●知らない職業

 唐突だが、『代書屋』という落語の演目をご存じだろうか?

 字が書けないというとぼけた男が就職することになり、代書屋に出向き、履歴書を書いてもらうのだが、そこの主人とのやり取りをおもしろおかしく演じたものである。(演:桂春団治がお勧め)

 そのやり取りの中で、職務経歴を聞く段で『へり留め売り』『河太郎(ガタロ)』という仕事が出てくる。

 そのまま書いてもどんな仕事かわからないので、代書屋の主人がそのとぼけた男から詳しい仕事内容を聞いて苦労しながら履歴書にまとめる場面がある。(今では聞くことのない仕事なので、詳しい仕事の内容を知りたければネットで調べてもらいたい)

 そういえば昔、有名な女優と結婚した実業家(すでに離婚)の職業が『ハイパー・メディア・クリエイター』と紹介されたことがあったが、私もいまだに、どんな仕事かよくわかっていない。

 世の中には、(後述するが)一般の人にはまだまだ知られていない職業がいっぱいある。

●言えない職業

 相談窓口では、履歴書の職歴欄に他人には言いにくい職業をどう書けばいいか相談を受けたことがあった。

 60歳代の男性でソー○ランドで受付と待合室での接待業務を10年以上経験して、定年(?)退職しており、まさかそのまま書けないので、店舗の屋号は書かずにそこを経営していた企業(法人)名と『遊興施設での受付・接客業務』などと書くのはどうですか?とアドバイスしておいた。

 また、50歳後半の男性で、夜の飲食業を経営後、デリヘ○の元締めとして派遣する女性の手配や送迎を10年近く自営していたが、当局の取り締まりが厳しくなったり、みかじめ料を要求されたりで嫌になり廃業したとのことで、かなりきわどい職歴をどう書けばいいかとの相談も受けたこともあった。これもそのまま書けないので、いろいろ迷った末に『接客コンパニオンの人材派遣業を自営、諸般の事情により廃業』ぐらいでどうですか?と提案しておいた。ただし、履歴書には書けなくても、面接で具体的な仕事内容や経緯を聞かれたら、別に犯罪を犯したわけではないので正直に話すよう併せてアドバイスしておいた。

 いずれも他人には言いにくい仕事を経験してきたが、本人たちは見た目や態度もいたって普通で、こんな職歴でも応募できる仕事はどんなものがあるのかという相談も受けたので、施設管理、配送、送迎、(犯歴がなければ)警備、2種免許を取得してタクシー運転手などを勧めておいた。

 

●レアな職業

 一方、めずらしい職業の人として、発破技士(40歳代男性)、潜水士(40歳代男性)、イルカのトレーナー(29歳女性)の職歴のある人たちが来窓してきたことがあった。

 発破技士潜水士となると全国規模で仕事を探しており、仕事があるところならどこへでも行くという覚悟があり、仕事は自分で見つけるという人たちだったので、全国の求人票から何件か検索して提供するだけでさっさと離窓していった。

 イルカのトレーナーの女性は関東のある有名なマリンリゾート施設でイルカと一緒に泳いでいたらしいのだが、年齢的なこともあり、セカンドキャリアとしてスポーツに関わらない別の仕事をじっくり考えていきたいとのことだった。

 

●運も大事

 この世の中の職業の数は1万8千種類以上あるといわれている。(分類の方法によってはそれ以上とも言われている。)

 人は、その中から(副業する場合やWワークを除き)1つだけ選択して働くのである。

 そう考えると、自分にあった職業に巡り合うことは「砂漠に落としたイヤリングを見つける」くらい難しいのかもしれない。

 おそらく世の中の成功者と呼ばれる人は、自分にあった職業に巡り合え、自己実現度がほぼ100%の人たちで、もちろん本人の努力もあっただろうが、(その職業に巡り合う)運も味方したのかもしれない。(例えば、もしイチローのパパがサッカー選手だったら・・、もし藤井聡太の祖父が囲碁好きだったら・・)

 多くの人は、才能はあっても、それを活かせる職業に巡り会うことができずに、自己努力によって今の仕事の中で自己実現度を少しでも高められるように頑張っている人といえるもちろん、そうした働き方も立派な働き方であることは間違いない。

 

●きっかけを見つける選択肢を広げよう

 第80話では、「もしやりたい仕事が見つからない場合、きっかけはなんでもいい」と書かせてもらったが

とどのつまり、自分にあう仕事に出会うためには、そのきっかけに恵まれるかどうかが大きなカギになる。

 そして、そのきっかけとして、「レアな職業」も選択肢にいれても面白いかもしれない。

 前述の発破技士や潜水士の人たちに、この仕事を始めるきかっけを聞かなかったのだが、おそらく、そういう職業の人たちがたまたま周り(家族、親戚、友人等)にいたり、偶然働いている現場を目の当たりにして、その職業にあこがれたのがきっかけではないか思われる。

 

 レアな職業を調べたければ、ネットで『あまり知られていない日本の職業』で検索してみて欲しい。いろいろなサイトがあり、この中にはよく知られた職業もあるが、見たことも聞いたこともない職業がいくつかある。

(例:・テクニカルライター・フォーチュンクッキーライター・ホワイトハッカー・特殊清掃員・治験・占い師・錠前技師・臭気判定士・動画クリエイター・気球操縦士・ゴルフボールダイバー・ひよこ鑑別士・遺品整理士・酪農ヘルパー・食品のテスター・探偵・並び屋・便利屋・ドレスコーディネーター・ドローン操縦士・アウトドアガイド・ゲームデバッガー・・・ などなど )

 

 レアな職業なのでイメージがわきにくいと思ったら、今はネットで簡単に調べることができるし、生成AIを利用すれば、どうすればその仕事に就くことができるか、さらには就労上の課題や問題点も知ることができる。

 もちろん、求人サイトにはあまり載っていない上に、資格取得が必要な職業もあるため、すぐに就くことはできないかもしれないが、いろいろ調べて選択肢を広げることにより、やりたい仕事にめぐりあうかもしれない。

 (また、これらは副業として検討する場合に選択肢にいれてもおもしろいかと思う。)

 やりたい仕事が見つからないという人にとって、きっかけの一つとして検討してほしいところだ。

 よく窓口で、相談者から希望する就労条件を聞いて、紹介できる求人情報(求人票)を検索して提供するのだが、その場合、苦労するのは一般的には、高齢者や生活困窮者、定着困難者、メンタルなどの長期離職者などと思われがちだが、実は求人情報の提供で意外と苦労したのは50歳代で正社員を希望する人たちだった。

