
2023年、夏、沖縄 ~Every Trip Has A Soundtrack~ その1
趣旨説明:旅行記+音楽レビュー
お久しぶりの更新で師走になってしまいましたが、季節外れ上等で過ぎ去りし夏の思い出語りをします。病み上りを経て母の体力もだいぶ回復しコロナ禍に伴う制限もなくなったので、9月9日から16日まで家族で沖縄へ行ってきました。沖縄旅行は幾度も経験済みながら一週間以上の滞在は最長で、リベンジ消費のマインドに後押しされて「高・遠・長」の傾向に沿った形です。
更新が遅くなった点に関しては、ネット離れを起こしていることとは別に理由が二つあります。一つは本企画のオチとなりうる出来事の詳細判明が11月上旬だったから、もう一つは10月下旬に酷い帯状疱疹を発症したからです。10月半ば過ぎから書き出せばオチをタイムリーに付けて11月の頭にはアップできると踏んでいたのに、予想外の病魔に苛まれてブログどころではありませんでした(どちらの顛末も最後に改めてふれます)。やがて年末の足音が聞こえ始めて執筆を後回しにした結果、12月も中旬になってようやく「その1」が完成した次第です。
単に旅行記を連ねるだけでは音楽ブログの名が廃ると意気込み、随所に音楽レビュー要素を盛り込んだのも遅筆に拍車をかけたけれど、この融合こそが僕の展開したいことの趣旨であると宣言しておきます。旅の空にあって相応しいBGMだったり当座のトピックから連想ゲームでこじつけた楽曲だったり、邦楽・洋楽・アニソン問わず雑多に紹介するスタイルです。
【追記:2024.1.17】 「その4」まで全てアップし終えた後に目次記事を作成しましたので、訪問先の名称や言及した楽曲の情報を取り敢えず一覧で見たいという方は上掲リンクカードにアクセスしてください。 【追記ここまで】
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例としてMr.Childrenの「1999年、夏、沖縄」(2000)を先駆けに、記事タイトルが同曲に由来するのを明かすところから始めましょう。期間限定としつつも3年以上公開され続けている下掲のライブは2017年のもので、曲前曲中のMCに照らして思い入れの深さが窺える特筆性ありのロングプレイです。
『B-SIDE』(2007)のセルフライナーノーツで桜井さんがお名前を挙げている通り、「吉田拓郎さんのテイスト」が確かに感じられます。曰く「言葉に歌わせる」で、それは純粋に歌詞の文章量が多いところや派手な展開を避けた楽想からも得心のいく形容です。プロテストソングとするほど痛烈ではないにせよ敗戦国の悲哀にフォーカスした書き出しと、ヴァースとコーラスが表裏一体で音運びというより節回しと表現したい旋律性の絞り具合も加味して、フォークの精神性をバンドサウンドに落とし込んだミスチルらしい一曲と言えます。音楽的な琉球らしさもその音階で以てリフに担わせる抜かりのなさです。
"僕が初めて沖縄にいった時 何となく物悲しく思えたのは/それがまるで日本の縮図であるかのように アメリカに囲まれていたからです"とあるように、過去の旅行に於いてはそれを実感できる場所(e.g. 金武町社交街, 嘉手納基地周辺施設[道の駅かでな・嘉手納マリーナなど])、或いは沖縄戦の苛酷さを今日まで伝える場所(e.g. ひめゆりの塔, 旧海軍司令部壕)に足を運びました。しかし今般はレジャーないしエンタメに重きを置いた旅をしたため、以降にイデオロジカルな語り口を期待もしくは警戒した方に向けては、そういう内容に非ずとエクスキューズしておきます。似たようなテーマ性の楽曲としてサザンオールスターズ「平和の琉歌」(1998)を例に取っても、本土・内地の人間の手に成る沖縄視点の言葉はコントラバーシャルなので深くは立ち入りません。
アメリカつながりで記事サブタイトルの元ネタにもふれますと、これは米国人作家のJodi Picoultによる小説『Sing You Home』(2011)から、"Every life has a soundtrack."を捩ったものです。ここのlifeをtripに置き換える引用は英語圏に一定数見られるため、ネイティブ的にも違和感は少ないだろうと期待します。…と、初出に敬意を払いつつ実は個人的な情報源は別にあり、スペースシャワーTVのSTATION IDで僕はこのフレーズを知って惹かれました。ROTH BART BARONの「Ubugoe」(2021)が使われている『Joy, anger, sadness, and amusement.』がいちばんのお気に入りなので埋め込んでおきます。
