高齢者求人にも概ね70歳までという「ガラスの天井」(目には見えないが上がろうとするとぶちあたる天井)がある。
生涯現役支援窓口で高年齢者の就労を担当していた頃、「年齢不問、60歳以上応募可」と書いてあっても概ね70歳を超えると「その年齢では・・」とやんわり断られることが多くなっていた。
●70歳以上の就労支援はつらいよ
そんな中・・・年金や貯金を取り崩しながら、なんとか暮らしているのだが、ちょっとだけ遊びたい、飲みたい、孫にお小遣いあげたいなどの理由から少しだけでいいので稼ぎたい、なんかないか?と70歳以上の高齢者が、時々相談に来られた。
60歳代までで雇用されると70歳過ぎてもそのまま雇用を延長してもらえることはあるが、70歳を超えての新規で紹介できる求人となるとハローワークでは、雑踏警備・交通誘導、清掃、調理補助、介護(経験者)くらいの職種しかない。これらの職種の仕事は嫌だ、無理だ、他に体に負担の少ない軽い仕事でなんかないかと言われるとまず紹介できる仕事はなくなる。(極稀に軽作業(動物園の遊具の操作、学校の用務員など)の求人があるが、人気がありすぐ充足されてしまう。)
さらに75歳を過ぎるとこれらの職種でも採用は難しくなる。ちなみに私が6年間の職業紹介で採用になった最高齢は74歳女性(自宅近隣の学習塾の週2日の清掃)である。同僚の相談員では76歳男性の交通誘導の職種で採用になった例があるらしいが体力的に無理だとわかり1日で退職したそうである。
●手ぶらで帰すわけにはいかないが・・・
経験的にわかっているので紹介できるところはないと言いたいのだが、せっかくわざわざハローワークに足を運んできた本人を傷つけるといけないので、やさしく婉曲的に難しいと説明するのだが、なにせ暇なので1社でも紹介しないと帰ってくれない高齢者がいる。
こちらも、手ぶらで帰すことは気の毒なので、なんとか1件でも紹介できるよう、めぼしい応募先に電話をかけまくるのだが、なかなかいい返事はもらえない。
そんな中、数は少ないが軽作業の求人で、「書類選考なので、とりあえず応募書類を送ってもらえれば・・・」といってくれる会社がある。
おそらく、法令遵守の意識が高く、雇用対策法に則り応募に関しては年齢制限を設けず、一旦すべて履歴書を事前に送ってもらうことで受け付けるというきまりがある良心的な企業だと思われる。
ただ、高齢者には人気求人なので60歳代の人が多く応募するなか、残念ながら応募してもほとんど書類選考で落とされることになるのだが、本人も1件だけでも紹介してもらえれば(紹介状をもらえれば)とりあえずそれで帰ってくれる。
不採用になるのがわかっているのに紹介するのか!というお叱りを受けそうだが、こちらも「無い袖は振れない」状況で、応募は難しいと言っても納得せず、紹介してもらうまで帰らないという高齢者にはこうした対応をせざるを得ないのが実情である。
紹介して、一時(いっとき)でも希望を持ってもらえればそれでよし!と考えるようにしていた。
●事業所へのおわび
実は、こうした70歳以上でも応募を受け付けてくれる求人が見つかると、一部の相談員同士で情報共有していた。窓口で70歳以上の人が来て、紹介できる求人がなかなか見つからず、帰ってもらえない場合は、その事業所に電話をして、とりあえず応募だけ受け付けてもらい紹介状を発行して帰っていただいていた。
そんな中、この求人の事業所から応募の際に「最近、ハローワークさんからの紹介は高齢者が多いけど、なにか理由があるのですか?」と聞かれ、おもわず「あっ、そうなんですか? さあ~~、単なる偶然じゃないですかね~~。」ととぼけたことがある。この事業所には本当に申し訳ないことをしたと今でも反省している。この場を借りて深くお詫び申し上げます。
●70歳以上は関知しません
国も、高年齢者雇用安定法を改正し、70歳まで就労機会の確保を奨励しているが、言いかえれば、国の施策として、70歳以降の就労はもう関知しません(支援しません)と言っていることになる。
できれば、70歳以上の方はシルバー人材センターに登録して紹介を待つか、ハローワーク利用したければ、前述の応募可能な「職種限定」にしてほしいのが本音である。