窓口で、求人票を持参し、「この求人、どれくらいの頻度で出ていますか? 直近で採用になったのはいつごろですか?」という質問をよく受けた。

 離職率が気になることからの質問で、それを聞いてブラック度を測りたいのだと思う。

 ただ、どんな人が採用になったのか、どんな事情で退職したのかはわからない。

 先に言っておくと、応募する会社が自分にとってブラック企業かどうかを確実に見分ける術(すべ)はない。それでも、できる範囲で事前に会社の情報は知っておきたいところだ。

 

●できる範囲での見分ける方法は・・・

 新卒とキャリア採用とでは、若干視点が異なるが、応募先がブラック企業かどうかは、ネットでもいろいろ見分ける方法が載っている。

例えば・・・

〇募集要項(求人票)からは

◆社員数に比べて、募集人数か多い(定着率が悪い)

◆平均の時間外勤務時間が公表されていない。

◆賃金幅が大きすぎる(例:16万円~44万円、実質の歩合制が考えられる) など

 

〇応募時の対応からは

◆面接時の面接官が横柄な態度で応対していないか。もし、社長が面接すれば、その社長の態度で社風はかなり推測できるはずだ。

◆面接終了後、(中小企業の場合)職場見学を依頼して会社の職場環境を確認し雰囲気を感じ取る。空調はあるか、作業場は整理整頓されているか、トイレや休憩所(あれば)は清潔かなど、社員を大事にしているかどうかが伺い知れるはずだ。

 

〇ネットを利用する方法としては

◆求人サイトの口コミ欄を確認する。

◆「転職会議」

【転職会議】企業の口コミ・評判・求人が豊富な転職サイト (jobtalk.jp) や「全国法人リスト」全国法人リスト - 全国約500万件の法人企業を一覧で検索 (houjin.jp)などの企業情報の口コミサイトを参考にする。

◆ハローワークインターネットサービスのフリーワード検索で働き方改革関連認定企業」と入れて検索してみる。

くるみん(「子育てサポート企業」)の認定を受けているか厚労省のホームページで確認する。くるみん認定、プラチナくるみん認定及びトライくるみん認定企業名都道府県別一覧|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

「社労士診断認証制度」(※)の認証をうけているかどうか全国社労士会のホームページで確認する。認証企業検索一覧ページ|社労士診断認証制度 (sr-shindan.jp)

(※)労働社会保険諸法令の遵守や職場環境の改善に積極的に取り組み、企業経営の健全化を進める企業を社労士が診断・認証する制度。参加企業のリクルート活動のバックアップになることを目指している。

などの方法がある。

 ただし、何度も言うが口コミに書かれてあることがすべて正しいとは限らないし、ブラック企業と掲示されていても、軽微な法律違反で行政指導をうけた程度で、社員には直接影響の少ないものも含まれているので一概には断定できない。

 また、逆に、これらの認定を受けていても、配属された部署によりパワハラやいじめがある可能性もあるので注意が必要だ。ただ、決め手には欠けるが参考にはなるとは思う。

 

●結局、迷ったら・・・

 結局、迷ったときによく窓口でアドバイスしていたのは、口コミや悪い噂を信用して応募しなかったり、新卒の場合、採用になったが辞退してしまい、後で、入社した同期社員からそれほどでもない程度だと聞かされたり、数年後急成長していたりして後悔するくらいなら、とりあえず、「ブラックと感じたら躊躇せず退職する」という決意のもとで体験入社して、自分の尺度で判断することも選択肢として提示していた。

 

 企業側に試用期間があるのだから、こちらも一旦入社してから企業を評価する権利もあるはずである。

 体験入社期間最長2か月がお勧め)を自分の心の中で設定して、大事なことは、この期間に自分なりにブラックと判断すれば、迷わず退職するという強い決意をもって入社することである。

 この時注意する点は、ブラック企業は従業員をうまく洗脳して拘束するスキルをもっているところが多い。くれぐれもマインドコントロールされないように、強い気持ちを持つことを忘れてはいけない。メンタルになったらもう手遅れである。

 どうしても退職を言いづらいのであれば、あまりお勧めではないが、退職代行サービスを利用する手もある。

 2か月以内で退職なら履歴書もよごれないし(第65話 履歴書FAQ(履歴書には黙秘権がある)参照)、次の就職活動への影響を最小限にできる。新卒なら第二新卒としての採用枠に応募できる。

 ただし、失業給付(基本手当)は、前職を退職した後に(再就職手当を含め)すでに受給してしまっていると、今回退職する場合には被保険者期間が1年未満となるので受給できないことから、生活費としてある程度の貯えは用意しておく必要があるが・・・。

 

●自分の基準で判断すること

 この場合、繰り返しになるが、自分の尺度・価値観でブラックかどうか判断することは忘れてはいけない。 

 例えば、設立まもない会社は、当初はほぼ全部ブラック企業である。成長過程にある会社もブラックの状態がしばらく続くかもしれない。

 勤務実態はブラックでも、社長が夢を持ち、社員と共有でき、人間関係が良好で、企業の成長、賃金アップや待遇改善が図れる未来を感じたら、それはブラック企業ではないともいえる。自分の力で企業を成長させ、そのまま残って頑張るという選択肢もあることを忘れてはいけない。