Day 0:旅行前のこと
早速沖縄へ!と言いたいところですが、今回に限って東京に前泊しなければならない事情があったため、その日のことを書くついでに旅行前の心構えについて語らせてください。家族の大病とコロナ禍をひとまず乗り越えて久々の本格的な旅行に期待と不安が入り混じっていた折に、DAPのランダム再生という偶然により我が意を得たりと思わせてくれた楽曲がありました。それはB'zの「さまよえる蒼い弾丸」(1998)です。
"風の強い日はアレルギー そんなのかまっていられない/無菌状態に慣れ過ぎ みんなあちこち弱ってる"の立ち上がりは、そのまま病理的な意味でも精神性の話としても2020年代の人類には殊に刺さるのではないでしょうか。ここ数年の免疫獲得機会逸失のせいか目下種々の感染症が流行していること然り、燻っていた戦争の火種がいざ燃え上がるとこうも心は無防備かと思い知らされること然りです。なればこそ"飛びだしゃいい 泣き出しそうな 心を蹴って"で身も心も外に出すことが肝要で、"旅すりゃいい 僕はさまよう 蒼い弾丸"と無軌道な若さで風を切ってこそ得られる強さがあるのでは…否、あったのではと想起を迫られました。
イントロから迸る灼熱感に資するシタールの空間演出力が鮮やかで、当ブログ内を同楽器で検索した際にコロケーションを見せるオノマトペが「ギラギラ」または「ジリジリ」であるのと同様に、一気に渇き切った世界へと意識を飛ばしてくれるサウンドスケープです。そんな熱風荒ぶ景色を征くに相応しいのはハードロックしかないよなと言わんばかりの、即ち源流にあるブルースをエレキとシャウトの絡み合いでマッシブに敷衍したプレイにどうしようもなく滾ります。余談ですが当ブログでビーズの楽曲を取り立てるのは2019年以来で、その際に「今までバラードばかりレビューしているから次はロックなのを(大意)」と書いたことに沿えたので何よりです。笑
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ここからが東京での前泊と相成った9月8日の話で、その原因は羽田空港の駐車場を8日間も予約できなかったことにあります。過去の経験から周辺の駐車場には信を置けず空港一択を前提としていても、従前の3~5日分なら確保は容易でした。しかし一週間以上はさすがに難しく、旅行需要復活の煽りか多客期間を過ぎても依然争奪戦で、予約カレンダーに期間分の空きが生じる瞬間を終ぞ見ず諦めモードに入ります。こうなると現地に乗り込んで場所を押さえるしかなく、当日朝ですら満車の可能性も混雑情報を見るにあり得たので、前日夜で安全マージンを取ることにした次第です。甲斐あって無事に駐められ一安心、荷物もトランクに入れっぱなしで空港までのバス移動が身軽になりました。
どうせなら前泊にもエンタメ性をと欲張りまして、泊まったのは『変なホテル 東京 羽田』です。早くからICTを積極的に活用していた先見の明とフロントにロボットのインパクトで有名なところで、その独自性は予てから知っていましたが利用は初でした。真新しさで話題だった頃に比べるとコロナ禍を経て人手不足が顕著な現在延いて未来では、この種のホテルもスタンダードたりえますよね。
そんなテクノロジーの進化と利便性の向上に関して敢えてディストピア的視座を持ち込むなら、紹介する一曲は吉田拓郎「30年前のフィクション」(1990)で決まりです。先にアーティスト名を出している、歌詞に"恐竜"と"ロボット"と"ホテル"が出てくる、しかも2番の書き出しは「さまよえる~」のそれに通じるところがある…と、伏線回収的な選曲センスを自画自賛したいと思います。笑
