前話では、退職理由が人間関係の場合はそれを前面に押し出すことは避けた方がいいことについて触れてみた。これ以外にも会社を辞める理由は人それぞれあると思うが、最近、想定外の理由で辞めることもあることを知った。

 

●霊に取り憑かれています

 法事で親戚が集まり、私がハローワークで職業相談員をしていたことを話したら、雑談の中で、親しくしている親戚からボヤキと相談があった。

 仏壇・仏具の販売店に勤めている30歳前半の独身の娘がいるのだが、近々に辞めることになった。次はどんな仕事がいいか? なにかいい情報かアドバイスがあれば聞かせて欲しいとのこと。

 そこで、辞める理由を聞くと・・・

 「娘が言うには、最近なんとなく体調が悪い日が続いており、付き合っていた彼氏とも別れ、新しい出会いにも恵まれず、正直いい事が何もない。そのことを友人に相談すると、有名な占い師(霊媒師?)を紹介され、そこに出向くと部屋に入るなり、何も聞かれずいきなり「あなたの周りに悪い霊がいっぱい見えるわ、なにか心当たりは?」と言われ、『ロックオン~~♪(※)されたみたいで、仏壇・仏具の販売店に勤めていると言うと、「そこに来る客から悪い霊をもらっている、一刻もはやく仕事を変えなさい」と言われたので辞めることにしたとのこと。

(※)「突然ですが占ってもいいですか?」フジテレビ系列 参照

 

 他の店員にはなぜ取り憑かないのか聞いたところ、霊は取り憑き易い人を狙って取り憑くからと言われ、おとなしめの本人(娘さん)は信用してしまったようだ。

 

 思わず「占い師1人に言われたからと言って、すぐそれを信じて会社を辞めるのはいかがなものかと、本人(娘さん)に言ってみたら」とアドバイスすると、本人(娘さん)もその辺はわかっており、別の占い師にも見てもらい、ほぼ同じような事を言われたらしい。

 占い師のセカンドオピニオンも聞いて判断しているので、そういう面では一時の思い込みや変な洗脳をされたのではなく、自分なりにいろいろ検討して決断したみたいだ。

 

 そこまで言われると、確かにこのまま仕事は続けづらいとは思う。

職業相談を受けても、正直こういう理由で辞める人にどうアドバイスしていいかよくわからなかった。

 この場合、一般的なキャリア理論や自己理解を深めるカウンセリングスキルなどは役に立たず、信条や価値観・信仰の世界になるので、理屈で説得しようとしても無理がある。

 

 理由はともあれ熟慮の上、決断したのであれば辞めたらいいと思うのだが、辞める時や次の応募先に、まさか本当のことはいえないと思うので退職理由をどう説明するのか、なにか別の理由を用意しておくように助言しておいた。

 

 なお、次の応募先として、引き続き販売の仕事を希望しているがスーパーやドラッグストアのような来客人数や品数が多いところは苦手で、落ち着いて接客できる環境を希望しているのでどこがいいかと聞かれたので、眼鏡店、宝石店、キャンプ用品、日用雑貨品などの販売店で探してみては?とアドバイスをしておいた。

(後日談だが、その後、大手のめがねチェーン店に転職し、問題なく働いているらしいのだが、体調が回復したかや恋愛運が向上したかは確認していない)

 

●占い師もキャリアコンサルタント?

 そう言えば一度だけだが、相談窓口で何枚か求人票を持参して相談に来た人がいて、職種がバラバラだったので理由をきくと、方位学からみて自宅から北東の場所にある企業を選んで応募したいという人がいたことを思い出した。

 その時は、占いや方位学をあまり信じない自分にとっては、はて?と思いながらすんとした態度で、そっけない対応をしたような記憶があるが、本人にとっては真剣だったのかもしれない。

信じる者は救われる

 いろいろ不幸な出来事が続くと、それがたとえ仕事以外の事でも、その解決方法に「転職」という選択肢があることを知った次第である。

 こうした相談者にとっては、本業のキャリアコンサルトのアドバイスは聞かない人でも、占い師の言うことは素直に聞いてくれそうな気がする。

 そういう意味では、占い師の方も広い意味でのキャリアコンサルタントや産業カウンセラーといえるかもしれない。

 

●人には言えない退職理由

 就職活動において、こうした理由で転職する人は、どうせ言っても信じてもらえず馬鹿にされるだけだと思われることを恐れて、通常は相談員には言わないので実態はわからないのだが、意外と多いのかもしれない。

 私自身、「受け入れる事」はできないが、「受け止める事」はできたと思う。もう少し相談者に寄り添うべきだったと反省しているところである。

 職場の人間関係(ほとんどがパワハラかいじめ)が理由で辞めてきた人から、次の応募先の面接で前職の退職理由を聞かれたらどう答えたらいいかよく相談を受けた。

 実際、「(第52話) 上司ガチャにはずれた人」でも、

 

その続きがあって、相談者から上記のような相談を受けていた。特にパートの場合、辞めた「理由づけ」に苦労している人が多かったような気がする。

●退職理由のタブー

 一般に退職理由に人間関係を理由にすることはタブーとされている。ハローワークの職業相談員や民間のキャリアコンサルタントも人間関係を退職理由にしないよう勧めている。

 一言で人間関係が退職理由と言うと、その原因が、上司からの受容度を超えたパワハラ、周囲からのいじめ・無視・いやがらせを受けて、やる気をなくしたり、メンタルにもなりそうだったので退職してしまうことが多いのだが、その程度がどの程度だったのか? 普通の人なら耐えられる範囲なのに過剰に反応しているだけなのかもしれないし、あるいは、本人のコミュニケーション能力不足、協調性の欠如、職務遂行能力不足(仕事が覚えられない、ミスが多い)、さらに業務指示に従わない、社内ルールを無視するような勤務態度、いわゆる『モンスター社員』のため、周りから孤立して居づらくなったのかもしれない。