 一度、50歳代後半の男性で、会社といろいろ揉めて辞めてきたという人が来窓したことがあった。大手企業の部長職を経験しており、話し方も理路整然としており落ち着きのある人だった。詳しいことは話してもらえなかったのだが、役職定年となり、待遇面で不満を抱え、やる気をなくして辞めたようだ。

 ただ、希望条件がそれなりに高いレベルになるので該当する求人はハローワークでは見つからず、50歳代の転職は難しいことを説明すると、少しショックを受けていたようだが、本人からは、「それならいろいろ知り合いのコネを活用して探してみる」と言って帰っていった。
 

●50歳代はミスマッチ度がピーク

 50歳代からの転職は、求職者にとっては、経験を活かしたい、あるいは即戦力としての期待に応えたいということで、希望する条件がこれまでの経験が活かされる職種に限られる上に、ある程度の職位も用意してほしいところだ。

 さらに、ローンや子どもにも一番お金がかかる頃で、まだまだ正社員で働きたい。給料も年齢相応の金額は欲しいと思うし、逆に雇う側は、定年まで残り少ない、年上なので使いにくいのではないか、年齢相応の賃金を払うだけの技量を持ち合わせているかどうかわからないのでリスクを負いたくない・・・など、ミスマッチ度が一番顕著になる年齢層と言える。(逆に60歳代になると、子供も独立するので、賃金面での希望条件が緩和され、求職者側のハードルが下がり、意識も変わるため求人情報も提供しやすくなることが多かった)

 

 契約社員や派遣なら見つかることもあるのだが、正社員となると年齢不問と書いてあっても、警備やタクシー運転手、歩合制の高い仕事などの特定職種を除くと、応募段階で断られることも多く、応募を受け付けてくれても書類選考だけで不採用になる事も多かった。

 本人が応募したいと求人票を持参することもあったのだが、正社員と書かれてあると、本人に言うと機嫌をそこねる恐れがあるので何も言わず紹介状を発行していたが、応募はできても正直、採用は難しいだろうなといつも感じていた。

 

●セカンドキャリアにむけての準備・助走期間

 役職定年になり、給料が減って重要な会議にも呼ばれなくなり仕事がおもしろくなくなった。俺はこんなところでくすぶりたくないというようなプライドや感情論だけで転職をしようとする人がたまにいるが、今一度考え直した方が良い。自分自身のエンプロイアビリティ(※)は自分が思うほど高くないかもしれない。 

(※)第76話 不採用の真実 自分のエンプロイアビリティを知れ を参照

 ネットで50歳代からの転職サイトの様なものはあるが、転職できる人はごく少数であまり期待しない方が無難だ。

(ただし、前述の相談者のように知り合いや取引先から具体的な「お誘い」が期待できるのであれば別の話だが・・・)

 むしろ50歳代は多少待遇面で不満を感じても、すぐ転職を志向する期間ではなく、60歳代以降のセカンドキャリアにむけての準備期間・助走期間と考える方が良い。

 

●セカンドキャリアは自分らしく働く

 自分の本当にやりたいことは何か、これまでのキャリアの延長上だけで考えるのではなく、根底から自分を見つめ直す期間と捉えるのである。

 幸い50歳代は起業や副業を開始するにはまだ間に合う年代だし、資格を取得するにもまだまだ挑戦できる年代である。

三十にして立ち、

四十にして惑わず、

五十にして天命を知る

 結局 自己理解を深め、子育てやローンも終わった時、これから「自分らしく」働けることはなにかを模索することができるのが50歳代ともいえる。

 キャリア人生において、柵(しがらみ)から逃れられ、自分らしく働けるのがセカンドキャリアと考えると、50歳代は、漫然と不満や不安で過ごすのではなく、セカンドキャリアに向けてもっとワクワク感をもってすごしてほしいところだ。

 30歳代女性、正社員で、できれば販売促進や商品企画のような仕事をしたいと来窓。

 旦那さんの転勤のため、やむをえず勤めていた会社を退職して転居、子どもも生まれ、出産後1年経ったので、そろそろ働きたい。前職は都市部の中堅企業で正社員として販売促進の仕事をしており、希望職種は販売促進・商品企画だが、地方なのでそんな仕事は難しいと思うので、製造・サービス・人材系で営業事務のような仕事で、正社員でさがしたいとのこと。

 ただ、子供がまだ1歳で近所に子供の面倒をみてくれる親とか頼れる親戚はいないため、こどもは保育所に預けるが、こどもが熱を出せば休まざるを得ないとのこと。

 近年、育児に理解のある会社はかなり増えてはいるものの、応募してもそのあたりをつかれるといい返事(採用)がもらえないことがまだまだ多い。特に新規で正社員となると採用する側も慎重になってしまう。ましてや事務職系は応募も多く、採用するのに困らないことから厳しいことが予想された。

 時間の融通がききやすい事務補助的なパートなら見つかるかもしれないので、「パートでもさがしてみてはどうか? 例えばフリーワード『学校行事』『急な休み』で検索するといくつか見つかりますよ」と勧めるものの、パートだと、補佐的な仕事になりキャリアが途絶えるような気がしている。できれば、仕事を任せてもらえるように正社員で早くバリバリ仕事をしたいとのこと。キャリア志向の高い女性と言える。

 本当は在職のまま育児休業を利用しながらキャリアの継続したかったのだが、こうした事情で退職してしまうと不安になる気持ちは理解できる。

 

 本来なら、該当する求人情報を数件提供するくらいで終わるのだが、『老婆心ながら・・』と断って、少し話してみた。

「あせる気持ちはわかるが、あなたは人生のよきパートナーと巡り合い、結婚して子供も生まれ、経済的にも旦那さんの稼ぎで一応暮らしていける。たくさんのかけがえのないものを得ている。その上にさらに正社員として自分のキャリアアップをしたいと言われるが少し欲張りすぎないか? 生きていれば得るものがあれば失うものもある。ひとつくらい失うものがあってもいいのでは? 全てを得ようとすると結局多くを失うことになるかもしれない。

 また、失うといってもこどもの手が離れるまでの期間だけ辛抱すればいい話で、まずパートで働き、子離れしたら働きぶりがよければ正社員にしてもらえる可能性もある。今、正社員で働くことだけがあなたのキャリアを維持する手段ではないのでは・・・」などと話してみた。

