●私、離婚します! ◇40代前半女性◇

 求職者登録をするため、初めてハローワークに来所。席にすわるなり、

「私、もうすぐ離婚するんです。自立しないといけないので今日、仕事を探しにきました。」

思わず、

「登録の理由やプライベートなことは、ここでは言わなくていいですよ」と伝えても

「いいんです。知っておいてもらったほうが、話が早いので・・・」とさばさばした口調で語り始める。

 

 ただ、職歴は、結婚前に勤めていた事務職しか経験がなく、他に自己アピールできるところが少ないので、どんな仕事に応募したらいいか悩んでいるとのこと。

 

 実は、ハローワークには、こういう女性はよく来られる。離婚率が30%を超えるご時世だから、なにも珍しいことではない。

 特に子供がいると、シングルマザーとして負担が増すため、本人のストレスは相当なものになってくるはずである。

 こうした人から仕事探しの相談を受けた場合、以下のような助言・支援をしていた。

 

 まず、職種を選定する前に、事前に生活基盤に関する確認をする。具体的には・・・

生活拠点の見通しは立っているのか? 生活費は月どれくらいかかりそうか?

・いつまでに仕事をさがさないといけないか?(離婚の時期、慰謝料、貯金とのからみ?)

(子供がいる場合)相手から養育費はもらえそうか? 児童扶養手当は申請できるか? 家族(実父母のことが多い)の協力は得られるのか?  などなど

 

 こうしたことをふまえて まず、労働条件(希望月収、雇用形態(フルタイムかパートか)、就労時間、就労場所、通勤手段、就労日(土日休み希望か?)、加入保険(健康・厚生))等の具体的な条件を整理する。

 この場合、譲れる条件と譲れない条件を整理し、幅を持たせておくことが大事。

  具体的な就職活動のポイントとして下記の3点をアドバイスしていた。

 

 自分の「強み」を整理する。

 

 資格や経験があればベターだが、資格や経験(テクニカルスキル)はなくても、ポータブルスキル:どこでも通じる能力(例えば、企画力、提案力、指導力、交渉力、忍耐力、規律性、几帳面さ、コミュニケーション能力 など)を強みとしてアピールしていく。

 こう書くと難しく聞こえるが要は・・・

◆人と話すのが好きか?◆人に教えるのが得意か?◆アイデアがよく浮かぶほうか?◆クレーム対応に慣れているか?◆人の世話をするのが好きか?◆約束や決められたルールは守れるか?◆同じ仕事でも集中力をもって継続できるか?◆細かい仕事は得意か?◆ 

   ・・などなど 自分の性格を自己分析し、自己理解を深め、強みとしてアピールする。

 

  また、専業主婦をしていた時でも、例えば学校行事に積極的に参加したり、PTA活動や自治会活動の幹事役などをしていたならそれも、しっかりアピールする。車でいうとエンジンを完全に止めていたのではなく、仕事を離れている期間中も、アイドリング状態でいつでも職場復帰できるようにしていたイメージをもってもらう。

 

②  過去の経験職種にとらわれず、広くさがすこと。

  仕事への適性は、やってみないとわからない。例えば事務職しか経験がないので、短絡的に同じ事務職に絞る必要はない。未経験でもやってみたらハマるかもしれないし、そこから新たなキャリア形成のスタートを切れるかもしれない。

  不人気職種(例えば、介護、保育、運送、警備等)も頭から避けるのではなく、自分なりに調査したり、働いている知り合いや友人の話を聞いてみるなど、広く職業研究し、風評だけで判断しないこと。(3K職種と言われても、現にそこで一生懸命に働いている人がいることを忘れてはいけない)

 

③ 職業訓練を検討する。

  どうしても、未経験の職種で不安なら職業訓練を検討してみる。

いろいろなコースがあり、ハローワークなら、ほぼ無料で受講できる(ただし開講のタイミングがある)。訓練終了後にはそのまま面接会が設定される場合もあり、就職は有利になる。

  医療事務・簿記・介護・CADなどのコース以外にも、電気工事士・機械加工など 男っぽい訓練でも女性も受講できるし歓迎されることが多い。チャレンジしてみるのもおもしろい。

 

 この他、子供がいる場合は、子育てに理解のある会社かどうかを確認する。

 育児休業の実績の有無や、学校行事や急な休みを優先してくれるかどうか、ハローワークの求人票をみれば、ある程度分かるようになっている。(フリーワード検索で「学校行事」「急な休み」で検索すると早い)

 

 多くのハローワークには、こうした方を支援するマザーズコーナーを設けており、そこで相談することでいろいろな情報提供や助言を得ることができるので、ぜひ利用してほしい。

 

 面談の最後には、「離婚の話し合いや手続きで、大変かもしれないが、ここが踏ん張りどころですよ」と励ますようにしていた。