 いずれにせよ、これらを客観的に証明するものがないので人間関係(パワハラやいじめ)を退職理由として説明しても不安感を抱かせるだけだからである。

 面接官によっては、退職理由に納得感が得られない場合は、本人の性格や資質に問題があるのではないかと疑い、それを確かめたくてネチネチ聞いてくることがある。

 うまく説明できればいいが、特にパワハラを受けて退職した場合など、しつこく聞かれると動揺して自信なさそうな言い方になってしまい、なにか隠しているような印象を与え、本当に悪いのは会社側なのに、まるで自分側に問題があるように思われ、不採用になる失敗をしてしまう人がいる。

 つらいパワハラを受けて、それを理由に退職したのに、自己都合退職になる上に、正直に退職理由を言えず、パワハラ被害を受けた人が、その退職理由の説明に苦労するのはなんとも理不尽な話である。

 

 こういう場合は、私見だが、退職理由について、条件付きで人間関係(パワハラやいじめ)が退職理由であることは、面接時にはある程度は話してもいいと思っていた。(ただし、履歴書には記載しない方が無難)

 

●Only one から One of them (ワンオブゼム) 

 こういう時はまず、人間関係以外でなにか他に思いつく退職理由はないかを聞き出していた。

 例えば・・・

・社長が交代し、事業方針や経営方針が変わり自分の仕事に関する考え方と合わなくなった。(ただ、それに従うことは苦ではなかった)

・退職者が出ても補填採用してくれず、自分の負荷が増して、残業が増えて体力的に厳しくなった。(なんとか対応できる範囲だった)

・パートの場合、シフトが減り収入が少し減った(生活にはそれほど影響がなかった)

 などを挙げて、いずれも受容範囲であったとしてもこれを無理気味に、とりあえず一番の退職理由として説明し、それだけでは退職理由として弱くて何か隠しているのではと疑いをかけられそうになったら、それ以外の理由として、

 「もうーつ理由がありまして、実は、上司(お局様)が独断的・感情的で職場の風通しが悪く、業務効率アップのためにいろいろ改善を申し入れたものの無視されたり、その上の上司に相談しても「辛抱しろ」といわれるだけで取り合ってくれず、この会社に長く自分が働いているイメージが湧いてこなかったことも理由の一つでした。仕事自体はやりがいを感じており、周り人たちとも仲良くできていたので、とても残念でした。」

 と、理由を2つ以上挙げて、最後に人間関係にさらりと触れるようアドバイスしていた。

 さらに、この時必ず、

1.仕事自体はやりがいを感じていたこと

2.上の上司あるいは人事担当者に相談したが、取り合ってもらえなかったこと(自分なりに努力はしたこと)

3.「パワハラがつらくて辞めた」とは直接的に言わず「このままここで働くイメージがわかない」というような婉曲的な表現にすること

この3点を必ず言うように勧めていた。

 これにより、退職理由が人間関係である割合を「薄める」ことができるし、人間関係に弱いイメージを持たれないようにすることができる。

 また、「私はパワハラがひどい職場だったらすぐ辞めますよ」と宣言することになるので、応募先が同じようなパワハラ上司やお局様をかかえていたなら、この理由を聞くと、すぐ辞められるかもしれないと思って不採用にしてくれる可能性が高くなる。

 そういう意味で応募先に「探りをいれる」効果もあるような気がする。

 

●退職理由は誰も信じない

 私が前職の人事部で採用面接をしていた時は、退職理由は一応聞いてはいたが、深堀することはしなかった。どうせ本当の事を言わないだろうということが予想できたからである。

 通常、面接官は退職理由を聞いてもそのまま鵜呑みにすることはない。真偽は不明でもとりあえず納得感さえ得られればそれでよく、「ひょっとすると嘘かもしれないけど、話し方や表情からするとどうも本当らしいので、まあ、そういうことにしておこうか」という気持ちになってもらえるかがカギとなる。

 ここで、信じてもらうには、より真実味を帯びた話し方や表情が重要になってくる。

 面接で嘘っぽいことを言おうとすると、何か後ろめたさを感じてオドオド感が漂う人が多いが、実際にパワハラ被害を受けたことは実体験なので気持ちがこもり、説得力のある話し方ができるはずである。

 

 もちろんこれでうまくいくかはわからないが、面接でパワハラ被害の事実を、真実味をもって話せそうだったら、前述の条件付きで、正直に話してみることを勧めていた。

 参考にしてもらえればうれしい。

 有効求人倍率が厚労省から定期的に公表される。最近は1 . 0 ~ 1 . 3倍くらいで推移しており、景気の指標として大きな目安となっている。

 ただ、これはあくまで平均値であって業種・職種ごとでかなり差がある。例えば、人気がある一般事務職の場合はおおむね0 . 6倍くらいで、不人気職種と言われる建築・土木警備運送介護看護保育などは2 ~ 6倍くらいで推移している。

 不人気職種といえども、いずれも日本の社会や日本人の生活を支える大切な仕事ばかりである。

 一部のハローワークではこうした不人気職種専門の相談窓口を設けたり、個別面接会をまめに実施して何とか就職に結び付けようと努力している。

●介護職で働きたい?

 そんな折、介護職に応募したいと、一見コミュ障ぎみの20歳の男性がデイサービスの求人票をもって来窓してきた。介護は全くの未経験で職歴をみると高校卒業後、アルバイトを転々として定職についたことがない。製造系で応募はするのだが、なかなか正社員で採用されないので、介護職に応募したいという。介護職を希望した理由を聞くと、採用されやすいと人に聞いたからとのこと。

怒髪天を衝きそうになったが、ぐっとこらえて、

「介護という仕事がどんな仕事かわかっているの? そんな気持ちで介護職に就いても長く続かないと思うよ。せめて介護職員初任者研修を受けてから応募しては?」とやさしく諭すように言ったのだが、とりあえず応募したいというので、(しかたなく)事業所に了解をえて、紹介状を発行してお引き取りいただいた。

 後日確認すると当然ながら不採用となっていた。いくら人手不足職種といっても、こんな人間は採用したくないのは当然である。

 一方で、私自身も介護施設に高齢の義父母を預けており、介護施設に面会訪問した際、仕事柄、ここで働く若い人や学校の研修で就労体験している人たちになぜこの職を希望したのかそれとなく尋ねると「親が祖父母の介護で苦労している姿を見て」とか「祖父母が認知症になったが施設で楽しそうに過ごしているのを見て高齢者の役に立ちないと思って」などの理由をあげてこの仕事に就いた、あるいは志したと聞かされたことがあった。