 「う~ん、ちょっと検討します」と言ってあまり納得しない様子で帰っていった。 

 

●割を食うのは女性

 男性の育児休業制度が充実してきたとはいえ、子どもが出来ると『キャリア』という面ではまだまだ女性の方が『割を食う』ことには変わりはない。

 ただ、第56話でも

触れたように育児中はいろいろ就労制限を受けるかもしれないが、その間「子育て」というキャリアを得ることができる。

 育児に関する知識や経験だけでなく、忍耐力、マルチタスク処理力、緊急時の対応力、関係者との連携力などは間違いなく培われるはずである。

 就職して第一線でバリバリ働くだけではなく、育児中は一時的なキャリアチェンジ期間と考えることはできないだろうか。

 花を咲かせるときは必ず来る。今は根をしっかり張るときと捉えて将来の再就職や副業をめざして資格取得にチャレンジしたり、リスキリングとして職業訓練でテクニカルスキルを高めるという手もある。

 

 現在は人材不足を背景に40歳代女性の転職、再就職は徐々に広がりつつある。

 以前のように女性で育児で離職してしまうと40歳をすぎたら正社員への転職は無理ということは少なくなってきている。

 一般事務や事務系専門職以外にもITエンジニアやwebデザイナーの求人も多いと聞く。何かしら積み上げてきたスキルや資格等があれば、年齢が高くなっても正社員としての再就職は可能で、人材不足が解消されない状況の中、この傾向は続く可能性が高い。

 むしろ、その際、家事や育児の経験が採用時のアピールポイントにつながるケースもある。職歴が乏しい、あるいは中断したという人でも、こうした経験が評価され、採用に至った事例も出てきている。そのあたりをブランクがあってもしっかりアピールしてほしい。

 

●国の支援制度に期待

 また、国の施策としてこうした人の雇用を促進する意味でも、現在はシングルマザーを採用すれば企業側に助成金(特開金(※))が支給される制度はあるが、出産と育児で長期間離職していた人を正社員で採用すれば同じように助成金が支給されるような制度を厚労省も考えてほしいところだ。

 

(参考)

※特定求職者雇用開発助成金(抜粋)中小企業の場合

・母子家庭、60歳以上、生活保護受給者  90万円

・就職氷河期世代不安定雇用者      90万円

・身体・知的障害者、発達障害者 等   180万円

 相談窓口で「同時に何社まで応募できるのですか?」とよく聞かれることがあった。

 システム上の上限はとくに設けられていないが、人が自分で応募状況を同時に管理できるのはせいぜい3社くらいなので、同時に応募する場合は概ねそれくらいの数を勧めていた。

(ちなみに紹介状を同時に4通以上発行した人が、応募書類を郵送する際、間違って別の会社の紹介状を送ってしまい不採用になった人を私は2人知っている)

 

 経済的な理由から早く就職したい人は、ひとつずつ応募してその結果を待って次を応募するようなペースでいては間に合わないことが多く、どしどし並行して積極的に応募を勧めていた。もし幸い2社以上から内定をもらったら、どちらかを辞退すればいいだけの話である。

 ただし、この場合注意することがある。

●志望に優先順位があると・・・

 はじめから、最初に内定をもらえたところに就職するという固い決意があれば問題はないのだが、もし複数社に同時応募する際、第一志望、第二志望 ・・・とある場合は注意が必要だ。

 

 先に第二志望のところから内定の連絡がはいったものの、まだ第一志望の会社から返事がない場合、第二志望の会社にどう回答したらいいかとの相談を受けたことが何度かあった。

 

 通常、内定がでると入社するかどうかはだいたい3日以内に入社するか辞退するか回答するのが一般的なビジネスマナーと言われている。待ってもらえればいいのだが、その場合もいつまでもというわけにはいかない。

 応募先が良心的な会社であれば1週間程度待ってくれることもあるが、あまり引き延ばすと他社と天秤にかけていることがわかってしまう上に、急募の場合は、早く採用したいので辞退されたら次の人を採用しないといけないので、回答の締め切り日を設けられ、それまでに返事をしないと内定が取り消しになることがある。

 

 いきなり面接選考の場合は、翌日面接、当日採用で最短、応募から2日で内定がでることがある。書類選考の場合は、応募書類が届いて書類選考し面接日が決まるので、内定まで最短でも2週間程度はかかることが多い。

 第一希望が書類選考で、第二希望が面接選考の場合、同時に応募すると結果が第二志望から先に内定が出ることが多く、回答の調整に苦労することになる。

 

●スケジュール調整が大変です

 以前こうした、第二志望から内定が出たものの、第一志望の面接が終わるまで回答を待ってもらえず迷った末に辞退したが、その後、第一志望の会社が不採用になったと窓口で泣きつかれたことがあった。

 再度応募しようとしても、内定を一度辞退すると、通常、その後1~2年間くらいは応募しづらくなる。応募しようとしても採用担当者が名前を覚えており、「この方以前内定したのに辞退された方ですよね」とやんわりことわられることもあった。

 

 第一志望が先に結果が出るように応募のスケジュールを調整することが望ましいのだが、第一志望の結果が出るのを待っているうちに第二志望の求人自体がなくなってしまうこともある。

 こういう場合、できるだけ第二志望の応募状況(応募者数)を随時まめに確認しながら、応募の時期を遅らせるか、応募はしてもなにか理由をつけて面接日をできるだけ遅らせるような調整をするしかない。 

 

●別のリスク

 また、第一希望で入社したものの、職場になじめなかったりブラック企業と判明したりで短期で退職してしまうと、次に第二志望で採用を辞退したところに再度応募はしづらいところだ。一度も応募していなければ、そのまますんなり応募できたのに・・・と後悔することになる。

 そういう意味でも、やみくもに応募するのも注意が必要である。

 とはいえ、前述のとおり、ひとつずつ順番に応募する方法では、スピード感がなく求人がなくなってしまうリスクもある。

 結局、投網をかけるように同時に何社も応募するか、ひとつひとつ応募してその結果を待って次を応募するかは、自分自身の事情に応じて切り分けるしかない。

 

 ただし、建築・土木・警備・運送・看護・介護などの人手不足の業種やこうしたことにはこだわらない採用担当者いる会社であれば、一度辞退したところでも、なんのわだかまりもなく採用してくれるところもあるので、あきらめず窓口の相談員からダメ元で「一度辞退した方でも再度応募できますか?」と聞いてもらってほしい。

 ここで変な遠慮は無用である。

 

 窓口の相談員は紹介実績を上げたいので「どしどし応募しましょう!」と勧めてくると思うが、(現に私もそうだった)こうしたリスクは承知して応募してほしいところだ。

 今回は採用に関する『不適切にもほどがあるエピソードを紹介してみたい。昭和から平成にかけての話が中心なのでご了承ください。

●Epsode-1 美人は得か?

