●テレビCMが盛んです

 テレビで大手の鉄鋼メーカー、素材メーカーやゼネコン、IT企業など一般消費者とは直接取引がない企業が有名女性タレントを起用して、膨大な広告宣伝費を使って求人広告を流している。

 これは、ほとんどが新卒学生およびその親向けのブランディング戦略によるリクルートが目的である。

 自分の子どもが応募しようとしたところ「そんな会社聞いたことがないからやめときなさい」と反対されないように企業の知名度とイメージアップを図るため、ゴールデンタイムにも流しているのである。今は恒常的に売り手市場が定着した感がある。

 大手企業でもこうして人集めには苦労しているくらいなので、ましてや広告宣伝や有料の紹介会社など支払う手数料(求人費)にお金をかけられない中小企業となると、採用の苦労が尽きない。

 もっと人を採用したいのだが、どうしたら応募者数が増えるのか、社労士も社長さんから相談を受けることが多い。

●HWでもいろいろサービスがありますが・・

 こうした問題の解決策の一つとして、一部のハローワーク(HW)ではリクエスト制度といって、求職者の相談窓口で、求人者から、自社の求人票を希望条件に該当する求職者に(事業所には匿名で)郵送するサービスを受付ていた。(ただし、利用回数と送付数には上限あり)

 求人をだしているが全く応募がなく、人手不足で困っている地元の中小企業の採用担当者が時々来窓されて利用されていたが、実際のところ、求人票を郵送してもその求人票を窓口まで持参して応募する人はあまりいなかった。

 採用担当者もあまり期待していない感があったが、他に策もなく「ダメ元」の思いで依頼されていた。

(この他にも、場所にもよるがHWの会議室等を利用した個別の就職面接会を実施するサービスもあるので希望するなら一度窓口で相談してみてほしい)

 

 従業員が20~80人くらいの中小企業が多く、その際、採用担当者からいろいろ悩みを聞くことも多かった。

 「うちは、給料はそんなに高くないけど、社長は社員思いのいい人で、まあまあええ会社やと思うんやけど、応募が無いんや」

 「特に能力の高い人を求めているわけではなく、真面目にコッコツ長く働いてくれる人でええんやけど・・・。窓口でいい人がいたら、うちの求人を勧めてくれへんか」

など、切実な感じでよく相談(依頼)をうけていた。

 

●求人票の見るところ

一般的に、応募者数を伸ばす方法としては・・・

・HW以外にも他の求人メディア(有料・無料)に掲載し露出度を上げる。

・ホームページで継続した情報発信をしながら企業イメージをあげる。

競合他社の求人と比べて、雇用条件(賃金、休日等)に遜色はないか確認する。

 などが考えられるが、残念ながら即効薬はない。

 

 採用担当者には、求職者は求人票のどこを見ているか? 何を重視するか?という観点で気づいた範囲でアドバイスしていた。

 

 まず、求職者が真っ先に求人票で確認するところは、仕事の内容、賃金、年間休日ということになる。

○仕事の内容

 仕事の内容はできるだけ具体的に記載すること。これからはキャリア採用の場合、ジョブ型雇用が主流となっていく。中小企業では職務内容を明確化することは難しいが、例えば「一般事務」だけではなくて「備品管理、受発注業務、伝票処理、役員秘書、電話の応対、来客へのお茶出し、官公庁への届け出 など」とできるだけ具体的に書くことにより、そこで働くイメージがわきやすい。

 さらに、この仕事を経験するとこんなスキルが身につきますということが記載されてあればさらに印象はよくなる。

 

○賃金

 賃金は一定額の範囲内なら1円でも多いところという求職者は少なかった。

 ただ、昇給のイメージがわきやすいように、例えば 賃金モデルの一例として

  30歳  25万円~30万円

  35歳  32万円~38万円

        :

などと書かれてると、自分のキャリアアップと生活基盤の安定がイメージできるようになり、応募につながることが考えられる。

 また、経営リスク(人件費リスク)を考慮するあまり、月額給与は押さえた金額にして、業績連動型の賞与を安定的に高額支給する経営方針の場合、年収ベースでは同額になることが多いのだが求職者にはわかりにくい。給与体系を変えることは大変だが、今の賃上げの流れに合わせて、この機会に賞与の支給月数は減っても、月額給与の思い切った賃上げを検討するいいタイミングかもしれない。

 

○年間休日

 正直、今のご時世、年間休日は、製造業では120日以上、サービス業でも105日以上はないと厳しい。

 実際、窓口で求人情報を提供する際に、賃金が多少よくても「この会社は年間休日が少ないのでやめておく」という声が多かったような気がする。併せて平均時間外労働も気にする人も多かった。今の若い人はワークライフバランスを重視する傾向が強いようだ。

 この他、転勤のないことも若い人からよく確認をされた。中小企業は該当しないことが多いが、大手企業も「地域限定正社員」という転勤のない職種を設けるようになってきている。

 

●会社のいいところをできるだけ「見える化」する

 そして、なによりいちばん気にするのは「ここは安心して働けるか?」という不安に応えられるようなことが書かれてあるかということになる。

 こうした不安を少しでも払拭できるように、求人票の「特記事項」欄に具体的に記載することを勧めていた。

 例えば・・・ 

・この3年で社員○人中、自己都合で退職した人は○人

・正社員の平均勤続年数○年

・年次有給休暇取得率80%以上

・これまでの育児休業利用者○名

・ハラスメント撲滅運動を実施中(通報窓口あり)

・1年に2回、自己申告制度があります

・資格取得に報奨金制度あります

・応募する前に事前の会社見学歓迎。先輩社員との座談会も可能です。仕事のやりがい以外にもつらいことも聞けます。 など

 

 この他『(第75話)ブラックorホワイト迷ったら・・・』で企業の見極め方法を述べたように、国や社労士による優良企業の認証をうけて、求人票に記載するのも有効かと思われる。