 介護職を通して他人様のお役に立ちたいという使命感や熱い思いを聞かされ、今の若者も捨てたものじゃないと頭が下がる思いがした。

 

 実は、やりたい仕事が見つからない、特にやりたい仕事はないという人に、介護職への挑戦を時々打診したのだが「私には無理!」という回答が多かった。

 

●「私には無理!」の意味

 介護現場で働いている人に対して時々「すごいわね~、私には絶対できない仕事だわ」と言う人がいる。

 一見リスペクトしているような発言だが、言われる立場からいうとあまりうれしくないと聞いたことがある。

 純粋に自分自身の資質や能力ではできないことから発言しているのであればいいのだが、「安い給料であんなつらい仕事よくやるよね」といった意味合いが込められているような気がしてあまりいい気持にはならないとのことである。

 

 若い求職者の中には、ろくに職業研究や就労の実態を調べることもせず、マスコミやS N Sから知った情報から思い描いたイメージや固定観念に基づいて判断している人が多いような気がしてならない。(もちろん、これは介護職以外の不人気職種にも通じていえることだが・・・)

 マスコミ報道で「介護職員がストレスから入居高齢者を虐待した」とかSNSでは「介護業界の」みたいなテーマの動画やX等での投稿が後をたたない。

 もちろん厳しい現実は知っておいて欲しいが、こういうことはどの職種でもいえることであって、それ以上のやりがいを感じることもあるはずである。そこもぜひ併せて強調してほしいところだ。

 

●待遇改善も進んでいます

 まだまだ少ないとはいえ、以前に比べれば処遇改善加算など国からの助成金も増額されてきたし、施設によってはD X化を進めて、べッドや部屋の入口にセンサーを取り付けて夜勤の見回り件数を減らしたり口ポットや筋力スーツなどで介助の身体的負担を軽減したり、介護者にとって待遇改善や就労環境の改善は徐々に進んでいる。

 人はいずれ歳をとると自分の身の回りのことができなくなる。ごくわずかのPPK(ピンピンコロリ)で亡くなる人を除き、介護職は死ぬまでにほぼ全員がお世話になる仕事である。

 2026年には25万人が不足するとも言われ、あと数年で団塊の世代が介護適齢期になると、介護施設や介護職員が不足し、特に都市部では『介護難民』がでてくるともいわれている。

 介護福祉士や社会福祉士などの国家資格もあり、キャリアアップも可能で「つぶしが利く」ことから高齢になっても続けられる仕事と言えるし、今後AIが普及しても、まずなくならない職業とも言われている。

 

●SNSの功罪

 第83話:求人票と違います ではS N Sの普及はプラック企業の抑止につながったメリットがあると書かせてもらったが、デメリットとして、介護に限らず、不人気職種に関して偏った先入観を醸成してしまう危険性をはらんでいる。

 そういう意味でSNSは求職者にとって諸刃の剣ともいえる。使い方を間違えないようにしてほしいものだ。

 

 今回は趣向を変えて、以前から生成AIはハローワークをどう見ているのか気になっていたので、利用するメリットとデメリットを生成AI (ChatGPT)に聞いてみた。

 

生成AIからの回答は下記の通り(青字、一部抜粋)

 

 ハローワーク(公共職業安定所)は、日本の国民が利用できる公的な職業紹介機関です。以下に、ハローワークを利用するメリットとデメリットをまとめます。

 

○メリット

1.幅広い求人情報

 地元企業をはじめ、さまざまな業界・職種の求人情報が集まっています。特に地域密着型の求人情報が豊富です。

2.就職支援サービス

 職業相談やキャリアカウンセリング、就職セミナーなど、さまざまな就職支援サービスを受けることができます。個別の相談も可能で、履歴書の書き方や面接のアドバイスなど具体的なサポートも提供されます。

3.職業訓練の案内

 再就職を支援するための職業訓練の案内や斡旋を行っています。これにより、新たなスキルを身に付ける機会が得られます。

 

デメリット

1.求人の質のばらつき

 中には条件の悪い求人やブラック企業の求人が含まれていることがあります。求職者自身で見極める必要があります。

2.専門職や高収入の求人が少ない

 特に専門的なスキルを要求する職種や高収入の求人は、民間の転職エージェントや求人サイトに比べて少ない傾向があります。

3.営業時間の制約

 ハローワークの営業時間は平日の昼間に限定されており、働きながら転職活動をする人にとっては利用しにくい場合があります。

 

 ハローワークを利用する際は、これらのメリットとデメリットを考慮しながら、自分のニーズに合った形で活用すると良いでしょう。必要に応じて、民間の転職エージェントや求人サイトと併用することで、より多くの選択肢を得ることができます。

 

 いずれも窓口で相談者からよく言われたこともあり、相談員にとっては既知のことで特に目新しいものはない。

 ただ、その分野に精通していない者(例えばハローワークを初めて利用する人)にとっては、体系的にすっきり説明してもらえるのでわかりやすく大いに参考になると思う。そういう意味で今の生成AIレベルはその分野について知識や経験がない人にとっては充分役立つツールといえるかもしれない。

 

●10年後に無くなる仕事

 最新の生成AIでは音声でのリアルタイムの対応が可能になってきており、10年後に無くなる(少なくなる?)仕事に、カウンセラーやコンサルタントの仕事が含まれるのはまちがいない。

 こうした仕事を生業にする者にとって薄っぺらな対応しかできないなら、いずれ生成AIには勝てなくなる。相談者から「その程度のことなら生成AIでも言ってましたよ」と言われかねない。

 日々研鑽に励み、専門的な知識の他にも、生成AIには真似できない顧客の個々の細かな実情に沿って、個性的で人間味あふれたカウンセリングスキル、コンサルスキルを求められることになりそうだ。

 

●ついでに自分のブログの評価も聞いてみました

 これ以外にもいろいろ質問をぶつけているうち、興味本位「アメブロ『ボクのハロワ日記』をどう思いますか?」と質問をしてみた。回答は以下のとおり。

 