 30歳代前半の容姿端麗の女性が来窓してきた事があった。(勤務していた6年間の来窓者の中で一番の美人といってもいいくらい)服装も洗練されており、周りの男性来所者もチラチラ見ていたくらい目立っていた。  

 ハローワークのような空気がよどんでいる(?)所ではあまり見かけないタイプである。まさに『掃き溜めに鶴』状態といえる。

 正直、番号を呼び出して自分の窓口にあたった時は内心ラッキーと思ってしまった。

 話し方や物腰も柔らかく、大手企業の秘書室で勤務していたがワケ合って都市部からこちら(地方)に転居してきたみたいである。普通ならそれとなく離職した経緯や事情を聞くのだが、下心があると思われたら・・と変に意識してしまい聴取できなかった。

 就職(転職)活動は初めてみたいで「たいした事はできないと思うのですが、私でもできる仕事はこちらの方でもあるのでしょうか?」と心配そうに相談を受けた。

 思わず≪あなたならどこに応募してもすぐ内定をもらえますよ!≫と心の中でさけびながら、秘書求人と比較的規模の大きい企業の事務職の求人票を何枚か提供しておいた。

 ほどなく来所しなくなったので、どこかにすんなり決まったと思われる。

 

「美人は得か?」人事部の採用経験者なら、(表立っては言わないが)10人中10人がYesと回答する質問である。

 もちろん、「誰でも」というわけではないが、キャリアや職歴で多少の採用基準に満たしていなくても、それを上回る容姿をもった方は女性に限らず、採用になる事が多かったのは間違いない。

 

●Epsode-2 若い男は単純

 以前、大手IT企業の子会社の人事部で勤務していた頃の話だが・・・

 ある日、いきなり社長室に呼ばれて出向くと20代後半のきれいな女性がソファーに座っていた。

 社長から、「この人を採用するから入社の手続きを頼む。配属先は営業部で事務をしてもらうから」と一方的に言われた。

 一般の採用手続き(応募→書類審査→一次面接→役員面接)を踏まずに採用するということは、ひょっとしたら社長の愛人ではないかと変に疑っていたら、全く違っていて、親会社からのコネで頼まれて採用することになったらしい。

 さらに、「なぜ配属先が営業部なのですか?」と聞くと、「営業部の若手の男性社員は、きれいな女性が職場にいるとカッコいいところを見せようと頑張るので、ちょうど美人を採用しようと思っていた」とのこと。

 確かにその後、外目からみてても営業部が少し活性化されたことは間違いなかった。

 こうした理由で美人を優先して採用することも、業績を向上させるための高度な(?)経営判断として許されるのだと悟った次第である。

 

●Epsode-3 美人は採るな! 

 私が昭和50年代に新卒で大手のIT企業に入社した頃、同期社員で女性が10数名ほどいたのだが、女性の多くはプログラマーとして採用されていた。

 当時、女性は結婚すると多くは退職するのが当たり前の時代だったので、せっかくプログラミングスキルを身につけても、すぐに結婚されて辞められると困るため「美人は採るな!」ということを当時の社長から人事の採用担当者に指示していたことを、入社して1年ほど経って人事担当者から酒の席で「こそっと」聞かされた事があった。

 これで採用された女子社員たちには本当に失礼な話だが、外見の逆の理由で、採否を判断されることもあることを知らされた。

 表向きは「その人の資質や能力に期待して採用した」などときれい事を言っていても、裏では現実的な採用基準で選考しているんだな~~と知った次第である。

 

● Epsode-4 「若い女性営業を積極的に採用しろ!」

 これは平成の初めの頃、プロ野球の球団を持つくらいの大手のリース会社の社長が人事の採用担当者に命じた言葉である。問題はその理由である。

 当時、その会社の男性営業担当者から直接聞いた話だと・・

 リース事業を拡大する上で、町の中小企業をターゲットにして新規顧客開拓を図ろうとしており、そのために社長に営業訪問するとき、若い女性の方が社長は会って話を聞いてくれる確率が高いと判断したことかららしい。

『英雄、色を好む』

 社長まで成り上がった人はそれなりに仕事ができる人で「好色タイプ」、下世話な言い方をすれば「スケベ心がある人」が多いはずなので、若い女の子が営業に来ると、会って話を聞いてくれる機会が増えると思ったようだ。

 全くもって中小企業の社長さんには失礼な話だが、内心では、理にかなった採用戦術だと感じたのは私だけではなかったと思う。

 

 これらのエピソードは、若い頃の私にとっては、世の中はきれいごとでは済まない世界だと知るきっかけとなった。この頃から徐々に純粋さ(?)が失われ、物事の裏を見る習慣がついていったような気がする。(もともと心がゆがんでいたかもしれないが・・・)

 

●本音のところは変わりません

 以上、こんな昔の不適切な話を今、知ったところでなんの役にもたたないのだが・・・

 当時はSNSもなかったためこうしたことは密かに伝聞されていたものだが、今は働き方や採用基準についてはコンプライアンスやジェンダーフリーを求められ、うっかり、これに反する不用意な発言や発信をしてしまいSNSで拡散されようものなら、現在のような監視社会ではまちがいなく炎上してしまう。

 ただ、公になるか、言うか言わないかの違いだけで、表向きは公平公正で今の時代に合わせた社会通念に沿って「求める人材像」を提示して人を採用しているふうを装っているが、実態は、あまり人には言えない(不適切な)基準や、人間がもつ本能(美しいものを見たい?)に合わせて採用している企業も多いはずだ。

 

 昔の「不適切にもほどがある」ことも、本音では、今でも「適切である」ことも多い。

 

と訂正して欲しいところだ。

 前話では、退職理由が人間関係の場合はそれを前面に押し出すことは避けた方がいいことについて触れてみた。これ以外にも会社を辞める理由は人それぞれあると思うが、最近、想定外の理由で辞めることもあることを知った。

