高齢者求人にも概ね70歳までという「ガラスの天井」(目には見えないが上がろうとするとぶちあたる天井)がある。

 生涯現役支援窓口で高年齢者の就労を担当していた頃、「年齢不問、60歳以上応募可」と書いてあっても概ね70歳を超えると「その年齢では・・」とやんわり断られることが多くなっていた。

 

 

●70歳以上の就労支援はつらいよ

 そんな中・・・年金や貯金を取り崩しながら、なんとか暮らしているのだが、ちょっとだけ遊びたい、飲みたい、孫にお小遣いあげたいなどの理由から少しだけでいいので稼ぎたい、なんかないか?と70歳以上の高齢者が、時々相談に来られた。

 60歳代までで雇用されると70歳過ぎてもそのまま雇用を延長してもらえることはあるが、70歳を超えての新規で紹介できる求人となるとハローワークでは、雑踏警備・交通誘導、清掃、調理補助、介護(経験者)くらいの職種しかない。これらの職種の仕事は嫌だ、無理だ、他に体に負担の少ない軽い仕事でなんかないかと言われるとまず紹介できる仕事はなくなる。(極稀に軽作業(動物園の遊具の操作、学校の用務員など)の求人があるが、人気がありすぐ充足されてしまう。)

 さらに75歳を過ぎるとこれらの職種でも採用は難しくなる。ちなみに私が6年間の職業紹介で採用になった最高齢は74歳女性(自宅近隣の学習塾の週2日の清掃)である。同僚の相談員では76歳男性の交通誘導の職種で採用になった例があるらしいが体力的に無理だとわかり1日で退職したそうである。

 

●手ぶらで帰すわけにはいかないが・・・

 経験的にわかっているので紹介できるところはないと言いたいのだが、せっかくわざわざハローワークに足を運んできた本人を傷つけるといけないので、やさしく婉曲的に難しいと説明するのだが、なにせ暇なので1社でも紹介しないと帰ってくれない高齢者がいる。

 こちらも、手ぶらで帰すことは気の毒なので、なんとか1件でも紹介できるよう、めぼしい応募先に電話をかけまくるのだが、なかなかいい返事はもらえない。 

 そんな中、数は少ないが軽作業の求人で、「書類選考なので、とりあえず応募書類を送ってもらえれば・・・」といってくれる会社がある。

 おそらく、法令遵守の意識が高く、雇用対策法に則り応募に関しては年齢制限を設けず、一旦すべて履歴書を事前に送ってもらうことで受け付けるというきまりがある良心的な企業だと思われる。

 ただ、高齢者には人気求人なので60歳代の人が多く応募するなか、残念ながら応募してもほとんど書類選考で落とされることになるのだが、本人も1件だけでも紹介してもらえれば(紹介状をもらえれば)とりあえずそれで帰ってくれる。

 不採用になるのがわかっているのに紹介するのか!というお叱りを受けそうだが、こちらも「無い袖は振れない」状況で、応募は難しいと言っても納得せず、紹介してもらうまで帰らないという高齢者にはこうした対応をせざるを得ないのが実情である。

紹介して、一時(いっとき)でも希望を持ってもらえればそれでよし!と考えるようにしていた。

 

●事業所へのおわび

 実は、こうした70歳以上でも応募を受け付けてくれる求人が見つかると、一部の相談員同士で情報共有していた。窓口で70歳以上の人が来て、紹介できる求人がなかなか見つからず、帰ってもらえない場合は、その事業所に電話をして、とりあえず応募だけ受け付けてもらい紹介状を発行して帰っていただいていた。

 そんな中、この求人の事業所から応募の際に「最近、ハローワークさんからの紹介は高齢者が多いけど、なにか理由があるのですか?」と聞かれ、おもわず「あっ、そうなんですか? さあ~~、単なる偶然じゃないですかね~~。」ととぼけたことがある。この事業所には本当に申し訳ないことをしたと今でも反省している。この場を借りて深くお詫び申し上げます。

 

●70歳以上は関知しません

 国も、高年齢者雇用安定法を改正し、70歳まで就労機会の確保を奨励しているが、言いかえれば、国の施策として、70歳以降の就労はもう関知しません(支援しません)と言っていることになる。

 できれば、70歳以上の方はシルバー人材センターに登録して紹介を待つか、ハローワーク利用したければ、前述の応募可能な「職種限定」にしてほしいのが本音である。

 30歳前半の色白の女性が事務職のパート求人を持参して応募したいと来窓。

いつもどおり、事業所に連絡し応募可を確認して紹介状を発行しようとしたところ・・・

「実は、前職はがん(部位は聞かず)になって退職した。幸い寛解して働けるようになったので少しずつだが働きたい。ただ、しばらくは定期的に通院しなければならないが、そのことは応募の際に言わないといけないのか?」との相談をうけた。

●面接では「大人の対応」を

 別に、パートなら通院の調整はつきやすいし、業務に支障がないと思うのなら言いたくなければ言わなくてもいい。ただ、履歴書をみて、病気療養中で離職期間が長く何も書いていないと当然、採用担当者はこの期間は何をしていたのか気になるし聞いてくることになる。そこでうやむやな回答をすると反って不信感を抱かせることになる。

 採用後の事を考えると正直に話した方がいいのだが、女性特有のがんの場合、面接官が男性なら言いにくいし、男性でも部位によっては言いたくないこともある。さらに個人情報の管理が行き届いた企業なら、人事担当者や一部の管理職以外に知られることはないのだが、個人情報管理の意識の低い中小企業となると、おしゃベり好きの口の軽いおばさんがいて、採用担当者から聞きつけて会社中に広まってしまい不快な思いをすることになる危険性もある。

「今度入社してくる人、〇〇がんやったらしいで・・・知らんけど」

 

 最終的には言うか言わないかは自分で判断してほしいが、どうしても言いたくなければ、聞かれたとき、「言いたくありません」というと角が立つので、「この期間は病気療養中でした、病名等の詳しいことはご容赦いただきたい。ただ、すでに寛解しており、働く上で問題ないと医者から許可を得ています」と答えるようアドバイスをした。