話の流れで「30年前の~」を思い付く前は「ホテル」をキーに、『THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS』の楽曲「Hotel Moonside」(2015)をピックする予定でした。今日までに密かに執筆した文章がこの記事に追記の形で存在し、そこで同曲にふれていますよとのお知らせがしたかったからです。井上拓さんの白眉っぷりを強調したくてプリティーシリーズの特集記事内に展開したアイマスのリミックス集語りという込み入った切り口なので、変なホテルが過去にはアイマス5ブランドとの;今後にはシャニマスとのコラボ宿泊プランを用意していることに託けて導線を増やしておきます。他にも『葬送のフリーレン』とのコラボルームや「推し活応援ルーム」なるカスタマイズ可能なお部屋もあり、オタクフレンドリーなところが好感触です。それぞれ開催場所が異なるため詳細は要検索。
話を二次元趣味に寄せまして、言うて前泊なので明日に備えて寝るだけの中それなりに見出したアニオタ的な楽しみ方は、備え付けのプロジェクターによるアニメ鑑賞です。23年夏クール金曜深夜のラインナップから、本当は『デキる猫は今日も憂鬱』で諭吉のデカさを大画面で堪能したかったのですが、3時近くまで起きていては寝不足不可避でED主題歌題よろしく「破壊前夜のこと」(2023)になってしまうため、『七つの魔剣が支配する』のOPだけ観て寝ました。次の機会があればレンタルマンガコーナーも利用したいと思います。
Day 1:海洋食堂 ~ 新原ビーチ ~ 国際通り
当時の心境としても本記事の構成としても、久々の雲海を眼下にお待ちかねの沖縄です。前月(8月)は厄介な進路で多くの旅行者を長期間足止めした台風6号に始まり天候不順の記憶が新しく心配だったけれど、今般の日程に於ける懸念は出発時の台風13号ぐらいで以降の予報は基本的に晴れで安堵していました。実測を『WeatherEye』で振り返りますと(外部リンク)、9~11日の晴→雨はいわゆる「片降い(カタブイ)」で体感的には終日晴れでしたし、12~15日は文句なしの晴れ(13日のみ晴→曇)、16日のみ雨勝ちなのはその通りだったと概ね納得です。
レンタカーの手続き後には昼食時、まずは腹拵えと海洋食堂に赴きました。ここは島豆腐で有名な定食屋さんで、その趣は観光客向けというよりは地元民向けです。この時も僕たち以外は皆ウチナーンチュ*1の佇まいで、徐に「中身ちょうだい」とタッパー持参で来たおばぁが最もローカル度の高かった存在と評します。ヤマトンチュー*2丸出しの我々は大人しく「ゆしどうふそば」を注文しました。優しい味わいでここまでの移動疲れがじんわりと和み、胃腸に負担がかからないのでこれからの活動にも適した神メニューです。
*1, 2 これらのウチナーグチに関しては、長音の位置でニュアンスが変わる点を意識しています。本土の人間視点で、前者は尊敬というかニュートラルな/後者は自虐めいた使用です。要は「チュ」を伸ばすか否かで侮蔑的かどうか区別します。
ドライブを楽しみつつお次は新原(ミーバル)ビーチへ。海でがっつり遊ぶのは明日と決めていたため初日に海は予定外であるものの、本来行こうとしていたスポットへの訪問が時間的に厳しそうだったのでこれを取り止め、せっかくの良い天気を逃す手はなしで波打際の散策ぐらいはしようと思い立ちました。管理施設曰く(外部リンク)の「リゾート開発とは全く無縁」や「沖縄の素朴な風景」のキャッチフレーズにも頷ける穏やかなビーチで、やや場違い感のある文字モニュメントも翻って愛らしい気がしてきます。笑
沖縄の砂を素足で感じていると脳内に流れるのは、久石譲の「Play on the sands」(1993)です。映画『ソナチネ』で非常に印象的な人間紙相撲のシーンに於けるBGMで、映像と音楽が高次で融合した劇伴の傑作と言えます。かつてこの記事でも琉球音楽×電子音楽の文脈で収録先のサントラを例示しており、この手のクロスオーバーではアッパーな方向性のトラックも動的な満足感を得られて素敵だけれど、本曲のようにミニマルなビートに沖縄の空気を泰然と合わせてくるゆったりトリップ系のほうが一層ドープです。
ホテルのチェックインを済ませて夜、そのまま国際通りへと繰り出します。僕としては5年振りの訪問ゆえド定番観光地ながら気持ちは新鮮で、サタデーナイトも相俟って凄まじい人熱れにクラクラとワクワクが共時で押し寄せてきました。コロナ禍中に報道画面越しで見た人通りの少なさに愕然とした記憶はすぐに塗り替えられ、それでもまだコロナ前よりは外国人:具体的には中国人の数が少ないと感じ(処理水問題の影響?)、このような数字(外部リンク)で裏付けられるようにインバウンド回復はまだ途上なのでしょう。そもそも国際通りの外国人人気が陰り始めているのを窺わせる調査結果(外部リンク)もありました。