 

●霊に取り憑かれています

 法事で親戚が集まり、私がハローワークで職業相談員をしていたことを話したら、雑談の中で、親しくしている親戚からボヤキと相談があった。

 仏壇・仏具の販売店に勤めている30歳前半の独身の娘がいるのだが、近々に辞めることになった。次はどんな仕事がいいか? なにかいい情報かアドバイスがあれば聞かせて欲しいとのこと。

 そこで、辞める理由を聞くと・・・

 「娘が言うには、最近なんとなく体調が悪い日が続いており、付き合っていた彼氏とも別れ、新しい出会いにも恵まれず、正直いい事が何もない。そのことを友人に相談すると、有名な占い師(霊媒師?)を紹介され、そこに出向くと部屋に入るなり、何も聞かれずいきなり「あなたの周りに悪い霊がいっぱい見えるわ、なにか心当たりは?」と言われ、『ロックオン~~♪(※)されたみたいで、仏壇・仏具の販売店に勤めていると言うと、「そこに来る客から悪い霊をもらっている、一刻もはやく仕事を変えなさい」と言われたので辞めることにしたとのこと。

(※)「突然ですが占ってもいいですか?」フジテレビ系列 参照

 

 他の店員にはなぜ取り憑かないのか聞いたところ、霊は取り憑き易い人を狙って取り憑くからと言われ、おとなしめの本人(娘さん)は信用してしまったようだ。

 

 思わず「占い師1人に言われたからと言って、すぐそれを信じて会社を辞めるのはいかがなものかと、本人(娘さん)に言ってみたら」とアドバイスすると、本人(娘さん)もその辺はわかっており、別の占い師にも見てもらい、ほぼ同じような事を言われたらしい。

 占い師のセカンドオピニオンも聞いて判断しているので、そういう面では一時の思い込みや変な洗脳をされたのではなく、自分なりにいろいろ検討して決断したみたいだ。

 

 そこまで言われると、確かにこのまま仕事は続けづらいとは思う。

職業相談を受けても、正直こういう理由で辞める人にどうアドバイスしていいかよくわからなかった。

 この場合、一般的なキャリア理論や自己理解を深めるカウンセリングスキルなどは役に立たず、信条や価値観・信仰の世界になるので、理屈で説得しようとしても無理がある。

 

 理由はともあれ熟慮の上、決断したのであれば辞めたらいいと思うのだが、辞める時や次の応募先に、まさか本当のことはいえないと思うので退職理由をどう説明するのか、なにか別の理由を用意しておくように助言しておいた。

 

 なお、次の応募先として、引き続き販売の仕事を希望しているがスーパーやドラッグストアのような来客人数や品数が多いところは苦手で、落ち着いて接客できる環境を希望しているのでどこがいいかと聞かれたので、眼鏡店、宝石店、キャンプ用品、日用雑貨品などの販売店で探してみては?とアドバイスをしておいた。

(後日談だが、その後、大手のめがねチェーン店に転職し、問題なく働いているらしいのだが、体調が回復したかや恋愛運が向上したかは確認していない)

 

●占い師もキャリアコンサルタント?

 そう言えば一度だけだが、相談窓口で何枚か求人票を持参して相談に来た人がいて、職種がバラバラだったので理由をきくと、方位学からみて自宅から北東の場所にある企業を選んで応募したいという人がいたことを思い出した。

 その時は、占いや方位学をあまり信じない自分にとっては、はて?と思いながらすんとした態度で、そっけない対応をしたような記憶があるが、本人にとっては真剣だったのかもしれない。

信じる者は救われる

 いろいろ不幸な出来事が続くと、それがたとえ仕事以外の事でも、その解決方法に「転職」という選択肢があることを知った次第である。

 こうした相談者にとっては、本業のキャリアコンサルトのアドバイスは聞かない人でも、占い師の言うことは素直に聞いてくれそうな気がする。

 そういう意味では、占い師の方も広い意味でのキャリアコンサルタントや産業カウンセラーといえるかもしれない。

 

●人には言えない退職理由

 就職活動において、こうした理由で転職する人は、どうせ言っても信じてもらえず馬鹿にされるだけだと思われることを恐れて、通常は相談員には言わないので実態はわからないのだが、意外と多いのかもしれない。

 私自身、「受け入れる事」はできないが、「受け止める事」はできたと思う。もう少し相談者に寄り添うべきだったと反省しているところである。

 職場の人間関係(ほとんどがパワハラかいじめ)が理由で辞めてきた人から、次の応募先の面接で前職の退職理由を聞かれたらどう答えたらいいかよく相談を受けた。

 実際、「(第52話) 上司ガチャにはずれた人」でも、

 

その続きがあって、相談者から上記のような相談を受けていた。特にパートの場合、辞めた「理由づけ」に苦労している人が多かったような気がする。

●退職理由のタブー

 一般に退職理由に人間関係を理由にすることはタブーとされている。ハローワークの職業相談員や民間のキャリアコンサルタントも人間関係を退職理由にしないよう勧めている。

 一言で人間関係が退職理由と言うと、その原因が、上司からの受容度を超えたパワハラ、周囲からのいじめ・無視・いやがらせを受けて、やる気をなくしたり、メンタルにもなりそうだったので退職してしまうことが多いのだが、その程度がどの程度だったのか? 普通の人なら耐えられる範囲なのに過剰に反応しているだけなのかもしれないし、あるいは、本人のコミュニケーション能力不足、協調性の欠如、職務遂行能力不足(仕事が覚えられない、ミスが多い)、さらに業務指示に従わない、社内ルールを無視するような勤務態度、いわゆる『モンスター社員』のため、周りから孤立して居づらくなったのかもしれない。

 いずれにせよ、これらを客観的に証明するものがないので人間関係(パワハラやいじめ)を退職理由として説明しても不安感を抱かせるだけだからである。

 面接官によっては、退職理由に納得感が得られない場合は、本人の性格や資質に問題があるのではないかと疑い、それを確かめたくてネチネチ聞いてくることがある。

 うまく説明できればいいが、特にパワハラを受けて退職した場合など、しつこく聞かれると動揺して自信なさそうな言い方になってしまい、なにか隠しているような印象を与え、本当に悪いのは会社側なのに、まるで自分側に問題があるように思われ、不採用になる失敗をしてしまう人がいる。