 「ボクのハロワ日記」は、ハローワークの元職業相談員が経験した実話をもとにしたブログで、仕事探しや生活に関する様々な問題について取り上げています。ブログでは、具体的なエピソードや経験談を通じて、職業相談窓口に訪れる様々な人々の悩みや苦労が描かれています​​。

 ブログの内容は多岐にわたり、例えば、生活困窮者の支援についてや、SNSの普及による企業の自制効果についても詳しく説明されています​​。また、働く環境や求人に関する現状をリアルに描き出しており、求職者や企業側の両方の視点から問題を考察しています​。

 「ボクのハロワ日記」は、求職者や就職活動に悩む人々にとって有益な情報源であり、職業相談の現場を知ることで、仕事探しや労働環境についての理解が深まるでしょう。職業相談員の視点から語られるストーリーは、読者に親しみやすく、共感を呼びます。また、具体的なアドバイスや現実的な状況の説明が多く含まれているため、実際に役立つ情報が得られます。

 

 当たり障りのない良い評価をしてもらっているみたいなので内心安堵したのだが、よくよく考えると、なぜ生成AIに自分のブログを評価してもらい一喜一憂しないといけないのか、相手は所詮機械(人工知能)であることを考えると、自分から評価を求めたものの、なにかモヤモヤした思いを感じてしまった。

 人工知能が人間の感情をコントロールするということが現実に起きており、昔、人工知能が人を支配することをテーマにした「イーグル・アイ」という映画があったが、徐々に現実味を帯びてきて何か末恐ろしい気持ちになった。

 

<追記>

 もし長年ブログをされている方で、興味があるなら自分のブログを生成AIはどう評価するか聞いてみてはいかがでしょうか? 

 なにか閲覧数を増やすヒントになるコメントをしてもらえるかも・・・

 

 よく窓口で、「面接にいったら、求人票とは異なる条件を提示された」あるいは「採用になって働いてみたが、求人票や雇用契約書と異なる条件で働かされた、または働かされそうになったので、すぐ辞めてきた」という相談や苦情があった。

 「ハローワーク(HW)の求人もええ加減やなあ~、この事業所を注意しておいて!」ときつい口調で言われたこともあった。

 HWに限らず民間の無料の求人サイトに載っている求人でも、残念ながらそういう企業 (求人)は一定数存在する。

●辞めたら次採用すればよい?

 求人票と異なる条件が面接時や入社前に提示された場合は、腹立たしいが事前に辞退できるのだが、働き始めてわかると「せっかく入社して頑張ろうと思っていたのに・・・」 と本人の精神的負担も大きいものがある。

 

 ブラック企業の一般的な定義は(第74話)ブラック企業は永遠に不滅です

 

で書かせてもらったように、入社後に法律違反の下でパワハラなどでマインドコントロールしながら社員を働かそうとすることが多いのだが、それとはちょっと違い、こうした企業は求人票や面接で『いい話』をして、入社したら異なる就労条件で『なし崩し的』に働かせて、辞められるか辛抱してそのまま働くかは『賭け』と割り切って、辞められても別にかまわないと思っており、反省もせず「この人はハズレだったので次、採用しよう」くらいで考えていることも多い。

 

 職業安定法の改正により令和6年4月から、求人を申し込む場合、従事すべき業務変更の範囲や就業場所が変わる可能性を提示する義務が生じたが、本人の同意なしに初めから求人票と異なる条件で働かせるのは、明らかに法律違反となる。

●通報窓口はありますが・・

 求人票に書かれてある雇用条件が就労実態と異なっていて、その事実を拡散したければ、民間の求人サイトならばロコミに入力するという手があるが、HWIS (ハローワークインターネットサービス)には、民間の求人サイトのようなロコミを入力するところがない。

 こうした場合、HWISのホームページに専用の通報窓口「ハローワーク求人ホットライン」が掲載されているので、そこに通報すれば事実関係を確認して事業所への行政指導や悪質な場合は求人不受理も可能なので、できれば通報してほしいのだが、そういう目にあった人はすでに辞めていることが多いので、面倒くさいのか今更苦情を言っても仕方がないことから、いわゆる『被害届』が提出されないことも多い。そのためそのまま求人が継続して掲載されることになる。

 実は、こうした苦情は上記のホットライン以外にも相談窓口でも受け付けているが、苦情の申請をしようとすると、「確認のため関係部署から電話がかかってくることがあります」と言わなければならないのだが、そうすると「それならもういいです」と言われることが多かった。

 

●グレー企業として記憶します

 我々相談員も窓口で、応募した人や短期で辞めてくる人などからの苦情を聞くと、すべて信じているわけではないものの、複数人から聞くことがあると、かなり信憑性は増してくることになる。

 ただ、面談記録には事実関係だけを入力し、相談員の個人的な感情や感想は入力してはいけないことになっており、 こうした場合、応募者や退職者からそういうコメントがあったと記録することはできるが、「ここは要注意企業」とは書けないのである。

 結局、プラックと言い切ることはできないものの、グレー企業として頭の中に記憶することになる。

 実は、ベテラン相談員になるとこうしたグレー企業の情報は、相談者からいろいろ聞くことが多いので、けっこう裏情報として記憶に残っている事が多いのだが、立場上直接的に相談者に話すことはできない。

 

●相談員も困っています

 窓口で困るのは、求職者が自選したグレー企業の求人票を持参して応募したいので紹介状を発行してくれと言われることがある。

 当然ながら、「ここはプラックの匂いがするから応募はやめておきなさい」とはロが裂けても言えない。(相談者が自分の親戚なら絶対やめておけと言うのだが・・・)

 「この求人について、これまでなにか気になる面談記録やコメントはありますか?」とか相談者から訊いてもらえれば、真偽不明を強調しながら、 これまでの応募者からこういうコメントがあったことをそのまま伝えることはしていたが・・・。

 そうした質問なしに、いきなり応募しますと言われると、こちらも粛々と紹介状を発行するしかなくなる。

 私の場合、こういう時は、

「この求人の応募はこれでいいとして、ほかにもいろいろ応募されてはいかかですか。よかったら他に似たような求人を探しましようか?」

と最大限の『持って回った』言い方をしたのだが真意が伝わらないことが多かった。

 もし相談員が、応募しようとして本人が希望もしないのに、他の求人情報を提供しようとしたら、少し考え直した方がいいかもしれない。

 

