育児休業制度について第51話で雇用保険法に基づき社労士の立場で、いろいろ述べさせてもらったが、書いた後も正直、給付金を支給したり休業を付与する程度の目の前に「ニンジン」をぶら下げるような法改正を繰り返すだけでは、少子化対策の決め手にはならないような気がしていた。別に制度自体を批判しているのではないのだが、キャリコンとしての立場でいうと、もう少しマインドで子育てと仕事の両立に悩む女性に寄り添えるものが欲しいと感じていた。

 

●子育ては「キャリア」である

 そんな折、3人の子供を育てたベテランの女性キャリアコンサルタントの知り合いから、当時の岸田総理が国会で育児休業中のリスキリングを支援するような答弁があり、子育て期間を単なる休業期間と考えていることに失望したと手厳しい意見を聞かされた。

子育てはキャリアである

 このことを忘れないでほしい。確かに、子育てにより失うものもあるが、得るものもたくさんあるはずである。これを理解してもらえないのが残念でしかたがないとのことである。

 

 

 そういえば、昨年、東京都の小池都知事が「育業」いう考え方を提唱していた。この考え方には多くのところで共感できる。少子化の抜本的な解決策が秘められているような気がした。

 

●「休業」という言葉はやめよう

 そこで、自分なりに考えてみたのだが・・・

 子育て期間を育児休業期間ではなく各家庭に期間限定で在籍出向するイメージとして捉えることはできないだろうか。(あるいは育児業務を国が母親に委託するという考え方でもいいと思う)

 この期間、給付するものも、育児休業給付金ではなく、育業出向分担金または育児業務分担金という考え方で、一定期間雇用保険に加入しておれば、在職・離職に関わらず国が出向先または委託先(この場合は各家庭:通常は母親)にこの分担金を支払うという考え方である。児童手当もこれに含めればよい。

 

 子育てによって技術的な育児ノウハウや保育・乳幼児の医療の基本的な知識、さらには、社会や関係者・協力者とのかかわり方やコミュニケーション能力、忍耐力、調整力、不測の事態の対応能力などが培われるはずである。

 

 本来の仕事は一時期離れることになるが、それに代わる「育業」というキャリアが得られる。

子育て=キャリアという考え方が社会に認知されるようになり、女性も一時期、別の仕事に就くだけと考えられるようになれば、出産して子育てしてみようという気持ちが少しでも広まるかもしれない。

 当然ながら、一定の子育て(出向)期間が終われば、希望者は全員出向元へ帰任(復職)できる仕組みである。

 もちろん、帰任後の働き方など、この方法には課題も多々あるが、国民みんなでこういう考え方を醸成していくのはどうだろうか。

 

 もし、事情により出産・育児のために退職して、育業を終えて就職活動を始める場合にも、履歴書の職歴欄に

〇〇年〇月  国からの委託をうけ、育業に従事。2人の子供を育て上げる

〇〇年〇月  育業を終了(予定) あるいは育業とWワークする予定

 さらに、「自己PR欄」に

「子育て中に培った、コミュニケーション能力、忍耐力、調整力、不測の事態の対応能力などが貴社の業務に活かされると思います。」

 など、堂々と記述することが認められそれが採用基準として評価される。そんな時代が来れば、少しでも少子化問題の解決につながるかもしれない。