 つらいパワハラを受けて、それを理由に退職したのに、自己都合退職になる上に、正直に退職理由を言えず、パワハラ被害を受けた人が、その退職理由の説明に苦労するのはなんとも理不尽な話である。

 

 こういう場合は、私見だが、退職理由について、条件付きで人間関係(パワハラやいじめ)が退職理由であることは、面接時にはある程度は話してもいいと思っていた。(ただし、履歴書には記載しない方が無難)

 

●Only one から One of them (ワンオブゼム) 

 こういう時はまず、人間関係以外でなにか他に思いつく退職理由はないかを聞き出していた。

 例えば・・・

・社長が交代し、事業方針や経営方針が変わり自分の仕事に関する考え方と合わなくなった。(ただ、それに従うことは苦ではなかった)

・退職者が出ても補填採用してくれず、自分の負荷が増して、残業が増えて体力的に厳しくなった。(なんとか対応できる範囲だった)

・パートの場合、シフトが減り収入が少し減った(生活にはそれほど影響がなかった)

 などを挙げて、いずれも受容範囲であったとしてもこれを無理気味に、とりあえず一番の退職理由として説明し、それだけでは退職理由として弱くて何か隠しているのではと疑いをかけられそうになったら、それ以外の理由として、

 「もうーつ理由がありまして、実は、上司(お局様)が独断的・感情的で職場の風通しが悪く、業務効率アップのためにいろいろ改善を申し入れたものの無視されたり、その上の上司に相談しても「辛抱しろ」といわれるだけで取り合ってくれず、この会社に長く自分が働いているイメージが湧いてこなかったことも理由の一つでした。仕事自体はやりがいを感じており、周り人たちとも仲良くできていたので、とても残念でした。」

 と、理由を2つ以上挙げて、最後に人間関係にさらりと触れるようアドバイスしていた。

 さらに、この時必ず、

1.仕事自体はやりがいを感じていたこと

2.上の上司あるいは人事担当者に相談したが、取り合ってもらえなかったこと(自分なりに努力はしたこと)

3.「パワハラがつらくて辞めた」とは直接的に言わず「このままここで働くイメージがわかない」というような婉曲的な表現にすること

この3点を必ず言うように勧めていた。

 これにより、退職理由が人間関係である割合を「薄める」ことができるし、人間関係に弱いイメージを持たれないようにすることができる。

 また、「私はパワハラがひどい職場だったらすぐ辞めますよ」と宣言することになるので、応募先が同じようなパワハラ上司やお局様をかかえていたなら、この理由を聞くと、すぐ辞められるかもしれないと思って不採用にしてくれる可能性が高くなる。

 そういう意味で応募先に「探りをいれる」効果もあるような気がする。

 

●退職理由は誰も信じない

 私が前職の人事部で採用面接をしていた時は、退職理由は一応聞いてはいたが、深堀することはしなかった。どうせ本当の事を言わないだろうということが予想できたからである。

 通常、面接官は退職理由を聞いてもそのまま鵜呑みにすることはない。真偽は不明でもとりあえず納得感さえ得られればそれでよく、「ひょっとすると嘘かもしれないけど、話し方や表情からするとどうも本当らしいので、まあ、そういうことにしておこうか」という気持ちになってもらえるかがカギとなる。

 ここで、信じてもらうには、より真実味を帯びた話し方や表情が重要になってくる。

 面接で嘘っぽいことを言おうとすると、何か後ろめたさを感じてオドオド感が漂う人が多いが、実際にパワハラ被害を受けたことは実体験なので気持ちがこもり、説得力のある話し方ができるはずである。

 

 もちろんこれでうまくいくかはわからないが、面接でパワハラ被害の事実を、真実味をもって話せそうだったら、前述の条件付きで、正直に話してみることを勧めていた。

 参考にしてもらえればうれしい。

 有効求人倍率が厚労省から定期的に公表される。最近は1 . 0 ~ 1 . 3倍くらいで推移しており、景気の指標として大きな目安となっている。

 ただ、これはあくまで平均値であって業種・職種ごとでかなり差がある。例えば、人気がある一般事務職の場合はおおむね0 . 6倍くらいで、不人気職種と言われる建築・土木警備運送介護看護保育などは2 ~ 6倍くらいで推移している。

 不人気職種といえども、いずれも日本の社会や日本人の生活を支える大切な仕事ばかりである。

 一部のハローワークではこうした不人気職種専門の相談窓口を設けたり、個別面接会をまめに実施して何とか就職に結び付けようと努力している。

●介護職で働きたい?

 そんな折、介護職に応募したいと、一見コミュ障ぎみの20歳の男性がデイサービスの求人票をもって来窓してきた。介護は全くの未経験で職歴をみると高校卒業後、アルバイトを転々として定職についたことがない。製造系で応募はするのだが、なかなか正社員で採用されないので、介護職に応募したいという。介護職を希望した理由を聞くと、採用されやすいと人に聞いたからとのこと。

怒髪天を衝きそうになったが、ぐっとこらえて、

「介護という仕事がどんな仕事かわかっているの? そんな気持ちで介護職に就いても長く続かないと思うよ。せめて介護職員初任者研修を受けてから応募しては?」とやさしく諭すように言ったのだが、とりあえず応募したいというので、(しかたなく)事業所に了解をえて、紹介状を発行してお引き取りいただいた。

 後日確認すると当然ながら不採用となっていた。いくら人手不足職種といっても、こんな人間は採用したくないのは当然である。

 一方で、私自身も介護施設に高齢の義父母を預けており、介護施設に面会訪問した際、仕事柄、ここで働く若い人や学校の研修で就労体験している人たちになぜこの職を希望したのかそれとなく尋ねると「親が祖父母の介護で苦労している姿を見て」とか「祖父母が認知症になったが施設で楽しそうに過ごしているのを見て高齢者の役に立ちないと思って」などの理由をあげてこの仕事に就いた、あるいは志したと聞かされたことがあった。

 介護職を通して他人様のお役に立ちたいという使命感や熱い思いを聞かされ、今の若者も捨てたものじゃないと頭が下がる思いがした。

 

 実は、やりたい仕事が見つからない、特にやりたい仕事はないという人に、介護職への挑戦を時々打診したのだが「私には無理!」という回答が多かった。

 