 ここで「風通しのいいアットホームな雰囲気です」など抽象的なことを書いても、他に書くことがないのかと思われ逆に印象が悪くなる。

 これらはいずれも中小企業では難しいことばかりだが、本当にいい人材を採用したいのなら経営者もできる範囲で少しずつでいいので、雇用管理や職場改善をしていかないと、残念ながら応募は増えないことになる。

 

 結局、「応募がない!」と嘆く前に、現在働いている社員の声を大切にし、離職を防ぐ施策を実施して、それをしっかりアピールすることが、応募を増やす一番の方法なのかもしれない。

<前編>からの続き・・・

(第81話)起業はしたけれど<前編>(顧客(法人)の見つけ方) | ボクのハロワ日記 ★ハローワークに来るクセの強い人たち★

顧客(法人)の見つけ方

<ステップ1> ホームページ等、情報発信環境を整備する

 まず、BtoBのビジネスをしたいのなら、自社のホームページ(HP)で情報発信する環境を作る。どんなに規模が小さい会社でも、今のネット時代にHP等の情報発信の環境があるかないかで企業イメージがかなり変わる。企業間で新たに取引を開始する場合、通常相手のHPを確認する事が多い。HPを持たない会社は「ホームレス企業(?)」と思われ印象が悪くなる。

 HPの作成は外部へ委託することもできるが、お金をかけられないというのなら、グーグル,Jimdoなどで、無料で作成・運用できるツールがあるのでそれらを利用して、自社のPRや設備、これまでの宝石の作品集を写真で掲示しておく。

 

<ステップ2> HWISの求人票を確認する

 次に、(これからは多少アナログっぽいやり方になるが・・・)できれば近県、なければ全国で(今回は)宝石加工の求人がでていないかハローワークインターネットサービス(HWIS)で確認する。

(検索操作が面倒であれば、フリーワード検索機能を利用し、「宝石加工」で検索すればよい)

 ハローワークの求人票には必ず会社の規模(資本金や従業員数、設立年)や社長名、住所、電話番号、URL、メールアドレス等の連絡先の他にも、前年度の賞与の実績や平均の時間外労働時間も載っていたりして、求人を出すくらいの企業だから、仕事はあり、そこそこ儲かっているはずである。

 

<ステップ3> 社長あてにDMを送る

 その会社の社長さん宛てに、雇用ではなく請負で仕事をさせてほしいと手紙(☆)かメールを送る。その際、作品集や取引実績、自社URLやQRコードを添付する。(メールもよいが、スルーされることが多く訴求力に欠けるので、できれば手紙がお勧め)

 ☆サンプルイメージです。ご参考までに。 

 

 

<ステップ4> その後、できれば、電話でフォローをする。

 

 おそらくせんみつ(※)」の世界になるかもしれないが、じっとして何もやらないよりはましでは・・などとアドバイスしてみた。

(※)1000分の3、1000通送って反応があるのが3件 という意味

 

【参考】なお、求人を出している企業が少なければ、一応、対象の顧客先になりそうな業界の企業を下記サイトから地域や業種、会社規模で検索することもできるが(一部有料)、逆に数が多すぎたり、儲かっている会社かどうかは不明なので絞り込むのに苦労するかもしれない。

https://baseconnect.in/

 

●HWISの求人票は「顧客情報の宝庫

 「ええこと聞いたわ、参考にするわ」と言って、結局、全国ベースの宝石加工の求人票を受け取って、自分自身の職業相談もすることなく急いで離窓された。(なんか損をした気分・・・)

 あまり大きな声ではいえないが、この相談を通じてHWISの求人情報は、求職者むけ以外にも、こうして自営業者・フリーランスの法人顧客開拓にも活用できるのではないかと感じてしまった。

 

 今回の宝石加工以外にも、WEBデザイナーやシステム開発など、テレワークが可能で場所を選ばない仕事など、起業している同じ業種の求人を検索することで前述のように雇用ではなく請負の顧客開拓のツールとしての利用できるかもしれない。

 また、士業の顧客開拓などにも、得意な業界に絞り込んで顧客発掘に活用できるかもしれない。

 

 今回はあくまで顧客開拓の一つの方法論としての可能性を示したものだが、もし顧客(法人)の開拓方法に苦慮しているのであれば、参考にしてもらえれば幸いである。

 

●内職は紹介できません

 なお、前述の通りハローワーク(HW)の職業紹介事業は原則、雇用契約を締結することが大前提である。

 従って、家族の介護や自身の持病のため、在宅の仕事を希望するがパソコンやスマホに疎い相談者から「内職の仕事はありませんか」という相談を何度か受けたことがあるが、請負契約となるので残念ながらHWでは斡旋はできないと回答していた。

 ネット上の内職サイトでは時々見つけることができるが、地方では材料の受け取りや完成品の納品には自家用車が必要になることも多く、なかなかハードルが高いようだ。

●起業はしたけれど・・

 起業(独立)した人が時々、仕事探しに相談に来ていた。ハローワークに相談にくるということは、起業した事業がうまくいっていないことになる。

 高齢者で年齢的な理由で廃業した場合は(第60話)自営業(フリーランス)、キリギリス人生の末路

で書かせていただいたが、30~50歳代のまだまだ働き盛りの人では、起業したものの仕事や売上が減り、生活のため(廃業はせずに)空いている時間に少しでも働きたいという相談が多かった。

 

起業もいろいろ

 2010年頃までは、起業(独立)しても1年で5割、3年でプラス3割が廃業すると言われていた。しかも店舗を構えたり設備投資をすると、まとまった資金も必要なので、下手をすると多額の負債を抱えることにもなり、実際に起業するとなると相当の覚悟が必要だった。

 ただ、最近はパソコン1台で簡単に副業として起業することも可能で、起業するビジネススタイルも、従来のBtoBやBtoC以外にも最近はネット上でのCtoCやBtoBtoC、CtoBtoCなど多様なビジネススタイルも可能となり、初期投資が少額で済み、とりあえずやってみようと挑戦しやすくなってきていることは、資金がなくても商才に長けている人にとってはいいチャンスだと思う。

 

 こうしたネットビジネスをまず副業から始めたい人向けの支援サービスやセミナー等については、SNS上でいろいろと掲載されているので、そちらを参考にしてもらうとして、今回は昔ながらのBtoBのビジネススタイルで起業(独立)した人が職業相談に来た話をしてみたい。

 

起業に必要なものは?