 良識ある面接官なら、気持ちをくみ取り、それ以上追及することなく採否を判断してくれると思うが、もし、これが理由で不採用になるのなら、縁がなかったと思い早く気持ちを切り替えた方がよい。

 

●雇用継続は事業所の責務

 がんは、早期発見されれば、今はほとんど治癒する病気という感覚である。通常はがんになって入院しても健康保険から傷病手当が支給される(上限1年6か月)ので一定期間は生活が保障される。大企業の場合は、社員ががんになった場合の休職制度や復職するときも復職後の体調を診ながらの短時間勤務や配置換えなど社内の支援体制が整備されており、雇用も維持されることが多いことから、本人のメンタルヘルス面を除いて生活面で問題になることは少ない

 ただ、中小企業や非正規雇用の場合は、「治療に専念しては?」と一見、経営者や派遣元から優しいことばで退職を促すことがよくある。実際、がんになった人の35%が退職を余儀なくされているという統計データがある。

 体を使う仕事の場合はやむをえない場合もあるが、中小企業といえども、なんとか配置転換等で雇用は維持してあげてほしいところだ。

 

 一度退職してしまうと、療養中は前述の健康保険から傷病手当を継続して受給できるが、治癒すると今度は、(おそらく)受給期間を延長した雇用保険の失業等給付(基本手当)を受給しながら、いそいで仕事を見つけなければならなくなる。

 ただでさえ、がんになってショックを受けてメンタルが不安定になっている上に、会社を辞めて(辞めさせられて)しまい、さらに生活の不安を抱えるのはあまりに酷といえる。

 

●がんに負けるな

 国も地味だが、こうした長期療養者の治療と仕事の両立を図れる支援事業を実施している。 

 一部のハローワークでは治療と仕事と両立を支援する専門窓口を設けたり、理解のある企業の求人を開拓したり、提携した医療機関への出張相談など、あまり目立った動きではないが支援を実施している。

  また、数はまだまだ少ないがハローワークインタネットサービス(HWIS)では、フリーワード検索で「長期療養者」で検索すると何件か出てくる。該当者は遠慮なく窓口で相談してほしいところだ。

 

  長期療養者の復帰のための仕事の探し方は基本的に(第32話)メンタル離職者の再就職

 

 

の方法をお勧めするところだが、本人も再発というリスクを抱えながらも「がんとともに生きる」という覚悟と「がんには負けない」強い気持ちが大事である。

 冒頭の相談者にも、時間はかかるかもしれないが、必ず病気のことを理解してくれる会社と仕事は見つかると励ました。

 職業相談員も、本人が了承すれば、事業所に就労条件の緩和や就労する際の配慮を掛けあったり、個別の事情に柔軟に対応し精神面で寄り添うことは忘れてはいけないところだ。

 

●厳しい現実もあります

 余談だが・・・今から十数年前に私がIT企業の人事部に勤務していた頃、40歳の男性社員が白血病になり、しばらく休職することとなった。当初は1年程度で復帰できそうな見込みだったのだが回復が遅れ、結局、休職期間が2年になると退職となる社内規程に該当してしまい退職を余儀なくされた。退職になる直前に本人から、寛解後は復職を強く希望しており休職期間をなんとか延長してもらえないかと懇願されたが、例外を認めるときりがないので気の毒だが延長できないことを伝えて退職となった。その半年後、親族から亡くなったとの連絡を受けた。延長してあげられなかったことが死期を早めたのでは・・・やむをえないとは言え、そんなことが頭をよぎり、なんともやりきれない気持ちになった。

職業人生においては、健康がすべてにおいて優先される

やれ、給料が安い、仕事がきつい、休みが少ない・・など不平ばかりを言って、健康で働けていることに感謝しない自分を反省しなければならないと、改めて認識させられた出来事だった。

 履歴書で一番苦労するのは志望動機・自己PR欄であるが、履歴書を書き慣れている人や特に複雑な事情のない人市販されているマニュアル本やネットでいろいろサンプルが掲載されているのでそれらを参考にしてもらえればいいかと思う。

 

●ワケアリ人の志望動機・自己PRのサンプル集

 窓口で履歴書の書き方を相談される人の中には、貧困、定着困難、加齢、メンタル、離婚、ひきこもり、コミュ障、廃業などワケアリ人も多く、志望動機や自己PRの書き方に慣れておらず、ネットやマニュアル本でもこうした境遇の人達の書き方についてはあまり掲載されていない。

 こういう人達はとりあえず、「稼ぐこと」か「社会参加・復帰」が主な就労目的であることが多いので、あまり志望動機について凝った内容を書くことができない。

 とはいえ、志望動機・自己PR欄を空白のままで提出するわけにもいかないことから、ここでは、最低限これぐらいは書いてほしいという、こうしたワケアリ人用の志望動機・自己PRサンプル集を作ってみた。「フリー素材」なので自由に切り取り、コピペしてもらってもいいので参考にしてもらえればうれしい。

 

 

■フリーターで職を転々として定職(正社員)に就いたことがない場合(未経験若年版)

学校卒業後、アルバイトやパートで○○、○○、○○などの仕事を経験してまいりました。今後は、早く安定した職に就き、生活基盤を安定させ仕事に集中していきたいと考えています。

前職で培ったコミュニケーション能力や、体力には自信があります。

○○業は未経験ですが、早く仕事を覚え、決められたルールを守り貴社に貢献していたいと思います。

 

■体調不良(メンタル等)で休職していたが、久々に働きたい場合

前職では○○業務を経験してまいりましたが、体調を崩ししばらく休んでおりました。今般、体調も回復し、医者からも就労許可がおりたため、今後は少しずつですが、仕事を通して社会復帰を果たしていきたいと考え応募しました。

引き続き体調管理に努め、早く仕事を覚えて、周りとも円滑なコミュニケーションを図りながら誠実に働く所存です。

 

■ひきこもりで、職に就いたことがない場合

高校を卒業または中退後、体調をくずし、しばらく休んでおりましたが、家族の支援もあり体調も回復したため、今後は少しずつですが、仕事を通して社会参加を果たしていきたいと考えています。未経験ですが、早く仕事を覚えて、ルールを守って懸命に働くつもりです。よろしくお願いします。