●S N Sが抑止効果

 ただ、こうした苦情は私がこの仕事を始めたころは多かったのだが、S N Sが普及してくるにつれて徐々に少なくなったような気がしていた。

 各企業もS N Sの普及により口コミで悪いうわさがネット上で広まると、応募が減ると困るので、自制するようになったのかもしれない。(ただし、無くなったわけではない)

 最近、新卒の大量辞退者がでてネットで叩かれているペットフードで有名な会社は、そんなS N Sを軽視した「報い」を受けているような気がしてならない。

 この事件はほとんどテレビやマスコミで取り上げられなかったため、昔ならこんなに表沙汰にはならなかったと思うのだが、SNSのおかげで広く知られることになり、応募しようとする求職者にとっては、大いに参考になったところだ。

 S N Sの普及は、運用面で様々な問題点を指摘されるが、こうしたブラックorグレー企業の誇大求人広告の抑止効果につながったことは、求職者にとってはメリットだったのかもしれない。

●テレビCMが盛んです

 テレビで大手の鉄鋼メーカー、素材メーカーやゼネコン、IT企業など一般消費者とは直接取引がない企業が有名女性タレントを起用して、膨大な広告宣伝費を使って求人広告を流している。

 これは、ほとんどが新卒学生およびその親向けのブランディング戦略によるリクルートが目的である。

 自分の子どもが応募しようとしたところ「そんな会社聞いたことがないからやめときなさい」と反対されないように企業の知名度とイメージアップを図るため、ゴールデンタイムにも流しているのである。今は恒常的に売り手市場が定着した感がある。

 大手企業でもこうして人集めには苦労しているくらいなので、ましてや広告宣伝や有料の紹介会社など支払う手数料(求人費)にお金をかけられない中小企業となると、採用の苦労が尽きない。

 もっと人を採用したいのだが、どうしたら応募者数が増えるのか、社労士も社長さんから相談を受けることが多い。

●HWでもいろいろサービスがありますが・・

 こうした問題の解決策の一つとして、一部のハローワーク(HW)ではリクエスト制度といって、求職者の相談窓口で、求人者から、自社の求人票を希望条件に該当する求職者に(事業所には匿名で)郵送するサービスを受付ていた。(ただし、利用回数と送付数には上限あり)

 求人をだしているが全く応募がなく、人手不足で困っている地元の中小企業の採用担当者が時々来窓されて利用されていたが、実際のところ、求人票を郵送してもその求人票を窓口まで持参して応募する人はあまりいなかった。

 採用担当者もあまり期待していない感があったが、他に策もなく「ダメ元」の思いで依頼されていた。

(この他にも、場所にもよるがHWの会議室等を利用した個別の就職面接会を実施するサービスもあるので希望するなら一度窓口で相談してみてほしい)

 

 従業員が20~80人くらいの中小企業が多く、その際、採用担当者からいろいろ悩みを聞くことも多かった。

 「うちは、給料はそんなに高くないけど、社長は社員思いのいい人で、まあまあええ会社やと思うんやけど、応募が無いんや」

 「特に能力の高い人を求めているわけではなく、真面目にコッコツ長く働いてくれる人でええんやけど・・・。窓口でいい人がいたら、うちの求人を勧めてくれへんか」

など、切実な感じでよく相談(依頼)をうけていた。

 

●求人票の見るところ

一般的に、応募者数を伸ばす方法としては・・・

・HW以外にも他の求人メディア(有料・無料)に掲載し露出度を上げる。

・ホームページで継続した情報発信をしながら企業イメージをあげる。

競合他社の求人と比べて、雇用条件(賃金、休日等)に遜色はないか確認する。

 などが考えられるが、残念ながら即効薬はない。

 

 採用担当者には、求職者は求人票のどこを見ているか? 何を重視するか?という観点で気づいた範囲でアドバイスしていた。

 

 まず、求職者が真っ先に求人票で確認するところは、仕事の内容、賃金、年間休日ということになる。

○仕事の内容

 仕事の内容はできるだけ具体的に記載すること。これからはキャリア採用の場合、ジョブ型雇用が主流となっていく。中小企業では職務内容を明確化することは難しいが、例えば「一般事務」だけではなくて「備品管理、受発注業務、伝票処理、役員秘書、電話の応対、来客へのお茶出し、官公庁への届け出 など」とできるだけ具体的に書くことにより、そこで働くイメージがわきやすい。

 さらに、この仕事を経験するとこんなスキルが身につきますということが記載されてあればさらに印象はよくなる。

 

○賃金

 賃金は一定額の範囲内なら1円でも多いところという求職者は少なかった。

 ただ、昇給のイメージがわきやすいように、例えば 賃金モデルの一例として

  30歳  25万円~30万円

  35歳  32万円~38万円

        :

などと書かれてると、自分のキャリアアップと生活基盤の安定がイメージできるようになり、応募につながることが考えられる。

 また、経営リスク(人件費リスク)を考慮するあまり、月額給与は押さえた金額にして、業績連動型の賞与を安定的に高額支給する経営方針の場合、年収ベースでは同額になることが多いのだが求職者にはわかりにくい。給与体系を変えることは大変だが、今の賃上げの流れに合わせて、この機会に賞与の支給月数は減っても、月額給与の思い切った賃上げを検討するいいタイミングかもしれない。

 

○年間休日

 正直、今のご時世、年間休日は、製造業では120日以上、サービス業でも105日以上はないと厳しい。

 実際、窓口で求人情報を提供する際に、賃金が多少よくても「この会社は年間休日が少ないのでやめておく」という声が多かったような気がする。併せて平均時間外労働も気にする人も多かった。今の若い人はワークライフバランスを重視する傾向が強いようだ。

 この他、転勤のないことも若い人からよく確認をされた。中小企業は該当しないことが多いが、大手企業も「地域限定正社員」という転勤のない職種を設けるようになってきている。

 