 BtoBのビジネスを起業(独立)する時に、まず必要なものは「当面の顧客」「営業力」と言われている。顧客は知人や友人、前職のコネ、何でもいいので人脈をフル動員して紹介してもらい、さらにその顧客から新しい顧客を紹介してもらうのがベストなのだが、それを確保せずに、「この商品があれば必ず売れるはずだ、この技術や資格・サービスがあれば必ず仕事はあるはずだ」と勝手な思い込みから起業すると、厳しい結果が待っている。

 

●顧客(法人)が見つかりません

 40歳代男性。宝石加工の求人はないかと来窓。一応探してみたが、(全国ベースではいくつかあったが)さすがに地方でこんなレアな求人はなかった。本人も無理だろうとはわかっていた様子。

 事情を聴くと・・・

 数年前に宝石加工の会社を起業したが、コロナ禍で仕事が激減してしまい、生活が苦しくなり、廃業はしないが、外」でも働くことにしたとこと。

 それなら宝石加工にとらわれず、職種を広げて探すようアドバイスしたのだが、やはり宝石加工にこだわりたいのか気が乗らない様子。

 求人がないのだからどうしようもないのだが、起業したときの苦労話などいろいろ話しているうちに本人から、知り合いやコネもなく新規の顧客をどう開拓すればいいか困っているとの話を聞かされた。

 当面の顧客は確保して起業したものの、コロナ禍という不運はあったとはいえ、起業後の継続的な営業活動をしなかった、あるいはできなかったためと思われる。

 

 本来なら、ここでは就職活動の相談には応じるが、当然ながら事業の経営や営業的な相談には応じられないので、通常は「そうですか、大変ですね」ぐらいの回答でスルーすべきではあったが、私の場合、生来のおせっかいな性格もあり、たまたま前職で人事部の前に法人営業の経験があったので、顧客(法人)開拓方法について、少しだけ日頃の職業紹介を通じて感じていることを話してみた。

 

長くなるので次回の後編につづく

(第81話)起業はしたけれど<後編>(顧客(法人)の見つけ方) | ボクのハロワ日記 ★ハローワークに来るクセの強い人たち★

●仕事が合いません

 仕事が合わなかったと言って辞めてくる若者が何度か相談にきた。次に就きたい仕事を聞くと、特にやりたい仕事が見つからないとのこと。

 こういう場合、本来なら時間をかけてじっくり相談に乗ってあげたいところだが、一般の相談窓口では、情報提供や職業紹介を優先させて、できるだけ時間をかけずに「早く回さない」といけないので、じっくり相談に乗ってもらえる「個別支援窓口」を紹介するのだが、事前予約が必要なこともあり、申し込む人はあまりいなかった。

 自分がどんな職業に向いているかわからないのであれば、(ハローワークでは実施していないが)職業適性検査として、キャリアコンサルタントがよく実施するVRTや厚労省が推奨するGATBなどがある。この他にも、地元の地方公共団体や委託をうけた外郭団体や NPO法人などが様々な若者向けに職業適性検査を実施しているので受けてみたい人は確認してほしい。

 ただ、適性検査を受けて来た人に聞くと、自分の職業適性を知ることはできるが、「あなたは〇〇職に向いている」という結果がでても本当に自分に向いているのかピンとこない人が多かった。

 向いている仕事を提示されても、自分がそこで働くイメージがわかないのだと思う。

 

●仕事の内容よりも周りの環境が大事

 自分と仕事のマッチ度を測る指標として、仕事の内容が重視される傾向があるが、長年の職業相談の経験から、仕事の内容よりも労働環境要因(職場環境や人間関係、雇用条件<賃金・体暇・職位>等)の方がその影響が大きいような気がしている。

 そもそも、やりたい仕事など探して見つかるものでもないし、百歩譲って見つかったとしても(起業する場合を除き)その仕事に就くことができるかどうかの保証もない。

 

 初めは、いまいち興味のわかない仕事でも、上司や同僚との円滑な人間関係の中で、ある程度の権限が付与されたり、応分の賃金を受け取ることができるようになり、成功体験を積み上げて、だんだんとその仕事がおもしろくなって、自分のやりたい仕事になっていくというプロセスが一番自然だ。

 どんな仕事でも、自分の周りの労働環境自分の意志が、自分と仕事との「ミスマッチ」を「マッチ」に変えていくような気がしている。

 そういう意味で、人材を育成するという企業風土がある会社で働いていれば、マッチ度は向上する確率は高くなるのは間違いない。

 

 ただ、こればかりは働いてみないとわからない。結局、きっかけは何でもいいので、目の前の仕事でとりあえず働いてみて、その中で一定の妥協はしながら、「ちょっと頑張ってみようかな」という気持ちになり、やりたい仕事にしていくというアプローチが現実的だ。

 働いて「ちょっと頑張ってみようかな」という気持ちを見つけ出せなければ、ミスマッチということになるのだが、その場合も、仕事の内容なのか、環境要因なのかをよく見極めて、次の仕事を探したほうがよい。

 もし、後者が理由なら同じ職種でも構わないことになるし、自分にこの仕事は合わない(ミスマッチ)と短絡的に判断しないことが大切である。 

 

 ただ、こうした「やりたい仕事がみつからない」という相談者も30歳を超えると徐々に来なくなる。歳を重ねて、稼がないと食べていけなくなるので、そんなことも言ってられなくなる現実に気づくようだ。

 そういう意味で「時間」が解決してくれるのかもしれない。

 

 ●こんなミスマッチはいやだ!