 

コミュニケーションが極端に苦手な場合(黙々とした作業を希望する場合)

人前で話したりするのが苦手で、すぐ緊張してしまうところはありますが、決められた手順に従って集中力をもって仕事を続けることには自信があります。これまで培った<製造職>での現場経験が活かせると思い応募しました。

 

■派遣等で職を転々とし、1つの会社に長期間働いたことがない場合

なんでもやってみたいという性格から、派遣や契約社員という立場で様々な仕事を経験してきました。今後は、年齢的なこともあり、転職はこれを最後として安定した職に就き末永く働きたいと思い応募致しました。これまでの経験から多角的な視野でどんな仕事にも柔軟に対応できるかと思います。

 

■シングルマザーが応募する場合

離婚を機に、職に就きたいと考えていたところハローワークにて、子育てにご理解のある貴社の求人(※)を知り、通勤にも負担がかからずこれまでの〇〇職の経験が活かされ、子育てと仕事の両立が図れるのではないかと思い応募しました。(〇歳の幼児がおりますが、育児面で家族の協力も得られる見込みです。)
※求人票に「学校行事優先します」とか「急な休みも相談可」という表現がある子育て優先求人のこと

 

■自営業をしていたが、業績不振で廃業し働かざるを得なくなった場合

〇〇業を自営しておりましたが、業績不振のため廃業せざるを得なくなり、新たに仕事に就きたいと応募しました。自営業で〇〇等の業務を経験しており、その経験が活かせるのでないかと思います。貴社の決められたルールを守り、周りの社員の方ともコミュニケーションを図り協調性を重視しながら働く所存です。

 

退職後、年金だけでは生活できない場合(高齢者)

これまで、○○、○○、○○などの仕事を経験してまいりました。(定年まで勤め上げました。)今後も引き続き、仕事を通じて社会参加と生活基盤の安定を図りたいと考えています。

今般 ハローワークで貴社の求人を知り、これまでの経験が活かされると思い応募しました。

初心に帰り早く仕事を覚え、決められたルールを守り貴社に貢献していきたいと思います。

 

■その他うまい言い回し 

✕家が近いので応募しました ⇒ 〇通勤に負担がかからないことから、より仕事に専念できると思い応募しました

 

✕歳はとっているが、元気です ⇒ 〇年齢は重ねておりますが、日頃から<競技・運動名>で体力維持に努めており、健康・体力面で支障なく就労できる自信があります

 

✕しばらく出産・育児で休んでおりましたが一段落したのでこれから働きたいと応募しました。 ⇒ 〇(さらに追加で)今後は家庭と仕事を両立させながら、これまでの〇〇経験を活かして貴社に貢献したいと思います

 

 なお、採否の最終判断は面接が重視されることは忘れてはならない。書き切れないところは面接でカバーしてほしいところだ。

 面接のうまい対応方法については、これまでのブログの中で随時触れてきているので参考にしてほしい。

 第27話でも書かせてもらったが、相談窓口でよく履歴書の添削を依頼された。

 履歴書は、応募先の企業規模や勤務形態(正社員、契約、派遣パート、アルバイトなのか)や、「(履歴書持参で)いきなり面接」なのか、「まずは書類選考から」なのかによって書く内容も密度も変わってくる。

 「いきなり面接」(パートやアルバイトが多い)の場合は、履歴書に書かれてある内容を面接でフォローできるので、大まかな内容でもある程度は許されるところがあるが、「まずは書類選考から」の場合は、履歴書だけで一次選考されるので細心の注意が必要だ。

 

 履歴書の書き方については、市販されているマニュアル本やネットでいろいろサンプルが掲載されているので、それらを参考にしてもらうとして、ここでは、履歴書をあまり書き慣れていない人から、窓口で作成前の段階でよく質問された内容をFAQ方式でまとめてみた。

 

 

●履歴書には黙秘権がある

Q1 手書きがいいのか、パソコンで作成したものでもいいのか?

A1 最近は手書きにこだわる事業所が少なくなってきており、特に「手書き」指定がなければパソコン(WordかExcel)で作成したものでも問題はない。どうしても心配なら応募の際に、窓口の相談員を通じてパソコン(WordかExcel)で作成したものでも問題ないかを応募先に確認すればよい。書き損じのことを考えるとパソコンで作成したいところだ。

 ただし、達筆なら敢えて手書きにするのもお勧めである。字がきれいな人はそれだけで几帳面さがうかがい知れて好印象をもたれ採用になることがある。特に事務職の応募には有効かと思われる。

 

Q2 職歴はどれくらいの精度で書く必要があるの? 短期間で退職した履歴も書くの?

A2 古い職歴の場合、応募先の会社には入社年月や退職年月は検証する方法がないので「おおまか」でかまわない。また、職歴欄だけでは書ききれないくらいたくさん転職をしている場合は、何度も転職していると悪い印象を持たれるため、短期の派遣・パート・アルバイトなどは下記のようにまとめて記載してもよい。

 

【記入例】20xx.nn~20xx.nn この期間、短期アルバイトや派遣で飲食店(nか月)、商品配達(nか月)、倉庫管理(nか月)を経験

 

 ただ、応募する職種と同じ職種の職歴は、短期でもまとめずに記載する方が有利である。経験者として評価してもらえるし、そこから面接時に話が拡がることが期待できる。

 また、入社したのにワケあって短期間で退職した職歴は、書くか書かないかは正直迷うところではあるが、1、2か月程度なら、もし聞かれても「求職活動をしていました」と回答しても特に気にならないので、言いたくないのなら記載しないという選択をしてもかまわないと思う。

 

これに関連した質問で・・・

Q3 前職はワケあって短期間(1か月以内)で退職したので履歴書に書きたくないのだが、そのことは応募先にわかるのか? 

