前奏部と一部が同じという立ち上がりを見せるので、初聴でも聴き易くなっているところが技巧的ですね。跳ねたドラムとメインメロディに追従するブラスが非常にポップで、アニソンらしいハッピー感に満ちていると言えます。

 【+P】 その弾けるような明るさから少しだけコミカルな印象が加わる、"愛情マシマシ 煩悩ナデナデ"の部分がサビの中では最もツボです。OP映像の可愛さも要因のひとつですが、バックのピアノの暴れっぷりや春野さんの変な声(誉め言葉)再びで、畳み掛けられる感じが堪りません。笑

 【+P】 サビ後半も素敵です。特に"Bouno Bouno ブレンドしたい"の部分は、跳ねた音符が中心のこの曲の中では浮いているようすら思えるほどの美メロなので、ギャップにやられました。和氣さんの甘い歌声がよく映えているパートでもあります。


 ここまでがアニメで使われていた1番に相当します。【+P】が5つ登場していますが、最初からこの全箇所を気に入ったというわけではなく、アニメで繰り返し聴いているうちに「このパートいいな」と思ったり、「今回はここのこだわりに気付けた」と思えたり…という変遷を経ているため、まさに「加点方式によって評価が上がったタイプ」なのです。

 この説明のためだけに登場させた【+P】システムですが、フルで聴いて2番以降もかなり作り込まれているナンバーだとわかったので、引き続き「ツボだった箇所」には【+P】を登場させたいと思います。


 【+P】 1番が終わってそのまま2番にいくかと思いきや、ここでCメロが登場し意表を突いてきます。間奏部に半台詞的メロディが載っているだけと考えればCメロとしなくてもいいかもしれないレベルですが、表題の"ぼなぺてぃーと♡"が登場するパートなので独立させた次第です。

 ここはピアノのグルーヴィーさと、何らかの膜鳴楽器のものと思われる音が醸しているトライバルさ、そして囁くようなキュートなボーカルが心地好い、どちらかと言えば大人なサウンドのパートなのですが、最終的に"千客ばんばんらーい!"と勢いで持っていく感じの落差が素敵と言わざるを得ない。笑


 【+P】 そのまま雪崩れ込む2番Aは、最早旋律やアレンジが1番とは全然異なるので便宜上Dメロとしますね。Cで出てきた膜鳴楽器が伏線になっている気がしますが、サンバっぽいというか少しラテンらしさのあるリズミカルな編曲で、お祭りの雰囲気が出ています。

 サンバとラテンを同一視すると音楽警察(一家言ある人の意)から怒られそうですが、ここでは「日本人が脳内で想像し得る当該地域の音楽っぽさ」程度のゆるい意味だと思ってください。


 Dメロが終わると普通にBメロに復帰します。続く2番サビも大きな変更点はなく安定。中途半端な位置でお名前を出しますが、作詞はアニソン界ではお馴染みのこだまさおりさんによるものです。2番の歌詞も含め、流石熟れているなという感じ。

 2番後は再びイニシャル[s]コールパート。イントロには無かった英単語も登場し、"Super Girl・We are スティーレ!!"と高らかに結ばれ、アッパーなギターソロが登場するという、実にアニソンの間奏らしい間奏です。笑


 【+P】 しかし続くラスサビ前のプレコーラス部は構成が凝っています。並の曲であればここには新たなメロディ(Cメロ/大サビに相当するもの)が来るか、もしくはBメロが再び出てくるというのが定番でしょうが、ここで出てくるのは意外にもAメロの旋律なのです。

 ただAメロがそのまま出てきているというわけでもなく、後半では旋律が変化しBメロ終盤のものと混ざっていくという複雑な展開を内包しています。結果的に[A+B→ラスサビ]という流れになっているため、感覚的には「ここから3番」とするのがわかりやすいかもしれません。表現の仕方はどうあれ、このプログレッシブさには脱帽です。

 ラスサビは歌詞こそ1番とほぼ同じですが、メロディもアレンジの勢いも歌詞通り"マシマシ"な感じになっていて、ベタですが華麗な閉じ方だと思います。


 冒頭の注意書き通りの長文ですが、簡単にまとめると【+P】が8箇所もある「ツボだらけの曲」だったということになりますね。「人がひとつの曲をどのようにして好きになっていくのか?」を詳細に記述した面白文章として貴重なのではないかと、自虐と自賛を兼ねた言葉で〆ます。笑



02. デタラメなマイナスとプラスにおけるブレンド考

 A面2ndは『ブレンド・S』ED曲。ボーカルは01.と同じくブレンド・Aの3名。アレンジは意外とロックしていて激しい側面もあるように感じるのですが、きちんとED曲らしい落ち着きも兼ね備えているという不思議なナンバー。

 作編曲者は山田高弘さんで、01.と同じく編曲者の名前が「Programming & All Other Instrumental」にもクレジットされているパターンですね。山田さんもアニソン・声優楽曲ではお馴染みの方で、個人的にはμ'sの「Snow halation」の作曲がベストワークだと思っています。

 長くて印象的な曲タイトル及び作詞は、01.でもお名前を出したこだまさおりさんによるものです。この曲ではコーラスにも参加なさっています。


 メロディで最も気に入っているのは、Bメロの"わたしはわたしを知らない"の部分です。旋律に宿っている切なさが堪らなく、流石「スノハレ」の作曲者だと思わずにはいられませんでした。こういう綺麗な泣きメロが上手な方は、EDソング界で重宝されることでしょうね。

 歌詞もBメロのものがお気に入りで、2番の"はみ出して ひっこんで わたしはわたしを知るの/安全なボーダーラインを まだ目で追ってしまうのは/慣れてないから"というフレーズには、いじらしく素直な思いが反映されていると感じたのでグッときました。「属性」と絡めた表現でもあるというのが、作品に寄り添っていて好感が持てます。



03.~04.は、01.~02.の<Instrumental>です。


 以上、インスト除いて全2曲でした。01.があまりにも長くなり過ぎたので02.は短めに済ませてしまいましたが、タイプの異なる両A面シングルとしてバランスが取れていて良いと思います。中身についてはパッケージも含めて散々語り尽くしたので、これ以上書くことはありません。笑


 最後に一応DISC 2(Blu-ray)にもふれておきますが、01.「オープニング映像」、02.「ノンクレジットエンディング映像」、03.「ぼなぺてぃーと♡S」MUSIC VIDEOが収録されています。03.はCDレビューの01.のところで埋め込んだ動画のフルバージョンです。

 01.のOP映像だけ「ノンクレジット」ではないのは、スタッフクレジットまで込みでひとつの作品として成立しているタイプのOPだからでしょうね。タイポグラフィ的な工夫が凝らされている作品は、文字を排してしまうと味気が無くなってしまいますから。

 普段であればこれら映像についても詳しく見ていくところですが、これ以上記事を長くするのもアレなので割愛します。笑 ある程度予想はしていたのですが、ここまで長くなるとは思っていませんでした。