 今回は 第80話の記念なのでゆる~~い話として、

『さすがに、こんな職業人はいやだ』を大喜利風にまとめてみました。 お楽しみください。

 

〇 高所恐怖症のとび職人  

〇 血を見ると卒倒する看護師   

〇 土日休みたい遊園地のパフォーマー

〇 金属アレルギーの宝石商店員

〇 方向音痴のツアーコンダクター

〇 加齢臭のするワインソムリエ

〇 人見知りが激しいカウンセラー

〇 元自衛隊で訓練教官をしていたという保育士

〇 霊感が強く背後霊が見える葬儀社の社員

〇 ギャンブル依存症の証券マン

〇 爬虫類を見て「無理!」と叫ぶペットショップ店員

〇 ITを「イット」と読むシステムエンジニア

〇 好きな映画が「ワイルドスピード」という自動車教習所の教官

〇 静電気を異常に怖がる電気工事士

〇 禁煙外来に通院するJT社員

〇 雨男、雨女を自認する気象庁職員

〇 アルコール依存症の杜氏

〇 元暴走族だったタクシー運転手(これはいるかも)

〇 幽霊が怖くて夜間一人で巡回できない警備員

〇 競技する前に日焼け止めクリームを必死に塗るプロサーファー

 

 「そんなやつ おらんやろ!」とツッコミを入れていただければ幸いです。

 また、これ以外にも「こんな職業人はいやだ」がありましたら、コメントでお願いします。

 50歳代前半、独身で一人暮らしの女性。長年、税理士事務所に勤めていたが、自分と同年代の所長が突然、心筋梗塞で亡くなり、事業を引き継いでくれる人もなく、事務所を閉鎖することになり退職を余儀なくされた。

「定年(65歳)まで働かせてもらうはずだったのに・・・」

年金受給まではまだ10年以上あり、途方に暮れているとのこと。

 

 経理事務しか経験がなく、引き続き事務職を希望しているが、この歳では正直、再就職先が見つからない。パートなら見つかるかもしれないが、生活を維持するため正社員の事務職となるとかなり難しい。そのことは相談者も理解している様子。

 あまりに気の毒なので、なんとかしてあげたいと思うのだが妙案はない。話しているうちに職業相談というより人生相談になり、苦悩話を傾聴するだけで面談は終わった。

 この人の場合、少し貯金はあるのですぐには困らないことと、基本手当が最長の330日分が受給できるため、今後のことはじっくり考えることとなった。

●雇用労働者の2大リスク

 雇用労働者(サラリーパーソン)にとって職業人生での最大のリスクは希望しない失業(会社の倒産・廃業・リストラ等)と、自分自身の病気と言われている。(以下、これらを「有事」という) 

 50歳代は加齢とともに病気になる確率も高くなるし、倒産とは無縁の安定した企業に勤務していても、企業は業績不振時だけでなく、黒字でも企業体質改善のためにリストラを実施することがある。その場合、50歳代はまちがいなくターゲットになる年齢層であり、いつ声がかかるかという危険性と隣り合わせで働いていることになる。

 そして、事務職などデスクワークの経験しかない人にとっては、「つぶし」がきかないので、50歳を過ぎてこの「有事」に遭遇するとかなりきつい。

 

●リスクヘッジ策は?

 これらのリスクをヘッジする方法としては、第69話で述べたように現役時代の早めから、キャリアの複線化を図り、「有事」の場合に仕事探しに慌てないよう備えたり、

 

あるいは日頃から、積立NISA・iDeCoなどで資産を増やす、病気やけがの場合は個人的に就業不能保険医療保険に加入するなど、いろいろ対策はあるのだが、それ以外にも、今回のケースを通じて、独身の場合、結婚・再婚しておくこともリスクヘッジ策としてあり得るのかなと感じてしまった。

 実は、冒頭の相談者に「こんな時は、旦那さんがいてくれたらよかったのにねえ~~」と、つい反射的に無神経で失礼なことを言ってしまったのだが、怒りもせず「そのとおりやと思います」と悲しそうな顔をして何度もうなずいていた。

 

 失業したとき、独身の方が気楽という人も多いが、若いうちは確かにそうかもしれないが、50歳くらいになると、「有事」の場合、その期間は配偶者に(多少でも)働いてもらい生活を支えてもらうことができるし、パートでもいいとなると一気に仕事の選択肢が広がる。さらに相談相手がいるということは精神的な安定にもつながるので、余裕をもって次の仕事をさがしたり、治療に専念することができる。

 

結婚は、してもしなくても後悔する

 

 と言われている。また、一般的に「やらなくて後悔するより、やって失敗して後悔するほうがよい」とも言われている。結婚するといろいろ制約をうけるし、「夫婦間の愛」はいずれ間違いなく冷めるが、時間の経過とともに、通常はお互いを支えあう「パートナーシップ」変質していくので、打算的と言われるかもしれないが、こうした「有事」の時の保険として、結婚・再婚を捉える考え方もあるのかなと感じてしまった。

 

●リスク対策は「ハイブリッド」対応で早めに

 一番よくないのは、こうした「有事」に対して、なんとかなるだろうと漫然とすごしていると、今回の相談者のように、いざというときに後悔することになる。

 該当する可能性のある人は、40代までのまだ体力・知力のあるうちから

 ・転職を容易にするための技術、資格の取得

 ・起業、副業のための情報収集やその準備

 ・資産形成のための継続的投資

 ・(未婚の場合)婚活

 などを、1つだけに絞らずハイブリッド型(複合型)で対策を考え、早めに具体的なアクションを起こすことをお勧めしたい。

 

●(見るのもいやな)ゴキブリ亭主でも、いないよりまし?