A3 前職で雇用保険に加入していなければわからないのだが、加入してしまっていると、入社する時に雇用保険の被保険者証の提出を求められた時、通常、被保険者証は前職の会社から退職時に提出してもらうので会社名が記載されているためわかってしまう。ただ、この雇用保険の被保険者証に記載されている企業名と、履歴書の最後に書かれてある企業名をいちいちチェックする会社はあまり聞いたことがない。もし万が一指摘されても、「短期間で辞めたので履歴書に記載しませんでした。なにか問題でも?」と、しれっと答えればよい。

履歴書には「黙秘権」がある。

 嘘はいけないが、自分に不利になるようなことを記載する・しないの決定権は応募者本人にある。

 要は、応募先企業がそれをどう判断するかであるが、入社後、不記載(虚偽ではない)が発覚した場合、会社が本人の働きぶりがあまりに悪くて辞めさせたい時に、後で解雇理由の一つに挙げてくる可能性はあるが、真面目に働き一定の評価をしてもらえていればこれだけを理由に解雇することはまず考えらないはずだ。しかも職歴不記載だけが理由で解雇すると、下手をすると訴訟問題になってしまう。保証はしないが過度な心配はいらない気がする。

 ただし、警備業での過去の犯罪歴運送業での重大な交通法違反歴を隠していたり、就職先とガチのライバル会社に勤めていたことや緊密な取引先を解雇されたことを隠していた場合などは、解雇される事由となりうるので注意が必要だ。

 

Q4 履歴書だけでOKと書かれてあったが、職務経歴書はつけた方がいいの?

A4 正社員の場合、求められていなくても職務経歴書を添付し、詳細な経験した業務内容や成果をアピールすることをお勧めする。

 パートやアルバイトの場合は特に必要ないが、ただ、書き慣れていない人は職歴欄に入社年月、退職年月と勤務先名だけを記載する人が多い。その場合、入社年月と退職年月の行の間に、1行でいいので大まかにどんな仕事をしていたかを簡単に記載した方がわかりやすい。パートやアルバイトの応募でも記載した方が見る側にとってストレスがかからず印象がよい。

 

【記入例】20xx.nn  株式会社○○○○○にパートとして入社

     ⇒ <部門・店舗名等>で□□□□□□業務に従事   

     20xx.nn  株式会社○○○○○を契約満了により退職

 

 これ以外にも高年齢者からは、間違えたら修正液で訂正してもいいか? 写真は3年前のものだが問題ないか? など、いずれも就活では常識はずれな質問を頻繁にうけた。そんなことをして応募すれば、仕事ですぐ手を抜くような人間と思われる。

 履歴書は自分の分身・商品カタログと思い丁寧に作成してほしい。

 65歳で定年退職、中規模の鉄工所を高卒で入社して定年まで勤め上げた。元気なので引き続き無理のない範囲で働きたいが、鉄工所で金属加工の現場経験しかないがこんな人間でもできる仕事はあるのだろうか? と相談をうけた。

 

●無事是名馬?

 「無事是名馬」という言葉がある。今風に言うと、中央競馬のGIや重賞レースに出走して活躍する馬だけではなく(ケガや種牡馬になるため早く引退する馬が多い)、地方競馬のダートコースで未勝利戦や障害レースを戦いながら、なかなか勝てないものの、ケガもせず長く走り続けている馬も名馬といえるという意味である。

 1つの会社に47年間勤めて、自分や家族のために一生懸命働いてきたのだからもっと自分を褒めてもいいし、自信を持ってくださいと励ました。

 今でこそ、自分のやりたいことを求めて条件のいい会社に抵抗なく転職することが当たり前の時代だが、昭和的な考え方で、特別な才能がなくても1つの仕事を長く続けることも立派な働き方であることを忘れないでほしい。

 

 

●採用されやすい高齢者

 実は、こういう謙虚で、(失礼な言い方だが)変に出世していなくて現場経験の豊富な高齢者の方が再就職しやすい傾向がある。会社が定年後の高年齢者を雇用する際に期待することはなにかを考えてみればわかる。採用する側は、退職前の会社のポジションや実績よりも、入社して自分の会社にどうように貢献してくれるかに一番の関心がある。

もちろん経験(テクニカルスキル)があればそれに越したことはないが、それ以外にも、 

 ・周りと協力しながら仕事に取り組むか・決められたルールや規則を守れるか・トラブルが発生したときも批判せず冷静に対応できるか・若手社員への指導や助言できるか・新しいことにも前向きに取り組もうとするか ・・・ などの本人の資質や仕事に対する姿勢や心がけを重視している。

 40年以上1つの会社に勤めているという事はこれらのヒューマンスキルがある程度備わっているという証明でもある。雇用する側もそれだけで安心感がある。自信をもって応募してほしいところだ。

 この相談者は、温厚で控えめで、車の運転が好きで、親の介護経験もあるというので、たまたま近所のデイサービスの送迎求人があったので紹介したところ、即採用になった。

 

●採用されにくい高齢者

 よく言われる笑い話で、上場企業の元部長経験者に面接で、「あなたはどんな仕事ができますか?」と聞いたら「部長ならできます」と言った というのがある。

 参考までに、こんな高年齢者を雇うのは嫌だ という例を挙げると・・・

 ・謙虚さがない・過去の成功体験を自慢する・これは私の仕事ではないと言う・自分の価値観を押し付ける・年下に教わることをいやがる・すぐ上から目線で話をする・これまでのやり方に固執する   などなど・・・

 60歳、65歳からの仕事探しは、それまでの勤め先やポジション・給与などは一切関係ない。再就職できるかどうかは、現役時代のチープなプライドを捨てられるかどうかで決まるといっても過言ではない。

 実際、大手企業を定年退職した人の中には、退職金や年金等でとくに経済的に困窮することはないことから、ハローワークでの高年齢者の求人の実態を知り、カルチャーショックを受けて就職活動を早々にあきらめる人がたくさんいる。

 

 

●時間をもてあます高齢者

 平日の開館前の図書館にいくと男性高齢者が閲覧コーナーの新聞や雑誌目当てで行列を作っている。平日の午前中のマクドナルドへいくと100円(今は120円)コーヒーを飲みながら数人の男性高齢者が持ち込んだ新聞か文庫本を一人で黙々と読んでいる。他方、女性高齢者は数人で楽しそうに井戸端会議をしている。同じく平日の午前中のスポーツジムへ行くと、まさに高齢者の運動会状態である。

 