●会社のいいところをできるだけ「見える化」する

 そして、なによりいちばん気にするのは「ここは安心して働けるか?」という不安に応えられるようなことが書かれてあるかということになる。

 こうした不安を少しでも払拭できるように、求人票の「特記事項」欄に具体的に記載することを勧めていた。

 例えば・・・ 

・この3年で社員○人中、自己都合で退職した人は○人

・正社員の平均勤続年数○年

・年次有給休暇取得率80%以上

・これまでの育児休業利用者○名

・ハラスメント撲滅運動を実施中(通報窓口あり)

・1年に2回、自己申告制度があります

・資格取得に報奨金制度あります

・応募する前に事前の会社見学歓迎。先輩社員との座談会も可能です。仕事のやりがい以外にもつらいことも聞けます。 など

 

 この他『(第75話)ブラックorホワイト迷ったら・・・』で企業の見極め方法を述べたように、国や社労士による優良企業の認証をうけて、求人票に記載するのも有効かと思われる。

 ここで「風通しのいいアットホームな雰囲気です」など抽象的なことを書いても、他に書くことがないのかと思われ逆に印象が悪くなる。

 これらはいずれも中小企業では難しいことばかりだが、本当にいい人材を採用したいのなら経営者もできる範囲で少しずつでいいので、雇用管理や職場改善をしていかないと、残念ながら応募は増えないことになる。

 

 結局、「応募がない!」と嘆く前に、現在働いている社員の声を大切にし、離職を防ぐ施策を実施して、それをしっかりアピールすることが、応募を増やす一番の方法なのかもしれない。

<前編>からの続き・・・

 

顧客(法人)の見つけ方

<ステップ1> ホームページ等、情報発信環境を整備する

 まず、BtoBのビジネスをしたいのなら、自社のホームページ(HP)で情報発信する環境を作る。どんなに規模が小さい会社でも、今のネット時代にHP等の情報発信の環境があるかないかで企業イメージがかなり変わる。企業間で新たに取引を開始する場合、通常相手のHPを確認する事が多い。HPを持たない会社は「ホームレス企業(?)」と思われ印象が悪くなる。

 HPの作成は外部へ委託することもできるが、お金をかけられないというのなら、グーグル,Jimdoなどで、無料で作成・運用できるツールがあるのでそれらを利用して、自社のPRや設備、これまでの宝石の作品集を写真で掲示しておく。

 

<ステップ2> HWISの求人票を確認する

 次に、(これからは多少アナログっぽいやり方になるが・・・)できれば近県、なければ全国で(今回は)宝石加工の求人がでていないかハローワークインターネットサービス(HWIS)で確認する。

(検索操作が面倒であれば、フリーワード検索機能を利用し、「宝石加工」で検索すればよい)

 ハローワークの求人票には必ず会社の規模(資本金や従業員数、設立年)や社長名、住所、電話番号、URL、メールアドレス等の連絡先の他にも、前年度の賞与の実績や平均の時間外労働時間も載っていたりして、求人を出すくらいの企業だから、仕事はあり、そこそこ儲かっているはずである。

 

<ステップ3> 社長あてにDMを送る

 その会社の社長さん宛てに、雇用ではなく請負で仕事をさせてほしいと手紙(☆)かメールを送る。その際、作品集や取引実績、自社URLやQRコードを添付する。(メールもよいが、スルーされることが多く訴求力に欠けるので、できれば手紙がお勧め)

 ☆サンプルイメージです。ご参考までに。 

 

 

<ステップ4> その後、できれば、電話でフォローをする。

 

 おそらくせんみつ(※)」の世界になるかもしれないが、じっとして何もやらないよりはましでは・・などとアドバイスしてみた。

(※)1000分の3、1000通送って反応があるのが3件 という意味

 

【参考】なお、求人を出している企業が少なければ、一応、対象の顧客先になりそうな業界の企業を下記サイトから地域や業種、会社規模で検索することもできるが(一部有料)、逆に数が多すぎたり、儲かっている会社かどうかは不明なので絞り込むのに苦労するかもしれない。

https://baseconnect.in/

 

●HWISの求人票は「顧客情報の宝庫

 「ええこと聞いたわ、参考にするわ」と言って、結局、全国ベースの宝石加工の求人票を受け取って、自分自身の職業相談もすることなく急いで離窓された。(なんか損をした気分・・・)

 あまり大きな声ではいえないが、この相談を通じてHWISの求人情報は、求職者むけ以外にも、こうして自営業者・フリーランスの法人顧客開拓にも活用できるのではないかと感じてしまった。

 

 今回の宝石加工以外にも、WEBデザイナーやシステム開発など、テレワークが可能で場所を選ばない仕事など、起業している同じ業種の求人を検索することで前述のように雇用ではなく請負の顧客開拓のツールとしての利用できるかもしれない。

 また、士業の顧客開拓などにも、得意な業界に絞り込んで顧客発掘に活用できるかもしれない。

 

 今回はあくまで顧客開拓の一つの方法論としての可能性を示したものだが、もし顧客(法人)の開拓方法に苦慮しているのであれば、参考にしてもらえれば幸いである。

 

●内職は紹介できません

 なお、前述の通りハローワーク(HW)の職業紹介事業は原則、雇用契約を締結することが大前提である。

 従って、家族の介護や自身の持病のため、在宅の仕事を希望するがパソコンやスマホに疎い相談者から「内職の仕事はありませんか」という相談を何度か受けたことがあるが、請負契約となるので残念ながらHWでは斡旋はできないと回答していた。

 ネット上の内職サイトでは時々見つけることができるが、地方では材料の受け取りや完成品の納品には自家用車が必要になることも多く、なかなかハードルが高いようだ。

●起業はしたけれど・・

 起業(独立)した人が時々、仕事探しに相談に来ていた。ハローワークに相談にくるということは、起業した事業がうまくいっていないことになる。

 高齢者で年齢的な理由で廃業した場合は(第60話)自営業(フリーランス)、キリギリス人生の末路

で書かせていただいたが、30~50歳代のまだまだ働き盛りの人では、起業したものの仕事や売上が減り、生活のため(廃業はせずに)空いている時間に少しでも働きたいという相談が多かった。

 

起業もいろいろ

 2010年頃までは、起業(独立)しても1年で5割、3年でプラス3割が廃業すると言われていた。しかも店舗を構えたり設備投資をすると、まとまった資金も必要なので、下手をすると多額の負債を抱えることにもなり、実際に起業するとなると相当の覚悟が必要だった。

 ただ、最近はパソコン1台で簡単に副業として起業することも可能で、起業するビジネススタイルも、従来のBtoBやBtoC以外にも最近はネット上でのCtoCやBtoBtoC、CtoBtoCなど多様なビジネススタイルも可能となり、初期投資が少額で済み、とりあえずやってみようと挑戦しやすくなってきていることは、資金がなくても商才に長けている人にとってはいいチャンスだと思う。

 

 こうしたネットビジネスをまず副業から始めたい人向けの支援サービスやセミナー等については、SNS上でいろいろと掲載されているので、そちらを参考にしてもらうとして、今回は昔ながらのBtoBのビジネススタイルで起業(独立)した人が職業相談に来た話をしてみたい。

 

起業に必要なものは?