 このように考えると、既婚の共稼ぎ夫婦の中には、「あんな甲斐性のないゴキブリ亭主、いてもいなくても同じだわ」と考えておられる奥様方もおられるかもしれないが、結婚していること自体がこうした自分自身のキャリア人生における「有事」の際の保険と捉えていただければ、少しは優しい(?)気持ちになって頂けるかなと思う。

(男目線で恐縮だが)ここは忍耐と寛容で辛抱してほしいところだ。

 よく窓口で、中年の女性(主婦)や高齢者から、国の出先機関、地方自治体(市区町村)やその外郭団体、国公立大学の一般事務の求人を探す方法を尋ねられた。

 また、大手企業を定年退職した方からも、こうした公的機関からの求人の提示を求められることがあった。

  これらをハローワークでは「公務求人」という。

●公務求人は(主婦や高齢者には)人気求人

 毎年1月下旬~2月頃、4月からの会計年度任用職員として「公務求人」が多くでる。

 このころになるとハローワークの窓口には、よく公務求人に応募するために来窓される人が多かった。

 主婦や大手企業を定年退職した人意外にも、特定の資格を持った人、民間企業で働いていたがブラックでパワハラなどでつらい目にあって民間企業に勤めることがトラウマになった人などには、雇用期間は限定されることが多いが、とりあえず安心して働けることで人気があった。

 

 具体的には国の出先機関(年金事務所、労働基準監督署、ハローワーク、裁判所、税務署、運輸局、刑務所、自衛隊等)の他に、地元の地方自治体(市区町村)、保健所、学校、図書館、美術館等の各施設、その他外郭団体、公益法人、学校法人などである。

 職種は、一般事務のほかに、窓口業務、接客 (施設来場者向け) 、教員(幼・小・中学校)、保育士、看護師、保健師、精神保健福祉士、介護福祉士、ケアマネ、栄養士、薬剤師、獣医師、社労士、臨床心理士、産業カウンセラー、キャリアコンサルタント、各種技能講師、障害者支援員、学芸員、司書、用務員、調理員(給食センター)等、幅広い職種の求人が出る。

 勤務形態は、職種によってフルタイム、パートとあり、賃金は時給での支払いとなることが多い。

 雇用期間は原則1年、更新も可能だが、職種によっては更新回数に上限がある場合がある。

 

 もし、ご興味ある方は、下記の手順で検索してみて欲しい。

 なお、地方自治体の場合は自治体のホームページにも採用情報として載っていることが多いのでそちらも参考にしてもらえればよい。

 

 ただ、これらの求人は、職種によっては応募者が多いので(特に一般事務職)知らないうちに出て、すぐ消えるのが特徴である。こまめにチェックすることをお勧めする。

 

●公務求人の検索方法

 ハローワークインターネットサービス(HWIS)にアクセスする。

 

 大まかな操作の流れは下記の通り。画面イメージではないのでわかりにくいかもしれないが、その場合は相談窓口で聞いて欲しい。

 

①  『求人情報検索』ボタンをクリック    

 

② 就業場所を指定

 

③ 希望する職種を指定 (任意)

 

④ 『詳細検索条件』ボタンをクリック

        

⑤ 希望する産業 を指定

・公務 国家公務( 9 7 ) ←国の出先機関

    地方公務( 9 8 ) ←地方自治体

・教育 学校教育( 8 1 ) ←大学・高校他

 

⑥ 『OK』 ボタンをクリック

 

⑦ 『検索』 ボタンをクリック

 

 なお、上記で「毎年1月下旬~2月頃」と書かせてもらったが、欠員がでると、年度途中でも求人が出ることがある。ただし、いつ出るかわからないことから、結局、求職活動はこまめに動いた人が得をするようにできているようだ。

 

●便利なフリーワード検索

 ついでに便利な検索方法のうち、フリーワード検索の際のキーワードも記載しておくので参考にしてもらえればうれしい。

 

(注意:◎ OR検索 にチェックを忘れずに)

 

・小さな子供がいる →『学校行事 急な休み』

・コミュニケーションが苦手 →『もくもく 黙々』

・早くお金が欲しい → 『日払い 週払い』

・ブラック企業は避けたい →『働き方改革』

・メンタルで休んでいた →『長期療養者(両立求人)』

・高齢者でも応募可 →『6 0歳以上 6 5歳以上』

・5 0歳までで正社員経験なしか短期→『就職氷河期世代歓迎』

・転職が多い人 →『トライアル』

 

 などで検索すると比較的見つけやすい。ただし、他にもいろいろ条件がある場合もあるので最終的には窓口で相談してもらったほうがよい。

 なお、これらのフリーワードは、他の民間の求人検索サイトでも使えることがあるので、試してみて欲しい。

 

 2月は、節目となる4月から働きたいという人にとっては仕事探しのいいタイミングにもなるので、チャレンジしてほしいところだ。

 

 宝塚歌劇団で、長時間労働とパワハラによる自殺者がでた。

 詳しいいきさつはすでにマスコミで取り上げられており、ご存じの方も多いと思うので省略するが、実はこの事件をきっかけに過去に相談窓口で応対した記憶がよみがえってきた。

 

●華やかな舞台の裏で・・・

 大阪の高級レストランの接客の求人票を持参して2 0代前半の女性が来窓。長身でスタイルも良くどこか垢抜けしており、通常の相談者とはあきらかに違っていた。

 ただ、話しぶりは「若い普通の女の子」といった感じだったが、経歴を確認すると宝塚歌劇団を退団していた。実家がこちらにあり、帰省して落ち着いた環境で次の仕事をさがしたい様子。

 経歴を知り、「もったいなかったですね」と話かけると、即座に

「もったいなくないです!」とやや切れ気味で声を荒げて返答された。

 そんな感じで、それ以上退団の詳しいいきさつなどは聞ける雰囲気ではなかったので、その後は粛々と応募先に連絡して紹介状を発行してお引きとりいただいた。

 その当時は、なにも知らなかったので、せっかく厳しい試験と競争に勝ち抜いて入団したのに本当にもったいないなと思っていたが、この度の一連の事件の報道を聞いて、本人が怒り口調で返答していたことが、なんとなく理解できたような気がした。

 また、新聞によると宙組の同期8人中6人はすでに退団していると報道されていたが、早々に退団する人が多いことにも驚かされた。

 長時間労働でメンタルが病んでいるときに、さらにパワハラが重なると、通常の精神状態なら耐えられたことも、取り返しができない決断をしてしまうのかもしれない。

 

●電通事件とは?