 時間を持て余しており、いい仕事があれば無理のない範囲で働きたいと思っている高齢者が多いことは間違いないが、無理に働く必要もない人達なので、仕事探しに積極的に動くことはない。

 これからの労働力人口が減少していく中、こうした余裕のあるシニアの労働力を活かせないのはもったいない限りだ。これらの人は、お金よりも自分を必要としてくれる仕事に就くことにやりがいを感じることが多い。

 国も、まだ努力義務だが、70歳までの就労機会の確保(「雇用しろ」とは言っていないところがミソ)を奨励している。

 例えば、人件費がネックとなって高齢者を雇いづらいのなら、最低賃金法を改正し、65歳以上に例外規定を設ける。あるいは女性の場合はベビーシッター、男性の場合はスポットコンサルなど、高齢者でもできる登録型請負業の起業を支援し、マッチング機能を公的な機関に持たせるなど将来の労働力不足が懸念されている中、これらのシニア労働力をもっと活かせる方法をみんなで知恵を出しあえばいいと思う。

 

死ぬ前に感じる人生の充実感は、老後の暮らし方が大きな割合を占める。

 

 と言われている。現役世代の(特に50歳を過ぎた)人達には、経済的な基盤を確保した後の、定年後(老後)の過ごし方を今から真剣に考えておくことをお勧めしたい。

 

 ハローワークの職業相談窓口では、通常の相談時間は一人当たり、短くて5分以内、通常15分から長くても30分程度で終わる。

 ところが、1時間以上、長い人で2時間近く平気で相談する人たちがたまに来窓してきた。

 

困った相談者たち

 2とおりのタイプがいて、人柄は悪くはないのだが、仕事探しに全く関係のない世間話や、職場の愚痴・文句を延々と、しかも同じことを繰り返し言う人で、用件も終わり話が長くなってきてそろそろ引き上げてほしいと思い、視線をはずしたり、同意を求められても生返事で返すのだが、残念ながらこういう人達には、空気を読める人はあまりいないたまらず「そろそろ終わりましょうか」とやさしく言っても、「ふん、ふん」と言いながらおかまいなしに仕事探しとは関係のない長話を続けてくる。

 

 おそらく自分の周りに、話を聞いてもらえる家族や友人がおらず、ハローワークの相談員しか話し相手がいない、孤独で寂しがり屋なのだと思われる。 

 もう一つのタイプは、やや高慢な感じで、自分で仕事を検索することはあまりせず、相談窓口で、口頭で条件を言って相談員に検索させ、印刷した数枚の求人票を相談席ですわったままじっくり調べる人である。その間、相談員は何もせずじっと待っているだけである。混雑しているときなどは一旦席を外して、気になる求人を見つけたら改めて番号札を引いて相談する、という他人への配慮が全くできない人で当然こういう人はなかなか採用には至らないことが多い。

 この他、ハローワークの職業相談窓口には第43話:許せないカスハラ相談者

で書いたような、仕事でなければあまり関わりたくない人でクレームや不満を長時間にわたって話す人もいた。

 ハローワークが空(す)いていればまだ許せるのだが、混雑しているときは他の来所者にとってはいい迷惑になる。「用件は済んだのだからもう帰ってくれ!」と直接的にはなかなか言えないため、結局、疲れるのを待って帰ってもらっていたのだが、こちらもこういう人達と長時間応対すると体力を消耗する。私の場合、若くないこともあり応対した後は、「あしたのジョーの最終回」のような状態になるくらい疲れ切ってしまい、しばらく休憩をもらわないと次の相談が受けられなかった。

 

●ロシアンルーレットの気分

 こういう人達は、印象に残るので必然的に顔を覚えてしまうため来所するとすぐわかる。

ただ、総合受付で番号札の発券機を押して待合コーナーで待っている人達に混ざってしまうと何番を取ったかは分からなくなる。ハローワークの職業相談は、番号札順に各相談窓口から順番に呼ばれるので、どの窓口から呼ばれるかはわからない。

 私の場合、相談窓口で受付開始ボタンを押すとき、正直、「どうかあたりませんように」と祈りながら押していた。まさにロシアンルーレットの心境だった。

 はずれるとほっとするし、あたってしまうと今日は運が悪い日だったとあきらめ、これから仕事として1時間以上は耐える時間と割り切って応対していた。

 相談者に寄り添うべきなのに失礼だという批判は甘んじて受けるつもりだが、なにごとにも限度がある。自分の気持ちに嘘はつきたくない。他の相談員も全員そうだとはいえないが、多かれ少なかれ同じ気持ちはあったと思う・・・

人間だもの。

 

安心してください、覚えてますよ

 我々相談員は平均毎日10人~20人くらいの相談者と面談する。相談を受けた内容や相談者の顔は、正直、1か月も経てば(空けば)、前述のような、よほど印象的(?)な相談者を除いて忘れることが多い。

 

 

 そんな時、前回、面談した相談者と、日をあけて偶然続けてあたることがある。相談者は当然、窓口で「この前の紹介してもらった件だけど・・・」と、自分のことは当然覚えているよね、といった口調で話しかけてくる。思い出すこともあるが、

<はて、この人誰だっけ?>

と心の中で叫びながら、「あ~、この前の件ね~、どうでした?」と知ったかぶりをしながら時間を稼ぎ、慌ててパソコン画面で氏名や面談記録を確認して思い出すことがよくある。

 窓口で、偶然連続して同じ相談員になった場合、「私の事、覚えています?」と聞いて、「もちろん、よく覚えていますよ」とパソコン画面に目が泳ぎながら言ったら、まずその言葉は信じない方がいいかもしれない。ただ、職業相談にはあまり影響がないので許してほしいところだ。

 

 人は、自分が好意をもっている人には自分のことは覚えていてほしいという願望はあると思うが、ハローワークでは仕事探しが一段落すれば、自分のことは早く忘れて欲しいはずである。ちょうどこれくらいの距離感がいいのかもしれない。

 

 ハローワークには、離職した人だけでなく転職を検討したいということで在職中の方もよく来られていた。初めて求職の申し込みをするとき、基本的な個人情報(氏名、生年月日、住所、電話番号、保有資格、学歴、簡単な職歴等)を登録するのだが、在職中の人から「ここへ来たことが、今の会社に知られる可能性はないのですか?」という質問を何度か受けた。

 

●就職活動を秘密にしたい

 結論から言うとハローワークから、本人の了解なしに、個人情報が第三者に知られることはまずありえない、安心してほしい と伝えていた。

 ハローワークで求職活動をしていることが在職中の会社に知られることがあるとすれば、ハローワークへ来所するところを偶然、会社の関係者に見られるリスクを心配した方がよい。(ハローワークには事業所の関係者も求人の申込や、採用に伴い雇用保険の届け出のため来所することが多い)知られたくないのであれば、ここへ来るときは周りの目に十分注意するようアドバイスをしておいた

●厳しい個人情報管理

 ハローワークでの個人情報の管理は、正直、

ここまでするか!