ここでの旅空BGMは琉球アンダーグラウンドの「kokusai dori dub」(2002)です。同デュオも先掲記事に名前を出しており、沖縄もクラブミュージックも好きな方には特におすすめします。所詮西洋人の手に成る琉球音楽、或いは電子音楽畑出身者の安易なサンプリングと侮る勿れ、収録先アルバム封入ライナーノーツでの述懐、「素材としてのみ沖縄音楽を利用するのではなく(中略)伝統を含めて理解したい」は、想定されうる批判へのカウンターです。MVは概説欄によると非公式のものだったらしくアップしているのも直接の権利者なのか判然としませんが、公式サイトから被リンクを受けているのを容認の表れと見做して埋め込みます。
しばらくブラブラしてからゆいレールで少し離れた場所に移動したものの、夕食用にと目星を付けていたお店の雰囲気が想像よりバル寄りだったので入らず、代わりを探し求めながら歩いて再び国際通りに戻ってきました。お腹も空いて新規開拓も面倒になり、安定のステーキハウス88でしっかりお肉です。食後は腹熟しでウロウロ…と言いつつブルーシールでソフトクリームを追加摂取。巧まずして沖縄ビギナーなムーブを繰り返しているうちに懐かしい心持ちとなり、旅行先ながら「帰ってきたなぁ」としみじみ思いました。
最後に「Day 1」にこじつけた楽曲紹介としてOrbitalの「Day One」(2023)を据え、収録先『Optical Delusion』序盤のナラティブなシークエンスごと絶賛するプチレビューをします。01. 「Ringa Ringa」はマザーグースの「Ring-a-Ring-o' Roses」を引用したトラックで、ペスト由来説を示唆する「(The Old Pandemic Folk Song)」の括弧書きが象徴的です。これを受けて「一日目」そして「生きてる?」と続く曲名に鑑みれば、アフターコロナを意識した世界観作りなのだと腹落ちです。02. 「Day One」のサウンドは前作『Monsters Exist』(2018)を彷彿とさせます。細やかで堅実なビートメイキングの起にメロディアスなウワモノを被せる承、緊張感を帯びながら多層的に変化していく転に音的布石の全てで鮮やかに盤面を支配する結と、建設的な恍惚感の醸成は二度目の再結成以降に顕然なアプローチです。「Vision OnE」や「Dressing Up In Other People's Clothes」がツボだった人は一段とお気に召すでしょう。
03. 「Are You Alive?」は過去の楽曲群を比較対象としても上位に食い込むフェイバリットで、サンプリングにもラップにも依らないストレートな歌モノでここまでオービタルらしさを出せるポテンシャルの高さにキャリアの凄みを感じました。まさかボーカルラインの美麗さだけでも満点と言えるナンバーが結成30年目以降にアウトプットされるなんてと脱帽です。更に感動的なのは一通り歌い終えてクロージングかと思いきや[4:56]からインスト主体で聴かせる長尺アウトロへと移行する点で、ダンサブルなシンセととライバルなビートをバックに美妙なコーラスが谺する霊妙に身を委ねて超然としていると、この神韻縹渺には超満点を付すべきとの結論に至ります。
Day 2:ミッションビーチ ~ A&W ~ ちぬまん
ここでホテルのレポをしておきましょう。今回7泊8日もお世話になったのは、以前にも利用したことのある『ホテルオーシャン那覇国際通り』です。公式が謳う通り「お子様連れに優しい」のが売りでキッズファーストなのは間違いありませんが、僕としては「おもてなし」のページ(外部リンク)に書かれているような庶民派のサービスが充実している点で気に入っています。
例えばいつでも交換できるタイプの違う枕、ドライバーやホチキスなどの事務用品が入ったお役立ちセットの常備、各階でレンタルないし利用可能なマッサージ機や電子レンジなどです。ソフトドリンクのみならず泡盛まで飲み放題のゆくいひろばも有難く、今回は利用しなかったものの夜鳴きそばの提供もあるため、荒天時のリスクヘッジとして「最悪ホテルに缶詰めになっても何とかなる」の安心感が得られます。連泊の割引で後半は格安で泊まれましたし、4泊以上の場合は希望すれば途中で部屋を変えてもOKです。SDGs云々で連泊だと清掃とベッドメイクがなくゴミ箱と使用済みタオルは自分で部屋の前に出して交換してもらう必要があるけれど、デフォでDo Not Disturb状態なのは煩わしくなくてアリだと思います。