●「私には無理!」の意味

 介護現場で働いている人に対して時々「すごいわね~、私には絶対できない仕事だわ」と言う人がいる。

 一見リスペクトしているような発言だが、言われる立場からいうとあまりうれしくないと聞いたことがある。

 純粋に自分自身の資質や能力ではできないことから発言しているのであればいいのだが、「安い給料であんなつらい仕事よくやるよね」といった意味合いが込められているような気がしてあまりいい気持にはならないとのことである。

 

 若い求職者の中には、ろくに職業研究や就労の実態を調べることもせず、マスコミやS N Sから知った情報から思い描いたイメージや固定観念に基づいて判断している人が多いような気がしてならない。(もちろん、これは介護職以外の不人気職種にも通じていえることだが・・・)

 マスコミ報道で「介護職員がストレスから入居高齢者を虐待した」とかSNSでは「介護業界の」みたいなテーマの動画やX等での投稿が後をたたない。

 もちろん厳しい現実は知っておいて欲しいが、こういうことはどの職種でもいえることであって、それ以上のやりがいを感じることもあるはずである。そこもぜひ併せて強調してほしいところだ。

 

●待遇改善も進んでいます

 まだまだ少ないとはいえ、以前に比べれば処遇改善加算など国からの助成金も増額されてきたし、施設によってはD X化を進めて、べッドや部屋の入口にセンサーを取り付けて夜勤の見回り件数を減らしたり口ポットや筋力スーツなどで介助の身体的負担を軽減したり、介護者にとって待遇改善や就労環境の改善は徐々に進んでいる。

 人はいずれ歳をとると自分の身の回りのことができなくなる。ごくわずかのPPK(ピンピンコロリ)で亡くなる人を除き、介護職は死ぬまでにほぼ全員がお世話になる仕事である。

 2026年には25万人が不足するとも言われ、あと数年で団塊の世代が介護適齢期になると、介護施設や介護職員が不足し、特に都市部では『介護難民』がでてくるともいわれている。

 介護福祉士や社会福祉士などの国家資格もあり、キャリアアップも可能で「つぶしが利く」ことから高齢になっても続けられる仕事と言えるし、今後AIが普及しても、まずなくならない職業とも言われている。

 

●SNSの功罪

 第83話:求人票と違います ではS N Sの普及はプラック企業の抑止につながったメリットがあると書かせてもらったが、デメリットとして、介護に限らず、不人気職種に関して偏った先入観を醸成してしまう危険性をはらんでいる。

 そういう意味でSNSは求職者にとって諸刃の剣ともいえる。使い方を間違えないようにしてほしいものだ。

 

 今回は趣向を変えて、以前から生成AIはハローワークをどう見ているのか気になっていたので、利用するメリットとデメリットを生成AI (ChatGPT)に聞いてみた。

 

生成AIからの回答は下記の通り(青字、一部抜粋)

 

 ハローワーク(公共職業安定所)は、日本の国民が利用できる公的な職業紹介機関です。以下に、ハローワークを利用するメリットとデメリットをまとめます。

 

○メリット

1.幅広い求人情報

 地元企業をはじめ、さまざまな業界・職種の求人情報が集まっています。特に地域密着型の求人情報が豊富です。

2.就職支援サービス

 職業相談やキャリアカウンセリング、就職セミナーなど、さまざまな就職支援サービスを受けることができます。個別の相談も可能で、履歴書の書き方や面接のアドバイスなど具体的なサポートも提供されます。

3.職業訓練の案内

 再就職を支援するための職業訓練の案内や斡旋を行っています。これにより、新たなスキルを身に付ける機会が得られます。

 

デメリット

1.求人の質のばらつき

 中には条件の悪い求人やブラック企業の求人が含まれていることがあります。求職者自身で見極める必要があります。

2.専門職や高収入の求人が少ない

 特に専門的なスキルを要求する職種や高収入の求人は、民間の転職エージェントや求人サイトに比べて少ない傾向があります。

3.営業時間の制約

 ハローワークの営業時間は平日の昼間に限定されており、働きながら転職活動をする人にとっては利用しにくい場合があります。

 

 ハローワークを利用する際は、これらのメリットとデメリットを考慮しながら、自分のニーズに合った形で活用すると良いでしょう。必要に応じて、民間の転職エージェントや求人サイトと併用することで、より多くの選択肢を得ることができます。

 

 いずれも窓口で相談者からよく言われたこともあり、相談員にとっては既知のことで特に目新しいものはない。

 ただ、その分野に精通していない者(例えばハローワークを初めて利用する人)にとっては、体系的にすっきり説明してもらえるのでわかりやすく大いに参考になると思う。そういう意味で今の生成AIレベルはその分野について知識や経験がない人にとっては充分役立つツールといえるかもしれない。

 

●10年後に無くなる仕事

 最新の生成AIでは音声でのリアルタイムの対応が可能になってきており、10年後に無くなる(少なくなる?)仕事に、カウンセラーやコンサルタントの仕事が含まれるのはまちがいない。

 こうした仕事を生業にする者にとって薄っぺらな対応しかできないなら、いずれ生成AIには勝てなくなる。相談者から「その程度のことなら生成AIでも言ってましたよ」と言われかねない。

 日々研鑽に励み、専門的な知識の他にも、生成AIには真似できない顧客の個々の細かな実情に沿って、個性的で人間味あふれたカウンセリングスキル、コンサルスキルを求められることになりそうだ。

 

●ついでに自分のブログの評価も聞いてみました

 これ以外にもいろいろ質問をぶつけているうち、興味本位「アメブロ『ボクのハロワ日記』をどう思いますか?」と質問をしてみた。回答は以下のとおり。

 

 「ボクのハロワ日記」は、ハローワークの元職業相談員が経験した実話をもとにしたブログで、仕事探しや生活に関する様々な問題について取り上げています。ブログでは、具体的なエピソードや経験談を通じて、職業相談窓口に訪れる様々な人々の悩みや苦労が描かれています​​。

 ブログの内容は多岐にわたり、例えば、生活困窮者の支援についてや、SNSの普及による企業の自制効果についても詳しく説明されています​​。また、働く環境や求人に関する現状をリアルに描き出しており、求職者や企業側の両方の視点から問題を考察しています​。

 「ボクのハロワ日記」は、求職者や就職活動に悩む人々にとって有益な情報源であり、職業相談の現場を知ることで、仕事探しや労働環境についての理解が深まるでしょう。職業相談員の視点から語られるストーリーは、読者に親しみやすく、共感を呼びます。また、具体的なアドバイスや現実的な状況の説明が多く含まれているため、実際に役立つ情報が得られます。

 

 当たり障りのない良い評価をしてもらっているみたいなので内心安堵したのだが、よくよく考えると、なぜ生成AIに自分のブログを評価してもらい一喜一憂しないといけないのか、相手は所詮機械(人工知能)であることを考えると、自分から評価を求めたものの、なにかモヤモヤした思いを感じてしまった。

 人工知能が人間の感情をコントロールするということが現実に起きており、昔、人工知能が人を支配することをテーマにした「イーグル・アイ」という映画があったが、徐々に現実味を帯びてきて何か末恐ろしい気持ちになった。

 

<追記>

 もし長年ブログをされている方で、興味があるなら自分のブログを生成AIはどう評価するか聞いてみてはいかがでしょうか? 