 唐突だが、みなさんは「電通事件」をご存じだろうか? 人事・労務業務の経験者ならご存じの方も多いと思う。

 1 9 9 1年、大手広告代理店の電通で長時間労働とパワハラから若い社員が自殺した事件である。(詳細を知りたければネットで検索してほしい)

 遺族が会社に損害賠償訴訟を起こし、長時間労働やパワハラによる自殺というショッキングな出来事を通して、司法当局もこのままこの問題を放置してはならないという危機感をもったのか、最高裁まで審議され、長時間労働が社会問題として認識されるきっかけとなった事件である。(なお余談だが、電通はその後、管理職研修や管理体制の見直し等で是正していくと言っていたが、2 0 1 5年に再び同じような事件を起こして、若い女子社員が自殺している)

 この判決以降、徐々にではあるが長時間労働の弊害が社会的に認知されるようになり、特に大手企業は長時間労働による社員の健康やメンタルを守るため、労務管理を厳しくするようになった。

 

 国も、実質の野放し状態だった時間外労働の上限の運用を厳しくしたり、企業にストレスチェック制度の導入を義務付け社員のメンタル面でのケアを図るように法整備を進めてきた。

 ただ、中小企業を含め全体を見れば、まだまだ改善途上であることは間違いない。過重労働による過労死や自死する人が無くならないのが現状だ。

 今回は「芸能」という特殊な世界での話なので、経営者も「芸能」の世界では、伝統でもあり、よいパフォーマンスを出すには長時間労働や多少のパワハラもやむなしという甘えがあったのかもしれない。

 長時間労働を労基署から何度も警告を受けておきながら長年放置してきた歌劇団側の責任は重い。再発防止に全身全霊をかけて取り組んでほしいところだ。

●辞めればいいのに・・・は論点が違う

 こうした事件が起こると必ず

「そんなに過重労働を強いられ自殺を考えるほど苦しいのなら、さっさと辞めればいいのに」という声があがる。

 確かに、私ならこんな状態で働かされたら「こんな仕事やってられるか!」と辞表をたたきつけてさっさと辞めるのだが、おそらく精神的に追い込まれている人は、そこまで考えが及ばないのだろう。

 ここで辞めたら「根性無し・逃げた・負け犬」などと思われるのではないか、みんなに迷惑をかけるのではないか・・・など強い責任感や自責の念でメンタルになったり、自分を自ら追い詰めて最悪の決断をしてしまう人もいるのである。

 

 ただ、社労士の立場で言わせていただくと・・・

 従業員には様々な考え方や価値観をもったいろいろな性格の人間がいる。多様な人材がいるからこそ企業も発展・成長するのである。

 重要なことは労働安全衛生法では「事業者は快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通して職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない」と明確に謳われている。

 つまり、事業者には労働者の安全配慮義務があるのに、それを果たしていなかったという明白な法律違反が存在していることにある。本来、事業所は、いろいろなタイプの社員がいることを認識して安全配慮義務を果たさなければならないのである。

 

 法律を守れない、従業員を守れないのなら従業員を雇用する資格はない。

 事業経営者は常に「従業員を守る」という認識をもち、考え方や価値観が時代の流れとともに変化していることを察知して、長時間労働やパワハラの防止に努めてほしいところだ。

 こんな事件はもう二度と起こして欲しくない。

 窓口で、「応募して面接も受けて1週間になるけど、応募先から何の連絡もない、どうなっているのか聞いてほしい」とよく相談(依頼)をうけた。

 採否の結果は通常、事業所からまず応募者本人に連絡し、そのあとハローワーク(以下:HW)に連絡(FAX)をもらうことになっている。

 こんな時、応募者から事業所に直接「結果どうなっていますか」とは聞きづらい気持ちはよく理解できるので、すぐに事業所に連絡を入れて確認するようにしていた。

●採否の連絡がない理由

 この場合、理由は概ね次の3とおりがある。

 採否の決定に時間がかかっていて引き続き検討中の場合。あるいは、もう少し他の応募を待ってから判断したい時。

② 決定したのだが(ほとんどが不採用)、本人やHWに連絡するのを忘れていた。

③ HWには連絡(FAX)したので、本人に伝わったと勝手に思い込んで連絡していなかった。

 

 ①の場合は、通常、採否結果は面接後1週間以内、事情があって遅れる場合は、本人に了解を得て通知できる概ねの時期を告げるというのがビジネスマナーである。

 それを怠っていたので軽く事業所に注意をして、いつごろまでに結果が出るのかを確認し、本人にもう少し待つように伝えていた。

 ②の場合は、理由はともあれ言語道断のふるまいである。実際、電話をすると「あっ、忘れてた!」と言われたこともあった。就職は人の生活が懸かっているということを全く認識していない。事業所には強い口調で、すぐに本人に連絡するよう督促し再発防止を申し入れた。この場合は残念ながらほとんどが不採用である。こんな会社は、社員を大切にしない社風が感じ取ることができるので、採用されなかったことを喜んだ方がいいくらいだと本人を慰めていた。

 ③の場合は、採用と不採用で対応が異なっていた。

<不採用の場合>

 本人に、「不採用」の連絡がHWに来ていると告げる。そのあと、事業所に応募者本人にも通知するよう申し入れをする。

<採用の場合>

 本人には結果を告げず、事業所に早く本人に直接結果を告げるよう申し入れをする。本人には連絡を待つように依頼する。この場合、一刻も早く「採用でしたよ」と伝えたいのだが、万が一のことを考え、事業所から連絡してもらうように業務指導を受けていた。ただ、相談員がなんとなく笑顔になるので応募者も薄々感じとってくれていたようである。

 

●不採用の理由を知っても・・・

 応募して不採用になった場合、その理由を知りたがる応募者がよくいた。不採用の場合、結果通知の際に◇技量不足 ◇他にいい人がいた ◇条件があわない ◇本人が辞退した など、いろいろな理由にチェックするところがあるが、正直に書いてあるかどうかはかなり疑わしい。

 

 事業所も、地元の販売系やサービス業の場合、応募者が顧客になる可能性があり、応募者本人のプライドを傷つけないように、婉曲的な表現にしたいことがあるので本当の理由はわからない。本当は採用レベルとは程遠いのだが、(応募が1人なのに)他にいい人がいたからという理由にする場合があったりするので、あまり理由にとらわれない方がいいと思う。