上掲のは厳密にはDay 3のよう's セレクション(『孤独のグルメ』風)ですが見栄えの都合上で差し替えまして、朝食は連日スカイラウンジで晴れた市街地を眺めながら美味しく頂きました。茶碗の中身はボロボロジューシーで、願わくは常にあって欲しかったメニューです。過去に何処のホテルか失念…或いは東南植物楽園での記憶と混同している気もするけれど、朝はお粥でもおじやでも雑炊でも構わないので柔い米で始めると、活動に必要なカロリーとお通じのバランスが良い感じに取れて心の安寧に繋がります。笑
というわけで万全の体調でいざミッションビーチです。ここには過去にも来たことがありますが、沖縄の海で泳げる誘惑に弥が上にも気勢があがります。思う存分レジャーを堪能していたので殆ど写真を撮っていないのと海水浴場で濫りにレンズを向けるのも憚られるため、帰りしなに収めた遠景の数枚で余韻だけ伝えるとしましょう。しかしこれだけでは味気ないため、脳内と胸中のハイテンション具合を表出させるナンバーとして、放課後クライマックスガールズの「ビーチブレイバー」(2019)を紹介します。Day 0で少しふれたシャニマスからの一曲です。
本曲の魅力は「平成のヒット曲のエッセンス全部ぶち込みました!」と聞こえてきそうなほどに、キャッチーなメロディが次々と畳みかけてくるところにあると主張します。その30年間には人口に膾炙するパーティーソングが数多く誕生したけれど、これさえ聴けば諸々の楽しい思い出と共に懐かしのヒットチャートが脳裏に蘇ってくるので、令和にあって平成レトロ成分を一気に取り込める欲張りセットとくればヘビロテ待ったなしです。全般的にフロウが気持ち好く、例えば"(起立 礼 号令 全宇宙が晴天)"や"パーカーのジッパー壊れた今日に"など、つい口遊みたくなるフレージングも流行歌の要件と言えます。歌詞も意識に留まるものがあり、"波をシャンデリアっぽく飛ばし"の冴えた喩えとフォトジェニックな切り抜きには感心しましたし、"一生で何度かありそうな一歩"や"嬉しくっても泣けるよ 何で?"などの青春あらわな言葉繰りも尊いです。
たくさん遊んだ後の空腹を直ちに黙らせるには文字通りファストフードが理に適っている、ということで一般向けには国内で沖縄にしか店舗がないA&Wへ。肝心のハンバーガーは微妙な写真しか撮っておらずアップしませんが、メルティダブルのセットを頼んでルートビアも飲みました。扱いの近しいチェリーコークやドクターペッパーも含め、係る独特な味は元から平気なタイプです。この点に着目したくっつくパピー「チェリーコークとルートビア」(2019)の内容に同意を示しつつ、ここでの旅空BGMにはBUBBLE-B feat. Enjo-Gの「ちむどんDONK」(2022)を据えます。
この曲は沖縄旅行のお供として優秀過ぎるのでどのタイミングで切るか悩ましかったけれど、"ルートビア"が登場する且つ歌詞検索サイトには載っていないニッチさでここに選出です。でなければ後のDay 6で"公設市場"に託けていました。バブルビーのディスコグラフィにはこれまでにも「ZANSHIRO」(2002)に「RYUKYU ANJU」(2009)と沖縄志向のトラックがあったものの、CMネタの前知識を必要としない本曲は過去一ストレートなつくりと言えます。とはいえ「ちむどんどん」と「ドンク(ベース)」のかばん語であろう曲名が示す通り、音楽的ルーツに照らすと寒暖差で体調を崩しそうな組み合わせなのがユニークです。笑
昨日の国際通り巡りは無駄な移動に時間を割いてしまったのもあって若干消化不良だったため再度ブラブラ、荷物にならない程度の軽いショッピングを済ませてからさて夕食はどうするかと考えた結果、わかりやすく沖縄料理にありつきたい心理&今日一日の疲労を考慮して安牌を切ろうとなり、ホテル近くでメインストリートに面しているチェーン店のちぬまんへ行きました。色々頼みましたが写真下はナーベラーンブシーで上左はもずくヒラヤーチーと島らっきょう天婦羅、真ん中はクファジューシーで右はフラワーカルピスです。