というくらい厳しかった。一般の大手企業が実施するセキュリティ対策レベルは当然のこととして、例えば、ハローワークの職業相談窓口では、

・職業相談員は誤送信の危険性があるため社外(個人、事業所)との電子メールは厳禁

・応募する時は、事業所に氏名を告げることを、その都度本人に了解を得て、紹介状を発行するときは本人の前で氏名欄を確認して渡す。

・面談が終われば、その都度パソコン上で開いているウィンドウは一旦すべて閉じる。

・知らないうちに個人情報の書類が混入しないように、事務所内に置いてあるゴミ箱にはすべて、蓋(ふた)をしている。

・窓口で渡した求人票やチラシや案内状で来所者が持って帰らなかった場合でも、相談員が知らないうちに個人情報に属するメモ等が書かれてあるかもしれないので必ずシュレッダーをする。

・職員が、求職者の氏名で検索して個人情報をアクセスした場合はアクセス履歴が残る。(業務上以外の目的で個人情報を参照したら、誰がアクセスしたかがすぐわかるようになっている)

・たまたま知り合いが来窓しても、自分の家族にもそのことを言ってはいけない、退職後も守秘義務があることを遵守する念書に署名させられる。           ・・・などなど 

 

●インシデントが発生したら・・・

 我々相談員も大切な求職者の個人情報を預かっているのだから、厳しいルールのもとで細心の注意を払っていた。

 とはいえ、全国規模となると個人情報漏洩を起こした事案もあり重大なインシデントは公表もされている。悪意をもった漏洩事案は皆無で、ほとんどが担当者の不注意による紛失や誤送付・誤発行である。漏洩事案の当事者は、軽重はあるが懲戒処分をうけることになり、当事者の相当の精神的落ち込みはあっただろうとの想像は難くない。

 

 私も漏洩事案はないが、ヒヤリ・ハットは6年間で2度ほど経験した。パソコンで前相談者の画面をクローズせず、そのまま紹介状を別の人の名前で発行しそうになったが、幸い、常に名前を確認する習慣がついていたので、印刷する前に気づき未然に防止することができた。普段はしないミスだが体調が悪かったり、たまたま作業中に電話が掛かってきて流れが中断した時など、ついうっかりということがあった。

 

 個人情報漏洩のインシデントを起こすと、私のような会計年度任用職員(非正規公務員はほぼ、次年度契約してもらえない。実質の予定解雇通告である。それぐらい厳しい処分を受けるのである。

そういう意味でハローワークの個人情報管理に関しては安心してもらってもいいと思う。

 

●自己開示で支援をうける方がお得

 それでも冒頭の求職の申込をするとき、個人情報は「あまり言いたくない」という来所者がいた。

 もちろん、言いたくないこと・知られたくないことは無理に書かなくてもいいし、自分で仕事がさがせるのであれば、最低限の項目だけを登録すればいい。

 ただ、自分で仕事を探すことに自信がない、就職活動をする上でいろいろアドバイスが欲しいという場合は、できるだけ自己開示してもらったほうがよい。

例えば 第10話 私離婚します で触れたように、

単に事務職の求人を探しているだけなのか、離婚する予定で探しているのか、我々相談員も気合の入れ方が少し変わってくる。依怙贔屓していると言われそうだが、後者だと早く仕事を見つけてあげたいという気持ちがより沸いてくるのが人情というものである。

(人にもよるが)面倒見のよさそうな相談員なら、自己開示をして味方にする。ハローワークのうまい活用方法の一つでもある。

 

●オープンとクローズ

 ハローワークで障害者が応募する場合はオープン応募クローズ応募の2通りがある。オープン応募とは、本人の了解を得て障害者手帳をもっていることを、応募先に事前に通知するのだが、クローズ応募とはそのことを通知せず一般の健常者として応募する方法である。

 ハローワークには障害者専門の職業相談窓口があり、そこで障害者専用の求人情報を提供しており、オープン応募の場合は原則ここで紹介状を発行し、採用になった場合は事業所に助成金が支給される仕組みである。

 クローズの場合は、事業所に障害者手帳を保有していることは通知せずに、一般の求人に応募することになり、選考基準も健常者と同じレベルとなるので、正直、厳しい結果が予想される。

 また、採用された場合でも、後で障害者手帳を保有していたことが発覚した場合、仕事ぶりに問題なければ特におとがめなしのことが多いが、仕事でミスが多かったり職場でトラブルを起こしていた場合は、業務に支障のあること(すなわち障害)を隠して入社したということになり、身分詐称で減俸されたり、配置転換されたり、最悪解雇される危険性もある。

 

 

●職業紹介の実態

 身体障害者や知的障害者は比較的障害受容性が高い人が多く、通常はオープンで応募することになるのだが精神障害者はクローズで応募する人が散見された。

 私が担当していた一般相談窓口に統合失調症の精神障害者保健福祉手帳をもっている応募者が食品製造業の正社員求人にクローズで応募したいと来窓してきた。話していると、やはりコミュニケーションでやや違和感があり、正直、このままクローズで応募しても採用はむずかしいだろうと予想できたので、

「オープンで応募しないのですか?」と尋ねると「別に言わなくても自分は働けると思う」、「賃金が安くなる」などの理由を挙げてクローズ応募を希望していた。

 本人の意志を尊重し、そのまま紹介状を発行するのだが、残念ながら採用になることは稀である。たとえ採用になっても人間関係や仕事が覚えられないという理由から短期間で退職してしまうことになることが多い。