 

 不採用の理由は、年齢や性別が理由の場合を除き概ね下記の3通りが考えられる。

① 採用レベルには達していたが、他にもっといい人がいたので見送った。

② 採用したかったのだが、就労条件が折り合わなかった。

③ 会社の期待する採用レベルに、達していなかった。

 

 ① の場合は同じクラスの企業を粘り強く応募していけば、いずれ採用になる可能性が高いのであまり心配はいらないのだが ②、③の場合は根本的に希望職種や希望条件の見直しが必要になることがある。

 

 この場合、専門的な言葉で言うと、エンプロイアビリティEmployability(「求職者が企業に雇用される能力」あるいは「就業能力」)、言い換えると「労働市場における自分の市場価値」)が正しく自己理解されていないということになる。

 もっと、わかりやすく言うと、分相応のレベルの求人に応募していないことである。

 

●自分のエンプロイアビリティを知れ!

 それでは、自分のエンプロイアビリティを知るにはどうすればいいか? 

 一番手っ取り早い方法は、窓口の相談員に「職業相談員は何年間されていますか?」と聞いて3年以上なら「絶対怒らないから、条件は問わないので、私の職歴や年齢から判断して私が応募して採用される確率の高そうな求人をいくつか出してもらえないか?」と頼むのも一案である。

 この際、希望職種は限定せず、正社員やフルタイムにもこだわらず、採用される確率で選んでもらうよう依頼することがポイントである。

 

 相談員も経験を重ねると、応募する際に、この人は ◇ほぼ採用 ◇かなり有望 ◇五分五分 ◇微妙・ひょっとしたら ◇まあ、無理だろうな の5段階くらいでなんとなくわかるようになってくる。(もちろん本人には絶対言わないが・・・) 

 

 出された求人をみて、労働市場における自分の価値をある程度知ることができる。

 セカンド・オピニオンも必要なので何人かのベテラン相談員に頼めばよい。

 ショックを受けることになるかもしれないが、それが第三者から見てあなたのエンプロイアビリティとなる。不採用が続く人には、それが現実であることを謙虚に受け止めて参考にしてほしいところだ。

 窓口で、求人票を持参し、「この求人、どれくらいの頻度で出ていますか? 直近で採用になったのはいつごろですか?」という質問をよく受けた。

 離職率が気になることからの質問で、それを聞いてブラック度を測りたいのだと思う。

 ただ、どんな人が採用になったのか、どんな事情で退職したのかはわからない。

 先に言っておくと、応募する会社が自分にとってブラック企業かどうかを確実に見分ける術(すべ)はない。それでも、できる範囲で事前に会社の情報は知っておきたいところだ。

 

●できる範囲での見分ける方法は・・・

 新卒とキャリア採用とでは、若干視点が異なるが、応募先がブラック企業かどうかは、ネットでもいろいろ見分ける方法が載っている。

例えば・・・

〇募集要項(求人票)からは

◆社員数に比べて、募集人数か多い(定着率が悪い)

◆平均の時間外勤務時間が公表されていない。

◆賃金幅が大きすぎる(例:16万円~44万円、実質の歩合制が考えられる) など

 

〇応募時の対応からは

◆面接時の面接官が横柄な態度で応対していないか。もし、社長が面接すれば、その社長の態度で社風はかなり推測できるはずだ。

◆面接終了後、(中小企業の場合)職場見学を依頼して会社の職場環境を確認し雰囲気を感じ取る。空調はあるか、作業場は整理整頓されているか、トイレや休憩所(あれば)は清潔かなど、社員を大事にしているかどうかが伺い知れるはずだ。

 

〇ネットを利用する方法としては

◆求人サイトの口コミ欄を確認する。

◆「転職会議」

【転職会議】企業の口コミ・評判・求人が豊富な転職サイト (jobtalk.jp) や「全国法人リスト」全国法人リスト - 全国約500万件の法人企業を一覧で検索 (houjin.jp)などの企業情報の口コミサイトを参考にする。

◆ハローワークインターネットサービスのフリーワード検索で働き方改革関連認定企業」と入れて検索してみる。

くるみん(「子育てサポート企業」)の認定を受けているか厚労省のホームページで確認する。くるみん認定、プラチナくるみん認定及びトライくるみん認定企業名都道府県別一覧|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

「社労士診断認証制度」(※)の認証をうけているかどうか全国社労士会のホームページで確認する。認証企業検索一覧ページ|社労士診断認証制度 (sr-shindan.jp)

(※)労働社会保険諸法令の遵守や職場環境の改善に積極的に取り組み、企業経営の健全化を進める企業を社労士が診断・認証する制度。参加企業のリクルート活動のバックアップになることを目指している。

などの方法がある。

 ただし、何度も言うが口コミに書かれてあることがすべて正しいとは限らないし、ブラック企業と掲示されていても、軽微な法律違反で行政指導をうけた程度で、社員には直接影響の少ないものも含まれているので一概には断定できない。

 また、逆に、これらの認定を受けていても、配属された部署によりパワハラやいじめがある可能性もあるので注意が必要だ。ただ、決め手には欠けるが参考にはなるとは思う。

 

●結局、迷ったら・・・

 結局、迷ったときによく窓口でアドバイスしていたのは、口コミや悪い噂を信用して応募しなかったり、新卒の場合、採用になったが辞退してしまい、後で、入社した同期社員からそれほどでもない程度だと聞かされたり、数年後急成長していたりして後悔するくらいなら、とりあえず、「ブラックと感じたら躊躇せず退職する」という決意のもとで体験入社して、自分の尺度で判断することも選択肢として提示していた。

 

 企業側に試用期間があるのだから、こちらも一旦入社してから企業を評価する権利もあるはずである。

 体験入社期間最長2か月がお勧め)を自分の心の中で設定して、大事なことは、この期間に自分なりにブラックと判断すれば、迷わず退職するという強い決意をもって入社することである。

 この時注意する点は、ブラック企業は従業員をうまく洗脳して拘束するスキルをもっているところが多い。くれぐれもマインドコントロールされないように、強い気持ちを持つことを忘れてはいけない。メンタルになったらもう手遅れである。