この中で大好物はナーベラーなのでスピッツの「ヘチマの花」(1994)にふれまして、小品的な楽曲ゆえ頻繁には聴かないと自身の浅薄さを詫びつつ改めて向き合うと、コーラス(V-C形式として"さびしい涙目に"~のほう)のアンニュイな進行が情緒纏綿で素晴らしいと感じました。同バンドの別楽曲「大好物」(2021)からも話を広げ、収録先の『ひみつスタジオ』(2023)をプチレビューしてDay 2を終えます。このアルバムでは中盤の流れ07.~09.に甚く心を打たれ、何れも「今を基点に過去と未来の捉え方の変遷が描かれている」ので連作との理解です。
07. 「手鞠」は過去をネガティブに捉えて今の愛おしさに気付く要旨で、それは解釈するまでもなく素直に綴られています。すると歌詞中で礼賛されている"手鞠"は"今"のメタファーとするのが自然で、もっと言えば「てまりちゃん」として擬人化されている=実存の誰かと重ねているとしたいです。今に出逢えたその人がいかに希望に満ち溢れた存在なのかは、サビの「陶酔境の域に達している」と形容したい美メロっぷりや、実物の手鞠と心の動きを重ねて幸せな軌道を描くかのように刻まれるドラムスからも充分に感じ取れます。その醇美な旋律と跳ねたリズムによって紡がれる言葉もまた詩趣に富み、別けても愛の極まった"好きだよ手鞠 清らかなせせらぎ/バレバレの嘘に笑う 君を見てる"の多幸感には錦上添花した"君"の姿を幻視しました。憂鬱なA/Bメロを昇華させるこの対比は、結果論で過去も肯定される前向きな防衛機制です。
一方で08. 「未来未来」は全方位に不信感が渦巻く拗らせ系楽曲で、過去を腐すのは勿論のこと(特に"虐げられたって"~"ほとんど同じ位置だ"の残酷な突きつけがエグい)、"こじ開けて 未来未来/今だけで余裕などない 嫌い嫌い"に見られる後向きな展望には、令和的なというか若いアーティストが綴りそうな失望が前提の悲哀が感じられます。亡者の怨嗟然としたコーラス使いにソリッドな平歌とバルネラブルなサビによるメロディの緩急で切迫感が凄まじく、流血と落涙に塗れながら"未来未来"へと踠いていくビジョンが浮かぶので、2番サビと結びのAメロの歌詞で一応は未来志向に〆ているけれどその道筋は険しそうです。
だからこそ"君以外"にはどうすることもできないんだとの教えが09. 「紫の夜を越えて」に繋がり、謳われているのは「過去も未来も否定せず今を真正面に捉えれば自ずと道は開けていくだろう」とのニュートラルな視界だと解釈します。07.で良くも08.で悪くも今に囚われている状態を"少し動くのも恐れてた日々"に換言し、それを"突き破り/紫の夜を越えていこう"と歩みを促すことは、実際には止まることのない時間軸を生きる我々にとってこの上ないエールではないでしょうか。"なぐさめで崩れるほどのギリギリをくぐり抜けて"も思わず唸ってしまう表現で、下手な寄り添いが止めの一撃となる皮肉を知っているからこそ、実効性のある後押しのために言葉を尽くしているのだと受け取れる草野さんの作詞力に改めて仰望します。
Day 3:D-naha ~ ジャッキーステーキハウス
Day 3, 5, 7は特殊です。何せ8日間もあるので全日程を家族揃って行動しなくてもいいのではとなり、当該3日間の朝食後~夕食前は各人の自由時間にしようと事前に決めていました。最も沖縄に造詣が深く遠地にも行きたいスポットが多々ある父がレンタカーを使い、以外はゆいレールで観光するといった分担です。後者でも意外と楽しめることは既に両親が実証済みで、那覇空港から首里まで各駅降車の旅をしたらしいのが2019年の夏、同年秋にはてだこ浦西まで延伸したので行ける範囲が広がっているのもプラス要素と言えます。
…が、結果だけ先に申しますとこの期間に僕が移動したのは美栄橋~おもろまちの短い区間のみです。その理由は主にD-nahaという複合商業施設にあって、この記事のタイトルが示すように「ビブリオフィリアの深化と月並みなオタクらしさの萌芽」を2021年に果たしていた僕にとり、沖縄のサブカル集積地と化した同施設は凄く魅力的で隔日通い詰めてしまったからです。1F~3Fがジュンク堂でB1には先月(8月)オープンしたばかりの駿河屋があるというオタクホイホイな布陣に抗えませんでした。笑
