(第59話:前編)からの続き

●採否の分かれ目は主観で決まる

 採否の決定は、面接官のちょっとした印象で左右されることがある。人事部で採用を担当していた頃、あまり大きな声では言えないが、役員面接後に社長に判断を求めると社長の主観的な印象から「まあ、いいんじゃないの」という鶴の一声で、採用を決めていたこともあった。

 そういう意味で、30分一本勝負の限られた時間で、元来その人をすべて理解するのは無理なことなので、少しでも好印象をもってもらうために、自分なりにできる限りの策を講じるべきである。

 

●話し方テクニック

 面接時の話し方についても、対策本やネットでいろいろ書かれてあるので参考にしてもらえればいいが、私が面接をしたとき、もう少しこんな話し方をすればもっと印象が良くなるのにもったいないなあ~ と感じたことを中心に、ちょっとした話し方テクニックをまとめてみた。

 

〇ゆっくりめに話す

 声はやや低めでゆっくり話すと落ち着いた印象になる。普段の話す速さの0.8~0.9倍速くらいがいいかと思う。早口だと話す内容の信憑性が低くなる印象を与えてしまう。緊張すると早口になる人が多いが、日頃から低めでゆっくり話すよう心がけながら、習慣になるまで練習してほしい。これなら一人でいつでもできるはずである。

 

〇クローズ質問にもオープンで答える

 クローズ質問というのは「はい」「いいえ」 だけで答えられる質問であり、オープン質問というのは、「はい」「いいえ」などの選択肢がなく、回答者が自由に考えて答える質問のことである。前編で述べた想定質問はすべてオープン質問になっている。

 熟練の面接官はできるだけオープン質問をするように心がけているが、未熟な面接官は平気でクローズ質問をしてくる。そんな時は、その未熟さにつけ込み、例えば・・・

「前職は派遣だったんですね?」「はい、そうです」だけで終わらず、「派遣という立場でしたが若手の正社員の教育係も任され、技術指導やメンタル面での相談役の役割も担っていました。」などと自分が聞いてほしいことを誘導するような事項を、短くことばで付加するのである。そこから話が拡がり自分のペースに持ち込めて自己アピールにつなげることができる。(ただし、あまり長くなると「そこまでは聞いていない」と思われるので注意が必要)

 

〇沈黙は厳禁

 回答に窮した質問をされた場合、絶対にしてはいけないことは「沈黙」である。テレビやラジオでは15秒以上沈黙が続くと「放送事故」扱いになる。面接でも(私の主観だが)7秒以上沈黙が続くと「面接事故」となり評価が大幅に下がる。こういう場合「ちょっと答えがでてきません」「難しい質問なのでどう答えたらいいかわかりません」とか言って会話をつなぐことが大事である。面接官も質問を変えてくれることが多い。

 

〇同じことはそのまま繰り返して言わない

 一度話したことと同じことを言わなければならない質問をされた時、答える前に、「前にも言いましたが」「繰り返すようですが」「履歴書に書いてある通りで恐縮ですが」などのことわり語」を必ず言うこと。

 これを言わないと、その話はもう聞いた、なんども同じ事を言う頭が悪そうな人と思われ、印象が悪くなる。この「ことわり語」を言うだけで、前に話したことを承知した上で話していると理解してもらえるし、自分の用意した回答パターンや言葉のボキャブラリーの不足をカバーできる。

 このほかにも聞かれたこと以外で自己アピールしたくなったら、「ご質問とは少し話がずれるかもしれませんが・・・」「答えになっていないかもしれませんが・・・」とか言ってから話すと、すんなり聞いてもらえることが多い。

 

〇締めが大事、終わり方で全体の印象が決まる。

 最後に質問はありませんか?と聞かれて本当に何もない場合、「ありません」で終わるのではなく、その場合は決意表明をするのである。「質問はありませんが、今日は緊張してしまい、うまく答えられなかったこともありましたが、もし縁あってこちらでお世話になることになりましたら、一生懸命働き貴社に貢献したいと思います。どうぞよろしくお願いします」と言って締めると印象が良くなる。

 

●面接官も緊張します

 実は、人事部で採用業務を担当していた経験から申し上げると、面接官も面接は大変なのである。30分くらいでその人の「人となり」を判断し採用するかしないかを決めなければならないのである。この人を採用しても、ちゃんと会社に貢献してくれるだろうか、もし採用しても「はずれ」で、現場から「何というやつを採用したんだ」と言われたらどうしよう・・・そんなことを考えると面接される側よりもプレッシャーがかかると言ってもいいくらいだ。面接官も緊張しているのだなと考えると少し心の余裕が生まれるはずである。