 なにか閲覧数を増やすヒントになるコメントをしてもらえるかも・・・

 

 よく窓口で、「面接にいったら、求人票とは異なる条件を提示された」あるいは「採用になって働いてみたが、求人票や雇用契約書と異なる条件で働かされた、または働かされそうになったので、すぐ辞めてきた」という相談や苦情があった。

 「ハローワーク(HW)の求人もええ加減やなあ~、この事業所を注意しておいて!」ときつい口調で言われたこともあった。

 HWに限らず民間の無料の求人サイトに載っている求人でも、残念ながらそういう企業 (求人)は一定数存在する。

●辞めたら次採用すればよい?

 求人票と異なる条件が面接時や入社前に提示された場合は、腹立たしいが事前に辞退できるのだが、働き始めてわかると「せっかく入社して頑張ろうと思っていたのに・・・」 と本人の精神的負担も大きいものがある。

 

 ブラック企業の一般的な定義は(第74話)ブラック企業は永遠に不滅です

 

で書かせてもらったように、入社後に法律違反の下でパワハラなどでマインドコントロールしながら社員を働かそうとすることが多いのだが、それとはちょっと違い、こうした企業は求人票や面接で『いい話』をして、入社したら異なる就労条件で『なし崩し的』に働かせて、辞められるか辛抱してそのまま働くかは『賭け』と割り切って、辞められても別にかまわないと思っており、反省もせず「この人はハズレだったので次、採用しよう」くらいで考えていることも多い。

 

 職業安定法の改正により令和6年4月から、求人を申し込む場合、従事すべき業務変更の範囲や就業場所が変わる可能性を提示する義務が生じたが、本人の同意なしに初めから求人票と異なる条件で働かせるのは、明らかに法律違反となる。

●通報窓口はありますが・・

 求人票に書かれてある雇用条件が就労実態と異なっていて、その事実を拡散したければ、民間の求人サイトならばロコミに入力するという手があるが、HWIS (ハローワークインターネットサービス)には、民間の求人サイトのようなロコミを入力するところがない。

 こうした場合、HWISのホームページに専用の通報窓口「ハローワーク求人ホットライン」が掲載されているので、そこに通報すれば事実関係を確認して事業所への行政指導や悪質な場合は求人不受理も可能なので、できれば通報してほしいのだが、そういう目にあった人はすでに辞めていることが多いので、面倒くさいのか今更苦情を言っても仕方がないことから、いわゆる『被害届』が提出されないことも多い。そのためそのまま求人が継続して掲載されることになる。

 実は、こうした苦情は上記のホットライン以外にも相談窓口でも受け付けているが、苦情の申請をしようとすると、「確認のため関係部署から電話がかかってくることがあります」と言わなければならないのだが、そうすると「それならもういいです」と言われることが多かった。

 

●グレー企業として記憶します

 我々相談員も窓口で、応募した人や短期で辞めてくる人などからの苦情を聞くと、すべて信じているわけではないものの、複数人から聞くことがあると、かなり信憑性は増してくることになる。

 ただ、面談記録には事実関係だけを入力し、相談員の個人的な感情や感想は入力してはいけないことになっており、 こうした場合、応募者や退職者からそういうコメントがあったと記録することはできるが、「ここは要注意企業」とは書けないのである。

 結局、プラックと言い切ることはできないものの、グレー企業として頭の中に記憶することになる。

 実は、ベテラン相談員になるとこうしたグレー企業の情報は、相談者からいろいろ聞くことが多いので、けっこう裏情報として記憶に残っている事が多いのだが、立場上直接的に相談者に話すことはできない。

 

●相談員も困っています

 窓口で困るのは、求職者が自選したグレー企業の求人票を持参して応募したいので紹介状を発行してくれと言われることがある。

 当然ながら、「ここはプラックの匂いがするから応募はやめておきなさい」とはロが裂けても言えない。(相談者が自分の親戚なら絶対やめておけと言うのだが・・・)

 「この求人について、これまでなにか気になる面談記録やコメントはありますか?」とか相談者から訊いてもらえれば、真偽不明を強調しながら、 これまでの応募者からこういうコメントがあったことをそのまま伝えることはしていたが・・・。

 そうした質問なしに、いきなり応募しますと言われると、こちらも粛々と紹介状を発行するしかなくなる。

 私の場合、こういう時は、

「この求人の応募はこれでいいとして、ほかにもいろいろ応募されてはいかかですか。よかったら他に似たような求人を探しましようか?」

と最大限の『持って回った』言い方をしたのだが真意が伝わらないことが多かった。

 もし相談員が、応募しようとして本人が希望もしないのに、他の求人情報を提供しようとしたら、少し考え直した方がいいかもしれない。

 

●S N Sが抑止効果

 ただ、こうした苦情は私がこの仕事を始めたころは多かったのだが、S N Sが普及してくるにつれて徐々に少なくなったような気がしていた。

 各企業もS N Sの普及により口コミで悪いうわさがネット上で広まると、応募が減ると困るので、自制するようになったのかもしれない。(ただし、無くなったわけではない)

 以前、新卒の大量辞退者がでてネットで叩かれているペットフードで有名な会社は、そんなS N Sを軽視した「報い」を受けているような気がしてならない。

 この事件はあまりテレビやマスコミで取り上げられなかったため、昔ならこんなに表沙汰にはならなかったと思うのだが、SNSのおかげで広く知られることになり、応募しようとする求職者にとっては、大いに参考になったところだ。

 S N Sの普及は、運用面で様々な問題点を指摘されるが、こうしたブラックorグレー企業の誇大求人広告の抑止効果につながったことは、求職者にとってはメリットだったのかもしれない。