 BtoBのビジネスを起業(独立)する時に、まず必要なものは「当面の顧客」「営業力」と言われている。顧客は知人や友人、前職のコネ、何でもいいので人脈をフル動員して紹介してもらい、さらにその顧客から新しい顧客を紹介してもらうのがベストなのだが、それを確保せずに、「この商品があれば必ず売れるはずだ、この技術や資格・サービスがあれば必ず仕事はあるはずだ」と勝手な思い込みから起業すると、厳しい結果が待っている。

 

●顧客(法人)が見つかりません

 40歳代男性。宝石加工の求人はないかと来窓。一応探してみたが、(全国ベースではいくつかあったが)さすがに地方でこんなレアな求人はなかった。本人も無理だろうとはわかっていた様子。

 事情を聴くと・・・

 数年前に宝石加工の会社を起業したが、コロナ禍で仕事が激減してしまい、生活が苦しくなり、廃業はしないが、外」でも働くことにしたとこと。

 それなら宝石加工にとらわれず、職種を広げて探すようアドバイスしたのだが、やはり宝石加工にこだわりたいのか気が乗らない様子。

 求人がないのだからどうしようもないのだが、起業したときの苦労話などいろいろ話しているうちに本人から、知り合いやコネもなく新規の顧客をどう開拓すればいいか困っているとの話を聞かされた。

 当面の顧客は確保して起業したものの、コロナ禍という不運はあったとはいえ、起業後の継続的な営業活動をしなかった、あるいはできなかったためと思われる。

 

 本来なら、ここでは就職活動の相談には応じるが、当然ながら事業の経営や営業的な相談には応じられないので、通常は「そうですか、大変ですね」ぐらいの回答でスルーすべきではあったが、私の場合、生来のおせっかいな性格もあり、たまたま前職で人事部の前に法人営業の経験があったので、顧客(法人)開拓方法について、少しだけ日頃の職業紹介を通じて感じていることを話してみた。

 

長くなるので次回の後編につづく

●仕事が合いません

 仕事が合わなかったと言って辞めてくる若者が何度か相談にきた。次に就きたい仕事を聞くと、特にやりたい仕事が見つからないとのこと。

 こういう場合、本来なら時間をかけてじっくり相談に乗ってあげたいところだが、一般の相談窓口では、情報提供や職業紹介を優先させて、できるだけ時間をかけずに「早く回さない」といけないので、じっくり相談に乗ってもらえる「個別支援窓口」を紹介するのだが、事前予約が必要なこともあり、申し込む人はあまりいなかった。

 自分がどんな職業に向いているかわからないのであれば、(ハローワークでは実施していないが)職業適性検査として、キャリアコンサルタントがよく実施するVRTや厚労省が推奨するGATBなどがある。この他にも、地元の地方公共団体や委託をうけた外郭団体や NPO法人などが様々な若者向けに職業適性検査を実施しているので受けてみたい人は確認してほしい。

 ただ、適性検査を受けて来た人に聞くと、自分の職業適性を知ることはできるが、「あなたは〇〇職に向いている」という結果がでても本当に自分に向いているのかピンとこない人が多かった。

 向いている仕事を提示されても、自分がそこで働くイメージがわかないのだと思う。

 

●仕事の内容よりも周りの環境が大事

 自分と仕事のマッチ度を測る指標として、仕事の内容が重視される傾向があるが、長年の職業相談の経験から、仕事の内容よりも労働環境要因(職場環境や人間関係、雇用条件<賃金・体暇・職位>等)の方がその影響が大きいような気がしている。

 そもそも、やりたい仕事など探して見つかるものでもないし、百歩譲って見つかったとしても(起業する場合を除き)その仕事に就くことができるかどうかの保証もない。

 

 初めは、いまいち興味のわかない仕事でも、上司や同僚との円滑な人間関係の中で、ある程度の権限が付与されたり、応分の賃金を受け取ることができるようになり、成功体験を積み上げて、だんだんとその仕事がおもしろくなって、自分のやりたい仕事になっていくというプロセスが一番自然だ。

 どんな仕事でも、自分の周りの労働環境自分の意志が、自分と仕事との「ミスマッチ」を「マッチ」に変えていくような気がしている。

 そういう意味で、人材を育成するという企業風土がある会社で働いていれば、マッチ度は向上する確率は高くなるのは間違いない。

 

 ただ、こればかりは働いてみないとわからない。結局、きっかけは何でもいいので、目の前の仕事でとりあえず働いてみて、その中で一定の妥協はしながら、「ちょっと頑張ってみようかな」という気持ちになり、やりたい仕事にしていくというアプローチが現実的だ。

 働いて「ちょっと頑張ってみようかな」という気持ちを見つけ出せなければ、ミスマッチということになるのだが、その場合も、仕事の内容なのか、環境要因なのかをよく見極めて、次の仕事を探したほうがよい。

 もし、後者が理由なら同じ職種でも構わないことになるし、自分にこの仕事は合わない(ミスマッチ)と短絡的に判断しないことが大切である。 

 

 ただ、こうした「やりたい仕事がみつからない」という相談者も30歳を超えると徐々に来なくなる。歳を重ねて、稼がないと食べていけなくなるので、そんなことも言ってられなくなる現実に気づくようだ。

 そういう意味で「時間」が解決してくれるのかもしれない。

 

 ●こんなミスマッチはいやだ!