(この他にもてんかんを持つ人や発達障害の人も、クローズで応募したいと来窓されたこともあった。)

 

●グレーゾーンの人たち

 また、精神障害者保健福祉手帳は持たないが、素人目に見ても明らかに精神疾患を抱えているだろうと想像できる人も来窓してきた。いわゆるグレーゾーンの人達である。

 情緒不安定で、話す内容が一貫しなかったり、急に攻撃的になったり大声を発したりして会話が成り立たないなど、窓口での応対に苦労したことも多かった。

 専門医に診てもらえばはっきりするし治療法もあると思うのだが、認めたくないなどの理由からか、病院に行きたがらないようである。

 こういう人は障害者手帳をもたないため余計に就職は難しくなる。そのままだといずれ生活困窮者となり最悪、生活保護になってしまうことになる。

 家族の協力があれば、時間をかけてサポートグループに参加したり、本人に医者に診てもらうよう粘り強く説得することも出来るのだが、家族が消極的だったり、家族と疎遠になっている場合は、誰からも強く医者に診てもらえとは言われないことから、本人が行き詰まりその気になるまで待つしかない。

 一応、地方自治体内や地方自治体から委託を受けたNPO法人等で相談窓口はあるが、本人がまず障害を個性と考え受容することが就労の第一歩といえる。

 

●障害者法定雇用率が改訂されると・・・

 障害者の法定雇用率が、移行期間を経て令和8年には2.7になるため、計算上は従業員37名(※)以上の企業には1名以上の雇用が義務付けられる計算だ。(※業種により除外率が設定されているので一律ではない)

 企業は法定雇用率を下回るとペナルティ(障害者雇用納付金:1人あたり月5万円)を国に支払わなくてならないことから、中小企業も障害者雇用に真剣に取り組むことが求められるようになった。

 国も障害者雇用のノウハウが不足している障害者雇用ゼロの中小企業に対して支援強化に取り組もうとしており、障害者の雇用枠も拡がる期待がある。

 

 コロナ禍では、我々に多大な経済的な損失と精神的負担を強いられたが、一方でテレワークでの就業形態を広め、世間での認知度と理解度が高まったのは、障害者の就労にとっては朗報だったような気がする。

 また、これからロボットやICTの普及により、障害者ではこれまで難しいと言われていた接客業やサービス業もリモート操作での就労が可能になってくる。徐々にではあるが働けるフィールドが拡がっていくはずだ。

 現状の障害者の就労現場では、様々な問題や課題があることは漏れ伝わってくるが、こうした問題や課題を乗り越え、健常者と障害者が共生し、お互いを尊重しながら、自然体で働ける職場が実現していくことを願ってやまない。

 高齢のため、自営していた鈑金塗装業を廃業。国民年金は保険料の未払期間があるため月4万円くらいしかもらえず。年金だけでは生活が苦しい。貯金も少ない上に、だんだん目減りしてきており、このままだと生活できなくなりそうなので少しでも働きたいと来窓。

 

●キリギリス人生の末路

 元気なころは年600万円以上の収入がありブイブイいわせていたらしいのだが、

「その間、老後のことを考えて、お金は貯めなかったのですか?」と聞くと、ニヤッと笑って

「まあ、そういうことや」と恥ずかしそうに返答。

 

 まさに「アリとキリギリス」のキリギリス人生である。

 この他にも、高齢のため飲食店や電気工事業などを廃業した元自営業の人が少ないが同じような理由で仕事探しに相談に来られていた。

(これらの人は個人事業主ですが、店舗を構えているのでフリーランスと呼ばず、ここでは自営業の人と呼ぶこととします)

 

 

●自営業廃業後の再就職は困難?

 現役世代の頃は自営業でそこそこ稼いでいたのだが、遊興費やギャンブルにお金を使ってしまい、国民年金の保険料もまともに支払わず、貯金や個人年金の積み立てもせず、「宵越しの金はもたないのが粋、明日は明日の風が吹く、何とかなるさ」という昭和の職人気質のおじいさん達に多いパターンである。

 

 残念ながら70歳に近い元自営業の人を雇用してくれる会社はほとんどない。特に雇う側は年齢以外にも、チームプレイが苦手、人に使われることに慣れていないことから使いづらいのではないかという懸念はぬぐい切れないところだ。

 この人は70歳を過ぎていることから、就労は難しいのでこのままいくと生活保護になる。持ち家や車は手放すことになり、預金残高の提示を求められたり、賃貸に住んでいる場合は、家賃の安い公営住宅などへの転居を求められたりする。子供や兄弟にも問い合わせが入るなど、本人にとっても不本意な対応を求められるので嫌がる人も多いが、本当に生活できなくなるのであれば、致し方ないところではある。

 

●生活保護へのやりきれない思い

 とはいえ、生活保護費の原資は税金である。若い頃から貧困でぎりぎりの生活を強いられた人や病気やけがで思うように働くことができず、障害年金ももらえない人達には、公助・共助の考え方で支援すればいいが、現役世代ではそこそこお金を稼いでいたのに、年金保険料を払わず遊びや贅沢をしてお金を使い切ってしまった人達まで、税金を使って生活保護費を支給するには正直、釈然とはしない。ただ、済んでしまったことなので今更どうしようもない。

 

 今でこそ、老後2千万円問題でマスコミにとりあげられ、老後に備えることについての具体的な数字を前に危機感を持つ人が増えてきたが、(ただし、あまりこの2千万円という数字には惑わされないほうがいい。実際にこの金額が全員必要になるわけでなく、マスコミや野党議員が政府批判に利用した側面があるので、冷静に自分なりの老後に必要な金額を算出して判断することをお勧めします)昭和から平成のころは、投資はバクチという考え方が主流で、ドル・コスト平均法による投資、積立てNISAやiDeCoなど安定して資産を増やすという仕組みもなく、安全性の高い継続した投資などの考え方が普及していない上に、なんとかなるだろうという安易な気持ちで、老後のためにお金を貯めておくという発想に乏しい自営業の人が多かったのは致し方ないのかもしれない。