 どうしても退職を言いづらいのであれば、あまりお勧めではないが、退職代行サービスを利用する手もある。

 2か月以内で退職なら履歴書もよごれないし(第65話 履歴書FAQ(履歴書には黙秘権がある)参照)、次の就職活動への影響を最小限にできる。新卒なら第二新卒としての採用枠に応募できる。

 ただし、失業給付(基本手当)は、前職を退職した後に(再就職手当を含め)すでに受給してしまっていると、今回退職する場合には被保険者期間が1年未満となるので受給できないことから、生活費としてある程度の貯えは用意しておく必要があるが・・・。

 

●自分の基準で判断すること

 この場合、繰り返しになるが、自分の尺度・価値観でブラックかどうか判断することは忘れてはいけない。 

 例えば、設立まもない会社は、当初はほぼ全部ブラック企業である。成長過程にある会社もブラックの状態がしばらく続くかもしれない。

 勤務実態はブラックでも、社長が夢を持ち、社員と共有でき、人間関係が良好で、企業の成長、賃金アップや待遇改善が図れる未来を感じたら、それはブラック企業ではないともいえる。自分の力で企業を成長させ、そのまま残って頑張るという選択肢もあることを忘れてはいけない。

●「ブラック」はタブー語

 この仕事(ハローワークでの職業相談員)を始めたころ、窓口で辞めた会社の悪口を言う人がたまにいた。

「あの会社はブラックやで。あんな会社に応募する人がいたら教えたって」

 理由は、いろいろ挙げていたが、その場ではとりあえず「大変でしたね」と同情的なことを言うが、真偽は定かではないし、こういう話は双方から話を聞かないと公平ではないことが相談員にはわかっているため、せいぜい話半分くらいで聞いていた

 うかつに、確かにそれが事実だとしても「その会社は確かにブラックですね」みたいなことを言うと、どこでどう聞いたのかわからないのだが、後でハローワークに会社から 

「お宅の職員がうちの会社のことをブラックと言うたらしいけどほんまか?」という抗議の電話がかかってくることがあったらしい。

 私も、すでに退職したからこうして「ブラック」と言えるのであって、在職中は相談窓口で相談者の口調に合わせて「ブラック」という言葉は使わないように発言には気を付けていた。

 相談員が「ブラック」と言っていいのはコーヒーを注文するときくらいで、相談窓口ではタブー語とされていた。

 

●「ブラック企業」の要件

 そもそも、世の中の企業はほとんどがなんらかのブラック的要素を内在しているし、第22話でもふれたが、ブラック企業の定義は個人によって変わるし、現にそこで働いている人がいることを忘れてはいけない。 

一般的には・・・

・長時間労働・過重労働が常態化

・休日が少ない、年次有給休暇が取れない

・サービス残業を強いる(残業代が出ない)

・雇用契約書がないか、あっても必要事項が不記載か曖昧

・ワンマン社長・上司の言うことは絶対という社風

・パワハラの横行・黙認、精神論を振りかざす  などなど

 

 法的には、労働基準法、労働安全衛生法等の労働関連法規の遵守意識が低く、違反していても是正しようとしない、あるいは是正に消極的な企業ということになる。

 結果として離職率が高くなるのだが、通常、離職率の高い会社は離職率を公表してくれないので歯がゆいところではある。

 

●「ブラック企業」対策の法整備

 国も「ブラック企業対策」とは言わないが、「働き方改革」の一環として、労働者の生活、安全と健康を守るため様々な対策を講じてきている。

 時間外労働の規制強化や違反した場合の罰則強化(違反した場合、法人だけでなく経営者個人が懲罰の対象になる可能性あり)、同一労働同一賃金制度の導入、パワハラ防止法(労働施策総合推進法)など、順次、法整備を実施している。

 わかりやすい例として、過重労働をなくすため、賛否はあるが、来年4月以降は運送業の時間外の上限が設定された。

 

 さらに、改正職業安定法(求人不受理)が令和2年3月に施行されてから、以前は、無料・有料にかかわらず職業紹介事業者は、すべての求人を受理しないといけなかったが、これ以降は、直近で労働関係法令に違反があった企業からの求人は受理しなくてもよいこととなった。

 もし今後、職業紹介事業者が、これらを厳格に運用してもらうようになると、その会社が法令違反したり、行政処分を受けたとなれば、その会社からの求人は一定期間求人受付を拒否できるので、会社も社員募集ができなくなるため困ることになる。職業紹介事業者の厳格な運用を期待したいところだ。

 

●「ブラック企業」はなくならない

 最近は「ブラック企業」という言葉は、以前ほど聞かなくなったような気がする。

 今のご時世、SNSですぐにうわさが拡がるし、民間の求人サイトにも口コミ欄があり、真偽不明でも悪いうわさが広まると、応募が減り人手不足になることが企業側もわかってきたので、前述のような法整備が進んだこともあり、企業側もこうした法令遵守意識が高まり、その効果が少しずつだが現れているのかもしれない。ただし、この世から無くなったわけではない。

 

 ブラック企業といえば圧倒的に中小企業が多いと思っていたら、一時期、巷をにぎわしていた大手中古車販売会社も充分ブラック企業の要件は満たしている。ネットでもブラック企業一覧と検索すると (真偽は定かではないが)大手企業もでてくる。

 また、以前から、学校や大手の病院は究極のブラック企業と言われ、そこで働く教員や研修医・勤務医などの労働時間も問題になっている。

 

 この世からブラック企業をなくすことは交通事故をなくすことと同じくらい実現不可能なことで、残念ながら、法律なんて守っていたら会社がつぶれると平気で考えている企業の経営者がまだまだいるのが現実だ。こんな経営者はもともと会社を経営する能力も資格もないのだから、早く日本の市場から退場してほしいところだ。

 

 労働者にとっては、ブラック企業に入社しないことが一番なのだが、次回は、応募先が自分にとってブラック企業かどうか、応募や入社を迷ったときの対応策について述べてみたい。