都合3日間同じ場所に通ったことをそのまま報告すると内容が被ってしまうため、駿河屋での買い物記はDay 3に/ジュンク堂のはDay 5に集約させて書くことにします(Day 7はまた別のネタでお送りします)。というわけで本セクションに展開するのはディーナハ駿河屋編で、主だった発掘品紹介とそれにこじつけた音楽レビューが中心です。つまり沖縄要素は暫くゼロになるものとお含み置きください。
「発掘品」と表現した背景には「駿河屋が主に中古品を扱っているから」というのも勿論あるけれど、今回訪れた那覇沖映通り店はキャラクター雑貨のアウトレットコーナーがえらく充実していて、そこから希少だったりお値打ちだったりするのではと感じたグッズの入手に注力したため、一段とディグの向きが強かったと伝えたい心理が働いています。オープンから一ヶ月しか経っていないので場があまり荒らされていなかったのと、平日昼ゆえに長時間居続けても不便の生じない人口密度であったことが幸いし、じっくり腰を据えて臨めました。Day 3は宛ら在庫管理担当者の目敏さで4時間以上かけ全ての棚の全てのカゴを総浚いし、Day 5の2時間程度のダブルチェックで取り零しを減らして、Day 7の荷造りでキャリーの残りキャパを正確に把握してから、Day 8に設けたリミットありの1時間で敢えて衝動性に委ねた買い漁りをするという、買わずの後悔をしないために計画的に動いた次第です。
数字で見る!購入履歴
■ 総アイテム数:137点(IP数:26)
□ アイマス:35点, ラブライブ:21点, プリティーシリーズ:17点, GuP:14点, バンドリ:6点, プリキュア:6点, このすば:6点, まどマギ:5点, マクロス:4点, ゆるキャン:3点, ウマ娘:3点, ハルヒ:2点, ぼざろ:2点 【以降:1点】 シンフォギア, 俺ガイル, ごちうさ, まぞく, 一畳間まんきつ暮らし, ごとよめ, CCさくら, WORKING!!, なのは, ひぐらし, 艦これ, ハニワ, ホロライブ
■ 購入金額合計:27,085円
□ Max:1,240円, Min:50円, Mean:198円, Median:110円, Mode:110円
☆ 世に多くのグッズが出ている人気作品は自然と点数も多くなります。当該のアウトレットには税込で【110, 220, 300(330ではない)】円の価格帯しか存在せず、中央値と最頻値が共に110円で外れ値*3の影響を受けた平均値でも200円以下の中心的傾向からわかる通り、非アウトレット商品*4には殆ど手を出さず半ば100均感覚で買い物をしていました。
*3 箱ひげ図を書いたところひげの上限は370円(Q3/4+1.5IQR=385)に決まりましたので、これを超える価格を便宜上の外れ値;アウトレットのお得感を示すデータとしては不適当なものとして扱います。ひげの範囲を超えた商品は9点で、これに上限の1点を加えた10点がちょうど非アウトレットでの購入数と合致するため、統計的にも僕のケチ臭い消費行動が裏付けられました。笑
*4 この文脈での「非アウトレット」は新品という意味ではなく、先述した「キャラクター雑貨のアウトレットコーナー以外で売られていたもの」延いては「その価格帯或いは以下では買えなかった(301円以上の)商品」を指します。以降も同様です。
写真で見る!購入履歴(一部)
■ 非アウトレット10点(合計6,490円)
□ アイマス(ペンライトスタンド・B2布ポスター), バンドリ(LPサイズディスクケース・B2タペストリー), ごちうさ(B6シート全4種), 一畳間(B2タペストリー), まどマギ(フィギュア), GuP(A4クリアファイル2枚組・B2布ポスター・クリアート)
☆ 最も高いのがポピパのディスクケースで、次いで一畳間のタペストリー・サンダースのクリアファイル・パスパレのタペストリー・あんこうチームの布ポスターと続き、残る5点は500円以下でした。殊にヨドバシ特典のあんこう~と早苗さんのスタンドは、非アウトレットながら安く上がってラッキーと捉えています。アウトレットでの購入物との兼ね合いで手を出したものもあり、ストレイライトの布ポスターとケイのクリアートはその類です。
♪ こじつけ音楽レビュー Poppin'Party「White Afternoon」(2019)