 

今後の対策としては・・・

・年金は安心して老後を送るために、必要条件だが十分条件ではないこと。

・投資は一攫千金を目指すものではなく、安定した老後資金を確保するために長期にわたって継続的に実施するものであること。

・安易に生活保護に流れないように、厳しい生活実態と受給のための不本意なハードルがあること。

これらを中心に、時間はかかるかもしれないが、国を挙げて中学生や高校生などの若いうちからマネー教育を実施して、「キリギリス人生」を防いでほしいところだ。

 

●起業する時は老後に備えることを忘れずに

 今はフリーランスとしてパソコン1台あれば簡単に起業できる。うまく軌道に乗れば経済的に豊かな生活を送ることができる時代だ。

 ただ、どんなものには必ず賞味期限や寿命がある。フリーランスといえども、定年はないものの、いずれ「本当の人生」を終える前に「職業人生」を終える時が来る。加齢にともなう知力・体力の衰えや、病気などで仕事ができなくなるのが現実である。職業人生を終えてから本当の人生を終えるまでの期間の差が短ければ短いほどいいのだが、人生100年時代を迎え、これから益々広がる可能性が高い。自分だけは大丈夫、なんとかなるとは考えない方がいい。

 サラリーマンと違い、厚生年金が受給できない(あるいは少ない)フリーランスは(たっぷり稼いで資産形成ができた方を除いて)この期間に備える準備を現役世代のうちから着実に進めてほしいところだ。

(第59話:前編)からの続き

●採否の分かれ目は主観で決まる

 採否の決定は、面接官のちょっとした印象で左右されることがある。人事部で採用を担当していた頃、あまり大きな声では言えないが、役員面接後に社長に判断を求めると社長の主観的な印象から「まあ、いいんじゃないの」という鶴の一声で、採用を決めていたこともあった。

 そういう意味で、30分一本勝負の限られた時間で、元来その人をすべて理解するのは無理なことなので、少しでも好印象をもってもらうために、自分なりにできる限りの策を講じるべきである。

 

●話し方テクニック

 面接時の話し方についても、対策本やネットでいろいろ書かれてあるので参考にしてもらえればいいが、私が面接をしたとき、もう少しこんな話し方をすればもっと印象が良くなるのにもったいないなあ~ と感じたことを中心に、ちょっとした話し方テクニックをまとめてみた。

 

〇ゆっくりめに話す

 声はやや低めでゆっくり話すと落ち着いた印象になる。普段の話す速さの0.8~0.9倍速くらいがいいかと思う。早口だと話す内容の信憑性が低くなる印象を与えてしまう。緊張すると早口になる人が多いが、日頃から低めでゆっくり話すよう心がけながら、習慣になるまで練習してほしい。これなら一人でいつでもできるはずである。

 

〇クローズ質問にもオープンで答える

 クローズ質問というのは「はい」「いいえ」 だけで答えられる質問であり、オープン質問というのは、「はい」「いいえ」などの選択肢がなく、回答者が自由に考えて答える質問のことである。前編で述べた想定質問はすべてオープン質問になっている。

 熟練の面接官はできるだけオープン質問をするように心がけているが、未熟な面接官は平気でクローズ質問をしてくる。そんな時は、その未熟さにつけ込み、例えば・・・

「前職は派遣だったんですね?」「はい、そうです」だけで終わらず、「派遣という立場でしたが若手の正社員の教育係も任され、技術指導やメンタル面での相談役の役割も担っていました。」などと自分が聞いてほしいことを誘導するような事項を、短くことばで付加するのである。そこから話が拡がり自分のペースに持ち込めて自己アピールにつなげることができる。(ただし、あまり長くなると「そこまでは聞いていない」と思われるので注意が必要)

 

〇沈黙は厳禁

 回答に窮した質問をされた場合、絶対にしてはいけないことは「沈黙」である。テレビやラジオでは15秒以上沈黙が続くと「放送事故」扱いになる。面接でも(私の主観だが)7秒以上沈黙が続くと「面接事故」となり評価が大幅に下がる。こういう場合「ちょっと答えがでてきません」「難しい質問なのでどう答えたらいいかわかりません」とか言って会話をつなぐことが大事である。面接官も質問を変えてくれることが多い。

 

〇同じことはそのまま繰り返して言わない

 一度話したことと同じことを言わなければならない質問をされた時、答える前に、「前にも言いましたが」「繰り返すようですが」「履歴書に書いてある通りで恐縮ですが」などのことわり語」を必ず言うこと。

 これを言わないと、その話はもう聞いた、なんども同じ事を言う頭が悪そうな人と思われ、印象が悪くなる。この「ことわり語」を言うだけで、前に話したことを承知した上で話していると理解してもらえるし、自分の用意した回答パターンや言葉のボキャブラリーの不足をカバーできる。

 このほかにも聞かれたこと以外で自己アピールしたくなったら、「ご質問とは少し話がずれるかもしれませんが・・・」「答えになっていないかもしれませんが・・・」とか言ってから話すと、すんなり聞いてもらえることが多い。

 

〇締めが大事、終わり方で全体の印象が決まる。

 最後に質問はありませんか?と聞かれて本当に何もない場合、「ありません」で終わるのではなく、その場合は決意表明をするのである。「質問はありませんが、今日は緊張してしまい、うまく答えられなかったこともありましたが、もし縁あってこちらでお世話になることになりましたら、一生懸命働き貴社に貢献したいと思います。どうぞよろしくお願いします」と言って締めると印象が良くなる。

 

●面接官も緊張します

 実は、人事部で採用業務を担当していた経験から申し上げると、面接官も面接は大変なのである。30分くらいでその人の「人となり」を判断し採用するかしないかを決めなければならないのである。この人を採用しても、ちゃんと会社に貢献してくれるだろうか、もし採用しても「はずれ」で、現場から「何というやつを採用したんだ」と言われたらどうしよう・・・そんなことを考えると面接される側よりもプレッシャーがかかると言ってもいいくらいだ。面接官も緊張しているのだなと考えると少し心の余裕が生まれるはずである。