 今回は 第80話の記念なのでゆる~~い話として、

『さすがに、こんな職業人はいやだ』を大喜利風にまとめてみました。 お楽しみください。

 

〇 高所恐怖症のとび職人  

〇 血を見ると卒倒する看護師   

〇 土日休みたい遊園地のパフォーマー

〇 金属アレルギーの宝石商店員

〇 方向音痴のツアーコンダクター

〇 加齢臭のするワインソムリエ

〇 人見知りが激しいカウンセラー

〇 元自衛隊で訓練教官をしていたという保育士

〇 霊感が強く背後霊が見える葬儀社の社員

〇 ギャンブル依存症の証券マン

〇 爬虫類を見て「無理!」と叫ぶペットショップ店員

〇 ITを「イット」と読むシステムエンジニア

〇 好きな映画が「ワイルドスピード」という自動車教習所の教官

〇 静電気を異常に怖がる電気工事士

〇 禁煙外来に通院するJT社員

〇 雨男、雨女を自認する気象庁職員

〇 アルコール依存症の杜氏

〇 元暴走族だったタクシー運転手(これはいるかも)

〇 幽霊が怖くて夜間一人で巡回できない警備員

〇 競技する前に日焼け止めクリームを必死に塗るプロサーファー

 

 「そんなやつ おらんやろ!」とツッコミを入れていただければ幸いです。

 また、これ以外にも「こんな職業人はいやだ」がありましたら、コメントでお願いします。

 50歳代前半、独身で一人暮らしの女性。長年、税理士事務所に勤めていたが、自分と同年代の所長が突然、心筋梗塞で亡くなり、事業を引き継いでくれる人もなく、事務所を閉鎖することになり退職を余儀なくされた。

「定年(65歳)まで働かせてもらうはずだったのに・・・」

年金受給まではまだ10年以上あり、途方に暮れているとのこと。

 

 経理事務しか経験がなく、引き続き事務職を希望しているが、この歳では正直、再就職先が見つからない。パートなら見つかるかもしれないが、生活を維持するため正社員の事務職となるとかなり難しい。そのことは相談者も理解している様子。

 あまりに気の毒なので、なんとかしてあげたいと思うのだが妙案はない。話しているうちに職業相談というより人生相談になり、苦悩話を傾聴するだけで面談は終わった。

 この人の場合、少し貯金はあるのですぐには困らないことと、基本手当が最長の330日分が受給できるため、今後のことはじっくり考えることとなった。

●雇用労働者の2大リスク

 雇用労働者(サラリーパーソン)にとって職業人生での最大のリスクは希望しない失業(会社の倒産・廃業・リストラ等)と、自分自身の病気と言われている。(以下、これらを「有事」という) 

 50歳代は加齢とともに病気になる確率も高くなるし、倒産とは無縁の安定した企業に勤務していても、企業は業績不振時だけでなく、黒字でも企業体質改善のためにリストラを実施することがある。その場合、50歳代はまちがいなくターゲットになる年齢層であり、いつ声がかかるかという危険性と隣り合わせで働いていることになる。

 そして、事務職などデスクワークの経験しかない人にとっては、「つぶし」がきかないので、50歳を過ぎてこの「有事」に遭遇するとかなりきつい。

 

●リスクヘッジ策は?

 これらのリスクをヘッジする方法としては、第69話で述べたように現役時代の早めから、キャリアの複線化を図り、「有事」の場合に仕事探しに慌てないよう備えたり、

 

あるいは日頃から、積立NISA・iDeCoなどで資産を増やす、病気やけがの場合は個人的に就業不能保険医療保険に加入するなど、いろいろ対策はあるのだが、それ以外にも、今回のケースを通じて、独身の場合、結婚・再婚しておくこともリスクヘッジ策としてあり得るのかなと感じてしまった。

 実は、冒頭の相談者に「こんな時は、旦那さんがいてくれたらよかったのにねえ~~」と、つい反射的に無神経で失礼なことを言ってしまったのだが、怒りもせず「そのとおりやと思います」と悲しそうな顔をして何度もうなずいていた。

 

 失業したとき、独身の方が気楽という人も多いが、若いうちは確かにそうかもしれないが、50歳くらいになると、「有事」の場合、その期間は配偶者に(多少でも)働いてもらい生活を支えてもらうことができるし、パートでもいいとなると一気に仕事の選択肢が広がる。さらに相談相手がいるということは精神的な安定にもつながるので、余裕をもって次の仕事をさがしたり、治療に専念することができる。

 

結婚は、してもしなくても後悔する

 

 と言われている。また、一般的に「やらなくて後悔するより、やって失敗して後悔するほうがよい」とも言われている。結婚するといろいろ制約をうけるし、「夫婦間の愛」はいずれ間違いなく冷めるが、時間の経過とともに、通常はお互いを支えあう「パートナーシップ」変質していくので、打算的と言われるかもしれないが、こうした「有事」の時の保険として、結婚・再婚を捉える考え方もあるのかなと感じてしまった。

 

●リスク対策は「ハイブリッド」対応で早めに

 一番よくないのは、こうした「有事」に対して、なんとかなるだろうと漫然とすごしていると、今回の相談者のように、いざというときに後悔することになる。

 該当する可能性のある人は、40代までのまだ体力・知力のあるうちから

 ・転職を容易にするための技術、資格の取得

 ・起業、副業のための情報収集やその準備

 ・資産形成のための継続的投資

 ・(未婚の場合)婚活

 などを、1つだけに絞らずハイブリッド型(複合型)で対策を考え、早めに具体的なアクションを起こすことをお勧めしたい。

 

●(見るのもいやな)ゴキブリ亭主でも、いないよりまし?

 このように考えると、既婚の共稼ぎ夫婦の中には、「あんな甲斐性のないゴキブリ亭主、いてもいなくても同じだわ」と考えておられる奥様方もおられるかもしれないが、結婚していること自体がこうした自分自身のキャリア人生における「有事」の際の保険と捉えていただければ、少しは優しい(?)気持ちになって頂けるかなと思う。

(男目線で恐縮だが)ここは忍耐と寛容で辛抱してほしいところだ。