『BanG Dream!』からの選曲で、個人的にはポピパ一の名曲だと評しています。当ブログに於けるメロディ区分のルールに沿うと本曲はサビが前後半に分かれているタイプで、且つ後半のメロディが前半のそれに割り込む形になっているのが(単なるサビ前半+後半ではなく)、あまり類を見ない変わった楽想の証であるとの理解です。このサプライズに満ちた進行が得も言われぬエモさに繋がっていると感じるので、以下もう少し説明に努めてみました。
1番でサビメロの全体像が"淡い雪"~"キミがいる幸せ"だと耳に留めておくと、2番サビの"(Snow Falling)"のセクションでまず意表を突かれます。この時点では「サビを途中で切ってCメロに移行するパターンか」との分析に至るも、"白い空へ"で再び1番サビにて既聴のメロに戻ってくるのでまたも予想が裏切られ、「1番サビは言わば短絡していたのか!」と新鮮な気付きを得られました。仮に1番サビが"キミは手招いてた。"で終わっていたなら、2番サビで新規のメロが出てきて驚きはするけれども、「1番サビが前半までしか演奏されないケースね」と型に嵌めた受け止めをしていたことでしょう(これなら単なるサビ前半+後半)。
上記の肝はサビを前後半に分ける楽想で作曲するにあたり、並の感性なら2番以降に新出させそうなパートを1番の段階で先出ししたところ("胸の奥で"~)にあると主張します。確かに"キミは手招いてた。"でメロを切ると終止感を欠くため続く旋律が必要なのは道理ですが、その違和感を敢えて残して以降に解消するセオリーがサビ前半+後半の楽想にはあるとの認識だからして、1番では"胸の奥で"~のメロを出さない選択もできたと思うのです。しかし実際にはそうしなかったことで聴き手は1番サビのメロこそがその全容だと素直に判断し、ゆえに2番サビの新出セクションに尚一層のインパクトが生じ、そこから既出のメロに戻すことで安心感の芽生えと楽想の技巧性に気付ける導線が敷かれ、歌詞の物語性だけでなく歌声と演奏の機微まで際立つからエモさ倍増なのだと結びます。
■ アイマス21/33点(合計3,820円)
□ 缶バッジ9個, アクキー5個, B2布ポスター2枚, ブロマイド(4枚セット), クッションカバー1枚, A4クリアポスター1枚, B5イラストボード1枚, メガジャケ1枚
☆ 視認性に配慮してクリアファイルや色紙などの一部は掲載を割愛しました。どれもアウトレットでふみふみの缶バッジが300円の他は220円以下です。この中では布系の3点がとりわけお得に感じられます。裸ながら掘り出し物だと思ったのは来場者特典のボードです。アクキーはしんげきのを4人分見つけて重畳だったのと、こずえちゃんのがホテルで一時行方不明になるという解釈一致のムーブを見せたため本気で驚きました。バッジ類は胸囲に釣られたのを否定できない人選ですね…幸子以外。笑
■ プリティーシリーズ17点(合計2,390円)
□ キーホルダー・ストラップ類14個, 色紙1枚, 缶バッジ1個, ミラー1個
☆ 全てワイヤーネットに吊るして飾っていたので、上部にその他のグッズを持ってきて写真を撮りました。みれぃのだけ元々の所持品で、下部に見切れているのはナナシスゾーンです。ドレシのトリプルキーチェーン、パラトレにののアクリルチャーム、つながるチャームでマイドリを揃えられたあたりが大収穫ポイント。にのらぁの色紙は絵柄が好きすぎてフレームに入れています(Seriaのオタ活アイテム様様)。
♪ こじつけ音楽レビュー NonSugar「ノンピリオド」(2021)
当ブログの人気特集記事のひとつ「プリティーシリーズの神曲たち」は2021年の1月にアップしたため、ノンシュガーのアルバムに言及できていないのが歯痒いところです。同盤でいちばんのお気に入りはペッパーセンター曲の「タッ・ピ~ロペ・サパンナ!」ですが、買ったものに関連付けたいのでラバストからのんセンター曲の「ノンピリオド」を引っ張ってきます。とはいえ同曲も次点の推しで、"(ピリオドは…ノンノンノン)"のコーラスとカットアップのリフで曲名通り切れ目なく進行していくのが小気味好い、キュートだけどちょっぴり切ないダンスナンバーです。随所に鏤められたTRiANGLE要素に涙腺が緩みます。
次回に続く!
To be continued.
Day 3の途中ですが記事あたりの限界文字数に到達したので、続きをご覧になりたい方は下掲のリンクカードから「その2」へ飛んでください。